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続・MBAへの道

MBA卒業後の徒然を書き綴ってみようと思います。

組織能力について

2014年04月20日 22時57分24秒 | 人事組織
前回の記事の中で「組織能力」という言葉を使いました。「組織能力」。なんとなく語感から意味は伝わるのですが、ちゃんとした定義があるのかと言えば結構曖昧な言葉だと思います。経営学や組織論といった分野の中でもちゃんと定義されているかは疑問です。でも、個人的にはこの「組織能力」こそが企業の戦略の実現を左右する重要な要因の1つだと思っています。じゃぁ、「組織能力」って何なのでしょうか?。

私の個人的な理解では、組織における仕事の仕方や人々の振る舞い方、意思決定の仕方などに埋め込まれた、その組織特有の組織成果に繋がる行動様式、のようなものではないかと思っています。という風に書くと、組織文化や組織風土に近い感じもしますが、より組織成果の達成という観点が含まれている理解です。少し短期的な議論を含むイメージとも言えるでしょうか。組織能力を獲得した結果、それが組織風土に繋がっていく。そういう関係性はあると思います。

例えば、ルートセールスを中心に既存顧客との関係性を深めていく営業組織と、新規開拓を中心に新規顧客との関係性を築いていく営業組織では求められる組織能力は全く異なります。また前者であっても、正確なオペレーションで信頼を獲得するのか、迅速かつ柔軟な対応で信頼を獲得するのか、では必要な組織能力は違うように思います。同様に、同じ後者の組織であっても、顧客接点を広げて多数の見込顧客の中からターゲットを絞るのか、最初にかなり絞ったターゲットを徹底して攻めるのか、で必要な組織能力は違います。

要は、至極当たり前なのですが、その企業が取る戦略に応じて必要な組織能力は変わるということです。その意味で、短期的に戦略が変わるならば、新たな組織能力を獲得、構築する必要があるということでもあります。このとき重要なのは、個人のスキルや能力の変化や獲得とは必ずしも同じではないということです。例えば、英語が堪能な社員が増えても、それによって組織の成果に繋がる人々の行動が変化しない限りは組織能力とは言えません。仕事の仕方や手続き、プロセス、判断軸といった組織全体の行動まで落ちる必要があると思っています。

という話を、実務レベルで上手く展開できないかなぁと思っているのですが。

最近のお題

2014年04月12日 22時57分04秒 | 人事組織
自社が将来にむけて必要になるコンピテンシーと、現在持っているコンピテンシーのギャップを明らかにして、それを埋める対策を検討せよ。最近、そんなお題をいただきました。人事として当然に考えるべきテーマのようにも思いますが、一方でこの問いが色々な意味を含んでいるので難しいなぁと感じる次第でもあります。

コンピテンシー。この言葉をどのような意味で使っているのか。以前このブログでも1つテーマとして取り上げて記事を書いたことがあります。その時もいくつか定義は紹介しましたが、例えば、「高いレベルの業務成果を生み出す特徴的な行動特性」(グロービス編『MBA人材マネジメント』ダイヤモンド社)というのが分かりやすいでしょうか。保有してる「潜在能力」ではなく行動特性としての「発揮能力」だとも言われます。まぁ人材開発系の方であれば、似たような認識はお持ちだと思います。

でも、冒頭のお題には必ずしもそれだけではないニュアンスが含まれています。そもそもコンピテンシーとは「個人」に紐づく概念ですが、「自社が」という時点でそれは「組織」に紐づく概念であることが分かります。となると、特定の「誰」ではなく、不特定多数の「組織」が持つ行動特性という話かもしれません。私はそれはコンピテンシーとは区別して「組織能力」と呼んでいます。組織の「コアコンピタンス」という言い方もありますし、それが組織の「DNA」だという考え方もありそうですが。

また、色々な人に話を聞いて見ると、実は「スキル」「経験」といった話も結構混じっています。それが個人の話であれば「能力開発」や「キャリアパス」の話ですし、組織の話であればスキルや経験に基づく「スキル/経験マップ」や「人材ポートフォリオ」の話です。

