
「演習 伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ):日本機械学会」
内容
同名のテキストの内容に沿った演習書。A4版160ページで2008年に刊行。
伝熱工学は,熱伝導、対流伝熱、ふく射伝熱といった熱の移動形態とその熱移動速度を論ずるものです。例えば、ヒートポン プに代表されるように、熱力学が常に平衡状態(平衡になるまで十分な時間を考慮した状態)に基づいてその原理を提供しているのに対して、伝熱工学は実際に 単位時間当たりに輸送される熱量を考慮してヒートポンプの大きさを設計する実学であるといえます。そこで、既刊のテキストシリーズ「伝熱工学」に引き続い て、例題と練習問題を充実させた本書「演習 伝熱工学」を発刊することになりました。
執筆に際し、各章の各節ごとに重要な項目をコンパクトにまとめ、その考え方を理解するための例題を各節ごとに取り入れました。また、各章末の練習問題で は、基礎的な問題からやや複雑な問題まで、その章の理解度を試すための内容となっており、巻末には詳細な解答例を用意しました。したがって、実際の機器を 設計する技術者や大学院生の参考書としても使用できる内容となっています。本書には、学部学生にとって若干高度な内容も含まれていますが、全てを理解する 必要はありません。学部の講義に使う場合の使用法は、1・2節に述べてあります。
今まで伝熱工学ではあまり触れられなかった、実用機器に即した例題や英語の練習問題、さらに日本の学生や技術者が得意でなかった、伝熱現象のモデル化と 実用機器設計の応用例(8章)など、新たな試みもテキスト「伝熱工学」と同様に本書でも取り入れました
内容詳細:http://www.jsme.or.jp/publish/txt09e.htm
理数系書籍のレビュー記事は本書で216冊目。
「伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ):日本機械学会」で学んだ知識を確実なものとするために演習書のほうも読んでみた。演習書は章立てだけでなく「節」のレベルまでテキストと同じになるように構成されている。
第1章:概論
第2章:伝導伝熱
第3章:対流熱伝達
第4章:ふく射伝熱
第5章:相変化を伴う伝熱
第6章:物質伝達
第7章:伝熱の応用と伝熱機器
第8章:伝熱問題のモデル化と設計
テキストのほうの紹介記事で書いたように、章立てを見ていただくだけでわかるように伝熱工学で扱う熱伝達のあり様は幅広い。第3章の対流熱伝達ひとつとってみても、流れが「層流」なのか「乱流」であるのか、また流れるのが気体なのか液体なのか、流れる物質は何なのか、流れが自然に発生する対流なのか強制的に流れをおこして熱伝達を行うのか、板の周りを流れるのか、それとも管の中の流れを考えているのかなど、状況はさまざまで計算方法は多岐に渡っている。さらに沸騰や凝縮など相変化を伴う伝熱については計算パターンの複雑さはいっそう増している。
量子力学がそうであったように、伝熱工学も非常に数多くの科学者たちの地道な研究と実験の積み重ねによって少しずつその理論体系、実用的な計算方法が確立されて現在に至っているということがよく理解できた。
以下の「自然対流のケースの放熱量を求める問題」にあるように「分数のべき乗」を含んだ理論式が天下り的に与えられていたり、経験式で近似するなど、この程度の厚さの入門書では解説しきれない専門的な内容も伝熱工学の計算には必要だ。
また宇宙物理学などの分野では恒星や惑星の表面の温度や宇宙空間とのエネルギーの収支、天体内部の対流や熱輸送を計算する問題もあるだろう。それは熱伝導と対流熱伝達、ふく射伝熱、相変化を含む複雑なものになると思う。このような問題は本書など伝熱工学の入門書には触れられていないが、物理学、熱力学だけでは解決できない伝熱工学的な素養も必要だと思う。そのような問題をコンピュータでシミュレーションするにしても計算に必要な「伝熱モデル」はあらかじめ人間が与えなければならないわけだから。物理学の専門家を目指しているとしても、伝熱工学の素養は大切だと思った。工学系の人たちだけのものにしておくのはもったいない。
テキストだけでは伝えきれなかった実際の現場で遭遇するさまざまな状況を問題として提示し、どのような公式をどのように使うかについて解説し、解答に至る道筋を示している。試験対策書という目的を超え、きわめて実用的な本だと思った。
僕自身、試験を受けるつもりもなく、伝熱工学の専門家になるつもりもないが、この本1冊あればたいていの場合間に合うのではないかと思った。
唯一、このテキストと演習書でカバーされていないのはコンピュータ・シミュレーションを必要とするような固体や流体の3次元熱伝導の問題くらいだと思う。これについては専門書や専門のパッケージ・ソフトを頼るしかないのだろう。
実際の問題を見ていただければ、本書がどのようなレベルであるかがわかると思う。3つほど紹介しておこう。
1)自然対流のケースの放熱量を求める問題

2)空冷されているPCの部品の表面温度を求める問題


3)PC筐体内を冷却するために流す空気の流量を求める問題

テキストと演習書をお求めになる方はこちらからどうぞ。
「伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ):日本機械学会」(紹介記事)
「演習 伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ):日本機械学会」

