黄金色の日々(書庫)

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ザ・フラッシュ やり直しの意味

2023-07-27 12:00:00 | アメコミ映画

お久しぶりです。
何年も書庫と化してましたが、先日見てきたDC映画『ザ・フラッシュ』の感想を落としておきます。

近年、DC映画は谷あり谷あり谷ありで、大混乱が継続中。
パンデミックのあおりも当然受けましたが、それ以前の問題でトラブルと計画変更の嵐。
ついに新しくCEOに就任したジェームズ・ガンが、これまでの流れを一掃して新規にユニバースを構築すると発表。つまりは大断捨離。

DCEUワールドのラスト2作の一本が『ザ・フラッシュ』 
エズラ・ミラー演じるフラッシュの単独作。
これまた、エズラの数々の問題行動と逮捕劇、それに伴いプロモーション活動ができなかったことも影響し、期待をはるかに下回る動員数。
私は元々彼のファンなので、ほんとヤキモキさせられましたが。
興収の件は、これまでのDCおよびワーナーへの不信感も大きく関わっており、エズラだけが原因ではないのでねぇ。


ここからは、『ザ・フラッシュ』の感想です。ネタバレです。見てないとわかりません。
久しぶりにエズラの演技をたっぷり見て、やっぱり上手いなあと思いましたね。
ほとんどがエズラ演じるバリーのことしか書いてません。他のキャストも素晴らしかったけど、沢山出ているレビューにお任せします。

バリー・アレン(フラッシュ)は、ある事がきっかけで時空を越えられる力があることに気づき、別次元に行った先で18歳の自分とかち合ってしまう。
元の次元に帰れない事態になり、育ちも性格も違う二人のバリーは行動を共にすることになる。

今作のバリーは27~28歳位らしい。大学を出て科学捜査官として働いている陰で、フラッシュの活動もしている。
「世界最速の男」なのに、ヒーロー活動やら何やらで会社には遅刻常習犯。その上、年齢的にも色々詰んでおり、遅い男になってる(笑)

『ジャスティスリーグ』では、一番年下のお喋り、オタクだが元気なキャラに見えたバリーは、実は幼少期に経験した大きなトラウマで人付き合いが苦手。女性に対しても奥手。

冒頭の病院救助のシーン。超速疾走に入ろうとした瞬間に、女子に黄色い声をあげられて。
「ハーイ… 君も素敵だよ…」と返すよわよわな声で、こういう状況や女子が苦手だと一発でわかる。

赤ちゃんたちとセラピードック、みんなを助けても礼を言ってもらえず、ちょっとくさるフラッシュ。だが、アルフレッドの「ミスター・アレン、誇りに思いますよ」は何百倍もの価値があるよ!!
アルフの声が聞こえた時、私は椅子から落ちかけた。二人のバットマンに思い入れがある人達と同じように、私にとってはジェレミー・アイアンズのアルフレッドが至高。

ベン・アフレックのバットマン。JLではブルース・ウェインとしては良かったものの、戦闘面ではチートキャラしかいないメンツの中では割を食うしかなかったのが、今回本当にカッコよかった。
ワンダーウーマンのヘスティアの縄(真実しか言えなくなる)により、悪を取り除くためなら私財など…とか言ってしまい、必死に取ろうとするところ可愛いしかない。
しかしバリーも、なんでそこでアラサーにして童貞告白に至るのか(笑)

回想シーンでのアレン家は、本当に幸せいっぱいであったかくて、だからこそ失われた残酷さが際立つ。
真っ赤な全身スーツ姿で、うつむいて想い出をたどるバリーのマスクの下の目と声だけで、やりきれなさと悲しみが伝わってくる。エズラの確かな演技力。
母を失い、無実の罪で父も失いかけているバリーの焦燥。ブルースに諭されても、自分ならできるのだという想いに逆らえない。
ブルースとバリーの会話は、大いなる教え、師弟と疑似兄弟も含む二人の関係性と友愛。そして別れが含まれたエモーショナルなシーン。
別次元で生きて歳を重ねた両親と会い、母親に抱きつくバリーの表情に、すでに涙目。

ところがどっこい。若い自分に会ってからは、笑いに次ぐ笑いのパートへw

大学生になり立ての18歳バリーは、バリーが経てきたトラウマ、苦労や悲しみを全く経験していない。ご苦労無しで屈託のない、ハイパー陽キャ。
そのハイテンションぶりに、バリーが「こいつは駄目だ…」と早々に頭抱える。
代役相手に交互に演じたらしいが、実質エズラの一人漫才。性格の違う二人のバリーがあまりにも自然で、二人いるものと空目したわ。

基本的に二人のシーンはコメディですごく笑える。けれどバリーにとって若バリーは、とても複雑な存在なのがわかる。
18年ぶりに母と再会し、あの日食べることのできなかったトマトスパゲッティを頬張って、子供時代をやり直そうと両親に話しかけるバリーは幸せをかみしめていた。
でもそれは束の間で、18歳のバリーが現れたことで、すべておじゃんになる。

