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地球が回ればフィルムも回る(gooブログ)

『食卓の肖像』『悠久よりの愛 -脱ダム新時代』などを制作した記録映像作家、金子サトシのブログ。

領土問題再考

2012-09-27 13:14:00 | 時事問題
現状の世界各国の領土というのは、戦争も含む実効支配を続けることで確定されているところがあるというのは現実としてあることだと思います。そうした帝国主義的な領土の確定の仕方、戦争とか実効支配で、歴史的、地理的にあいまいな土地がどこの国の領土であるかを確定させるやり方に対して、批判的な視点は必要かと思います。しかし、そうした帝国主義的な領土の確定の仕方を全面的に否定して、そのような帝国主義的なやり方で確定されている領土は、世界中、どこも認めないなどと主張しても、あまりに世界の現実からかけ離れた主張ではないかと思うし、世界中の人々から広く同意を得ることは出来ない主張なのではないかとも思います。

結局、帝国主義とか、戦争とか、そうしたことも歴史の一貫なのであり、そもそも各国の領土は、帝国主義とか、戦争とかも含み入れた人類の歴史の過程で変動し続け、現状として確定されているものなのだと思います。何千年、何万年も、まったく変化しない、「固有の領土」として、ある一国の領土が存在すると考えるほうが、領土というのは変動し続けて来たものなのだという歴史を無視していると言えるのかもしれません。

なので、とにかく、日本政府の「固有の領土」という主張は無理があると思うので、この考えから離れることがまず必要なのではないかと思います。

でも、こういう風に考えて行くと、結局のところ、いろいろな解釈の仕方とか、観点とかで、その土地がどの国の領土かの判定が違ってくるとも言えます。絶対的に、100パーセント、客観的な、領土の国際的な判定基準というのがあるのかも疑わしいです。そもそも、世界には、帝国主義とか、戦争とかに歴史的にまったく関わりがない、客観的な立場の国というのがあるのでしょうか。
早い話、日本と中国、日本と韓国の間に入って、仮にたとえばアメリカが判定したとして、アメリカの判定が客観的な立場のものなのかはおおいに疑わしいわけです。

竹島(独島)に関しては、戦前の日本の朝鮮支配の一貫に含まれるものなのか、日韓で議論が分かれるところですが、時期的に重なるなど、韓国側の主張に耳を傾ける要素はあるものと思っています。
一方、李承晩政権に始まる、韓国による、竹島(独島)の実効支配のやり方はかなり乱暴なものであり、こうした実効支配のやり方こそが帝国主義的なものなのではないかという見方も出来ると思います。
つまり、韓国側の、竹島(独島)は日本による帝国主義的な朝鮮支配の一貫で日本の領土に編入されたものだという主張に耳を傾ける要素があると思うと同時に、第二次世界大戦後の、韓国による竹島(独島)の実効支配のやり方も帝国主義的なやり方だと思うので、帝国主義的なやり方はけしからんという立場から言うのだとすると、竹島(独島)の場合はどのように考えればいいのか、微妙なところがあるように思っています。

また、尖閣諸島については、日本は無主の地だったところを先占の法理で自国の領土に組み入れたと主張しています。(中国側は、そもそも尖閣諸島は無主の地だったわけではなく、昔から中国側の領土だったのだと主張しているようですが。)仮に無主の地だったという日本の主張が正しいとするなら、無主の地だったのなら現状の国際法の考え方では日本の領土とするのが正当ということになるかと思います。しかし、現状の国際法の概念から離れて、帝国主義的なやり方でどこの国の領土かを特定するやり方は問題があるという立場から言うのであれば、そもそも無主の地の場合は先に自国の領土だと宣言した国の領土になるという決め方自体が帝国主義的な決め方で問題であるという考え方も出来るのではないかと思うので、こうした立場なら、無主の地だったからといって日本の領土だとは言えないのではないかという考え方もあり得ると思います。

結局、解釈の観点とか、角度で、どちらの国の領土かは違ってくるということです。
で、何をあなたは言いたいのかと言われてしまいそうですが。
とにかく、僕としては、日本と中国、日本と韓国にはそれぞれ歴史がありますので、そうした歴史的過程も踏まえて、それぞれの2国間で話し合っていくしかないのではないかと思います。(当然、日本側は過去の反省と謝罪が必要です。)

