BLOG 思い遥か

日々新たなり/日本語学2020

20190225 進化する経済

2019-02-25 | 日々新た


文章論 まじない食


[2:00]
文化
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まじない食 地域と交わる
豆腐・団子・ナス…素朴な祈りとの結びつき探訪 吉野りり花
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12月8日に豆腐を食べると、1年間についた嘘が帳消しになる。そんな「うそつき豆腐」という風習が鳥取市河原町にある。以前は各世帯でやっていたが、2015年に私が訪れたときには伝統行事として保存する目的もあり、同町の歴史民俗資料館が主催していた。

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埼玉県狭山市の「なすとっかえ」はナスを載せた神輿が練り歩く

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□ ○ ●
「縁起食」日本各地に
うそつき豆腐のように、素朴な祈りと結びついた食べ物は日本各地にある。「縁起食」「儀礼食」と呼ばれるものだ。親しみやすいように、それらを「まじない食」と名付け、実際に現地を訪ね歩いている。
鳥取市で迎えてくれたのは「民俗行事を語る会」の皆さん。囲炉裏で焼いた豆腐にユズ味噌をかけて食すると、素朴なおいしさが口中に広がる。
うそつき豆腐のルーツは、京都の呉服店から始まった「誓文払い」らしい。商人らが四条京極の官者殿に参拝し、商売上ついた嘘を許してもらう代わりに、商品を安売りするというものだ。鳥取では、なぜ豆腐を食べる風習に変わったのかはよくわかっていない。
「呉服店のまかないとして豆腐田楽をよく食べていたことが関係しているかもしれない」と教えてくれたのは、同会会長の谷幸彦さん。江戸初期の藩主、池田光仲が「倹約のために豆腐を食べるべし」と命じたことから、鳥取には豆腐を使った様々な伝統料理があるという。
まじない食に興味をもつきっかけは大学時代、東京都内の神社で巫女(みこ)のアルバイトを始めたこと。最も印象深かったのが神前に供える神饌(しんせん)の準備だった。神社では毎朝、旬の野菜や果実、お神酒、米を土器(かわらけ)に入れたものなどを神前に上げる。食べ慣れている食材が特別なものに変わったような瞬間だった。
□ ○ ●
五穀豊穣や厄よけ
取材のため初めて訪れたのは岩手県遠野市。民俗学の大家、柳田国男の「遠野物語」で知られる当地では、小正月の1月15日に様々な伝統行事が行われる。ミズキの枝に赤、青、黄という色とりどりの団子をつける「ミズキ団子」は五穀豊穣(ほうじょう)を願っており、県内の他地域でも見られるようだ。
遠野にはほかにも、アズキ団子をカラスに放つことで厄よけを祈る「カラスよばり」など、様々な小正月行事がある。
その一つ「畑まき」は日本版ハロウィーンのようだ。子供たちは家々をめぐり「恵方から畑まきにやってきました。まかせますか」といった意味の歌を合唱する。各家々は「まかせます」と言って、お礼にお菓子の詰まった袋を渡す。
福岡市東区奈多に伝わる早魚(はやま)神事も印象深い。11月19~20日に志式神社で開かれる「奈多くんち」の行事で、24歳と25歳の青年の中から、くじで選ばれた6人が2組に分かれ、大きなタイを調理する早さを競う。素早くさばき、切り取ったヒレを早く神前にお供えした方が勝ちとなる。
周りを取り囲む古老たちから「ぬかるな!」といった声が飛び交い、必死でタイを切り分ける。熱気と終えた後の自信に満ちた表情は忘れがたい。切り身は安産のお守りとして氏子に配られる。
埼玉県狭山市の入間川諏訪神社で8月26日前後の土日に行われる「なすとっかえ」もユニークだ。住民が育てたナスを神社に持っていくと「龍神様のナス」と取り換えてもらうことができ、調理して食べると夏の毒消しになるというものである。
神社裏手の底なし沼に住んでいた龍神が、村人が投げたナスを食べたところ、病が治ったとの伝承に基づくという。巨大なナスの模型が載ったおみこしを子供たちが担ぎ、住宅街を練り歩く姿もほほ笑ましい。
□ ○ ●
後継者不足の行事も
千葉県館山市の十二所神社で2月19~21日に開かれるお祭りでは、山のように積んだサトイモを神饌として供える。狭山のナスもそうだが、各地方の名産品がまじない食となることが多い。
毎回緊張しながら現地を訪れるが、皆さんが優しく受け入れてくださるのがうれしかった。旅の様子を「日本まじない食図鑑」(青弓社)として出版し、自分のホームページでも紹介している。
まじない食は日本の食文化の豊かさを示す一つだと思うが、中には後継者不足で継続が危ぶまれている行事もあると聞く。その存在を少しでも大勢の人に知ってもらえるように探訪と紹介を続けていきたい。(よしの・りりか=ライター)

日経新聞見出しより
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20190225

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