新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

高杉さん家のおべんとう

2010年12月28日 | コミック/アニメ/ゲーム
『高杉さん家のおべんとう』1・2巻 柳原望 (MFコミックス)





冒頭の、朝っぱらからセーラー服美少女が朝メシ作ってる図。
このカットは、「マジヤバ」である。





主人公は高杉温己(ハル)・31歳。博士号(地理学)を取ったはいいけど、オーバードクターの31歳。舞台は名古屋。大学は名古屋大学だろうか。

ハルに家族はいない。両親はすでに亡くなっている。姉弟同然に育った、父の妹(つまり叔母)の美哉を駅に迎えに行った途上、交通事故死してしまったのだ。美哉も責任を感じて、ハルの前から姿を消してしまう。

美哉はその後、東京でシングルマザーになっていた。しかしその彼女も、中学校に入ったばかりの一人娘・久留里を残して事故死。遺言により、ハルが未成年後見人として、久留里を引き取ることになる。

久留里は、無口であまり話さない。料理はまだ苦手だが、食材調達は大の得意。オトク趣味で、スーパーの特売や底値をいつもチェックしている。中学生にしては渋すぎる。

このハルと久留里が、「おべんとう」を通じてコミュニケーションを深めていく。そんなハートフル・グルメ・ラブコメディ。

おべんとうは奥が深い。ハルにひそかに想いを寄せる研究員の小坂さんもいうように、あの小さなお弁当箱のなかに地平線が見えることもある。

高杉さん家の初めてのおべんとうは、きんぴらごぼうの完全に一品もの(ごはんもなし)。ハルがハンバーグに挑戦したのに始まり、次第におかずのレパートリーも豊富になっていく。そのたびに、ハル・久留里の絆も深まっていく。

おべんとうのために特別な食材を買わないのが、高杉家のルール。久留里が夕飯を作り、その残りを翌朝にハルがおべんとうに仕立てる。麻婆豆腐はニンニクなしでも結構いける。「肉じゃがは卵とじにすると汁気が出ない」などの小技の勉強にもなる。



もちろん卵特売も忘れていない久留里。



今の中学校事情が垣間見えるのが、興味深かった。美少女で、対人関係が苦手な久留里は、ただでさえ誤解されやすい。その上に、女子に憧れの男子のハートをキャッチして、イジメスイッチを押してしまう。

女子のリーダーは、ハルの同級生・香山さんの一人娘のなつ希。職員・来賓用トイレを使う久留里に、「イジメられ慣れているみたいね」という。先生用のトイレなら、囲まれたり閉じこめられたりはない、と。男子もめちゃくちゃだが、女子もえぐいなあ。ここで「イジメ権」なる言葉が登場する。



なつ希はいう。イジメはやると決まったら、あとは見物を決め込む。誰だって自分の手を汚すのはいやだ。どーせイジメなんてなくならないなら、あたしが高杉担当になる、と(彼女はひそかに来留里に好意を抱いている。この決断も、女子たちにひどいことをさせないためだった。ふたりはその後、ケンカしながらも親友になる)

イジメなんかないほうがいいに決まっている。しかし、なくすことができない。だったら、最悪の事態は招かないように、誰かが引き受けるしかない。

このなつ希のおばあちゃんがいい。初めてのお泊まりで、久留里が手みやげにしたサンドイッチに、忌憚のない批評。



サンドイッチのパンにバターを塗るのは、具材の水気がパンにしみこむのをふせぐため。バターがダマになっては意味がない。

しかし、これも愛の鞭。充血した目に、早起きして一所懸命作ってきたことを見抜いている。バターをやわらかくするならレンジを使えばいい。毎日の料理には「行き当たりばったり力」も大切だという。こういう話はいい。

冒頭で、ハルの両親、美哉も、3人も死んでいるのが気になる。久留里がハルにほのかに恋愛感情を抱いてしまうところも。不治の病や死が純愛スイッチになる、昨今の純愛ドラマにも通じる問題だろうか。「冴えない男と美少女の二人暮らし」という理想のシチュエーションを作るためなら、あえて大量殺人(?!)も辞さない、ご都合主義も感じさせる。おりょうの菊枕に、「女は残酷なことをする」と怒った坂本龍馬のエピソードを思いだしてしまった(あれは司馬遼太郎の創作のようだが)。

しかし、毎晩酔いつぶれて、毎朝二日酔いの私には、一所懸命なハルも久留里が清々しく、とてもまぶしい。やっぱり久留里ちゃんはかわいいのだ(何とでもいって)。




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