月明かりの下の独り言

こちらに舞い戻って参りました。
こちらで、ちょっくら暑苦しく真面目な話題に、取り組んでいきたいと思います。

大江正章『地域の力』岩波新書

2008-04-30 | 読書
地域の力―食・農・まちづくり (岩波新書 新赤版 1115)
大江 正章
岩波書店

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以前も紹介したこの本。
日本各地の住民みずからの取り組みを紹介している。農業、商店街、林業など。これを読むと、なんとなく希望がわいてくる。そして、政府やマスメディアがこぞって推奨する農業の大規模化、と言う問題が、いかにおかしいかがよく分かる。

ずっと前になるが、朝日新聞の社説に農業大規模化への提言が掲載されていた。

2008年3月27日
農業を『成長産業」に変えよう。

生産調整をやめることだ。自由に米を生産して足腰の強い農業をつくり、米価を下げて消費を増やす。同時に食用だけでは需要に限界があるので、飼料やバイオ燃料へ思い切って用途を拡大してはどうだろうか。

生産調整をやめれば、生産性が高く意欲ある農家は生産を増やし、米価が下がるだろう。下がりすぎて農業自体がつぶれないように、意欲的な農家の所得を補償する仕組みが必要になる。

米価が3割下がるとして、農業が主業の農家に補償対象を絞れば、財政負担は2千億円程度ですむ。いま生産調整に使っている額と同じなので、新たな財政負担なしにできる計算だ。
米価が下がると、米作をあきらめる農家が出てくるが、続ける農家に水田を売ったり貸したりすれば、地代などの形で利益を共有できる。こうして農地の大規模化と効率化を進めたい。


それぞれが、確かにもっともな話ではある。でも、実際に生産調整があるから米を作れない農家が現在どれくらいあるんだろうか。大規模化先進地域の北陸地方のある干拓地では、米価が下がった事で結局負債を抱え、先行きが見えない状況になっているというドキュメンタリーを見た事がある。さらに、NHKのアーカイブで昭和40年代に米農家のバブル景気を扱ったドキュメンタリーを放送していたが、その当時と比べ、生産者米価はほぼ同額である。サラリーマンの初任給は4倍になっているにもかかわらず、である。

日本としては非常に広大な干拓地、米どころでさえ、大規模化しても米価下落に対応できないのに、たとえば私の田舎の中国山地の山間に川の両脇に山に挟まれて細々とのびる耕地を、いくら大規模化したところでどれほどコスト削減になるんだろうか。

実情を知らないお役人の立てるざっくりとした数値目標だけで、農業政策が進んでいく事は、とても怖い。

そして、中国からの食料輸入で問題になった食糧自給率に、世界的な穀物価格の上昇。日本国内の食卓を巡る状況は、かなり末期的状況に陥っている。企業的には回復していた景気も、再び足踏み状態になり、個人的には中小企業のサラリーマン世帯としてまったく景気回復の感覚もないままに、今のような状況に陥ってしまった。実際、日本の農業を、食糧生産をどうしていけばいいのか、これ以上税金をつぎ込んでなんとか国内自給率をあげるべきなのか、よく分からない。

けれども、今現在農業に細々と携わっている人が、やっぱり農業に携わりながら、それでもきちんと暮らしていけるだけの収入を確保できる、そんなことが実現できれば、素敵なんじゃないかと思う。意欲のある突出した人だけではなく。この本を読んでいて、その想いが強くなった。

農業に憧れている若者もたくさんいる。先日ピースウォークで出会った女性もきっとその一人。でも、自己実現を超えて、採算ベースにのせ、農業をきちんと生業としてこつこつと携わっていく人が増える事。生き方の面も含めて。

拡大する経済というものは、人口の面からも、環境の面からも、考え直さなくてはいけなくなっている昨今、最大限の利益をめざすのではなく、ぼちぼちと生きていけるだけの稼ぎを安定的に得ながら生きていく。

う~ん、しっちゃかめっちゃかになっちゃった。

今朝の朝日新聞から。
論壇時評by松原隆一郎(社会経済学者)から鈴木宣弘「食糧は『戦略物資』 カネさえあれば買えるは大間違い」(エコノミスト4月1日号)の紹介より気になった部分
自由な世界市場をWTOが実現したとしても、カネを払えば必要な食糧を他国から調達できるというのは本当だろうか。鈴木はそれを、食糧自給率が高い国特有の外交交渉上の口約束にすぎないとする。(中略) 農水省はWTOに規律強化を提案する方針だが、そもそもWTOは鈴木の言う国家間の「戦略」が激突する舞台であるから、ナイーブな要望が通るとは期待しづらい。

確かにそうだと思う。市場原理とそれを規律する国際機関に任せればハッピーハッピーということは、絶対にない。この、グローバル化する食というものがあらがえない事実だとしても、国際分業を進め、得意分野をそれぞれに、というのは余りにもユートピア的発想であり、結局の所は地産地消の大切さにもう少し気付いた方が良いのではないかと思うんだな。

なんだか、とりとめもなく長くなってしまったけど、
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