新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

サソリ男

2013年01月26日 | 習作
文学少女「じゃんぽーるくん、今日のお題は『サソリ』『電車』『国際結婚』よ!」
http://shindanmaker.com/14897



やあ。俺はサソリ男。中国四千年の歴史を持つ一子相伝の暗殺術・暗黒蠍拳の道士だ…ということになっている。本当の仕事は「東洋生命神秘研究所」という漢方薬局のデモンストレーターだ。金持ちの老人相手に、特別ご招待のセミナーを開いては、漢方薬やインドの秘薬を販売するのさ。

俺はもっともらしくサソリの舞を演武してから、2本指で逆立ちしたり、コインを曲げたり、拳で板に釘を打ち抜いてみせたところで、パワーの源のサソリを素手で取り出す。サソリを舌の上に乗せて、口の中に出し入れしたり、10匹くらい上半身裸になり胸や肩や腕に這わせてみせる。

サソリの起源は古生代シルル紀に遡り、空気呼吸をして陸上生活を始めた最初期の生物で、恐竜を滅ぼした大絶滅も生き残り、砂漠に適応して1年絶食しても生き抜く原始の生命力がある。ほら、ここに大学の先生もそう書いていて、あのタレントさんもサソリパワーを絶賛しているだろう? 金を積んだ大学の先生にパンフに書いてもらい、タレントに宣伝してもらうだけさ。大王サソリエキスがあれば誰もが健康になれて、難病もたちどころに解決、ダイエットも楽勝なんて一言もいっていないから、通報しないでくれよな?

サソリの尾の毒針に刺されて死ぬ心配はないのかって? ここだけの話、世界には1000種類以上のサソリがいて、致死性の猛毒を持ったやつは稀少なんだ。微量でも毒はあるから用心に越したことはない。しかしサソリは性格もおとなしいしシャイで、そこらの女どもより安全だ。

ところが俺としたことが、地方に向かう電車のなかで、サソリを入れたキャリーバッグを盗まれてしまった。普段は車で移動するのに、故障したのが運の尽きだ。

まぬけな泥棒は、駅のトイレの個室でバッグを開けて、腰を抜かしたのだろう。鍵を壊したバッグをそのまま放置して逃げ出した。トイレでサソリが発見され、駅がパニックになったのはいうまでもない。

俺は盗難の被害者だぞ? しかしマスコミ野郎が俺のことを顔写真入りで面白おかしく報じてくれたおかげで、ネットも炎上、景品表示法やら薬機法やらで、警察の手入れも間近らしい。やれやれ。以前ホテルのショーで出会った同業者で、ヘビ女王のジェニファーと国際結婚することにした。高飛びして、ほとぼりが冷めるまで海外でボロい商売を続けさせてもらうつもりさ。


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