農園への出動は単身赴任が通例である。家族の中で「農」に興味を持つものが、場合によっては非難をもものともせず農作業へ・・・・・というのが多いのかな。だが、中には家族総出での仲むつまじい光景も無いでは無い。「チームリーダー」の一家がその例で、時折家族そろっての農作業の姿が垣間見られる。彼は現職のビジネスマン、時間が取りにくいタイプだ。僅かに許された希少な時間を有効に使っている模様。今回もそうした事例のようで、遠目にチョコッと覗いてみようかと思う。
当主はどうやら竹を使った支柱作りのようだ。マメ科を筆頭に竹材を使用する例は多い。何かと工作時間が必要なのは他の仲間達も同じ事。日常茶飯事なのだ。奥方はブロッコリーの手入れか収穫の模様、専ら調理用の収穫がメインらしい。幼い子ども達は走り回りながら親達の動静を見守っているようだ。
家庭サービスという側面もあるのだろうが、リーダーのリーダーたる所以は深層心理に潜んでいるのではと推測している。子ども達を農園へと連れだし、農作業を垣間見せることである種の効果を狙っているのではなかろうか。
思えばかっての我が国では、自宅周辺で一家総出の作業というか労働が当たり前であった。就学前の幼子でも、貴重な労働力だったのだ。「虐待」と言うなかれ、それが日常風景で、作業を行いながら文化や伝統を伝えていく側面もあったのだ。親と子ども達と全員が働いて、かろうじて食を準備する、それが日常であった。産業革命を経て工業化や分業化が進み、労働と家庭生活とが完全に分離されるようになり、上述のような光景は無くなっていった。子ども達が親達の働く姿を垣間見る事も消えてしまったのだ。
「背中姿で語りかける・・・・・」との箴言が我が国には残っているかと思う。「チームリーダー」は伝統文化の神髄を弁えた上で子ども達を連れ出したのではなかろうか。親には親の役割が有り、教育機関としての「学校」では決して果たし得ない教育分野も存在する。彼ら夫婦の働く姿は、子ども達にとっては太陽のような存在では・・・・・・・そんな想いに駆られた一時であった。