続・MBAへの道

MBA卒業後の徒然を書き綴ってみようと思います。

例えば、組織設計

2013年11月23日 01時57分23秒 | 人事組織
組織設計。組織デザイン。これらを組織開発の範疇で述べて良いものかどうか分かりませんが、組織開発が組織の中の関係性の質の向上を扱う領域だと定義した以上、そもそもの組織をどう作るかというテーマもまた組織開発の領域の1つと考えるのはそれほど変ではない気がします。

機能別組織。事業部制組織。マトリクス組織。チーム型組織。組織論としては色々な組織形態がありますが、組織開発の視点からすると、組織形態そのものよりは、組織内部にどういう関係性を構築するかというポイントが非常に重要になってくるように思います。というときに、組織設計の基本が何かという話ですが、『組織デザイン』(沼上幹/日経文庫)では「「組織を設計する」という作業は、分業を設計し、人々の活動が時間的・空間的に調整されたものになるよう工夫を施すことであり、そのようにして出来上がった分業と調整手段のパターンが組織デザインである」とあります。分業と調整の設計。これが基本です。そのために必要なのが責任と権限の設計であり、KPIと評価の設計にも繋がってきます。

という風に書きましたが、日本企業では分業と調整の観点で業務の設計をするというよりは、そもそもヒトとヒトとの関係をベースに業務の設計をすることが多いように思います。だからあまり関係性の向上という意味での組織開発が求められないという話だったのですが、これって逆に考えてみるとどうでしょうね。つまり、関係性ベースで組織設計がなされていると仮定して、その関係性を良くするために、あえて分業と調整という機能の観点で組織を見直してみる。別の言い方をすると、ヒトに張り付いたり、ヒトとヒトのしがらみが関係性の質向上を阻害しているならば、本来の機能性の観点からそれらの関係性を一度整理してみてはどうか。そういう話です。

組織開発というと組織内部の関係性を作る方向に考えたくなるのですが、一方で「壊す」という行為も時に重要になってくる気がします。その1つの観点として、機能性の観点から、合理的な判断に基づいて、既存の関係性を壊す、というのもアリではないかと思うわけです。

例えば、異動配置

2013年11月17日 03時22分37秒 | 人事組織
異動配置。いわゆる人事異動です。一般的な日本企業では新卒総合職で一括採用された人材が、人事異動を通じて様々な部署や職種を経験しながら育成されていきます。もう少し会社視点で考えると、人材の雇用に対して雇用義務が生じ簡単に解雇もできませんので、事業環境の変化に合わせて社内で柔軟に人の異動配置を行うことは戦略上当然に必要となります。という意味では、異動配置は人材開発的な側面と、資源の最適配分という側面とが強いように思います。

なのですが、組織の中で人材の流動化を図り、ヒトとヒトとの関係を変化させるという意味においては、関係性の質向上という組織開発の視点で語られても良いのではないかと思います。もちろん、人間関係の悪い部門に介入して人事異動を行い組織を立て直すと言ったことは企業であれば普通にやっていることでしょう。日本企業の場合は、機能ベースではなく、ヒトベースで組織を組み立てますから、本来の機能を考えたときのベスト人事があったとしても、それが人間関係上難しいと判断すれば、その人事が行われないということも普通にあると思います。

組織やチームの構成メンバーの入れ替えを通じて直接関係性の質に介入する。考えてみれば結構強力なツールですよね。誰にその組織を任せるか、リーダーの下に誰を入れるか。いわゆる人事権が人事部にあろうが、現場にあろうが、これが結構悩ましい問題ですし、関心の高い問題でもあります。一番難しいのは、関係性の質をどこまで事前に設計できるかどうか、でしょうか。ヒトとヒトの相性、ヒトと仕事の相性、そんなことも死ぬほど考えるわけですが、その通り上手くいくことがどれだけあるか。という風に考えると、異動配置は関係性の質を変化させる強力な武器ですが、必ずしも関係性の質を向上させる武器になるかどうかは分からないということです。

ということで、通常の組織開発という文脈においては、すでに存在する組織やチームを前提にその中での関係性の質向上を考えるわけですが、組織やチームそのものの枠組みを変える意味で、異動配置も広い意味での組織開発に含められるように思います。

