NINAの物語 Ⅱ

思いついたままに物語を書いています

季節の花も載せていきたいと思っています。

愛の行方19. 与える愛は?

2010-03-24 16:18:49 | 愛の行方
麻衣はこの頃「愛」について考えるようになった。

親から受ける愛
姉兄から受ける愛
自分の親や姉兄に対する愛
肉親の愛は生きている限り不滅のものと、麻衣の場合は感じている。

父母の場合は夫婦としてどうであっただろう。
父と母は態度や口には出さなかったが、互いに想い合っていたのではないかと、今では思う。
子どもの頃は父が母に対して発する言葉を冷たいと受け止めていたが、大人になり、男女の愛を幾つか経験した今、思い返せば父の冷たいと思った言葉も母には自分の存在を認めてくれる嬉しい言葉であったのかもしれない。
夫の死に際して涙を見せなかった母は、子どもたちのいない所でどんなに涙を流したことであろうと、母の悲しみを思い遣ることが出来るようになり、子どもたちに不安を抱かせないために、人前では涙を堪えていたであろう母を愛おしく想えるのであった。

自分の異性との愛はどうであろう。
高校の同級生克実が、自分のことを愛してくれていることは分かっていたにも拘わらず、気付かない振りをして、ただの友達だと言って遊ぶときだけ利用していた。
真剣に愛してくれた修司に対しては、前の彼女につまらない対抗意識を持って別れ、若い和也と関係を持って、その愛が成就しないと分かると、すぐ修司の方に心が戻っていく、自己本位の移り気な自分が軽軽な人間のように思われる。

自分は彼らに対して、愛を受けるのみに執着して、果たして愛を与えていたであろうか。

険悪な状態になっている課長との間も、彼は最初、麻衣に親戚の誠実な好青年を紹介してくれた親切な人だったではないか。
公園の人気のない道で魔が差したのであろう。
あの行為は許せないが、その後の自分はただ彼を忌み嫌う反抗的な態度を取っていただけではないか。
課長と話し合い、彼に反省を促して平穏に和解することも出来たのではないか。

今、仕事でも恋愛でも八方ふさがりの泥沼状態に陥っているのは、自分が招いた結果なのかと麻衣は思い悩む日々であった。


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