付記
なお、これでは、自分の意見、考えとしてどうなのか、はっきりしろと言われるかもしれませんので、あえて、現時点での僕の個人的な考えを書いておくと、僕は、尖閣諸島は中国領であり、竹島は日本領であるとするのが、どちらかと言うと妥当な判断なのではないかと個人的には考えています。

天安門事件のトラウマ

2012-09-26 00:50:00 | 時事問題
何度か、書いている通り、僕は個人的には、尖閣諸島がそんなに明確に日本の領土であることに疑いがないものであると言えるものなのか、かなり疑問に思っていて、中国側の主張にもじゅうぶんに耳を傾ける要素があるものと思っているので、中国側が日本政府に対して抗議するのは当然だと思っているのだが、それはそれとして、中国国内で起こったデモが、デモと言うにはあまりに乱暴で略奪行為にまですぐ発展したり、かと思うと、あれだけ暴れていたのに、中国政府が規制をかけたらすぐに鎮静化したりするのには、なんでこうなるのか?、これは民衆が自発的に起こしているデモではないのか?と唖然とさせられる思いがした。
で、それに対して、各マスコミに、中国に詳しい専門家という人達が出て来て、いろいろともっともらしい解説をされていて、ふーん、そういうものなのかと思ったりして、おそらく中国通の専門家なる方達が言うことは間違いではないのだろうと思うのだが、もしかしたら僕の見当違いかもしれないが、大切なことが抜け落ちているような気もするのだ。
その、僕が、抜け落ちているのではないかと思う、大切なことというのは、こうした変な形でしか、中国でデモが行なわれないのは、天安門事件のトラウマがかなり根強く人々の間にあるからなのではないかということだ。

天安門事件は、他国の僕にも、あまりに衝撃的な出来事だった。こんなことが世界にあっていいのかと、本当に震えて、ひと晩中、僕は泣いていたと思う。いまにして思えば、本当に僕は若くて、まだ子どもだったのかもしれないが、連日、天安門で若い人達のデモが膨れ上がっているという報道に、ああ、中国も、大きく変わろうとしているのかな・・と、素朴にわくわくして、期待していたのだ。それが、あんな風な結末になるなんて・・、軍隊が自国の国民を虐殺するなんて、そんなことがあるなんて考えてもいなかった(軍隊というのはどこの国でも自国の国民を守るためにあるものだと素朴に思っていた)僕は、あまりの衝撃で、天地がひっくり返ったような気持ちがしたものだった。まあ、いまにして思えば、単に僕が何も知らなかっただけで、天安門事件のこの結末を予測していた人が多くいたことや、そもそも軍隊というのは自国の国民を守るためだけにあるものではないらしいということをのちに知って、気づいて行くことになるわけだが、とにかく、天安門事件に遭遇した頃の僕は、こんなことが世界ではあるのかと衝撃に震えるしか、なかったのだ。
他国の僕でさえ、そうだったのだから、中国の人達には、やはり天安門事件のトラウマというのは根強くあって、それがデモが盛り上がっても、政府が規制をかけたらすぐ鎮まってしまうということに繋がっているのではないかと僕は感じる。どうなのだろうか。

慰安婦、竹島、尖閣諸島・・

2012-08-31 16:33:00 | 時事問題
なんだか、いつの間にか、竹島や尖閣諸島、慰安婦問題などについて、揉めに揉めているようです。
自分の考えを整理するために書くと、橋下氏の慰安婦の強制連行はなかったという発言については、たとえば、下記の伊藤孝司さんの記事をぜひ、読んでみて欲しいと思います。

奪われた記憶を求めて
元日本軍「慰安婦」沈達連さんの強制連行の現場から
伊藤孝司

http://www.jca.apc.org/~earth/sub10.htm

なお、朝鮮人慰安婦の問題については、以前から書いていることですが、パク政権が、この件についての賠償をきちんと日本に要求し、補償されることもなく、日韓基本条約を結んでしまったことも問題なのであり、日本政府のみならず、韓国政府側の問題ということもあると思っています。

