コニタス

書き留めておくほど重くはないけれど、忘れてしまうと悔いが残るような日々の想い。
気分の流れが見えるかな。

茶番劇

2011-01-26 23:46:47 | 
静岡大学地域連携協働センター公開シンポジウム
「地域と大学を結ぶ~教育・研究・地域連携の融合をめざして~」と言うのに参加してきた。

参加呼びかけの時から何となく感じていた不安が的中し、見事に茶番の道化を演じさせられた格好。
我ながら、いい加減学習しなきゃ、と猛省。

いずれにしても、発言させて貰えなかった分をここに書いておこうと思う。


ネガティブなことを書き連ねる前に言っておくと、もちろん、私は茶の世界という授業そのものは好きだ。やっていて愉しい。
そして、浜松の事例は、本当に組織だって継続的にやっていて素晴らしいと思う。
そう言うことが前提にあるからこそ、問題点をちゃんと議論して欲しかった。
私は自分の持ち時間の中で、「問題点については後半で話したい」、と言ったのに、司会(満井特任教授)が最後まで私に振らなかったのは、お手盛りの茶番で終わらせたかった見苦しい意図が透けて見える。
彦星先生も警戒されたのかな。
情けない。



終了後に、近くにいた協働センター長、柳澤理事が、「コニタセンセイに、浜松でも授業をやって欲しいな」と言うようなことをにこやかに仰る。
全く問題が解っていない。

浜松の担当教員達に質問したかったこと。
皆さんの「専門」は何ですか?
これらの「事業」は、授業ですか? それとも「ボランティア」ですか?

情報学部には地域連携推進室というのがあって、自由な地域連携を促進する窓口になっている由。
しかし、継続的に事を為すには、“核になるセンセイ”が必要だと。

今日の事例で名前の挙がった教員達は、“核”なんだろう。
そして、人文では私がその位置にいるらしい。


何度も書いていることだし、今日も言ったけれど、私が地域連携をしているのは、自分にとって面白そうなこと、知り合った人たちと愉しく学び合いたいということ、それだけが理由だ。その結果として、“地域の人”である友人達も楽しめればOK。大学の“地域貢献”に貢献しようなどとは微塵も思っていない。
世のため人のために学問を活かすのは素敵なことだと解っているけれど、私は自分の好奇心でしか動きたくない。
それが、大学の看板で動かされている。
もちろん、私が大学の看板を外してしまったら、誰も見向きもしないただの中年親爺だろうから、致し方ない。


それにしても、だ。
地域連携要員扱いはもうやめて欲しい。
もし、今後もこの手の企画に引っ張り出すなら、せめて言語文化学科の専任教員を一人増やして欲しい。
出来れば日文で。


浜松の教員に訊きたかったのは、“専門”の教育研究に影響がありませんか? ということだ。
私の専門は、もう自分でもすっかり忘れてしまったけれど、江戸時代のメディアと表現のはず。古い言い方をすれば“国文学”だ。
ところが、私はもう何年もそう言う研究をしていない。
専門の授業は10年以上前の研究を小出しにしているだけだから、自分で喋っていても面白くも何ともない。
これではゼミ生が付いてくるわけがない。

浜松の先生達は、専門の研究とリンクする事をやられているんだろうか。
もし、そうでないとすれば、私のような情けない状況になってはいないのだろうか。

これは、私一人、学者としての能力が欠如していると言うことで、全く一般化できないはなしなんだろうか。

人文学部には、かつて、小櫻先生、土居先生という地域と密接に結びついた名物教授がいたし、今は法学科の日詰先生がそう言う位置にいる。この人達は能力も素晴らしかったと思うけれど、専門領域と地域連携がリンクしていたのではないかと思う。


言語文化の教員が地域連携をしようと思ったら、専門とは別の形で関わらねばならなくなる。
これが一つの問題。


もうひとつ、かなり驚いたのは、情報意匠論のゲストとして来ていたテレビ静岡のプロデューサー氏が、プロに頼めば大金がかかるところを学生達に弁当程度でやって貰っているのは経済的にもありがたい、と言う発言をしたこと。
冗談には聞こえなかったし、司会もそれを取り消させなかった。

浜松の事例報告の中で、安い労働力と思われたら困る、と言う話が出ていたのに、こういう発言をするのは人格を疑う。

インターンシップや研修生が安い労働力と見なされる現実は何度も問題になっている。
そして、ここには、それだけではない問題がある。
まさか、学生の協力だけで番組が成り立つ訳がないのだけれど(むしろ手間は増えているはずだ)、もしも、こうした事例が“成功”して、どんどんこの手の“連携”が進んだとしたら、お互い良いことずくめに見える。
しかし、二者間で良くても、それによって、僅かでも悔しい思いをする人がいる、と言うことを想像できないのだろうか。

