新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

ふじさんとカレーめん ゆるキャン△のリアル

2024年01月07日 | コミック/アニメ/ゲーム
2022年7月のこのエントリが、なぜか昨日の「人気記事」に。


「人気記事」といっても42pvですが、このブログにしてはがんばっているほうです。昨日朝更新した「仕事始め、山始め」の32pvより多いのは、意外でした。

何でなんでしょうね。理由はわかりません。あらすじを紹介しているだけで、特に独自の見解を示しているわけでもありません。「ゆるキャン△ 映画」と検索した所で、このブログはかすりもしないのですが。

急にアクセスが増えた理由を調べる過程で、「映画ゆるキャン△ ひどい」なる検索候補があることに気づきました。この検索でヒットしたあるレビューをみると、女子高校生がキャンプをやっているところを眺めているのがよかったのに、社会人になってしまうなんて、ましてキャンプ場を造るなんて論外だということでした。

里山再生に取り組む私にとっては、田舎暮らしには必須の技術である草刈りを取り上げた、画期的アニメだったのですが、草刈りのシーンなど不要だというのです。これには呆れました。草刈りはキャンプ運営の基本です。草を放置していたら、マムシ、イノシシ、クマが潜む藪になってしまいます。

「満員電車で押しつぶされそうなリンちゃんなんて見たくなかった」「ほっこりしたかったのに、考えていたのとちがった」という感想も見かけましたが、これも近い受け取り方なのでしょう。

私は2015年連載開始直後からの原作ファンです。劇場版公開時点で、『ゆるキャン△』に出会って、7年が経過していました。高校生が社会人になってもおかしくない歳月です。だから、不自然には感じませんでした。芳文社のきらら作品の登場人物が総結集したソーシャルゲーム『きららファンタジア』の映画コラボキャラ「大人リン」も、しっかり課金してお迎えしましたよ。

たしかに『ゆるキャン△』のキャンプ、アウトドアの描写は、多幸感に満ちています。だからキャンプの場面をずっと見ていたいという気持ちもわからないではありません。キャンプシーンは冒頭をはじめ、少ししか出てきませんでしたからね。

私も『ゆるキャン△』アニメ版一期を、一晩で二回観ました。この作品はいつまでも観ていられる気がしました。

静岡から山梨に引っ越してきて、富士山を見るために本栖湖まで自転車でやってきた少女、各務原なでしこ。彼女の住んでいた浜松市では、富士山は小さくしか見えなかったのです。

でも本栖湖は曇り。富士山は見えません。疲れて寝てしまい、目覚めたら真っ暗。そこで偶然出会ったのが、本栖湖畔でソロキャン中の志摩リンです。帰りは坂道を下るだけですが、あの暗闇のトンネルを抜けて帰るなんて、「むりむりむり ちょうこわい」。家の人に迎えに来てもらおうにも、最近買ったスマホのかわりにポケットに入れていたのはトランプ。そこでなでしこのおなかが鳴り出します。

「ラーメン食べる?」と、やれやれという感じのリン。

「えっ、くれるの?」と、とたんに表情が明るくなるなでしこ。

「1500円」と、クールに突き放すリン。

「じゅっ、じゅうごかいばらいでおねがいしまふぅ」と、100円玉を差し出すなでしこ。

「ウソだよ」と、笑うリン。

この初めて出会ったふたりの会話に、素直じゃないけれど面倒見がよくやさしいリン、天真爛漫でうっかりさんだけれど律儀でまじめななでしこという、ふたりのキャラクター、関係性が見事に示されています。

なでしこがカレーめんを食べるシーンは、マンガ史、アニメ史に残る名場面でしょう。

「フ───」「フ───」と、わりばしで手繰った麺に息を吹きかけ……



「はむ」「はむ」と、勢いよく麺をかきこみ……

「ゴク」「ゴク」「ゴク」と、両手でカップをかかえ、熱いスープを飲んで…



「もっ」「もっ」「もっ」「もっ」と、ひたすら麺をかきこみます。
このなでしこ、ほんとうに美少女です。

(しかし うまそうに食うなあ)と見ていて感心するリン。

「ん~~~~~っ!!」(ホカホカからだが温まってきたなでしこ)

