くに楽 2

"日々是好日" ならいいのにね

日々(ひび)徒然(つれづれ) 第五十一話

2020-12-22 15:00:56 | はらだおさむ氏コーナー

すぎてみれば・・・     

                     

  歯の治療中、なぜか、なぜか“近親憎悪”という言葉が浮かんだ。

 

  こんな言葉があるのか、帰宅して電子辞書を開く。

  わたしの辞書(「岩波・電子広辞苑」)には“近親相姦”はあるが、このことばはない(30数年前購入のもので、最新版はどうか?)。

  ヤフーで検索、そのグウ辞書に「親族どうし、または階層や性質などの似た者どうしが、ひどく憎み合うこと」とあった。

 

 二月はじめ 武漢で新コロナ流行とメディアが騒ぎ始めたころ。

わたしだけではないと思うがそれはサーズや第二次サーズ(「マース」)のときのように二カ月ほど中国圏内で蔓延、そのうちに収束するものと多寡をくくっていた。

上海の友人あてのメールなどにも言葉は悪いが“高みの見物”的口調も自然と出ていたかに思うが、二月末に予定されていたコーラスの先生のリサイタルが公営の会場側からの申し出で二日前に突如中止、三月以降のコーラスの練習もとりあえずは六月末まで中止との連絡が入った(その後再々の延期で一年)。

近在の図書館も三月半ばから“当分の間休館”になり、そこを“根城”の「古文書学習」活動もストップ。逆に上海などからは、落ち着き始めてきたとの情報が入りはじめる。

 

  ここまで書いてきて、筆がとまった。

  寝ている子を起こすような、“尖閣発言”。

  それは当事者同士の会談で話し合い済み、それを敢えて共同記者会見で発  

 言された意図はなにか。メディアによる情報はさまざまだが、政府与党内だけではなくその波紋はじわじわと階層を越えてひろがり、染み込んできている。

 「お上へのおべっか」と指摘される方もある、しかし、これで“栄達”への階段は外された、“勇み足”に過ぎたとみる向きも多い。

  香港問題をどうみるのか。 

   これは“勇み足”ではない。

   習近平の強権発動である。

   イギリスと約束した「一国二制度」調印当時と、いまやアメリカと“覇権” 

  を相争うまでに国力をつけてきたいまの中国とは違うという“意思表示”であろうか、“お上”に“モノ申す”人たちを矢継早に逮捕・隔離、国旗の「五星紅旗」にある「漢族(大きな星)と少数民族(小さな四つの星)」の結合国家の“象徴”を汚すような「国語教育」の強制などは、建国の精神に反することであろう。

   いまの「中国」とは時代や背景は異なるが、安政五年(一八五八)の井伊直弼政権に擬せられはしないか。“四面楚歌”のなかで「幕政批判者」を徹底的に弾圧・逮捕した、その光景を“時を越えて”思い、至る。          

しかし、習近平体制は“桜田門外”で暗殺されるような弱いものではない。

 

「香港だけでなく、世界中の多くの人たちが中国を『敵』と捉える時代に、私たちは中国とどう向き合えばよいのか」(阿古智子『香港 あなたはどこへ向かうのか』P236)

 

いま、切り抜いた11月24日の「日経」朝刊国際版を見つめている。

紙面トップには、横二行の大見出しで「中国ネット企業 政府圧力一段と」とあり、二段下左には縦見出しの「香港活動家 当局が収監」、三段に拘留される三人の写真、四段目にやや小さく横見出しで「周庭氏ら、昨年デモ巡り」とある。

   この記事の8日後の12月2日、周庭氏ら三人は禁固刑の「有罪判決」で、直ちに収監(いまのことばづかいでは「収容」だろうが、「監獄」に対比はやはりこれか)された。

   前掲大見出しの記事は、11月23日に開催された政府主催の「インターネット大会」関連記事だが、事の発端は11月3日に香港と上海の証券市場に上場許可を与えていたアリババ傘下の金融会社アント・グループの上場が突如延期になり、政府は10日に「巨大ネット企業の独占行為を規制する試案」を作成、この大会で承認を求めさせたのであった。

昨年九月に55歳の誕生を迎えたアリババの創業者馬雲(ジャックマー)はCEOを退任、後任の張勇(ダニエルチャン)が、この日の大会で政府の規制案に賛成する発言をせざるを得ない状況に追い込まれた、といえよう(写真はウイキぺデイアに掲載のアリババグループ馬雲会長)。 

 この大型上場を政府が許可を与えておきながら、その直前にストップをかけたのは、習近平しかいないと目されている。

なにがあったのか!

消息通は上場承認の数日後、上海での馬雲・前CEOのつぎの発言を指摘する。 

「中国のリスクは金融システムの欠如だ。私たちは質屋の考え方が残る金融を変革し、信用に基づく発展をしていく必要がある」

ジャックマーにして油断があったのか、上場許可は出ているがまだ上場はされていない、そこを習近平は突いた。

ジャックマーが共産党の党員である、という消息もあるが、それはわからない。

しかし、わたしはかねてからかれの心意気に共感と尊敬の念を持っている。それは08年4月の四川大地震のとき、かれはもちろん多額の献金をしているが、その額を越える献金の国有企業や民営企業とのことをメディアに問われて、自分は個人でも会社でもきちんと納税しているが、他の多額献金企業は納税番付には出てこないですね、と皮肉った。

北京五輪を夏に控えたこの大地震、かれの発言には冷たい反応も多かったようだが、わたしはかれの正論を受け止めた。

 

11月23日の政府主催「インターネット大会」には当然のことながらアリババのほかにテンセント、バイドゥなど中国のネット企業すべてが招集されていた。そのほとんどは国有企業ではなく、民営企業が多い。

