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二人の夜は深更に

2018-12-19 17:30:00 | インポート

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「まずは乾杯~!」

生ビールのMと私の焼酎水割りでグラスを合わせる。

取りあえずのアテは鶏の胸肉おろしポン酢と山盛りしらすのさっぱりサラダ。

 

選んだ場所は全国的にチェーン展開している大衆居酒屋だった。

似たような店が多いこの地で営業を続けられているのは

何かそれなりのウリがあるからと思った点と

以前このチェーン店を利用したことがあったので、

一定の範囲で当たり外れも少ないだろうというのを考慮しただけ。

 

Mの方も好き嫌いはないので何処でも良いと遠慮気味に話しながらも

「せめて座れるところなら・・・。」と言ってたしな。

大阪も12月に入ると流石に夜は冷え込む。

何もビニールハウスみたいな場所を好き好んで選ぶ必要もあるまい。

 

見かけより広い店内は4人掛けのテーブル席で

着座して目の高さ程度にウッド調でその周囲を囲ってあった。

大衆的な店なのは間違いないが案外個別感がある。

 

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今回急ではあったが実はMには以前から機会があれば

また是非会ってみたいと依頼していたのは私の方。

 

連休を取って一人旅に出てきたと言うM。

7月に見た時より若干ふくよかになった気がするが

あの時より少々元気がなさ気な様子。

 

昨日は名古屋に寄って来たらしいが

仙台から長距離運転でお疲れモードなのか。

だが今朝からユニバーサルスタジオジャパン(以下USJ)に一日中

行っていたのだと聞けば気のせいかも知れない。

 

USJに関しては説明不要だろう。

大阪にあるTDLみたいな娯楽施設で私の自宅からは

車で1時間程の場所にはあるものの、

彼女とデートするような若かった時代にはまだ出来ておらず、

結婚してからも子供を連れて行く機会も無かった為、

その子供もとっくに成人してしまった今、

行きそびれてしまい結局一度も行ったことがないのだ。

 

話を戻してMに対する印象はやはり思い過ごしでは無かった。

なにやら過労による体調不良で暫く入院していたらしい。

確か営業系の仕事だったはずだが・・・。

 

医者から仕事を止められるくらいに悪かったようで、

ビールをジョッキで飲んで大丈夫なのかと心配になったものの、

体調が良くなったのを機のリハビリ兼リフレッシュの為の休暇なので

元気ですと言われてようやく安心して呑む気にもなれた。

 

元々Mと一度ゆっくりと話をしてみたいと思ったのは

とにかく正真正銘の車好きという点に尽きる。

その大前提として素直で楽しい青年だからなのは初対面の時に確認済。

 

SNSでもチラリと見せるその豊富な知識、

またDIYするだけの技量もあって

私にはまず到底無理なことも出来る憧れる存在でもある。

 

年齢だけはおそらく一回り以上若いだろうが話をすると

何故か同年輩以上の者と会話しているような錯覚に陥る。

いや正しくはこと車の話をする限りにおいては

年齢が逆転したかのような感覚になる。

 

聞けばMの父親が自動車関連の仕事をしていた影響で、

小さい時から休みの度に遊園地よりカーディーラーに連れて行けと

せがむような子供だったらしい。

 

過去何十年分の国産各車のカタログを保有しているのも

絵本代わりだと考えればそれも頷ける。

 

父親もきっとそれが嬉しかったのだろう。

その内に自家用車を購入する際には子供のMの意見を聞き入れて

選ぶようになっていったそうな。

 

親の年齢は聞き忘れたが、そう考えればMのキャリアは見た目ではなく

80歳程度の一子相伝、北斗神拳みたいなものだろう。

こちらは10代後半からのデート用に考えた頃と思えば精々40年ちょっと。

喩えりゃ正直「ふぎゃ、ほげっ、」で自分が死んでいるのにさえ

気づかぬ雑魚キャラみたいなものだな。

 

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そんな者に対しても第一印象通りケンシロウならぬ

トキのように優しく接してくれるMを前にすると

決して頬に反対側の手の甲を当てるようなタイプではないこちらも

思わず「惚れてまうやろっ!」となってしまうようなナイスガイだった。

 

元々知り合ったのはSNS上で共通の知人の話題が出るのは至極当然なのに

殆どと言ってよいくらいにそういう話にならなかったのも

余りに彼の車そのものに対する話が豊富で面白かったかったからに他ならない。

 

唯一その翌日に奈良のHさんとか大阪のSさんとの

飲み会があると聞いたが、きっと彼等とは私が及び知れぬ

長い付き合いの面子で使い分けしたのだろう。

 

興味深かったのはM家の自家用車遍歴の数々。

またそれらの車に対するインプレッションとか

現在所有のVW車に至った経緯などなど。

 

互いに満腹になってこれ以上食い物を頼むのも辛くなってきた。

時計を見れば22時。

これで別れるにはまだまだ惜しい。

河岸を変えるとするか。

 

路地を少しうろつくと更に奥まった場所に「BAR」の文字が。

そこで引き続きMの話を聞くことしよう。

 

この辺りから残念ながら記憶がかなり怪しくなってくる。

ここ最近はどうも体力の低下に伴い酒にも弱くなったものだ。

奥のカウンターと手前に丸テーブル席が3つ程ある小さな店だった。。

 

カウンターには既に数名の客が座っていて

空いていたテーブル席に座ったのは間違いない。

 

かなり浮かれて興奮してしまったからか、

はたまたバーのウイスキーでベロベロになったせいか、

ここから先の話は上手に煽てられ一方的に喋っていたようだ。

いや、待てよ、

ひょっとすれば最初の居酒屋でMに

究極奥義「北斗2時間痴呆拳」を秘孔に放たれていたのはないのか?

 

気づけばニコニコ微笑むMの顔だけはずっと変わらない。

まあそうだったとしても秘孔を打たれた後ではどうもしようもない。

 

明日の仕事をチラリと頭をかすめたものの、

もっと色々とMに聞きたいことが山ほどあるし

もう少しだけ長居をするとしよう。

 

こちらは既にもう単なるヘベレケ酔っぱらいオヤジ。

話題は車から調子に乗って政治、経済、

はたまた天下国家みたいになってしまったような・・・。

 

やはりもう手遅れだ。

恐るべし北斗神拳の威力。

 

次に気がついて、ふと時計を見れば午前12時半。

 

これは酔いも急に醒めるくらいに正直かなりヤバい。

今日は土曜日とは言え明日も仕事だけに取りあえず帰宅せねばならない。

興の乗る話を中断し慌てて店を出た。

 

急き立てるように駅前でMと別れたのだ。

プラットの時刻表を見れば辛うじて内回りの終電が残っていた。

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そいつで何とか大阪駅まで戻れたものの、そこから先の電車はもう無く、

這う這うの体でタクシーで帰宅するはめとなってしまった。

 

20代前半の頃に大阪でのコンパで投合し、

カップルになったた女の子が実家は奈良で、

カッコつけて送って行くと言って帰れなくなったのを思い出す。

 

今回は幸いバブル時代には考えられない位にガラガラで

タクシーもすぐに乗れ、道路も空いていて案外早く帰宅出来たのだった。

 

次する時はやっぱり梅田界隈にしよう。

 

かくして後ろ髪を引かれつつMに別れを告げた私だったが、

自宅に戻った頃ようやく窮極奥義か目覚めることが出来た。

 

「無想転生 」だったのか。

有難うさらばM、また会う日まで。

(おしまい)