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血と骨

2012-10-30 | レビュー
血と骨 梁石日(ヤン・ソギル)
1998年 初版 山本周五郎賞受賞作

 著者は、映画「月はどっちに出ている」の原作者。小説を書く前は、タクシーの運転手であった。

 戦前、済州島から出稼ぎに来日した実父の人生を軸に、彼を取り巻く在日家族・同胞の歴史をフィクションを通して描く。

 朝鮮では「子どもは母からその血を受け継ぎ、父からは骨を受け継ぐ」といわれるそうである。

 まるで怪物のごとく暴力的な男、金俊平。誰をも威圧する巨体で、頑健な体躯を持ちながらも、蒙昧ゆえ、暴力によって周囲を押さえつけ、オレ様を貫く男の一代記である。全編が血生臭く、視覚的には耐え難いであろう表現の連続である。その欲望たるや、けだもののような金俊平ではあるが、わずかながら人間的な良心なるものをを見せる部分もないではない。息子の名付けで、儒教にこだわる点や、蒲鉾職人としてのプライドなどである。珍妙な滋養強壮料理を作る場面などは、哄笑を誘う。しかし、読み手が息をつくのもつかの間、「生々しい」圧倒的な生の物語は、常に切迫し、緊張感をもって進んでいく。

 戦前・戦後からの「在日」が、現在の状況に至る流れがよくわかる。