例えば、リーダーシップ開発

2013年11月10日 00時43分24秒 | 人事組織
リーダーシップ。組織の中での関係性の質向上という文脈で組織開発を考える場合、組織内でのプロトコルや組織のベクトルを生み出していくリーダーの存在は欠かせないものです。なので、リーダーシップ開発もまた、組織開発の中の極めて重要な要素と言えるでしょう。一方で、リーダーシップは個人の能力や資質に大きく依存するものでもあり、リーダーシップ開発は人材開発の色合いも非常に濃い領域だと思います。まさに、人材開発と組織開発の間、と表現するのが適切な領域だと思います。

リーダーシップ開発を人材開発ではなく、あえて組織開発の面から考えるとどんな風に捉える事が出来るでしょうか。関係性の質向上という話が個人と個人の関係、個人と組織の関係で起こるとした時、組織全体で関係性の質が向上していく1つの形として、例えばリーダーシップの発揮のスタイルであったり、リーダーシップに期待される効果であったりが、ある程度の共通性を持っている状態、というのは考えられます。うちの会社でのリーダー要件、リーダーへの期待といったものが分かりやすいかもですね。

組織としてのリーダーシップ。それぞれのリーダーが持つ個性とは別に、組織としてリーダーに共通に期待する行動特性、思考特性といったものをどう作っていくか。リーダーシップにおけるプロトコル、ベクトルの創造という話と置き換えても良いかもしれません。それをある程度意図的に生み出していく活動、それがあるとすれば、それを組織開発という風に言って良いかと思います。

どんなイメージでしょうね。いわゆるリーダー対象の社内集合研修のようなものは分かりやすい方法です。前回の360度評価も、そこで何を評価するか、どんな項目を設定するか、という点で組織としてのリーダーシップ開発には良く使われるツールです。ただ、最も効果的なのは、一貫した判断とフィードバック(FB)の繰り返しなのではないかと思います。上位者がある特定の文脈の中で、何らかの軸や考え方、基準やルールに基づいて一貫した判断を下す。それを下位者にきちんとFBする。それが組織の中でのリーダーの行動特性や思考特性を方向づける上では大切ではないかと思っています。

例えば、360度評価

2013年11月03日 23時49分15秒 | 人事組織
360度評価。会社の中で自分が評価される側だとか、誰かを評価しただとか、何かしら関わった経験のある方も多いのではないでしょうか。労政時報のWebサイト「Jin-Jour」の記事によると、日本での導入率は15%程度だとのことです。大手企業で30%弱、一方米国の大手企業では90%近い導入率という話も紹介されています。単純に言えば、部下が上司を評価する仕組みのことです。もちろん、360度ですから、部下だけではなく、直属の上司やナナメの上位者、同僚や仕事の関係者、場合によっては社外の取引先などの評価も入る場合があります。いずれにせよ、通常の上司からの評価だけではなく、様々な人が評価しフィードバックする仕組みです。

様々な関係者から複数の異なる視点でフィードバックが得られる。それが本人に気付きを促し、行動の改善や成長に繋がる。そんな効果を期待して導入される場合が多いようです。この効果だけ考えるなら、360度評価は個人に気付きと成長の機会を与えるための人材開発のツールと捉える事が出来ます。一方で、集まってくる情報やフィードバックを1つの材料として、そこから周囲とのコミュニケーションを変えていく、のような狙いまで広げれば組織開発のツールとしても機能します。もちろん、前者の話であっても、組織における関係者との間での行動の変化を期待する以上、それは関係性の質向上に繋がる意味で、組織開発の動きになるわけですが。

で、組織開発の視点を重視した時、大切なのは評価結果を本人にフィードバックすること以上に、そこから周囲との関係性を変える動きに繋げていく部分です。例えば、評価結果を上司と本人の両方にフィードバックし、その結果について対話の機会を設定するとか。全ての部下の結果を並べてみて、上司がその上の上司と組織の状況や人の育成について話し合う機会を作るとか。フィードバックを受けた本人が行動計画を立てて、部下やチームのメンバーと話し合うとか。なんでもいいんだと思いますが、フィードバックして終わりではなく、組織の中の関係性の質向上につなげること。これが組織開発の観点ではとても重要です。