また、話は竹島のことに飛びますが、竹島について韓国側の主張に検討するべきところがあるものと僕は考えていますが、だとしても、李承晩政権が行なったような、話し合いもへったくれもなく、他国の人間を次々と拿捕して勾留したなんてことは暴虐と言うほか、ないものではないかと思います。その主張の当否はおいておいて、2国間で領土問題について意見の食い違いがある場合、その2国間や国際的な話し合いによって解決をはかろうとするべきで、そうした話し合いを無視して、他国の人間を拿捕、勾留するというのは暴虐だと思うし、李承晩が行なったことに関しては、韓国側が日本に謝罪するべきことではないでしょうか。

という考えで行くと、尖閣諸島について、もし仮に今後、日本が、尖閣諸島内に入って来た中国や台湾の漁師や活動家の人達を次々と拿捕、勾留するようになっていくのであれば、それはかつて韓国の李承晩政権が行なったことを、今度は日本が中国に対して行なうということになるのではないかと僕は考えます。
これは日本の尖閣諸島についての主張が正しいか、否かとは別問題です。日本の主張の当否には関係なく、こうした2国間で考えに食い違いがある場合に、話し合いによって解決をはかろうとするのではなく、他国の人間を拿捕、勾留するという行為に出ることが乱暴なやり方で問題であると僕は思うのです。

尖閣諸島、竹島は本当に日本「固有の領土」なのだろうか?

2012-08-10 23:04:00 | 時事問題
『世界』8月号の、豊下楢彦氏「『尖閣購入』問題の陥穽」より。

<主権国家が成立して以降も絶えず国境線が動いていたヨーロッパにおいて「固有の領土」といった概念は存在しない。
というよりも、そもそも「固有の領土」とは国際法上の概念では全くなく、北方領土、竹島、尖閣といった領土紛争を三つも抱え込んだ日本の政府と外務省が考え出した、きわめて政治的な概念に他ならないのである。>

<まずは「固有の領土」という不毛な概念から離脱することである。
政府やメディアが、国際法上の根拠もないこの概念を綿密な検証もなしにお題目のように繰り返すことで、日本外交が呪縛され柔軟性が失われてきた。>


「固有の領土」という日本政府の独自の主張が、尖閣諸島や竹島の領土問題の外交的解決をより難しくしていることが指摘されていると思う。
尖閣諸島にしろ、竹島にしろ、国際法上で日本の領土だという主張にはたしかに一定の理があるものだとは僕も思う。
しかし、尖閣諸島も、竹島も、日本が領土として正式に主張したのは明治以降である。
果たして、それ以前からの、日本古来の領土と言えるのかは疑問なのだ。
つまり、日本政府は、国際法上で日本の領土であるのみならず、「日本固有の領土」であると主張しているのであるが、国際法上で日本の領土であるという点については僕も理があるとは思うのだが、「日本固有の領土」という点に関しては疑問なのだ。
従って、「領土問題は存在しない」といった主張については、「日本固有の領土」であると考えることから出てくる主張だと思われるので、僕は認めない。

以上、以前に僕が書いた下記のことと重なるが、微妙に観点が違うところもあることなので、改めて書いてみました。

APEC、尖閣諸島について雑感
http://blue.ap.teacup.com/documentary/1689.html

尖閣諸島を東京都で買い上げ??

2012-04-18 11:44:00 | 時事問題
石原都知事の、東京都による尖閣諸島、買い上げ発言。
国が主張するならまだしも、なんで東京都で? そんなことに東京都の予算を使うのはどうか?
と僕は思うんだけど、インターネット上のアンケートを見ると、けっこう、賛成の意見が多いようですね。

個人的には、以前に下記で書いた通り、そもそも、尖閣諸島が日本の領土だと言えるのかどうかにも、僕は疑問を持っています。
こういう、僕みたいな、異論に、聞く耳を持つ余裕は、もう、みんな、ないのかなぁ・・。
でも、あえて、再度、アップしておきますね。こういう考え方もあるということを、少しでも、知って欲しいから・・。

*APEC、尖閣諸島について雑感
http://blue.ap.teacup.com/documentary/1689.html

「尖閣諸島についても、すでに書いているように、国際法上はたしかに日本の領土なのかもしれないが、そもそも現行の国際法の、その領土がどこの国の土地かを決める決め方、先に国際的に宣言したほうの国の領土として認められるという決め方自体が問題があるものなのではないかと考えるので、国際法上は日本の領土だという理屈は理解しても、だからといって、尖閣諸島が日本の領土だという主張は自明のことであるとは言えないように僕には思える。」