明日がはじまるとき

事業仕分け 議論の向こうに明日がある

統計調査の問題 神奈川県職員研修で

2010-12-14 | 事業仕分け

神奈川県職員の「政策評価」研修に、講師として行って来ました。
8月にも同じ内容で別の職員に実施しましたが、
幸いにもなんとか合格の評価をいただいたようで、
再度のオファーとなりました。

さて、その研修の中で模擬事業仕分けを実施しましたが、
その対象となったものの1つに
「毎月勤労統計調査」があります。
この「統計」については、その実施方法や活用などについて、
いつも気になっていました。

この毎月勤労統計調査の概要は・・・
統計法に基づく基幹統計で、雇用、給与及び労働時間について
毎月の神奈川県における変動を明らかにすることを目的としています。

調査対象は、厚生労働大臣の指定する事業所で、
常時5~29人の常用労働者を雇用する事業所のうち、約600事業所
常時30人以上の常用労働者を雇用する事業所のうち、約800事業所
計1,400事業所について調査を行っています。

調査事項は
性別常用労働者・パートタイム労働者の労働時間
(早出、残業、休日の出勤なども)や
異動状況(解雇、退職、転勤など)や出勤日数、
給与(超過、深夜、休日など)等です。

職員の説明では、調査提出率の向上を目的にしており(?!)、
集めることが目的化しているようでした。

また、質疑では、1,400事業所の提出率が上がらない理由や、
効果的な提出方法を議論していましたが、
事業所に提出するメリットがない、とか
手間がかかって大変だとか、およそ統計の趣旨から離れた
議論になっていました。

世論調査やアンケートを行う場合にも、この統計調査と同様の
問題があると思いますが。
ず、母数について。この数字を押さえるべきという大前提は、
とかく忘れられがちなのです。
県内にいったい何箇所の事業所があって、そのうち
このサンプル数はどのくらいの割合なのでしょうか。
(実際は1%に満たない数でした)
データの信頼性を問うなら、提出率の向上よりも、
サンプルを増やしたほうがよいのですが、
そういう発想がなかなか出てきません。
多分、現行の仕組みが絶対だ、という認識から
抜け出ていないため、新しい発想がないのでしょう。

いたずらに、オンライン提出にしたらどうか、とか、
調査員の顔の見える対応をすべきだとか、
小手先の対応だけ考えていても始まりません。

この調査は、その前身を含めると大正12年から
始まっているものだそうですが、そんなに長期間
やっているにもかかわらず、提出率が向上しないのは
メリットが感じられない事業所の不理解もあり、
うちの事業所の1つくらい提出しなくても
影響ないだろう、という発想なのでしょうか。

 

そもそも、こういった公的統計は、
国民にとって合理的な意思決定を行うための
基盤となる重要な情報なのですから、この経済指標を活用し、
政策の拠り所にしたり、課題解決に反映させることが
重要なのでしょう。

かなりの税金をかけて日本中が実施している
「基幹統計」について、ぜひ私たち国民は協力し
良いデータを提供したいものですし、
政府や地方自治体が大いに活用することはもちろんですが、
収集された統計は2次利用のためにも、
早期の開示や使いやすい項目設定など、
工夫の余地が大変多いと思っています。

もはや統計は行政だけのものではなく、
社会全体で活用するための共有財産なのですから。


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