関連ページ:
伝熱工学講義ノート(筑波大学、阿部研究室)
http://www.kz.tsukuba.ac.jp/~abe/ohp.html
伝熱工学講義ノート(埼玉工業大学、小西研究室)
http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/Lecture/HeatTransfer/HeatTransfer_6thAll.pdf
伝熱工学問題集(埼玉工業大学、小西研究室)
http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/Lecture/HeatTransfer/HeatTransferQuestions_6th.pdf
Webラーニングプラザ:熱工学(工業熱力学と伝熱学)の内容
http://weblearningplaza.jst.go.jp/cgi-bin/user/top.pl?next=lesson_list&type=simple&field_code=31&course_code=452
Excelによる伝熱工学
http://chemeng.in.coocan.jp/ExcelCe/exhc.html
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「演習 伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ):日本機械学会」

第1章 概論/1・1 伝熱とは/1・2 本書の使用法/1・3 熱輸送とその様式/1・4 伝導伝熱/1・5 対流熱伝達/1・6 ふく射伝達/1・7 熱力学と伝熱との関係/1・8 単位・物性値・有効数字
第2章 伝導伝熱/2・1 熱伝導の基礎/2・2 定常熱伝導/2・3 非定常熱伝導
第3章 対流熱伝達/3・ 1 対流熱伝達の概要/3・2 対流熱伝達の基礎方程式/3・3 管内流の層流強制対流/3・4 物体まわりの強制対流層流熱伝達/3・5 乱流熱伝達の概要/3・6 強制対流乱流熱伝達/3・7 自然対流熱伝達
第4章 ふく射伝熱/4・1 ふく射伝熱の基礎過程/4・2 黒体放射/4・3 実在面のふく射特性/4・4 ふく射熱交換の基礎/4・5 黒体面間および灰色面間のふく射伝熱/4・6 ガスふく射
第5章 相変化を伴う伝熱/5・ 1 相変化と伝熱/5・2 相変化の熱力学/5・3 沸騰伝熱の特徴/5・4 核沸騰/5・5 プール沸騰の限界熱流束/5・6 膜沸騰/5・7 流動沸騰/5・8 融解・凝固を伴う伝熱
第6章 物質伝達/6・1 混合物と物質伝達/6・2 物質拡散/6・3 物質伝達の支配方程式/6・4 対流物質伝達/6・5 一次元定常拡散/6・6 非定常拡散
第7章 伝熱の応用と伝熱機器/7・ 1 熱交換器の基礎/7・2 熱交換器の設計法/7・3 電子機器の冷却
第8章 伝熱問題のモデル化と設計
索引(日本語・英語)
内容
同名のテキストの内容に沿った演習書。A4版160ページで2008年に刊行。
伝熱工学は,熱伝導、対流伝熱、ふく射伝熱といった熱の移動形態とその熱移動速度を論ずるものです。例えば、ヒートポン プに代表されるように、熱力学が常に平衡状態(平衡になるまで十分な時間を考慮した状態)に基づいてその原理を提供しているのに対して、伝熱工学は実際に 単位時間当たりに輸送される熱量を考慮してヒートポンプの大きさを設計する実学であるといえます。そこで、既刊のテキストシリーズ「伝熱工学」に引き続い て、例題と練習問題を充実させた本書「演習 伝熱工学」を発刊することになりました。
執筆に際し、各章の各節ごとに重要な項目をコンパクトにまとめ、その考え方を理解するための例題を各節ごとに取り入れました。また、各章末の練習問題で は、基礎的な問題からやや複雑な問題まで、その章の理解度を試すための内容となっており、巻末には詳細な解答例を用意しました。したがって、実際の機器を 設計する技術者や大学院生の参考書としても使用できる内容となっています。本書には、学部学生にとって若干高度な内容も含まれていますが、全てを理解する 必要はありません。学部の講義に使う場合の使用法は、1・2節に述べてあります。
今まで伝熱工学ではあまり触れられなかった、実用機器に即した例題や英語の練習問題、さらに日本の学生や技術者が得意でなかった、伝熱現象のモデル化と 実用機器設計の応用例(8章)など、新たな試みもテキスト「伝熱工学」と同様に本書でも取り入れました
内容詳細:http://www.jsme.or.jp/publish/txt09e.htm
理数系書籍のレビュー記事は本書で216冊目。
「伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ):日本機械学会」で学んだ知識を確実なものとするために演習書のほうも読んでみた。演習書は章立てだけでなく「節」のレベルまでテキストと同じになるように構成されている。
第1章:概論
第2章:伝導伝熱
第3章:対流熱伝達
第4章:ふく射伝熱
第5章:相変化を伴う伝熱
第6章:物質伝達
第7章:伝熱の応用と伝熱機器
第8章:伝熱問題のモデル化と設計
テキストのほうの紹介記事で書いたように、章立てを見ていただくだけでわかるように伝熱工学で扱う熱伝達のあり様は幅広い。第3章の対流熱伝達ひとつとってみても、流れが「層流」なのか「乱流」であるのか、また流れるのが気体なのか液体なのか、流れる物質は何なのか、流れが自然に発生する対流なのか強制的に流れをおこして熱伝達を行うのか、板の周りを流れるのか、それとも管の中の流れを考えているのかなど、状況はさまざまで計算方法は多岐に渡っている。さらに沸騰や凝縮など相変化を伴う伝熱については計算パターンの複雑さはいっそう増している。
量子力学がそうであったように、伝熱工学も非常に数多くの科学者たちの地道な研究と実験の積み重ねによって少しずつその理論体系、実用的な計算方法が確立されて現在に至っているということがよく理解できた。
以下の「自然対流のケースの放熱量を求める問題」にあるように「分数のべき乗」を含んだ理論式が天下り的に与えられていたり、経験式で近似するなど、この程度の厚さの入門書では解説しきれない専門的な内容も伝熱工学の計算には必要だ。
また宇宙物理学などの分野では恒星や惑星の表面の温度や宇宙空間とのエネルギーの収支、天体内部の対流や熱輸送を計算する問題もあるだろう。それは熱伝導と対流熱伝達、ふく射伝熱、相変化を含む複雑なものになると思う。このような問題は本書など伝熱工学の入門書には触れられていないが、物理学、熱力学だけでは解決できない伝熱工学的な素養も必要だと思う。そのような問題をコンピュータでシミュレーションするにしても計算に必要な「伝熱モデル」はあらかじめ人間が与えなければならないわけだから。物理学の専門家を目指しているとしても、伝熱工学の素養は大切だと思った。工学系の人たちだけのものにしておくのはもったいない。
テキストだけでは伝えきれなかった実際の現場で遭遇するさまざまな状況を問題として提示し、どのような公式をどのように使うかについて解説し、解答に至る道筋を示している。試験対策書という目的を超え、きわめて実用的な本だと思った。
僕自身、試験を受けるつもりもなく、伝熱工学の専門家になるつもりもないが、この本1冊あればたいていの場合間に合うのではないかと思った。
唯一、このテキストと演習書でカバーされていないのはコンピュータ・シミュレーションを必要とするような固体や流体の3次元熱伝導の問題くらいだと思う。これについては専門書や専門のパッケージ・ソフトを頼るしかないのだろう。
実際の問題を見ていただければ、本書がどのようなレベルであるかがわかると思う。3つほど紹介しておこう。
1)自然対流のケースの放熱量を求める問題

