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「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」 町田そのこ ネタバレ感想

2021-09-03 | 小説・漫画他
町田そのこさんは初読み。
リクエストした事も忘れた頃にやっと届いて、はて?何がきっかけでリクエストしたのか?も思い出せない次第。でも、面白かったです。4つ★

さて、本作はシングルマザー家族、DV、施設育ち、ジェンダー‥等、またしても偶然こういった内容の本。

「カメル-ンの青い魚」、「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」、「波間に浮かぶイエロー」、「溺れるスイミー」及び「海になる」の5編が入っています。
私は「波間に浮かぶイエロー」と「溺れるスイミー」が特に良かったです。

全話にそれぞれリンクしている人がいたり、海の魚や生物等が登場していたりと、独立している5つ短編を上手くまとめられています。
文章力が優れてるなあ!これがデビュー作だなんて、と感心してしまいましたよ。
今度は全く違ったジャンルの町田さんの別の本も読んでみたいです。

★以下、ネタバレ含むあらすじと感想です★

「カメル-ンの青い魚」 第15回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞受賞作
そんなエロいお話ではありません。
ん-微妙・・・。さっちゃん、、人が良すぎやしませんか・・。
りゅうちゃんの事が好き!という一貫した強い思いがあるんですが・・・。ふらりといなくなって放置、ばあちゃんの葬式にやってきて、避妊せず妊娠しちゃったよ・・・。
それから、りゅうちゃん12年間も放置していて、さっちゃんは啓太っていう子供を一人で育てて来た。

「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」
啓太はさっちゃんが父親のりゅうちゃんに会えるのを期待して大阪に行きたいと願っている事に気がついて、その資金の足しにと新聞配達のアルバイトを始める。啓太はとっても良い子だよなあ!!
クラスメートの晴子は小さくて気が弱く、いつも頑強で怖いばあちゃんが送り迎えをしていた。ばあちゃんが認知で入所してしまった後、晴子が頑張って強くなり、いじめっ子に立ち向かうようになる(晴子ガンバレ!凄い!って応援しながら読みました。)
でも、晴子が山登りの初デートで、お喋りすいすいと出来たり、色々準備万端だったのは意外だったけど。
最後晴子は転校して行き、さっちゃんはここで暮らして行く決意を啓太に告げる。

「波間に浮かぶイエロー」
サヨは恋人がいきなり電車に飛び込んで自殺してしまい、その現場の駅の側の喫茶店『ブルーリボン』で3年働いている。外見は派手でエキセントリックだけど、とても優しくできた人間の店主でおんこの芙美に拾ってもらえたのでした。
ある日、店主の芙美の元を訪ねて来た元同僚で妊娠中の環は、しばらくサヨの部屋で同居する事になる。環は現在38で既婚、妊娠しているが、夫が不倫していたことが発覚し家を出て来たのだった。
環は23歳の時、妻子持ちの上司と不倫して子宮外妊娠で倒れ、すったもんだで会社を去った過去がある。その会社の同僚(大人しかった経理部の男性高橋君)がおんこになる前の芙美で、環の事を片想いしており、一生彼女を好きです、将来環の願いを何か一つきいてあげると約束したからなのでした。

15年ぶりに再会した高橋君はおんこになっていた!(実は最後で解るのですが、本当の高橋君は病気で亡くなっており、彼の願いを受け継いだ芙美がなりすましていた)
高橋君と芙美はこの店の共同経営者で、幼い頃から施設で一緒に暮らして来た仲間だったのです。(1話目のさっちゃんは芙美がお兄さん・親みたいな存在だったそう)
さっちゃんと息子の啓太は、このお店の古くからの常連であり友達で、幼い啓太をおぶって仕事をしてあげたりと、何かと世話をしてきたのでした。

23才だった環の入院先に上司の妻がやって来た時、酷い言葉を吐く環に、手をついて謝った・・・というシーンが凄い。そして、今因果応報なのか、今は自分が逆の立場になってしまっている。でも自分は、あの時の上司の妻の様な強さは持ててない。若い綺麗な愛人に負けてしまうと泣くのでした。
でも、3人でピクニックして話して、自分を好きだと言ってくれる人がいる、ということで頑張れる!と言い、環は夫と向き合う為に店を出て行くのでした。(きっと元のサヤに戻って上手く行くと願いたいです)

環から、過去の打ち明け話を聞かされたサヨは、私よりも幸福な場所で苦しいと泣いている人に、石を投げようとせずにいられない・・と思い、環の事を嫌な女だと時々思っていたこと、環には筒抜けでした。それでも、どこか環の事を憎めないと思っていました。最後に2人が本音をさらけ出して、これからも良い友達でいられそうな予感。

ブルーリボンの名前の由来、ハナヒゲウツボ(男が女に性を変える生物)は初耳でした。
これは、すごいお話だったなあ、また、文章中、はっとする部分が幾つかありました。

「溺れるスイミー」
あまり、こういう放浪癖というか・・ひとところに留まって誰かと共に生活するのが苦しいという性分の人のお話を読んだ事がなかったので新鮮でした。
幼い頃家を出て行った父親と同じ性分である唯子は、トラック運転手の元ヤンキー宇崎(1話のりゅうちゃんと殴り合いのけんかになった相手)と出会う。強面だが優しくて良い奴な宇崎。彼も一つの場所にとどまれない性分で、初めて同じ性分を持つ唯子と出会えたことが嬉しくて、これからも2人で長距離トラックに乗りながら一緒にやって行かないか?と言ってくれる。一瞬大喜びで行く!と答えるも・・・結局断ってしまう。 えーーーー!!なんでよーー!
が・・・唯子は場所だけじゃなくて、誰かと共生するのも辛いかららしいけど、、、だからって、この町にお母さんと、職場の上司の人と結婚して、我慢して生きて行けるの?!

「海になる」
桜子は3回の流産と死産、その後夫のDVで(酷過ぎる、可哀想過ぎる・・・)ボロボロになってしまったが清音という一見やばそうな男と偶然何度も出会い一緒になる、最後には助産婦さんになった。「うみのいりぐち」という産院で、親類の中学生の晴子を預かる事になった。良かったーこんな人なら安心だ。晴子を可愛がってくれるはず!!

助産院でまとめている処とかは、窪美澄さんの「ふがいない僕は空を見た」が、ちらっと頭をよぎりました。あれも確かR‐18文学賞作品でしたよね。

夜空に泳ぐチョコレートグラミー 町田そのこ 2017/8/22
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2 コメント

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Unknown (べる)
2021-09-04 21:29:17
町田さんはちょっとした表現とか言い回しとかにすごくセンスを感じます。いい文章書くなぁって思いますね。
お魚しばりで、観賞魚好き(食べる方はあまり好きとは言えませんが水族館は大好き)の私の好みど真ん中!って感じでした。
どのお話も、痛みと優しさのバランスが良かったです。町田さん、本屋大賞受賞の作品もとてもとても良いので、ぜひ読んでみて下さい。
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べるさん☆ (latifa)
2021-09-05 07:56:25
べるさん、こんにちは!
町田さんも、きっとお魚好きなんでしょうね、今まで知らなかったお魚の種類やウンチクも楽しめました。

私も水族館とかお魚見るのも食べるのも大好きですよ。水槽内のお魚の強弱関係があるのを見るとお魚も大変だなあ・・と思うのでした。

本屋大賞の本も、ずいぶん前にリクエストしているんですが、全然回って来なくて・・・。
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