兵庫県精神障害者連絡会・代表のブログ

1995年に設立された兵庫県精神障害者連絡会の設立時メンバーであり,20年間代表を務めているメンバーのブログです

日本に民主主義の勃興を

2024-03-30 | 日記

日本語では、「輿論(よろん)」(パブリック・オピニオン)と「世論(せろん)」(ポピュラー・センチメンツ)は大正期までかなり明確に区別されて使用されていました。それが第二次世界大戦後の「当用漢字」を定めるにあたって「輿論」の「輿」の字が廃止されてしまったことから、「輿論」と「世論」を同一視し「せろん」の方向に引っ張られる結果を生んだのです。今となっては「輿論」の漢字を廃止した人達の意図は分かりません。

輿論:(public opinion)、世論:(popular sentiments)の違いを英語から見てみます。もともとこれらの言葉は明治期に草奔革命家たちによって英語から翻訳されて民主主義を日本に実現するための日本語として作られた言葉だから、もとの英語を見ることで日本語の意味を考えてみたいのです。辞書を引いてみます。「public」:「一般の人々や社会全体を意味する英単語である。また、公共の、公の、公開された、といった意味も含む。」「opinion」:「意見、見解、持論、所信、(あることについての)一般の考え、世論、(善悪の)判断、評価、好意的評価、専門家の意見。」「popular」:「人気のある、評判のよい、(…に)人気があって、評判がよくて、好かれて、民衆の、人民の、大衆の、民衆的な、民間に普及している。」「sentiments」:「感情、情緒、情操、(芸術品に表われる)洗練された感情、情趣、(愛着・思い出などによる)感傷、多感、涙もろいこと、(しばしば感情の交じった)感想、所感。」

なお、世論調査の英訳は、public opinion poll; public opinion surveyであり、「輿論」を調べることを意味していますが、いまの日本では「せろん」の方向に引っ張られているように感じます。

この言葉の違いを廃棄したことは、日本における民主主義の実現にとって致命的な打撃を与えたのではないでしょうか。合議による意見形成という本来の民主主義に取って代わって、「雰囲気の形成」という極めて操作しやすいものを、国民世論(よろん)としてしまう結果を生んだからです。「輿論」の言葉を廃棄した人たちの意図は分かりませんが、結果として合議によって決定するという民主主義が失われ、「雰囲気」の形成による国民支配という、資本家たちにとって都合のいい国民支配体制が「民主主義の装い」を取ってこの国の統治形態となったのでした。

私たちにとって必要なのは、明治期の草奔革命家たちのように、「合議による輿論の形成」を再度勃興させることなのではないでしょうか。