明日がはじまるとき

事業仕分け 議論の向こうに明日がある

松阪市その2  松阪方式の事業仕分け

2012-08-09 | 事業仕分け

 松阪市は、対象事業に直接利害関係がある者を説明者として同席させるという「松阪方式」を採っています。この方式には賛否両論がありますが、私は、その手段の「使い手次第」で、良くくも悪くもなってしまうんだと思っています。 

 事業仕分けを実施するに当たって、市民への説明責任が大事とは言うものの、直接顔を合わせていない市民に対しては職員も緊張感が生まれないでしょう。しかし、松阪方式なら、利害関係者(補助金団体の長など)が真横にいるので、いい加減な説明はできない、と十分な準備をして臨もうと必死になるようです。
 また、利害関係者からもより現場感のあるコメントがいただけることは大変なメリットです。

 しかし一方で、職員が説明すべき事項まで利害関係者にマイクを渡してしまうなど、責任を転嫁してしまうように感じた場面もありました。さらに、利害関係者は補助金を確保したいからか感情論な意見になってしまう場面などもありました。そのためか、市民判定人をミスリードするおそれを抱いた方もいたようです。

 私は3年間コーディネーターとして参加いたしましたが、市民判定人には仕分け前の打ち合わせの際に、「個別事情だけで判断せず全体を見ること」の重要性や、「感情論は温かいハートで受け止めつつ、判断はクールな理論から導いてほしい」とお話しています。

 3年経験した感想は、総じて「市民はわかっている」ということです。

 今回、構想日本仕分け人の判断と、市民判定人の判断が異なったのは1日目は9事業中1事業、2日目は10事業中5事業となりました。そのうち3事業は、松阪牛の生産出荷にかかるもので、関連する3事業を1時間で仕分けたため、議論が散逸し、また内容も難しかったので、市民判定人の理解が十分でなかったかもしれません。
仕分け人から、「2事業をやめてでも、1事業に集中したら効果が上がるのではないか」、というアドバイスもありましたが、市民の皆さんのコメントからは「松阪牛事業はこのまま手をつけないでほしい」という思いが見え隠れしていました。

 次に、市の取組み姿勢ですが、松阪市ほど市長たちが本気を出しているところは少ないと思います。
市長と両副市長は、2日間の日程のほとんどを傍聴されていました。こんな自治体はめったにお目にかかれません。さらには質疑中に市長が後ろから手を上げ、事業説明の補足に加わったりもしました。
 ただし、なかには「傍聴者は質問ができないのに、なぜ市長に発言させるのだ」とお怒りの方もいましたが、この指摘はちょっと違うんです。
 市長は意見を言ったのではなく、説明をしただけですし、そもそも、市長とは法人を統轄し代表する立場にあり、事務を管理し執行する権限を有しています。執行者として事務の説明をするのは当該課長に限らず、担当者でも部長でも、もちろん違う部署の方でも良いわけで、代表者である市長が説明するのもまったく問題ないのです。
事業の説明をしていただく目的は、「事業の理解が深まること」なのですから。

 市長たちは、「松阪市役所全体で事業仕分けに取り組む」という積極的な姿勢を終始見せていただきました。
 さらに驚いたことに、市長、副市長や幹部職員等は、前日遅くまで、直々に対象事業の担当課とともに、事業の論点等について勉強されたということです。

 このように、事業仕分けをパフォーマンスで片付けず、中身の濃いものにしようとする姿、積極的なかかわりには、毎年のことながら頭が下がる思いです。
また、終了後には、お礼の手紙をいただきましたが、おざなりでなく、反省の言葉もきちんと入った改革の意思が表れた内容でした。

このような自治体には、日程を調整してでも参加したくなりますね。

松阪牛の事業はとても興味深かったです。
でも、長くなったので、この次に。なるべく早く報告しますね


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