てんやわんやの二人の会話。でも三人の家族写真と、自分にとっては形見のサルのぬいぐるみがダーツの的になっているのを見て、バリーは気づく。
二人は自分の両親ではない。彼が二人の子供なのだと。

中盤、バットケイブで二人が喧嘩するシーンは白眉だった。
若バリーの能天気な言動に、緊迫してきた状況への焦りから苛立ちを抑えられず、キレるバリー。
内心では自分が得られなかったものをすべて享受し、感謝もせずに生きている若バリーへの嫉妬と怒りがある。
けれど若バリーも反撃する。突然やってきて自分をヒーローにし、説明もなく冷たいのはなんでだよ!!と。
ハッとして気持ちが冷えるバリー。「人間関係が苦手で… 自分とも」が悲しい。
すると若バリーも急に心配気に、しゅんとしちゃう(笑) 俺もうざい奴だからさーとか言って慰める。

何も考えていないように見える若バリーも、実は人のことをよく見ている。
突如現れた、別世界の年上の自分。能力も得て、前半は面白がってはしゃいでたが。だんだん笑っていられない状況に引っ張り込まれてる。
「こんなん聞いてねえよ!!」と叫んだり文句言ったりしてたけど、年上バリーの言うがままに付いて行ってる。
人助けはおろか、母ちゃんに溜めてた洗濯物を洗ってもらいに帰宅した子だよ。いかに超人能力を得ても、使い方もわからなままに、いきなり世界の破滅に向き合ってる。
それでパニックにならないところが、能天気たるものなのか、それだけではないのか。だんだん見えてきて、ラストに肝ともなる。

訳ありげでピリピリしている別次元のバリーが、自分を複雑な目で見ていて、怒りや苛立ちを感じてるのもわかっていた。相手が辛そうな様子になると、怒りも消えて心配する。
カッ飛び具合に隠れてた、優しい心根。自由で変人っぽい友人たちを部屋に住まわせていたのも気の良さが出ていた。
若バリー君、「もう邪魔しないから」と言って去る際、おサルのぬいぐるみを振ってるのね。
ゴメンって、サル君にお辞儀させてる…? かわ…。

バリーは、自分が失った理想の世界で育った若バリーが、別のタイプのイラっとさせられるキャラだったことが、心外でもあり腹立たしくもある。
まともに育っても、僕ってこれ?みたいな(笑)
ところが喧嘩でお互いの本音をさらけ出したときに、バリーは気づく。若いバリーも色々抑えてくれてたということ。
両親を失くさずに育った、お気楽だが思いやりのある子は、確かに自分が望んだ姿でもあったということ。

そして、自分はもう、こうはなれないということにも。

ベン・アフレックとマイケル・キートンが演じる二人のブルース・ウェインから言われた、同じ言葉。
「心の傷があるから、今の我々がある」

たとえ全てが上手いこと回って、元の次元に戻れた上で、生きている母と罪にとらわれない父がいたとしても。
修正前の記憶を持っている限り、自分は傷を持ったバリーでしかない。
悲しみを知ることなく成長した、バリー・アレンではない。
ここはネタにされていた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のオマージュと共に批判にもなっていて、以前の記憶を持ったままに、『良い世界』を作っても、あるべき幸せの中で、周囲との乖離にさいなまれるということなんだよね。
そして、傷があるから強くもなれたということも。

大詰めのダークフラッシュを含めた三つ巴の対峙は、三人が同一人物ではなく、やはり道筋をたがえた別人としての戦い。
トラウマ知らずで成長した若バリーが、母がいない世界も、キートンブルース、スーパーガールが殺されて滅亡する世界も受け入れられるはずがない。初めて友人を目の前で失くし、自失していく若バリー。陽気で屈託のなかった彼が、狂気に囚われていく様はつらい。
「I am the Flash」 僕がフラッシュだと叫んだ時の、形相のすごさ。
でも見ている側以上に苦しいのは、バリー自身。

ダークフラッシュが若バリーの成れの果てと知り、殺されそうになった時、バリーは動けなかった。
自分こそが、若バリーがこうなる道を作り、この破滅の世界を作ってしまったのだという衝撃。罪悪感と苦悩に満ちた顔。

トマト缶をカートに入れなければ、この次元は存在しない。母が死なない次元は他にもあるだろうが、若いバリー、キートンブルース、スーパーガール、ゾッドの早い登場の組み合わさったこの次元は、トマト缶で母を救ったことから絡み合ったスパゲッティの一皿。
けれど彼らは、生きて自分と共にいた。『消えるべき世界』だなんて通じない。18歳のバリーの怒りも、ここにある。

