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徒然(つれづれ)中国(ちゅうごく) 其之九拾五

2016-03-07 15:47:20 | はらだおさむ氏コーナー
どこから、読むか・・・

 
一昨年末出版した小著『「徒然中国」~みてきた半世紀の中国』は、一篇平均三千字ほどのコラムをまとめたもので、内容的に「第一部 あのとき・あのころ」「第二部 旅に出て・・・」「第三部 映像の世界」と分類していたが、それぞれは執筆の時系列に編集していた。
ある読者は「自分の日誌を読み返しているよう」と時系列的にはじめから読んでいただいたようだが、旅の話や映画についての感想を述べた方や「はじめに」と目次だけを見て、あとでゆっくり読ませていただきます、とのメールをいただいた方もあった。
この本は残念ながら書店の店頭には積み上げられず、主としてオンライン・ショップか取り寄せのかたちで読者の手に届いているようだが、著者としてはどこから読んでいただいてもありがたい、それぞれのコラムが読みきり、となっている。

いま北京在住二十余年の日本人専家・山田晃三さんの『北京彷徨1989-2015』(みずのわ出版)を手にして、今度は読者としてこの本に面している。
著者の山田さんについては、四年前の『徒然中国』四拾九号「みずのわ放送局」でつぎのようにご紹介している。
「山田さんはすでに北京滞在二十年、中国人社会の『中国語圏』のなかで生活しておられる。この『みずのわ放送局』は一回が数千字、キチッとテーマを掘り下げて、政治の難しいテーマも双方の理解のプロセスを明らかにして説得力がある。とりわけその映画時評は、裏話も含めて興味がそそられる」
この本はサイト「みずのわ放送局」で連載されていたものを軸に書き下ろしを含めてまとめられたもので、わたしの『徒然中国』の読者でこのサイトをその後も熱心に読み続けて来られたひともおられる。それはこの本の序章「中国人の心は統計や数字では測れない」で書かれている「・・・中国に長く暮らせば中国を語れるというわけではない・・・中国を理解したければ中国人のものさしで考えることが欠かせない・・・客人の立場で中国と接していては、本当の中国は見えてこない」とする著者の姿勢に共鳴されているからであろう。

昨秋 駅前の図書館でコーラス仲間のKさんとぱったり出会った。
立ち話のあと、勇を鼓してわたしの本を紹介した。前作『ひねもすチャイナ 徒然中国』は中国関連の書棚にあるが、こんどの『徒然中国』はなぜか
 「日本のエッセイ」のところにおかれている。Kさんに中国がらみのエッセイになるんでしょうかねぇ~といいながら、書棚から取り出してページを繰った。かれは、わたしとわたしの手元にある本を見比べながら、いま借りている本を読み終えたら、読ましてもらいます、と語った。
  先日 コーラスの練習が終わった帰り道、Kさんはあの本は正月に息子たちといい酒のサカナにさしてもらいましたよ、と話し出した。なんでも、奥さんに湯冷めしますよ、といわれながら毎夜わたしの本を1~2話ずつ読みついで来られていたらしい。その薀蓄が、息子さんたちとの正月の酒のサカナになった、というのだ。うれしい、話であった。

いま、わたしは自分流で、山田さんの本に面している。
目次と序章、終章「飛躍する中国、彷徨う中国」は、すでに読んだ。
各篇は、わたしのものより字数は倍以上あるが、年度別になっている。
直近の、昨2015年は、三つの話題が取り上げられている。
「第31景 日中首脳会談とメンツ―国内問題が直結する対日政策」
「第32景 爆買いから考える日中関係―爆買いしなければならない国内事情」
「第33景 戦勝七十周年記念式典―抗日の国際化を狙う中国」
  「爆買い」のレポート執筆は、昨年の四月である。
その話題の対象は、昨年の春節の時期となる。
コラム「中国で爆買いはどう報じられたか」を読むと、春節前の国営・政府系メディアの現象面の報道がネット上の議論をよび、三月の全人代における李克強首相の「政府活動報告」、モノづくりの質の向上へとの政策転換に至る、その過程が詳細に綴られている。
そして、このレポートの結語とも言うべきコラム「爆買いが日中関係を変える」で紹介されている中国人観光客の意識の変化のさまざま、その重要性を山田さんは、つぎのように指摘している。
  「いま中国では、戦後の日中関係の歴史を覆すほどの変化が静かに始まっている。一方の私たちはどうだろうか。爆買いの表層的な現象を追うだけではなく、もっと深く中国を考え理解する努力が今こそ求められている、と私は感じている」。同感である。

  さぁ、つぎはどこを読むか、と目次をひろっている。
  2013年には「陝北遊記」と題するレポートが三本あるが、次の楽しみに残しておこう。
  詳しくはhttp://d.hatena.ne.jp/mizunowa/ をご覧下さい。

  最後に、この本の出版元「みずのわ出版」にふれておきたい。
  同社は、わたしの好きな民俗学者宮本常一のふるさと・周防大島にある。
 まだ訪れたことはないが、宮本常一の随想を読みながら何度かネットでこの島を周遊したことがある。「みずのわ出版」も当然、宮本常一の本や関連の写真集などを出版している。出版社の代表と著者の山田さんは高校時代の朋友とか、何かの縁(えにし)を覚える次第である。
                (2016年2月16日 記)






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