NINAの物語 Ⅱ

思いついたままに物語を書いています

季節の花も載せていきたいと思っています。

愛の行方4. 花火

2010-03-24 16:40:00 | 愛の行方
修司は彫りが深く、テニスが得意な浅黒い顔をした、麻衣より2歳年上の28歳の青年だった。

初めて知りあったのは、3年前の夏、同僚の良江に隣県のS市である花火大会に誘われた時だった。
良江には、彼女の婚約者 清と一緒だと聞いていたので、三人で行くものだと思っていた。
仕事を終えて、私服に着替えるのももどかしく、二人は待ち合わせ場所の駅前の広場に急いだ。
約束の場所に停まっていた車の中には、中年の男性が運転席にいて、清ともう一人若い男性が車の外に立っていた。
良江の婚約者清がその若い男性を紹介した。
「この人、僕の同僚で木村修司っていうんだ」
「木村修司です。よろしく。」
修司は健康そうな白い歯を見せて笑顔で麻衣に手を差し出した。
麻衣もおずおずと手を出し握手をした。

車はワゴン車で2列目に良江と麻衣、その後ろに清と修二が座り、運転をしているのはどうやら修司の親戚の人らしい。
花火会場までは大変な渋滞で、ようやく着いた時には既に午後10時を大幅に過ぎていた。
大勢の人混みの中を歩いていて、麻衣は良江達とはぐれてしまっているのに気づいた。近くにいるのは先ほど会ったばかりの修司だけであった。
夜の知らない街で一人になるのは不安で、修司の腕をしっかりと掴んで歩いた。
花火はあまり見ないまま、ほどなく終わってしまい、良江達と合流するために、修司はその町の「バー沙織」へ麻衣を連れていった。

ドアを開けると右手にカウンターがあり、その中に和服を着た40歳代の目鼻立ちのはっきりした女性が笑顔で二人を迎え入れた。
他にホステスが2・3人いるようだ。
カウンター席の他に、左側にボックス席が20席ほどあり、奥の方で清が手を挙げているのが見えた。
そこには運転をしていた男性がウーロン茶を飲んでいて、清と良江がウィスキーの水割りを飲みながら、つまみを口にしていた。

帰りの車の中では麻衣の隣に修司が座り、肩に手を掛けてきて、「今日来て良かった。」と麻衣の耳元で囁いた。
意味は分からなかったが、悪い気はしなくて、先ほどの水割りが効いてきたのか心地よい眠りに陥った。


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