僕がヒーローかぁ♬のお気楽な前半から、撃たれたり切られたり、こんなの聞いてないと思う事態に。
伝説のバットマンと出会い、ツンデレ美女の異星人を知り。これってマジ…?な状態から。
面白いことと厄介なことを両方運んできた、年上の自分との対峙。
わけもわからぬままに、世界を救う戦いに加わったけど、想像してなかった「こんなはずじゃ」の終末へ。
彼にとって、生まれて初めての激しい怒り。世界や新しい友人を失うことも、母を失くすことも許せない。

母が死んだ世界から来たバリーは、母とこの世界を守るために、自分で雷に打たれた。
黒焦げになっても、まだ諦めなかった。
あそこで若バリーにとってバリーは、“ヒーロー”になり、そしてダークバリーへの道ができた。
『何があっても諦めず、大事な人たちを救う』のがヒーローだと、彼を見て思ったから。
そのヒーローが、諦めようと自分に言う。ひどい裏切りに感じて許せなかった。

けれど。目の前で殺されようとするバリーを、とっさに覆いかばった。

自己犠牲は時代遅れとか、運命は自分で変えるとか。
同時期公開の別映画を引き合いに出すわけじゃない。見てないし。
自分を犠牲にしても…なんて考える間もなく、何も考えず目の前の人を守る。
それがヒーロー。
あの瞬間に、若バリーはヒーローになった。

「何度でもやり直し」「悪い奴らを倒す」
それがヒーローだと思っていた18歳のバリーは、ただ目の前の大事な存在を守ろうとしたことで、無限のループから外れた。

倒すより、守るのがヒーロー。
憎むより、愛するのがマムとダッドの息子。

ダークバリーが消えたのは、若バリーが息を引き取る前。彼が自分の死を受け入れた時に崩れた。
「母さんに伝えて、愛してるって」
渡した血に汚れたサルのぬいぐるみと、『受容』を知ったあの表情。

すべてをしでかしたバリーは、母親をもう一度死なす世界に戻すことを決断し、断腸の思いで実行する。

スーパーで、このあと死ぬ運命の母と話すバリー。
すべきことは残酷だ。でも彼女は、あの日別れたバリー自身のマム。
『世界でいちばん優しいひと』の母は、見知らぬ青年に何かを感じ、ハグしてくれた。
バリーは初めて別れを告げられた。そして謝罪も。

また死なせてごめんなさい。
先に進めなかったこと、ごめんなさい。
僕の方が、先に愛してる。

18歳のバリーと自分、一緒に告げた想い。
哀しく美しく、音楽もマッチした屈指の名シーン。涙腺崩壊した。


その世界の終わりと、失った人々のことを直に知るものはいない。
共に戦い、交わった世界は消えたから。彼の心の中にしか、もう存在しない。

ラストの父親とブルースの件。完全に元の世界に戻すことは、父も失うことになる。
結局は変わってしまった世界で、またトマト缶を戻して父を刑務所送りにすることはできず。
かろうじてアーサー(アクアマン)をみつけだしたポストクレジット。
この先が描かれるのか、エズラが続投してフラッシュの続編が作られるのかは、もう難しいと言わざるを得ないが。
私の中では、彼はまた元の世界に戻ってる。
ジャスティスリーグのメンバーに会いたいだけではなく、彼が消えた本来の世界では、父親が一人残されてしまうから。
きっとバリーは、せっかく助けた父親を置いて、元の世界に戻ると思う。
おそらくクルーニー・ブルースも、「こんなところで何してるんだい?」と言って帰らせるよ!(byオーシャンズ13)
コメディとシリアスのバランスが絶妙な今作。
おまけに、ほぼ兄弟ものでもある(スーパーナチュラル担視点)

バリーは、大きな間違いと共に、辛くても大事な思い出も抱えて、また一つ強くなった。


映画『ザ・フラッシュ』ファイナル予告 2023年6月16日(金)世界同時公開

 

「少年は残酷な弓を弾く』の頃、リュック一つで来日し、クリームソーダ飲んではしゃいでいた彼を思い出す。
その後の来日でも、富士そばにいたのを何人もに発見されたりしてた(笑)
色々ありましたが、エズラには、初心に戻ってすべてを清算し精神を安定させ、また素晴らしい演技を見せてほしい。

 


2 コメント

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Unknown (Unknown)
2024-01-23 14:00:44
素敵な感想をありがとうございます!!
エズラミラーは実際には報道されているニュースの8割は嘘です。メディアによるスミアキャンペーンに利用されてしまっただけです…。エズラミラーを今後ともよろしくお願い致します。
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ありがとうございます (山吹@管理人)
2024-01-24 01:05:45
コメントありがとうございます😊
エズラの件は知ってますよ!
ゴシップ記事は鵜呑みにせず、結構調べます。
アンバー・ハードも半分は盛られてますからね。半分😅

エズラは繊細さと意志をハッキリ出すところがミックスされていて、それが演技力にも繋がる反面、標的にもされやすい感じがします。
しばらく映画からは離れそうですが、また良い作品で戻ってきて欲しいですね。
フラッシュ大好きですが、基本的にはブロックバスターじゃ無い方が向いてると思います😄
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