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読書とかいろいろ日記

読書日記を中心に、日々のあれこれを綴ります。

第466号 『犯罪』

2011年10月02日 | メルマガお奨め本
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週刊 お奨め本
2011年10月2発行 第466号
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『犯罪』 フェルデナント・フォン・シーラッハ(酒寄進一・訳)
¥1,800+税 東京創元社 2011/6/15発行
ISBN978-4-488-01336-3
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先週に続いてミステリの紹介です。
といっても、趣がぜんぜん違う。


著者、フェルデナント・フォン・シーラッハはドイツの現役の刑事弁護士。
本書が処女作。
実際の事件から着想した物語、とのこと。
11篇収録の短編集。


なにしろ11篇収録ということで、一篇あたりは短い。
いちばん短い「愛情」なんて9ページしかない。
いちばん長くて「サマータイム」の32ページ。
それでどんな話が書けるのか?


弁護士の「私」が遭遇する11の事件。
なのだけど、語り手はラストにちらりと顔を出すだけだったり。
ミステリ小説ではあるけれど、謎解きがテーマではないし、リーガルものでもなく、異常心理ものもあるけれど、愉快な話もあれば、思わず涙する感動話も。
短いなかに意外なエピソードが溢れ、バラエティに富んでいる。




「フェーナー氏」
24歳のフェーナー氏は、パーティで三歳年上のイングリットに出会った。
イングリットは床上手で、パーティの二日後にそれを知ったフェーナー氏は彼女にのぼせあがり、一週間後にはプロポーズした。
「あたしを捨てないと誓って!」新婚旅行先で迫られたフェーナー氏は、真剣に誓いを立てた。そして囚われの日々が始まった。72歳のある日…。



「幸運」
娼婦の客が、心臓発作を起こして死んだ。
イリーナは密入国者だった。母国で戦争が起き、兵士たちに兄を殺された上に輪姦されたイリーナは自殺を図るも果たせず、ドイツへと逃げてきたのだった。
途方にくれたイリーナが住まいを飛び出したあと、彼女と暮らしているカレが死体を見つけた。このままではイリーナが刑務所へ入れられてしまう。なんとかしなければ。カレは死体をばらばらにして…。



「緑」
羊の連続殺害事件。殺された羊たちは目玉がえぐられていた。伯爵家の御曹司フィリップがやったことだ。
血まみれのナイフを持ったフィリップが保護されて、彼の部屋から眼球の入った葉巻ケースが発見された。ケースのふたの裏側にはザビーネの写真が貼ってあった。ザビーネは行方不明だ。女友だちのところへ行くといって消息を断っている。
「人間や動物が数字に見えるんだよ」……



「棘」
フェルトマイヤーは私立古代博物館の警備員に応募し、採用された。
警備員たちは、六週間に一度いくつかある私立博物館のあいだで配置転換される。
ところが手違いからフェルトマイヤーはそのローテーションから漏れてしまった。
来る日も来る日も彼は同じホールを警備し続けた。彼は変わった。音に耐えられなくなり、テレビを見なくなった。色に耐えられなくなり絵を捨てた。家具を捨て、食器を捨て、壁紙をはがし、じゅうたんを剥がした。部屋は空っぽになった。
そしてひとつの彫刻にこだわりはじめた。「棘を抜く少年」。……



巻末に収録されている「エチオピアの男」は心やさしき銀行強盗の話。泣きました。
「チェロ」は厳格な父親に抑圧されて育った姉弟を描き、ラストが悲しい。
犯罪者一家に育った末弟のカリムが証人喚問で兄たちを救う「ハリネズミ」。
「サマータイム」はいちばんミステリっぽいミステリで、「愛情」はカニバリズムを扱って猟奇的になる手前。


どの作品がお気に召すか、読者しだい。
ストーリーのキモは事件ではなく、描かれる「人間」なのだ。


翻訳モノが苦手という人にもおススメです。



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犯罪
フェルディナント・フォン・シーラッハ
東京創元社

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