ということで冒頭のお題についてもどんな切り口で考えるべきか、一筋縄ではいかないので難しいなぁと感じているという話です。もちろん理想は全ての観点で現在と将来のギャップをどう埋めるかの人材戦略が描けている状態なんでしょうけれど…。あんまり考えていても仕方ないので、まずはできることから手をつけていきたいと思います。

「人事の仕事」と「人事部の仕事」

2014年02月16日 12時05分44秒 | 人事組織
年度替りに向けて、人事異動とか組織編成とか、ヒトと組織に関わる色々な動きがあるのはどこの会社も同じでしょうか。中期計画を踏まえて事業計画・事業戦略を練り、予算を固めて組織を編成し、ヒトの配置を固めていく。最近では環境変化が早く年度単位の動きでは事業サイクルと合わなかったりするので、年に一度の大イベント的な動きだけでなく、年度の区切りに関係なくもっと早いサイクルでヒトや組織の動きが検討される、なんてことも多いのではないかと想像します。

なんてことを書きながら、ここ数年、色々思うことがあるのは、「人事の仕事」と「人事部の仕事」をちゃんと分けて考えねばということです。上記のような事業サイクルの中で検討されるヒトや組織の話はまさに「人事の仕事」の一部です。経営陣とラインマネジャー、現場リーダーとの間の対話の中で、まさに事業とセットでヒトと組織をどうするか、ということが語られていきます。一方で、「人事部の仕事」とは何か。本来的にはそうした「人事の仕事」が上手く回るようにルールや仕組みを作ること、ではないかと思います。就業規則や評価報酬制度を整えてみたり、異動や採用の調整をしたり、まぁ多くの人が想像する通りです。

元々の会社の成り立ちを考えてみると、会社が立ち上がったばかりの頃に独立した人事部門を持っている会社なんてありません。それが事業の成長と共に組織がある程度の規模になってくると、「人事の仕事」を専門的にやることの効率性や優位性が出てきます。それを組織的に定義して機能を独立させたのが人事部です。という意味では、「人事の仕事」はヒトと組織がある限り必ず存在するけれども、「人事部の仕事」が必ず必要かと言うと、本来はそうではないかもしれない、ということです。

似たような話ですが、「人事の問題=人事部の問題」かというと、それも違います。本来は「人事の問題=経営/事業の問題」であるはずです。でも、どこかで人事部も問題にすり替わっていたりします。なんてことを考えたとき、改めて「人事の仕事」「人事部の仕事」って何だっけ?と考えてみる必要もあるのではと感じるこの頃でした。

性格スキル

2014年01月26日 00時38分58秒 | 人事組織
今回は、1月20日(月)の日経新聞の経済教室「就業支援は「性格力」重視で」の記事に遅ればせながら反応してみました。慶大の鶴教授の記事ですが、ポイントの欄には「学力より性格が職業人生に大きな影響」「性格スキルは成年期以降も向上が可能」「企業外の訓練より職業実習で高い成果」と書かれていました。

就業力を考える際にスキルに注目するとした時、シカゴ大学のヘックマン教授の研究ではいわゆる学力のような認知能力(=認知スキル)と個人的な形質としての非認知能力(=性格スキル)のうち、後者の影響、その中でも「真面目さ」が職業人生にかなり大きな影響を与えているとのことです。で、その時、性格スキルは必ずしも先天的なものでは無く、仕事を通じて向上させることが可能だという点がポイントです。

ただ、本文中にも書いてありますが、複雑な仕事になると性格スキル以上に認知スキルの影響が大きくなるそうです。また、失業者や低賃金労働者にとっては性格スキルがより重要だが、熟練労働者や高賃金の人は認知スキルの影響が大きいということです。

つまり、この記事では「仕事を得る」という点に関して考えると、従来の職業訓練的なものよりも、「真面目に働く」「一緒に働く」という性格スキルの向上を考える必要があるのでは?ということを仰られている理解です。

