水兵本部広報局

明治時代の大日本帝国海軍 海兵隊について、これまで調べた事等を紹介するブログです。

海兵隊で使用していた小銃についての続き

2017-05-16 00:07:01 | 装備品
以前の記事において、海兵隊でマルティニー・ヘンリー銃について軽く触れましたが、新しい資料を発見できたので記事にしたいと思います。
まず結論から言うと、マルティニー・ヘンリー銃は海兵隊では採用されていなかったと見て問題ないと思われます。
「あれっ、Wikipediaには使ってたって書いてあるよ!?」と思われた皆さん。確かにマルティニー・ヘンリー銃は使用されていました。
海軍では。
といいますのも、今回発見した2つの資料は海兵隊廃止後の明治9年以降の書類で、これ以前の水兵本部および海軍省の資料には、同銃が海兵隊で使用されていたという記述が一切無いのです。
以下に、根拠とした資料の題名と抜粋、私の考察を記します。

資料一「往入十二 海軍使用小銃確定の件東海鎮守府上甲」
これは東海鎮守府司令長官 伊藤祐麿少将が、明治9年9月29日に海軍大臣 川村純義に宛てた上申書で、その中に以下の記述がありました。

~以下資料より抜粋(但しカタカナ及び一部の漢字をひらがなへ変更し、句読点を挿入してある)~
現今(げんこん、現在と同義)所轄の艦船にて使用致し候小銃は「スナイダ(スナイドル銃)」並「ヘンリー、マーチ子ー(マーチネー)」の両種にして
 ~中略~
追而(おって、追記と同義)両種の小銃相用いたし候内「スナイダ」銃その多きにいたり、独り清輝艦のみ「マーチ子ー」銃お渡し相成り居たし候
 ~以下略~
~抜粋終わり~

この資料は、ざっくり言うなら「スナイドル銃とヘンリー銃が混在してるから、どっちかに決めてくれ」という上申書です。
これに対する回答は「往出第六十五号の通り~略~」でした。
この往出第六十五号とは以下に示す文章のことで、ざっくり言うと「海軍の制式小銃は当分の間スナイドル銃とする」です。

海軍省 明治9年公文備考徃出巻14自1至170
海軍大輔 川村純義 明治9年10月13日
海軍省 東海鎮守府 軍務局
「明治9年公文備考往出巻14自1至170
 海軍使用之小銃従来区々ニ候処当分スナイトル銃ト相定候条此旨相達候也
 明治九年十月十三日
 海軍大輔 川村純義
 東海鎮守府司令長官海軍少将 伊東祐麿殿
 軍務局長海軍大佐 林清康殿
 兵学校長海軍大佐 松村淳藏殿
 兵器局副長海軍少佐 末川久敬殿
 往出第六十五号 原因ハ往入第十二号ニアリ」

資料二「軍二套第三十五号 マーチニーヘンリー銃操法書印刷之義上申」
こちらは明治11年1月31日に軍務局長 海軍大佐 林清康が海軍大臣代理に宛てた上申書で、その中に以下のような記述がありました。

~以下資料より抜粋(但し同上)~
従来諸艦船へ御備付のスナイドル銃を廃し、更にマーチニーヘンリー銃御備付可相成(相成るべく)見込については、右銃の操法書、元海兵隊規則取調掛において
 ~以下略~
~抜粋終わり~
ここでは紹介しませんが、海軍省は明治10年、陸軍省の倉庫に大量のマルティニヘンリー銃と同銃弾薬を預けており、同年に「入用に付」受け取っています。

以上の事から、海兵隊において制式採用された小銃はスナイドル銃、短スナイドル銃、砲兵用としてミニエー銃の三種類(ミニーヘル銃というのがスナイドル銃のことであった場合は二種類)で間違いないと言えるでしょう。
もし使っていたとしても、同銃が配備された艦の海兵などの一部部隊であったと思われます。
ちなみに資料によっては「短尾栓銃」という記述があるのですが、ミニエー銃のことでしょうかね?
明治の資料は書き手によって表現方法が変わるのが厄介です。
マルテニヘンリー、ヘンリーマルチニ、マーチ子ーetc.

海兵隊装備品

2017-05-03 21:06:41 | 装備品
様々な資料に、海兵隊の装備品として背嚢や胴乱などが記されていますが、形や材質などは不明なままでした。
「諸艦乗組其他水勇携帯用スナイドル銃外6廉御渡方」より、ある程度の形が想像できるようになりました。


一:英式ランドセル
  ただし、紐白
一:英式胴乱
  ただし、紐白
一:白革小盒
一:白革バンド
一:白革小銃背負革

ランドセル(背嚢)と胴乱の背負い革は白だったようですね。
この胴乱と小盒は、↓の画像のようなものです。(画像は「戊辰戦争衣料品」様のホームページよりお借りしました)

ベルトにくっ付いている小さい入れ物が「小盒」だと思います。
胴乱には弾薬を、小盒には雷管を収納していました。

しかし、こうしてみると海兵隊は随分と白革を多用していたようです。
実戦ではよっぽど目立ったでしょうし、汚れた時の掃除が大変そうです。


海兵隊で使用していた小銃について

2017-05-02 00:44:24 | 装備品
海兵隊では数種類の小銃を使用しており、また歩兵隊と砲兵隊では使用していた小銃が異なっていたようです。

・スナイドル銃

新生日本陸軍における主力小銃であり、ボルトアクション式の村田銃や、三十年式歩兵銃が開発されるまで現役で使用された有名な小銃です。
海兵隊では、明治5年7月25日、「海兵携帯用スナイドル銃外7廉御買入方件」より、陸軍省に貯蔵されていたスナイドル銃500丁が納入された記録が残っています。
また、砲兵隊では短スナイドル銃を使用していたようです。(明治10年12月23日 「旧砲兵隊用短スナイトル銃渡換の件 東海鎮守府申出」より)

・ミニーヘル銃(ミニエー銃)

ミニーヘル銃って何ぞ?と思われた方、安心してください。私もわかりませんでした。
明治5年2月18日「丁七号大日記 水兵本部申出 砲兵用ミニーヘル銃並附属品御渡方件」より砲兵隊用として60丁が、関連品と共に納入されています。
さて、何故これをミニエー銃であると判断したかというと、語呂が似ているというだけでなく、同時に納入された品の中に「ハトロン」という物が含まれていたからです。
これはハトロン紙のことで、ミニエー銃の弾薬と火薬はこのハトロン紙で包まれていました。
現代の金属薬莢と同じですね。

現在分かっているのは以上です。
某Wikipediaではマルティニー・ヘンリー銃が使用されていたと書かれていますが、海軍が納入していた記録は見つけたものの、海兵隊で使用していたかどうかまではわかりませんでした。