かれらがこの数年中国の消費市場を引っ張って来ていた。

そこに当局はくさびを打ち込もうとしている。

 

この記事は最後に中国当局のネット世論への統制に触れている。

「ネット上の『違法・不適切情報』として通報された2020年10月の件数は1551万件で前年同月比五割を超えた」(国家インターネット情報弁公室)

なにが「違法・不適切情報」であったか不明であるが、中国の庶民が昨年比50%増、当局から見て、違法・不適切の発言をしていることに注目したい(その件数は人口比1%強である)。

 

               (二〇二〇年十二月二十日 記)

 

新しい年まであと一旬とはいえ

            コロナ対策ワクチンが市場に出るかの矢先に、

            四川の変面ごとき早業で変種のコロナ出現の情報。

            明治のコレラや第一次大戦後のペストの流行のように

            人間世界の傲慢な振る舞いに、天罰が下されようとしているのか・・・。

            わたしたちはいま、忘年会も新年会も返上して巣ごもりで

            新年を迎えようとしています。

            お元気で! 負けないで! 新年好! 身体健康!

 

                                     はらだ  

 


日々(ひび)徒然(つれづれ) 第五十話

2020-12-15 10:27:46 | はらだおさむ氏コーナー

霧の中の赤いボール     

                           

 サッカー日本代表 今年最後のゲームは、オーストリアでの対メキシコ戦。

時差の関係で試合開始は11月17日、日本時間の午前五時、すこし早寝していてもやはり眠い。

 コロナの関係で観客無人の試合、在オーストリアの前・日本監督のオシムさんも自宅での観戦であったよう。スポニチとのインタビュー(11月28日配信)では「ちょうどメキシコ戦の前日から昼間の外出も制限され、ロックダウンが強化された。こういう状況で試合をアレンジしたサッカー協会、代表チームの選手・スタッフのみなさんは大変だったと思う。試合は無観客だったが、直前で中止になってもおかしくなかった」と話されている。

 

 ご覧になっておられない方も居られると思うので、すこし説明を加えておこう。

 終わってみれば圧倒的な力の差といえるのだろうが、前半12分にMF原口元気がカットインから強烈なミドルを放つ。同15分には原口のラストパスからFW鈴木武蔵が相手ゴールキーパーと一対一の決定機を迎える。老練な岡崎がいたら相手ゴールキーパーの動きを察して、ボールをフワッと浮かしたかもしれないが、鈴木は一直線に押し込もうとして阻まれる。こぼれ球を拾ったMF伊東純也のシュートも、相手GKに阻まれた。

 テレビに釘付けで観ている当方にとって、瞬時、瞬時の相手ゴールキーパーの神業的運動神経に、悔しさ7分だが感嘆せざるを得なかった。この間〆て十数分くらいか、終わってみればこの時間帯が眠気も冷めて、テレビにかじりついていたことになる。

 後日(19日)サッカージャーナリスト中山淳さんの談を読むと、ウ~ンとうなってしまった。

 前半の25分前後のシーン。

 伊東に激しいチャージを受けた相手15番は、ホイスッルが鳴ると、伊東の胸を手で押して威嚇、その後レフェリーは二人を呼び、特に伊東に注意をうながした。

 その2分後、今度は逆サイドで鈴木がジャンプしながらチャージした場面で、ファールを受けた相手2番が、立ち上がろうとした鈴木の背中を両手で押して威嚇。危険なチャージをした鈴木にはイエローカードが提示された。

 メキシコにとって苦しい時間帯の出来事、「親善試合では怪我の危険性のある激しいファールはするな!」のアピールで、日本側はそれから大人しい守備に一変されてしまった。

 これが、それ以降メキシコがボールを握ってリズムを取り戻した要因のひとつであり、メキシコ選手たちのしたたかさと経験値を示した、と指摘されている。          

                                           オシムさんも「前半25分以降、日本の        

チャンスが途切れたのは、メキシコがや     (写真あり)

り方を変えてきたからだ」と話されている。

 

 前半の終わりころから霧が立ちこみ始め、後半からは赤いボールが使用された。

 写真は日本サッカー協会提供のもので

後半戦の終わりに近いシーンだが、テレビの画面ではこれほどはっきりとは見えなかった。選手たちにはこの程度の感覚で見えていたのだろうか、テレビでは突然選手が現れたり、消えてしまったり。

 もちろん監督やベンチの指示も見えなかったに違いない。

 メキシコは後半12分と18分にシュートとドリブルで2-0とし、そのまま押し切った。

 

 今年の親善試合はこれで終わった。

 一勝一敗二分け、強い相手FIFA11位のメキシコとはやはり力の差が歴然としていた。

 仮に前半に得点が入っていても、後半では押し切られて負けていただろうというのが大方の見方だがオシムさんも含めいまの日本に不足するのは、選手とチームの「自主的判断力」との指摘が多い。

 オシムさんはつぎのようにアドバイスされている。

 「ベンチの指示を待たずに、選手同士が話し合い、対応できるようになってほしい。ベンチからの声は満員のスタジアムでは聞こえない。相手が変化してきた場合、選手こそが相手の最も近いところにいるのだから、自分たちで意見交換して修正しなければならない。そういう能力や習慣を身につけてもらいたい。日本人のもっとも苦手な分野であると知っているからこそ、あえて言っておきたい」

 

 霧の中から飛んでくる赤いボールは、サッカーボールだけとは限らない。

 オシムさんのアドバイスには、もっと深い意味が込められているのかもしれない。

 

         (2020年12月2日 記) 霧の中から