2)空冷されているPCの部品の表面温度を求める問題


3)PC筐体内を冷却するために流す空気の流量を求める問題

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「伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ):日本機械学会」(紹介記事)
「演習 伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ):日本機械学会」


関連ページ:
伝熱工学講義ノート(筑波大学、阿部研究室)
http://www.kz.tsukuba.ac.jp/~abe/ohp.html
伝熱工学講義ノート(埼玉工業大学、小西研究室)
http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/Lecture/HeatTransfer/HeatTransfer_6thAll.pdf
伝熱工学問題集(埼玉工業大学、小西研究室)
http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/Lecture/HeatTransfer/HeatTransferQuestions_6th.pdf
Webラーニングプラザ:熱工学(工業熱力学と伝熱学)の内容
http://weblearningplaza.jst.go.jp/cgi-bin/user/top.pl?next=lesson_list&type=simple&field_code=31&course_code=452
Excelによる伝熱工学
http://chemeng.in.coocan.jp/ExcelCe/exhc.html
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「演習 伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ):日本機械学会」

第1章 概論/1・1 伝熱とは/1・2 本書の使用法/1・3 熱輸送とその様式/1・4 伝導伝熱/1・5 対流熱伝達/1・6 ふく射伝達/1・7 熱力学と伝熱との関係/1・8 単位・物性値・有効数字
第2章 伝導伝熱/2・1 熱伝導の基礎/2・2 定常熱伝導/2・3 非定常熱伝導
第3章 対流熱伝達/3・ 1 対流熱伝達の概要/3・2 対流熱伝達の基礎方程式/3・3 管内流の層流強制対流/3・4 物体まわりの強制対流層流熱伝達/3・5 乱流熱伝達の概要/3・6 強制対流乱流熱伝達/3・7 自然対流熱伝達
第4章 ふく射伝熱/4・1 ふく射伝熱の基礎過程/4・2 黒体放射/4・3 実在面のふく射特性/4・4 ふく射熱交換の基礎/4・5 黒体面間および灰色面間のふく射伝熱/4・6 ガスふく射
第5章 相変化を伴う伝熱/5・ 1 相変化と伝熱/5・2 相変化の熱力学/5・3 沸騰伝熱の特徴/5・4 核沸騰/5・5 プール沸騰の限界熱流束/5・6 膜沸騰/5・7 流動沸騰/5・8 融解・凝固を伴う伝熱
第6章 物質伝達/6・1 混合物と物質伝達/6・2 物質拡散/6・3 物質伝達の支配方程式/6・4 対流物質伝達/6・5 一次元定常拡散/6・6 非定常拡散
第7章 伝熱の応用と伝熱機器/7・ 1 熱交換器の基礎/7・2 熱交換器の設計法/7・3 電子機器の冷却
第8章 伝熱問題のモデル化と設計
索引(日本語・英語)