一期一会・

宇宙と仏法のあり方についての洞察。人間の成仏。

メチタの海、第2章の始まり(四)市場駅焼失

2014-08-07 | web

 

母の危険を知らせる怒号に、壕に頭から飛び込んだ。其の瞬間、隣接の木村化学研究所の窓ガラスがバリバリと割れて飛び散る大きな音が壕の中まで聞こえてきた。

 レンガ工場は国鉄東海道線、京浜東北線、貨物輸送船が並列している沿線にあった。この辺りは沿線沿いに色々な工場が軒を並べていた。沿線の反対側にはビール工場もあった。木村化学研究所は何故か米軍の標的に会ったのである。

 ピンポイントで攻撃してきたのは東京湾沖の米航空母艦から発進してきた単発のP51という戦闘機であった。僕は木村化学研究の被災の確認に母の「一郎!止めな!殺されるよ!」の怒号を振り切って再び壕から這い出して隣のアスファルトの工場建屋を見ると工場のガラス窓は跡形も見えず黒く抜けて見えた。

 見上げた空は一瞬の間、静寂であった。しかしそれも束の間どでかい音がした、工場前の空き地の南の反対側に大きな火柱が上がった。B29が50kキロ爆弾を投下したのである。鈴木さんのおばあちゃんの家の前の畑らしい。後で聞いたのだが、その爆撃音で気が狂ってしまったと、母がいい言ったのを覚えている。