言語文化学科の外国語担当教師達は本当に優れた人が揃っている。
もし彼らが、地域のために多言語発信の手伝いをしましょう、と言うことになったら、大学にとっても、地域にとっても素晴らしい話だ。
しかし、そのことによって、地域で生活している翻訳のプロ達は、小さな市場を失うことになる。

私も最初からそのことに気づいていたわけではない。
SBS学苑の講師をしていた頃、大学の公開講座は無料にすればいいのに、と言う話をしたら、それは民業圧迫だ、と叱られて、はたと気づいた。

大学には力がある。
それを、地域のためだといって振りかざすと“被害者”が出るということ。
そんな大げさな、と言われるかも知れないけれど、地方都市に於ける国立大学の力の大きさは、意識していなければいかんと思う。

地域で働く専門家の仕事を奪うのではなく、そう言う人たちと競い合い、学びあう必要がある。




今日も、満員の会場を埋めていたのは授業の一環として参加した学生達ばかりだった。
“地域の人たち”も来ていたと言うけれど、ゲストとしてお願いした人以外に何人来ていたのか公表していただきたい。

私の、図書館のトークは全部で20人ほどしか入っていないけれど、その中の5人くらいは全くの部外者だったはずで、つまり、四分の一。
比較しても仕方ないことではあるけれど。


従って、あの場で大声を上げても外には全然伝わらないのだから、こうしてブログに書いた方がましなのかも知れない。

それにしても、生涯学習や地域連携について学び、この企画でもレポートが課されているらしい学生達に対して、良いところだけ並べ立てて、静大はよくやってる、と言って終わるのは詐欺的だ。

若い人たちに、大学の仕組みとして地域連携をすることが、どれほど学問や教育を歪めているのか、と言うこともちゃんと考えて欲しい。

そう言うチャンスを潰された。



昨年から“鞠水書屋”としての活動を具体化しているのは、大学組織としての地域連携から、個人連携の自由さを取り戻すための仕掛けだ。
もちろん、地域の仲間達は、私が“静大の先生”だからつきあってくれているのだし、予算も大学に請求する。
それでも、授業や大学の事業ではなく、個人としてイベントやさんでいればいいと思っている。
それについてくる学生がいれば、めいっぱい仕込むし、誰も付いてこなくても、それはそれで愉しいからいいのだ。


「静岡の文化」は来年度で終わりにしようと思っている。
前々から小出しに書いていたことだけれど、アッパレ会も、私の考えている物からは離れすぎたし、抜け時だと、今日、はっきり認識できたのは皮肉な収穫だった。



+++++++ここから追記(1/27)+++++++


昨晩の内に上の記事を読んだ方から、

組織としての地域連携ではなく“好きなこと”としてやっても結局専門の研究に割く時間は増えないのではないか、
そして、結果として連携になっているなら大学に協力しても良いのではないか、

と言うようなメールを戴きました。


確かにそうですね。
その論理は認めた上で、何で私はこんなに違和感を持ってしまうんだろう、と言うことを内省した方が良さそうだな、と思いました。
いま、うまく言葉に出来ないので、「我が侭だから」とひと言で片付けてしまいそうになりますが、現場にいると、私個人の資質の問題とばかりは言えない構造があるように思うんですが……。


一つは、専門外の授業が他の人より多い状態が恒常化していること。
これは言語文化学科の外国語を担当している教員と同じ悩みかも知れません。
それこそ、私の個人的資質の問題とすり替えないように注意しなければなりませんが、ゼミ生がずっとゼロなのは、学生達が私の専門に接する機会が少ないと言うことも一因ではないかと感じています。
担当する授業のコマ数を増やせばいいと言う問題でもないのです(質を保持できなくなるので)。
今年は「茶の世界」をやっていませんが、これで「静岡の文化」もやめれば日文の授業、特に、一年生向けの基礎論などを担当できます。

こういう現況を知らないまま、浜松でも、などと気軽に言って欲しくない。


大学のために、と言う意識が無くても結果的に地域連携になっているのだから、この手のイベントにも協力すれば、と言うのももっともな話で、実際、参加したわけです。
しかし、参加しても、良いことばかり並べ立てて、反省すべき事柄については取り上げない(実際には取り上げるような問いかけをしたのに意見が出なかったと言うまとめ方になりそうな気配も)。
こうやって、大学は良いことをやってるんだという事だけを記録して、困っている人たちは泣き寝入り状態でいるのはどうにも納得できない、という感じでしょうか。

うまく言えないので、このへんで。

あとはコメント欄で。




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 始まりました。 | トップ | これで満足するんですか。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事