ここで飛び出す名言。



「くちの中 ヤケドした!!」

(なぜうれしそうなんだ?)と、こころの中でツッコミを入れるリン。

寒空の下、空きっ腹で、疲れ切り冷え切ったからだに染み渡るカップ麺の熱さとうまさが、ジンジンと伝わってきたものです。

おなかが満ちてきたところで、リンは「ねぇ あなた どこから来たの」と質問します。

「あたし? ずーっと下の方 南部町ってとこ」
「もとすこのふじさんは 千円札の絵にもなってる!!」
「ってお姉ちゃんに聞いて 長い坂上って来たのに」
「曇ってて全然 見えないんだもん」
「聞いてよ 奥さん!」

そう訴えるなでしこを、きょとんと見つめるリン。

「見えないってあれが?」

日没後まだ間もない時間帯です。本栖湖の向こうには富士山のシルエットが見えます。富士山に見とれるなでしこ。空腹も満たされ、念願の富士を見たことで、人心地ついたのでしょう。姉の電話番号を知っていたことを思い出し、車で迎えに来てもらうのでした。「今度はちゃんとキャンプやろーね!」と、別れ際、なでしこは姉に聞いた携帯の番号と、自分の名前を書いたメモを渡します。リンはこの番号を「登録だけはしておいて」やります。実はなでしこが転校してきたのは、リンの通う高校で、近いうちに再会する運命だったのですが。

この第一話「ふじさんとカップラーメン」は、多くのファンのこころを鷲掴みにしました。

しかし、『ゆるキャン△』の魅力はキャンプばかりではありません。キャンプに至るプロセスもまたおもしろいのです。キャンプはお金がかかる趣味です。リンは本屋、アキは酒屋、あおいはスーパー、恵那はコンビニと、全員アルバイトをしています。まだアルバイト経験がなかったなでしこが、年賀状配達やお蕎麦屋さんの仕事を見つけるまでのエピソードも、物語の重要なパートです。

(南部町… よくここまで来たな チャリで)

最初に出会ったとき、なでしこが南部町から来たと聞いたリンのモノローグです。

原作ではこのひとことでサラリと流されているだけですが、南部町のなでしこの家から本栖湖まで、実に距離にして38.5 km、高低差は861 mあります。いわゆるママチャリで走る距離でも高低差でもありません。

食べることが大好きななでしこは、実は中3まで「丸かった」のでした。しかし夏休みにお菓子を食べてずっとゴロゴロしていたら、姉の桜子がついに怒り、「毎日浜名湖をぐーるぐるぐる」させられ、すっかり痩せて体力もついたのです。浜名湖一周は約65キロです。これは鍛えられますね。

リンはこの話を聞いて、「南部町から本栖湖までチャリで来れた持久力の秘密は そこにあったのか…」と感心しています。一緒にキャンプに出かける仲になっても、ずっと疑問だったのでしょう。体力おばけは一日にしてならずでした。ちゃんと合理的な理由が用意してあります。

このエピソードが、中一の「丸い」なでしこの写真をきっかけに明かされるのも、この作品らしいところです。正月、浜松のなでしこのおばあちゃんの家に泊まり、なでしこの幼なじみの土岐綾乃にあの写真を見せてもらった日、リンとなでしこは、出会ってからまだ二、三か月です。お互いまだ知らないことばかりです。

通常の作品なら、キャンプに行くにもみんなノリノリで、キャッキャウフフなのでしょうが、『ゆるキャン△』は、「行けたら行く」「考えとく」と、タイトルどおり「ゆるい」関係性です。SNSの画面の描写を活用した、こうした今どきの女子の関係性の距離感、空気感も、この作品が多くの人に支持された理由でしょう。

「リアルさ」を大切にする、こうしたていねいな物語づくりが、ふだんマンガやアニメを観ない一般層のハートをとらえ、キャンプブーム、アウトドアブームを巻き起こした理由だと思います。

『ゆるキャン△』の魅力は食事シーンです。全身全霊を使っておいしさを表現するなでしこに対し、リンはしみじみと喜びを味わい噛みしめるタイプ。




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