帝国図書館に関係するウンチクと、喜和子さんという友人との交流と彼女の過去の2本建てでお話が進みます。
結構な情報量と長編小説で、読み応えがありました。4つ★
主人公というか、語り手ライターの「わたし」が、中島さんご本人と、つい錯覚してしまいそう。
図書館に集う有名小説家さんや、動物園のエピソード等、知らない事だらけで、それらのウンチクも面白かったです。
喜和子さんの元愛人の教授、ホームレスの男性、小さなお家の2階に住んでいた芸大の学生の男性など、脇に個性的な面々も登場します。
★以下ネタバレ★
彼女が幼い頃、上野にあった戦後のバラック街「葵」で、ゲイカップルと暮らしており、おお兄ちゃんと一緒に(袋に入れてもらって)図書館に行っていたことなど、その2人の過去や携わっていた書物等が、後に明かされて行きます。
「としょかんのこじ」という絵本の後記の言葉の一文「真理がわれらを自由にする」が国会図書館の壁に刻まれていました。
喜和子さんは窮屈な暮らしから自由になりたくて、娘が18になってから東京に身一つで出て来たのでした。昔の日本の男尊女卑が当然だった時代、九州の嫁ぎ先で辛い生活を送っていたんですよね。ラストは彼女亡き後、彼女の希望だった散骨をしてもらえて、良かったです。
後に喜和子さんの孫にあたる女性が登場、この若き女性が良い人で、上手い事まとめてくれた感^^
あと印象に残ったのは、図書館エピソード24(377頁)で、戦後、幼い頃日本に暮らしていたピアニストのベアテ・シロタという女性が、新しい憲法を作るにあたって、女性の権利について草案していたんですね。実際に日本で暮らしていた時に女性の大変さを痛感していたそうです。以上
上野の旧帝国図書館 現在の「国際子ども図書館」は、まだ行った事がありませんでした。
常々母から、凄く素敵な洋館があって、絶対私が好きそうだから一度は行っておいでよ、と言われれいたので、今度こそ行ってみようと決意しました。
あと、もう無くなってしまっている喜和子さんが住んでいた小さなお部屋が魅力的でした。
夢見る帝国図書館 中島京子(2018)
内容紹介 amazonより
私が年の離れた友人から依頼されたのは「図書館が主人公の小説」だった。
文章修業をしている「わたし」は上野図書館に並々ならぬ愛着を抱く喜和子さんに出会い、年齢差を超えた友情を築いてゆく。
喜和子さんは「図書館そのものを主人公にした小説を書いてよ」と持ちかけるが、多忙になったわたしは書けないままに喜和子さんとも疎遠になってしまう。
久しぶりに再会した喜和子さんは老人ホームに居た。
友情が復活するも、喜和子さんは病気で亡くなり、娘だという女性は冷たくてとりつくしまもない。
わたしは、喜和子さんが生前に「もう一度読みたい」と言っていた本のタイトル『としょかんのこじ』を手がかりに、喜和子さんの半生、そして彼女が愛した図書館の歴史を辿り始める……。
中島京子さんの本の感想
長いお別れ
「花桃実桃」「桐畑家の縁談」
「平成大家族」「futon」
小さいおうち
そうですよね、あの図書館をつくるまで、色々な人が闘ったり、資金ぐりや戦争のあおりで何度も移転や頓挫してるんですもんね・・・
普通に子供の頃から図書館を使えて、そのありがたさを普段感じることなく過ごしていますが、無料で読めるって素晴らしい事ですよね。
喜和子さんの事も気になりましたが、帝国図書館の歴史が面白くて楽しく読書が出来ました。
たくさんの人が闘って今の図書館があるんだなと思いました。
数々の文豪たちも登場して、こんな風に図書館を利用していたのかな~なんて想像できるのも嬉しかったです。
図書館の歴史、こんなに色々とあったんですね・・。
この本を書くにあたって、すごい一杯調査をされたんでしょうね・・・。
それとも、中島さん、こういう事にお詳しそうだから、既にご存知な事も多かったのかな。
小さいおうち、大好きな小説です。
本作も良かったんですが、やっぱり、あの本は格別です
面白い小説でしたね~。
http://blog.livedoor.jp/todo_23-br/archives/17959453.html