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ネタバレあらすじ感想「七十歳死亡法案、可決 」垣谷美雨

2022-04-15 | 小説・漫画他
垣谷さんの本を読むのは初めて。面白かったです。

垣谷さんは「老後の資金が足りません!」等で有名で前々から興味はあったのですが読む機会がないままでした。
本作「七十歳死亡法案、可決」は、内容に惹かれ、即借りれる状態だったので読んでみることに。出版が2012年と古かったせいかな?

いやあ・・・、現代の問題がてんこ盛り!
よくこんなに色々詰め込んで、かつ最後は後味良いハッピーエンドにまとめあげたな?と感心しちゃいました。

第一章から引き込まれて、読んでいる最中はわき目もふらずの一気読み。
重い問題が一杯あり、現状かなり暗くて辛いんですが、コメディタッチな感じもあって、そこまでズドーンと暗くならないで読めるんですよ。
こういう塩梅具合が凄いですね。これはこの作家さんが人気なのも解るわ・・・。
ただ、最後の方は、ここまで上手く行くのはちょっとどうかなあ・・・とも思いましたが。

やっぱり主人公の宝田東洋子(55歳)に一番感情移入しちゃいましたよ。
この本を出版したのが今から10年前。
10年経って、日本のこういった状況は、あまり変わっておらず、改善もされてない様な・・。
とはいえ若い世代の意識改革のお陰もあってか、彼らの両親世代も若干アップデートして来たかなあ・・・とも感じます。私自身も10年前と今では、若干だけど考え方等が変わって来た気もするし。

読む前は、もっと70歳での強制死についてシリアスに書かれてるのかな?と思いきや、もちろんそこも描かれますが、家庭内のお話(長男の妻がいっさいがっさい背負わされてる状況、老いた親の財産は欲しいけど面倒なことは長男の嫁に丸投げの冷たい実の娘2人、優秀な大学を出てエリートだった息子が会社を辞めて以後、再就職でレベルを落とせず3年が経ってしまっている状況等)日常生活の描写が多かったです。

★以下ネタバレ★

一番酷いのが宝田東洋子の夫!
こいつは許せぬ!!介護中の寝たきりの老いた母も、散々苦労をかけた妻も置き去りにして、早期退職をして男友達と世界一周旅行に出掛けてしまうんですよ。ありえないでしょう!
でもね、東洋子も呆れて物も言う気にならなかったとはいえ、激怒もせず夫を送り出しちゃったり・・・っていうのは、どうかなあー。

彼女が家出をして一人暮らしを開始、駅弁等を扱う店で働き始めて、元来真面目なせいもあって、そこで活躍して行けたのは良かった。
そして意外な事に、彼女がいなくなった後、ニートな息子が止むにやまれずに追い込まれたせいもあるけど、料理したり、祖母とも交流を持つようになったり、中学校時代の同級生の女の子とバッタリコンビニで再会したのがいいきっかけになって、(この女の子が凄いやり手でアグレッシブで凄いのよね)最後は彼女の会社で一緒に仕事する様になるのですよ。

また、最後の展開で、息子が親類の伯母さん達2人にヘルプを頼むんだけど、全部丸投げしようとするその考えこそがマズイこと。男女とかじゃなく、家に入る人だからじゃなく、数人で分け合って、みんなでやろうというのが大切であることなどが楽しくもしっかり書かれていたのは、とても良かったわ。
ダメ夫が一緒に旅に行っていた友達が、また最高に良かったわ。この人は妻に先立たれているんだけど、ガンで死んだ妻が残した日記を見て色々学んで、助言をズバズバと言ってくれて、ここらへんも読んでいてスッキリしたわー。

あと、ここはちょっと・・な部分だったけど、寝たきりでオムツだった祖母も、部屋を改造し、車いすに乗れば自分でトイレに行ける様になるとか、夜も側に息子が寝る様になってからブザーを鳴らさない様になったとか、これらは東洋子がいた頃から改善出来る部分だったのに!(まあ、物語だからしょうがないんだけどね) 特にトイレ・オムツの部分は、祖母本人も一番そこは嫌だっただろうし。

あと、家を出て行き一人暮らしをして介護施設で働いているルックスが良くない娘。
同じ職場のイケメンで優しい男性と、徐々に仲良くなって最後は良い感じになりそうで良かったわ。彼の祖母が胃ろうになって寝たきりで入所してるんですよね、胃ろうを作る時彼はそういう知識が無くて医者の言うままに従って今、後悔してるという設定でした。

ニート息子が中学時代趣味のSLで仲良かったが縁が切れてしまっている友達の沢田がブログをやっているのををこっそり盗み見していて、沢田が大型電気店で就職出来たけれどブラック企業で精神病みそうになったのを阻止しようとします。
最後、沢田はマリンコとくっつきそうで、政治の方に足を突っ込んで行くのかなあ・・・という部分は、ちょっと余計だったかなあ・・とも思ったかな。 
以上

七十歳死亡法案、可決   2012/1/27 垣谷美雨
2020年、高齢者が国民の3割を超え、社会保障費は過去最高を更新。破綻寸前の日本政府は「七十歳死亡法」を強行採決する。2年後に施行を控え、宝田東洋子(55)は「やっと自由になれる」と喜びを感じながらも、自らの人生の残り時間に焦燥感を隠せずにいた。我侭放題の義母(84)の介護に追われた15年間、懸命に家族に尽くしてきた。なのに妻任せの能天気な夫(58)、働かない引きこもりの息子(29)、実家に寄りつかない娘(30)とみな勝手ばかり。「家族なんてろくなもんじゃない」、東洋子の心に黒いさざ波が立ち始めて…。
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