で、私が反応したのは、研究成果は確かに上記のとおりなのだとしても、実際に人事の仕事をしている実感値としては、より上位層の方でも「性格スキル」の方が重要なのでは?と思うことが多いからです。「仕事はできるけど性格が…」という話は良く聞きますが、その人が本当に仕事ができるのか、もちろん、突き抜けて仕事ができる人が必ずしも性格的にいい人ではないことも多々ありますが、通常組織で仕事をしていることを考えると、性格スキルが弱くていい仕事ができるようには思えないのです。これは人間関係を重視する日本企業をベースに考えるからでしょうかね?。

もう1つ、これが後天的に訓練して獲得可能だとすれば、失業者向けの職業訓練という話ではなく、企業内の一般的な育成プログラムにこそ織り込めないか?と思った次第です。昨年の組織開発の話ではないですが、関係性の質を高めるために「性格スキル」って重要では?と思えるからです。

人材開発と組織開発の間

2013年12月31日 03時25分02秒 | 人事組織
人材開発と組織開発の間、というテーマで1年間色々と書いてみました。個人にフォーカスし、認知や学習などその内面からアプローチするのが人材開発だとすれば、組織にフォーカスし、個人と他者や組織との関係性という外面からアプローチするのが組織開発だという話だったかと思います。その両者はどこで繋がってくるのか。人材開発を内面の変化と考えましたが、内面の変化を促す上で、外部との関係性が切り離せないものだとすれば、外部との関係性そのものの質の向上が組織開発であり、その結果影響を受ける内面の変化が人材開発だという捉え方も成り立つかもしれません。

別の言い方をするならば、内と外の接点、端的にはコミュニケーションというのが分かりやすいかもしれませんが、ヒトとヒトとの接点に起きる様々な相互作用の効果を内に向けて設計するか、外に向けて設計するか、というアプローチの違いだということかもしれません。

その意味では、人材開発も組織開発も全く別々のモノと考えるべきではないのだと思います。ただ、歴史的環境的な背景もあって、人材開発の方が組織開発より馴染みがある、ということだと考えられます。ここから未来に向かってどうなるか、恐らくグローバル化や多様性の要請から、組織の中で意図的に関係性の質向上に取り組む組織開発的なアプローチの重要性が増すのではないか、そんな風に思うわけです。

では、この流れに取り組む主体は誰なのか。人事部門なのか。必ずしもそうではないように思います。人事の仕事と、人事部門の仕事は必ずしも同じではありません。人事部門は人事の仕事の一部を専門的に担うだけであって、本来人事の仕事は現場のマネジメントの仕事です。つまりは、人材開発も組織開発も基本は現場のマネジャーが主体的に取り組むべきテーマであって、それをうまくできるようにサポートするのが人事部門の仕事、という話ではないかと思います。

何を言いたかったのか良く分からなくなってきましたが、人材開発や組織開発って何のかを色々と考えていただき、それを現場が主体となって実行できるようになれば個人も組織ももう少し強くなれそうな気がする、という話で締めたいと思います。

いったん、まとめ

2013年12月22日 20時23分05秒 | 人事組織
「AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)」や「フューチャーサーチ」などホールシステムアプローチをベーつの考え方にした組織開発手法はほかにもあります。これらも先に紹介した本に概要は説明がありますので、興味のある方は読んでみるといいかと思います。言葉の意味は分かりにくいですが、ホールシステムアプローチが全てのベースにありますので、「関係者全員を集め」「ダイアログを通じ」新たな関係性を作りだしていくための方法論だと理解しています。

いずれにせよ、前回の最後でも書きましたが、新しい手法だから効果抜群であるとか、従来型のアプローチではダメだとか、そういう話ではありません。「関係性の質を高めるために意図して行う活動のこと」という私なりの勝手な定義に照らし合わせるならば、いわゆる「飲みニケーション」だって意図に対する効果が明確であれば、立派な組織開発手法と言えるでしょう。という意味で、手法そのものは本質的な問題ではありません。

