男たちの挑戦
旧臘 １２月１６日。
東アジアE-1 サッカー日韓戦。
日本はすでに中国、北朝鮮にも勝利して、韓国とは引き分けでも優勝の筈が
４対１の惨敗を喫し、ハリル監督の「相手が格上」発言がその後関係者間に物
議をもたらした。
この大会は規定で海外から選手を呼べない、それだけに両チームとも国内の
選手たちが這い上がる最後のチャンスであったが、Jリーグから選抜された日
本の選手たちにその気構えがあったのか。
招集初日 実施された体脂肪検査でハリルが求めた１２％以下の合格者は２
～３名に過ぎず、その後体重を数キロ落として達成したという不心得者もいた
そうだから、「繋いで、廻す」という日本の“お家芸”から、“デユエル（格
闘）”し、追い抜くという、筋肉質の、スピードのある選手を求めている監督
にとって、韓国の選手がまぶしく映じたのも無理はない。
JFAの田嶋会長は「この試合に限っては」と監督の意見に同意しつつも「日
本代表選手として誇りを持っているのか・・・貪欲さとか、誇りとか」と精神
論をぶっておられたが、テレビ観戦していたわたしには「レベルが違う」「相
手が格上」というハリル監督の見解には首肯するものがあった。
しかし ６月のロシア大会 H組の相手は、すべて「格上」である。
FIFAランキングでみるとポーランド（７位）、コロンビア（１３位）、
セネガル（２３位）に対し、日本は５７位、どう戦うのか。
はじめてスポーツ誌（『ナンバー』）を買い求め、その特集「日本代表 逆
襲の秘訣」に目を凝らす。
独占インタビュー「ヴァイッド・ハリルホジッチ」（田村修一）によれば「完
璧な準備があればすべて可能だ」、とのこと。
「私に必要なのはフィジカルとメンタルの準備が十分にできている選手だ」と
早くも「久保や浅野、井手口、原口、大迫と大ベテランの今野も・・・」と、そ
の顔ぶれの一部を漏らしている。岡崎や香川、そして本田については「彼らが自
分の力で地位を奪い取ることを願っている」と述べるのみ。世上では３月ごろに
３０数名に絞るとされているが、この対談でハリルはすでにこの段階から絞り込
みを始めていることを明らかにしている。「それぞれのポジションに二人ずつ、６
カ月の準備が必要だ。グループとして質が高く、大きな野心と強固なスピリット
を持つ。ベースはそこにある。・・・たしかに机上の議論では彼らの方が優れてい
るのは間違いないが、ピッチの上は別で、なんでも起こり得る。ひと試合ならば、
すべて可能だ」「もちろん優勝しない限りいつかは負ける。だがそのときは誇りを
胸にピッチを去りたい。自分たちより強い相手に、勇気をもって戦ったのだから」
と。宜なるかな・・・、である。
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督のプロフィール（「ウｲキぺデｲア」よりまとめ）
１９５２年５月１５日 ６人兄弟の第四子として、ボスニア・ヘルツェゴビナ
（旧ユーゴスラヴィア）に生まれる。名字の由来は「ハリル（親友）」「ホジッ
チ（指導者の子孫）」。近所にあったサッカースタジアムが少年時代の遊びの場
となる。８歳年上の実兄がサッカーのプロ選手になり、その影響で本人も１８歳
からプロの道に進む。ポジションはフォワード、１１年のプロ選手のうち二度フ
ランスリーグの得点王に輝き、２６歳の時U２１欧州選手権に旧ユーゴスラヴィ
アのOA枠選手として参加、６得点を挙げ祖国チームを優勝に導いた。７６年欧
州選手権、８２年のワールドカップに出場（身長１８２センチのフォワード）。
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で負傷、９５年フランス国籍を取得。
９８年から０２年までフランス二部リーグのチームを率いて、二度優勝。
２００８年からコートジボワール代表監督に就任、キリンカップでは岡田監
督率いる日本チームに敗れている。クロアチアリーグのチーム監督の後、２０
１１年６月 アルジェリア代表監督に就任。２０１４年のワールドカップでは
優勝チームのドイツを延長戦まで追い詰め、アルジェリアを史上初のベスト１６に導いた。
２０１５年３月 日本代表監督に就任。
その指導スタイル
アルジェリア代表では、北アフリカのチームらしく綺麗にパスをつなぐスタ
イルだったチームにタイトな守備と鋭い速攻を植え付け、W杯ベスト16となった。
２０１４年のワールドカップではドイツとの熱戦、敗戦後選手たちと抱き合
って号泣したシーンは世界中のサッカーフアンの心をつかんだ。対戦相手によ
ってフォーメーションを変える。「ルール、規律、練習」をモットーとし、スタ
ー選手だろうと妥協を許さない。自分のやりたいサッカーを、ビデオを交えたミ
ーテイングを通じてはっきり示して指導するタイプ。代表でキャプテンを務める
長谷部は「一言でいうとすべて正直に、ストレートに話されます」と。チームの
全責任は監督にあるという信念を持ち、日本滞在中は協会に常駐されている由。
（２０１８年１月８日 成人の日に脱稿）
あと十余時間で迎える２３年前の我が家の倒壊と
その後の余生を顧みるとき、このような小文を
お届けできる幸せをかみしめています。
