黄金色の日々(書庫)

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LOGAN/ローガン

2017-06-04 10:40:52 | アメコミ映画




娘と歩んだ、最後の獣道


予想通りラストは滂沱の涙。
最近、日本版のキャッチフレーズがセンスのいいものが増えて嬉しい。
ウルヴァリン一代記の有終の美を飾るにふさわしい、ビターな傑作。

作風は見ての通りの西部劇。X-MENシリーズを見ていない人でも何となくはわかると思う。つまりは大勢のミュータントが出てこない。滅びゆく種族となった近未来。すでに厳しい設定。けれどローガンとチャールズ、少女ローラ3人のミュータントの終焉と伝承は、濃密で深く胸に迫る。

※以下ネタバレ



介護と子育て同時で苦労するウルヴァリンと聞いていたけど、ローガンにとってチャールズは本当に父親的存在だったんだな。たとえ自分の方が年上でも、ウルヴァリンとして目覚めた後の彼を導いた人だった。
教授に関してはサー・パトリックでもマカヴォイでも、その果てしない能力が諸刃の刃。ミュータント全体の師で先導者であり、常に火種になった人だった。ローガンは彼に振り回されもした。
悪態をつきながらもチャールズを世話してるローガンと、昔のカッコつけがなくなった分チャーミングさが増した困ったじいさんチャールズも、仕打ちに文句を言えどローガンを信頼してる。親子は綺麗事じゃない。迷惑をかけ、かけられ、失望し、されながら、それでも絆を紡ぐ。
チャールズが1年前にウェストチェスターで何をしでかしたのか。老いにより力の制御が利かなくなり起こした出来事は描かれてないけど、何となくわかるようになっている。
忘却は恩寵でもあり罪でもある。けれど罪を覚えていれば、さらに自制は効かなくなっただろう。

少女ローラが現れたことで、チャールズはある意味強くなる。“孫”である彼女のために、“息子”にハッパをかけるくらいバランスを取り戻した。
ローガンはパワーキャラで、雄そのものの勇ましいイメージだけど、実は最も巻き込まれ型のキャラクターでもあり、本人の望みや意志とは関係ないところですべてが動いていく。アダマンチウムを移植される前から彼は不老不死であり、それこそが呪いでしかない。
自分の愛した者はすべて傷つくと言ってたけれど、不老不死というはそういうこと。その肉体は常に選ばれ望まれるし、そのせいで周囲の者が巻き添えも食う。彼のせいではなくても、遅かれ早かれ彼を残して死んでいく。長い年月、希望を無くしてはまた見出してきたローガンが、仲間の死に絶えたこの世界でまだ生きているのは、チャールズのためだけだった。

体の不調や痛み、力の衰えはある意味“人間そのもの”であること。失われていった愛しいもの、親しい者たち、自分が葬った者たちを忘れないためにも、彼には人間としての痛みが必要だったんだろう。1作目『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』で、ヒーリングファクターと戦闘能力におもね、人の心を失くした兄ビクターがどうなってしまったか。
自分を守ってきたもの、他者を傷つけてきたものに自分を蝕ませるままでいるのは、緩慢な自殺というよりは、残りの年月に人であろうとしたローガンの想いだったのだと感じた。

あずかり知らぬところでの遺伝子上の子供。愛する相手との“血を分けた”感はまるでなく、まして呪いといえる身体能力のみの類似に思える少女に、当然始めは拒否感しかないローガン。けれど旅を続け、ローラの想いや感情も知るようになり、そして唯一の生きる指針であったチャールズを亡くした時、かすかな希望を追い求める娘にかつての自分の姿も見たはず。
ある意味、ローガンもチャールズも最後に束の間の幸福を味わって逝けた。時間は問題じゃない。瞬間の想いが人生の終わりを輝かせる。泣けても私は満足だった。


初老のごま塩ローガンに撃ち抜かれた。傷だらけの老兵。子連れ狼。老眼鏡!!(なぜタグをとらぬ) でもあの見事な身体は健在。ムキムキマンだらけのアメコミ界で、最も傷を負い身体で戦ってきた男。消えた傷は心に残り、最後の時に表に現れた。まっさらの戦闘マシンX-24には持ちえない勲章と苦痛。
常に女子供にはぶっきらぼうに優しかったローガンが、自分の写し鏡だからこそ持て余し、距離を置きたがったローラ。ラストに彼女に見せたかすかな笑顔と言葉は、孤高だったウルヴァリンが、ローガンという男として娘に残した宝。最高の終わりだった。ありがとう、ヒュー。

サー・パトリックのチャールズ。老いは人を子供に戻すというけど、息子に駄々をこねるようなおじいちゃんぶりは、素のサーの茶目っ気が出てた。おヒューと共に今回で卒業。本当に長い間ありがとうございました。

ローラ役のダフネ・キーンが素晴らしい!! ラテン系の熱さと、反する怜悧さ。狼少女のような野生。アクションも物凄く、スタントもまた11歳の女の子がやったそうだが(!)二人ともに脱帽。ラストに見せる少女の素の心に涙腺が崩壊。

かなりのバイオレンスで血肉が飛び散るけれど、爪×2inウェスタンなので当然のこと。それより恐ろしかったのが、どうやってミュータントが根絶やしにされたか。結局食べ物に入れてしまえば、どんな存在も終わりなのだ…。
コーンはアメリカの食品の大半に含まれてる。甘味料はコーンシロップだし、食肉の飼料もコーン。そこから採れる乳製品にも含まれる。サプリや薬品にも使われたりする。
アメリカの現状の問題が組み込まれてる。元々X-MENはマイノリティの迫害を扱ってるけれど、あの作られたミュータントの子供たちはまさに移民。

“ウルヴァリン”の誕生から、“ローガン”として逝った最終作。ミュータントの物語はチャールズとローガンに集約され、この二人から、単なる遺伝子だけでなく愛や喜び、守り守られ、奪った命の意味も背負うことを伝えられた少女が生き残るストーリー。辛いと思う人も多いだろうが、X-MENシリーズの締めとして、私は祝福を送りたい。





このバージョンが一番雰囲気を伝えてる。


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