私が重要だと思うのは、組織を構成する様々な要素間の関係性に注目し、そこに意図的に介入して変化を起こそうとする姿勢や視点そのものです。機能別でも事業部制でもチーム型でもなんでも良いですが、組織を上手く作れば勝手に機能する、というものでもないです。もう一歩踏み込んで、人間関係を意識しながら人の配置やチーム編成を考える、ぐらいはする必要があるし、やっている組織も多い気がしています。さらに踏み込むならば、そうして出来た組織の中で、どの関係性を重視し、どの関係性に注目して、その関係性の質を高めるために誰を巻き込んで、どんなアプローチをして、そこでの会話なり行動なりをどう変えていくか、までやれればベストです。

もちろん、今の日本企業の中でそこまでやるのは現実的ではないのですが、今後ますます組織の構成が多様化していく中では、いずれそうしたことを組織のリーダーが自ら考えないといけない日が来るでしょうし、それをいち早く予見して人事やスタッフがそうした仕事の仕方を身につけていく必要があると思います。

オープンスペーステクノロジー

2013年12月15日 02時38分20秒 | 人事組織
オープンスペーステクノロジー(OST)。この名称から何を想像されるか分かりませんが、前回紹介したワールドカフェ同様に、OSTもまたホールシステムアプローチをベースにした組織開発手法=関係性の質を高める手法の1つです。大勢の人が上手く対話をするための仕掛け、ぐらいにイメージされた方が良いかもしれません。

これも。『ホールシステムアプローチ』(大川恒・香取一昭/日本経済新聞出版社)をベースに紹介しますが、具体的な進め方は以下の通りです。スタートは参加者全員が丸くなって座りサークルを作ります。その日に討議したいテーマを持っている人は誰でも自主的にサークルの中央でテーマを紙に書き発表します。いくつかテーマが集まったら、討議の時間と場所を決め、他の参加者はどのテーマの議論に参加するか自主的に決めます。このとき、参加したいテーマがなければ無理に参加しなくても良いですし、議論の途中で他のテーマに移ることも自由です。この討議を繰り返していき、最後はもう一度皆で集まって、参加者から今後の活動に繋がるプロジェクトを提案してもらいます。プロジェクトの優先順位も皆で決めます。最後に皆で感想など共有して終了です。

話し合いのテーマを主催者の誰かが決めるのでもなく、討議の時間配分や進行を誰かが仕切るのでもなく、どのテーマに誰が参加するかの割り振りが決まっているわけでもなく、参加者が自ら主体的に提案し、行動し、関わり合って場を作っていくところが最大のポイントです。従来型の会議とは全く発想やアプローチが異なるので想像すら難しいかもしれません。

ワールドカフェもそうですが、勘違いしてはいけないのは、これらの手法が従来型よりも絶対的に優れている方法ではないという点です。答えが見えにくい複雑な課題に対して、複数の関係者が主体的に参加し、プロセスに置いて関係性の質を高めながら、方向を導き出していくような場合は効果的です。一方で、迅速な意思決定や明確な答えが決まっている課題への対応にはあまり向きません。あくまで組織開発=関係性の質を高めるための手法の1つであって、問題解決や意思決定の手法ではないからです。このあたりが組織開発の難しいところかもしれません。

ワールドカフェ

2013年12月08日 01時41分25秒 | 人事組織
ワールドカフェ。名前は聞いたことがある人はいらっしゃるかもしれません。最近少しずつ普及し始めている感触はありますが、いかがでしょうか。参加したことがあれば具体的なイメージも湧くと思います。前回紹介した著書の中には次のように紹介されています。「カフェのようにリラックスできる環境の中でテーマに集中した話し合いを重ねることにより、多用なアイディアを結びつけ、深い相互理解や新しい知識を生み出す会話の手法」とのことです。イメージ湧きますか?

