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フランシス=ベーコン展

2013-06-18 | レビュー
目撃せよ。体感せよ。記憶せよ。

  フランシス=ベーコン展(豊田市美術館)



 暗闇に浮かびあがった対象は、薄ぼんやりと光を放っている。
 シャッタースピードが速すぎて、ぶれてしまった写真のように見える画面は、瞬間にいくらかの時間の幅を持たせるかのようだ。



 過去の記録である写真の数々を、スライドショーで見るときの感覚に似ている。浮かび上がっては、闇に同化されゆっくりと消えていく。



 人も、犬も、スフィンクスも、物体は、輪郭を持ちながらも半ば透明感を持って描かれている。薄ぼんやりした対象が放つ光は、「エネルギー」や「魂」「知性」「感情」といったものの抽象的表現か。

 第2室に入ると、いきなり目に飛び込んでくるのは、生々しい「肉体」である。血がしたたり、赤々とした食肉の塊を思わせる作品。精神を表現すべく媒体としての肉体ということだろうか?

 対象の見え方は、見る方向によって、あるいは描き手との関係性によってまるで違って見える。印象ばかりが記憶に残り、頭の中で再統合されたような。多方向から見た印象をピカソ的に集合させて表すと、「ダイアのトリプティック」のような作品になるのかと。



 やがてどろりと溶けて、あるいは闇に吸いこまれて無くなってしまう「はかない」存在ながら、精神のエネルギーの宿る「肉体」は、部分的であれ、美しい。


 
 20世紀的「いまここ」感の表現なのでは?と思った。