標準的な方法は次のようなになります。まず4-6人を1テーブルにし提示されたテーマについてダイアログをします。20-30分経ったらテーブルに1人残して、残りの人は他のテーブルに移りアイディアの繋がりを意識しながらダイアログを続けます。そして20-30分経過したらまた元のデーブルに戻って他のテーブルでのアイディアを統合しながらダイアログを続けます。最後は全体で得られた気付きや発見の共有をして終了です。

ワールドカフェ。多いと1000人とかでやる場合もあるとか。この方法がなぜ関係性の質の向上に役立つのでしょうか。カフェのようなリラックスした空間を作ること、少人数で会話を交わすこと、模造紙に落書きするなど会話を可視化すること、移動しながらアイディアの交換をすること、などがポイントだと解説されています。でも、一番大切なのは「テーマ(=問い)」かもしれません。参加者が主体的に話し合いたいと思う「問い」が用意されることが、個々の会話の質を高め、ダイアログを成立させるキーになると思います。

実際にやってみてどうか。私も個人的に何回か参加したことがありますが、正直な感想では「難しいな」という感触です。形式上は上記のとおりの形で行われているのですが、本当に質の高いダイアログが成立したかは疑問です。不完全燃焼の感覚が残ったという方がいいでしょうか。でも、1つのテーブルで話をしているだけなのに、会話が全体に広がっていく、その感覚はとても興味深いものでした。詳しいやり方は様々なHPに紹介があります。とても手軽で簡単なので、興味があれば研究して試してみるといいかもしれません。

ホールシステムアプローチ

2013年12月01日 16時52分38秒 | 人事組織
さて、ここまでは現在組織の中で行われている様々な活動を組織開発的な視点で捉えるてみるとどうか、という視点で書いてきました。で、残りは最近少しずつ話題が出始めている組織開発のアプローチについて簡単にご紹介してきましょう。聞き慣れない言葉もありますが、基本的には関係性の質を高める方法論だという点は変わりません。

ホールシステムアプローチ。最も基本的な考え方がこれです。『ホールシステムアプローチ』(大川恒・香取一昭/日本経済新聞出版社)によれば、「できるだけ多くの関係者が集まって自分たちの課題や目指したい未来などについて話し合う大規模な会話の手法の総称」と定義されます。より複雑化する組織や社会の課題に対し、限られた一部のリーダーや専門家に委ねてももはや問題解決が難しくなってきている現状を受けて、それらの課題に関係する利害関係者をできるだけ多く巻き込んで対話(ダイアログ)の場を設定し、合意形成を生み出そうという試みだと理解しています。

要は、みんなで集まって質の高い話し合いをすることでみんなの関係性の質を変えていきましょう、という話です。この背景には、この社会が人々が交わす会話は言葉によって社会が成り立っているという社会構成主義の考え方がベースにあります。逆に言えば、社会を変えていくには、そこで交わされる会話や言葉の質を変えていかねば、という解釈にもなりますよね。だからこそ、質の高い対話=ダイアログが重要になります。

ダイアログとは。これも紹介した著書の中で「立場や見解の違いを超えて、テーマに意識を集中し、話し合いのプロセスに注意を向けながら探求を深めることにより、集合知を生み出す会話の手法」と解説があります。相互に批判しあって論破して勝ち負けを決めるディスカッションとも違えば、対立を避け本音も明かさずに取りとめもなく話をする雑談とも違うとも書かれています。特定のテーマについて真剣に対話する、それが新しい社会(=すなわち関係性)を生み出す源泉だということです。

でもそんなこと上手くできるわけがない。ましてや大勢集まって。というときにいくつか方法論がある、というのがホールシステムアプローチにまつわるいくつかの具体的な手法になります。

例えば、組織設計

2013年11月23日 01時57分23秒 | 人事組織
組織設計。組織デザイン。これらを組織開発の範疇で述べて良いものかどうか分かりませんが、組織開発が組織の中の関係性の質の向上を扱う領域だと定義した以上、そもそもの組織をどう作るかというテーマもまた組織開発の領域の1つと考えるのはそれほど変ではない気がします。

機能別組織。事業部制組織。マトリクス組織。チーム型組織。組織論としては色々な組織形態がありますが、組織開発の視点からすると、組織形態そのものよりは、組織内部にどういう関係性を構築するかというポイントが非常に重要になってくるように思います。というときに、組織設計の基本が何かという話ですが、『組織デザイン』(沼上幹/日経文庫)では「「組織を設計する」という作業は、分業を設計し、人々の活動が時間的・空間的に調整されたものになるよう工夫を施すことであり、そのようにして出来上がった分業と調整手段のパターンが組織デザインである」とあります。分業と調整の設計。これが基本です。そのために必要なのが責任と権限の設計であり、KPIと評価の設計にも繋がってきます。

という風に書きましたが、日本企業では分業と調整の観点で業務の設計をするというよりは、そもそもヒトとヒトとの関係をベースに業務の設計をすることが多いように思います。だからあまり関係性の向上という意味での組織開発が求められないという話だったのですが、これって逆に考えてみるとどうでしょうね。つまり、関係性ベースで組織設計がなされていると仮定して、その関係性を良くするために、あえて分業と調整という機能の観点で組織を見直してみる。別の言い方をすると、ヒトに張り付いたり、ヒトとヒトのしがらみが関係性の質向上を阻害しているならば、本来の機能性の観点からそれらの関係性を一度整理してみてはどうか。そういう話です。

組織開発というと組織内部の関係性を作る方向に考えたくなるのですが、一方で「壊す」という行為も時に重要になってくる気がします。その1つの観点として、機能性の観点から、合理的な判断に基づいて、既存の関係性を壊す、というのもアリではないかと思うわけです。

例えば、異動配置

2013年11月17日 03時22分37秒 | 人事組織
異動配置。いわゆる人事異動です。一般的な日本企業では新卒総合職で一括採用された人材が、人事異動を通じて様々な部署や職種を経験しながら育成されていきます。もう少し会社視点で考えると、人材の雇用に対して雇用義務が生じ簡単に解雇もできませんので、事業環境の変化に合わせて社内で柔軟に人の異動配置を行うことは戦略上当然に必要となります。という意味では、異動配置は人材開発的な側面と、資源の最適配分という側面とが強いように思います。

なのですが、組織の中で人材の流動化を図り、ヒトとヒトとの関係を変化させるという意味においては、関係性の質向上という組織開発の視点で語られても良いのではないかと思います。もちろん、人間関係の悪い部門に介入して人事異動を行い組織を立て直すと言ったことは企業であれば普通にやっていることでしょう。日本企業の場合は、機能ベースではなく、ヒトベースで組織を組み立てますから、本来の機能を考えたときのベスト人事があったとしても、それが人間関係上難しいと判断すれば、その人事が行われないということも普通にあると思います。

組織やチームの構成メンバーの入れ替えを通じて直接関係性の質に介入する。考えてみれば結構強力なツールですよね。誰にその組織を任せるか、リーダーの下に誰を入れるか。いわゆる人事権が人事部にあろうが、現場にあろうが、これが結構悩ましい問題ですし、関心の高い問題でもあります。一番難しいのは、関係性の質をどこまで事前に設計できるかどうか、でしょうか。ヒトとヒトの相性、ヒトと仕事の相性、そんなことも死ぬほど考えるわけですが、その通り上手くいくことがどれだけあるか。という風に考えると、異動配置は関係性の質を変化させる強力な武器ですが、必ずしも関係性の質を向上させる武器になるかどうかは分からないということです。

ということで、通常の組織開発という文脈においては、すでに存在する組織やチームを前提にその中での関係性の質向上を考えるわけですが、組織やチームそのものの枠組みを変える意味で、異動配置も広い意味での組織開発に含められるように思います。

例えば、リーダーシップ開発

2013年11月10日 00時43分24秒 | 人事組織
リーダーシップ。組織の中での関係性の質向上という文脈で組織開発を考える場合、組織内でのプロトコルや組織のベクトルを生み出していくリーダーの存在は欠かせないものです。なので、リーダーシップ開発もまた、組織開発の中の極めて重要な要素と言えるでしょう。一方で、リーダーシップは個人の能力や資質に大きく依存するものでもあり、リーダーシップ開発は人材開発の色合いも非常に濃い領域だと思います。まさに、人材開発と組織開発の間、と表現するのが適切な領域だと思います。

リーダーシップ開発を人材開発ではなく、あえて組織開発の面から考えるとどんな風に捉える事が出来るでしょうか。関係性の質向上という話が個人と個人の関係、個人と組織の関係で起こるとした時、組織全体で関係性の質が向上していく1つの形として、例えばリーダーシップの発揮のスタイルであったり、リーダーシップに期待される効果であったりが、ある程度の共通性を持っている状態、というのは考えられます。うちの会社でのリーダー要件、リーダーへの期待といったものが分かりやすいかもですね。

組織としてのリーダーシップ。それぞれのリーダーが持つ個性とは別に、組織としてリーダーに共通に期待する行動特性、思考特性といったものをどう作っていくか。リーダーシップにおけるプロトコル、ベクトルの創造という話と置き換えても良いかもしれません。それをある程度意図的に生み出していく活動、それがあるとすれば、それを組織開発という風に言って良いかと思います。

どんなイメージでしょうね。いわゆるリーダー対象の社内集合研修のようなものは分かりやすい方法です。前回の360度評価も、そこで何を評価するか、どんな項目を設定するか、という点で組織としてのリーダーシップ開発には良く使われるツールです。ただ、最も効果的なのは、一貫した判断とフィードバック(FB)の繰り返しなのではないかと思います。上位者がある特定の文脈の中で、何らかの軸や考え方、基準やルールに基づいて一貫した判断を下す。それを下位者にきちんとFBする。それが組織の中でのリーダーの行動特性や思考特性を方向づける上では大切ではないかと思っています。

例えば、360度評価

2013年11月03日 23時49分15秒 | 人事組織
360度評価。会社の中で自分が評価される側だとか、誰かを評価しただとか、何かしら関わった経験のある方も多いのではないでしょうか。労政時報のWebサイト「Jin-Jour」の記事によると、日本での導入率は15%程度だとのことです。大手企業で30%弱、一方米国の大手企業では90%近い導入率という話も紹介されています。単純に言えば、部下が上司を評価する仕組みのことです。もちろん、360度ですから、部下だけではなく、直属の上司やナナメの上位者、同僚や仕事の関係者、場合によっては社外の取引先などの評価も入る場合があります。いずれにせよ、通常の上司からの評価だけではなく、様々な人が評価しフィードバックする仕組みです。

様々な関係者から複数の異なる視点でフィードバックが得られる。それが本人に気付きを促し、行動の改善や成長に繋がる。そんな効果を期待して導入される場合が多いようです。この効果だけ考えるなら、360度評価は個人に気付きと成長の機会を与えるための人材開発のツールと捉える事が出来ます。一方で、集まってくる情報やフィードバックを1つの材料として、そこから周囲とのコミュニケーションを変えていく、のような狙いまで広げれば組織開発のツールとしても機能します。もちろん、前者の話であっても、組織における関係者との間での行動の変化を期待する以上、それは関係性の質向上に繋がる意味で、組織開発の動きになるわけですが。

で、組織開発の視点を重視した時、大切なのは評価結果を本人にフィードバックすること以上に、そこから周囲との関係性を変える動きに繋げていく部分です。例えば、評価結果を上司と本人の両方にフィードバックし、その結果について対話の機会を設定するとか。全ての部下の結果を並べてみて、上司がその上の上司と組織の状況や人の育成について話し合う機会を作るとか。フィードバックを受けた本人が行動計画を立てて、部下やチームのメンバーと話し合うとか。なんでもいいんだと思いますが、フィードバックして終わりではなく、組織の中の関係性の質向上につなげること。これが組織開発の観点ではとても重要です。


例えば、ワークショップ

2013年10月27日 01時06分18秒 | 人事組織
ワークショップという言葉を聞いたことはあるでしょうか。企業だと、問題解決のワークショップとか、ビジョン策定のワークショップとか、チームビルディングのワークショップとか、いくつもパターンはあるように思いますが、どこかで出会っている方も少なくないのではないかと思います。ファシリテーション、研修、アクションラーニングと紹介してきましたが、ワークショップもそれらと関係の深い組織開発の手法と位置付けることができると思います。

ワークショップ。定義は色々ありそうですが、「主体的に参加したメンバーが協働体験を通じて創造と学習を生み出す場」(『ワークショップ入門』堀公俊/日経文庫)とか、「講義など一方的な知識伝達のスタイルではなく、参加者が自ら参加・体験して協働で何かを学びあったり創り出したりする学びと創造のスタイル」(『ワークショップ』中野民夫/岩波新書)のような定義がなされます。共通するキーワードは「主体的」「参加・体験」「協働」「創造」「学習」のあたりですね。

後者の中野氏の著書にはワークショップの要点が5つ紹介されています。①ワークショップに先生はいない②「お客さん」でいることはできない③初めから決まった答えなどない④頭が動き、身体も動く⑤交流と笑いがある。どうでしょうか。複数の人がグループとして集まって、何らかのテーマに対し、楽しく交わりながら、何かを生み出そうとする。そんなイメージができるのではないでしょうか。

ワークショップは組織開発、すなわち関係性の質向上の手法の1つです。課題解決の出口が見つからない時、組織の向かう方向が分からない時、チームワークが良くない時、突破口を見つける1つの機会になる場合があります。しかし、ワークショップが組織開発として上手く機能するには、ワークショップに参加するメンバーの中での関係性の質向上が重要です。ただ人が集まってワイワイ話し合おうというだけでは効果が得られません。どんなメンバーを、どんな場所に集めて、どんなプログラムを組み、どうファシリテートするか。そこに関係性の質を高める仕掛けを埋め込むこと。具体的な手法は専門書に譲りますが、これが大切です。

例えば、アクションラーニング

2013年10月20日 21時23分26秒 | 人事組織
アクションラーニング。この言葉を聞いたことがある方はどのくらいいるでしょうか。人材開発とか組織開発の世界にいる方なら少なくともどこかで耳にしたことはあるかもしれません。熱心な会社で社内に広く展開したりしていると、一般社員でも実際にやってみた経験があったりするでしょう。リーダーシップ開発の場面ではよく使われるようなので、管理職向けの研修や選抜型の研修の1つとして出会ったことのある方もいらっしゃるかもしれません。

アクションラーニング。日本アクションラーニング協会のHPで紹介されている定義は以下の通りです。「グループで現実の問題に対処し、その解決策を立案・実施していく過程で生じる、実際の行動とそのリフレクション(振り返り)を通じて、個人、そしてグループ・組織の学習する力を養成するチーム学習法」。イメージ湧きますでしょうか。誤解を恐れずに簡潔な表現を使うならば、「みんなで実際の問題を解決しながら学ぶ」ということです。実際の行動(アクション)を通じて学ぶ(ラーニング)ということです。

具体的に解決したいテーマを設定します。関係者が集まりアクションラーニングをスタートします。質問を軸にした対話を通じて問題の本質を掘り下げていき共有します。次回までのアクションを決定します。参加者は現場に戻り、実際に課題に対するアクションを起こします。次に集まった時に、そのアクションの報告共有から始めます。で、また質問を軸にした対話で問題を掘り下げていきます。という感じでサイクルがぐるぐる回るのですが、そのプロセスで個人個人は深い気付きを得ると同時に、組織やチームとして課題認識やプロトコル・ベクトルの共有がなされます。

これ以上の詳細は、専門のコンサルや研修会社、書籍に譲りましょう。前回、Off-JTとして仕事の場を離れた研修を取り上げましたが、仕事と直接関係する形で、しかもお互いに関係する組織やチーム単位で課題に取り組むという意味で、通常の研修よりはより直接的に組織開発に繋がるアクションラーニングという領域があるということをご紹介しました。