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神戸RANDOM句会

シニアの俳句仲間の吟行・句会、俳句紀行、句集などを記録する。

2013=夏の絵手紙句会

2013-06-17 | 吟行句会

 

第17回RANDOM句会は、絵手紙に初挑戦です。夏の花・果物を季題にした句を各自持参して句会をし、その句で絵手紙(俳画)を描きます。

辻駕によき人乗せつ衣更へ 蕪村

平成25年6月1日(土)、梅雨入りはしたが爽やかな初夏。六甲の山々は新緑に包まれています。6月1日は衣更え。電車内のシニア族はお洒落な夏姿です。 

-第1部 句 会- 

花みかん たちばなのかはたれ時や古館 蕪村

午後1時、句会場の神戸駅前の市総合福祉センターに集合。2年半前ここで初のフォト俳句(写俳)をしました。

花みかん香りくる道地蔵尊 さくら③(数字は句会での得点)

 

本日の参加者は、さくらさん、だっくすさん、つきひさん、りっこさんと女性は4名。男性は一風さん、蛸地蔵さん、英さん、播町さん、ひろひろさん、ろまん亭さん、見水さんの7名。全部で11名です。

 

席に着くや、早速、短冊に自作の5句を書いて提出。提出された短冊をバラし、手分けして清書。選句表を完成させ、全員にコピーを配付します。

蛸地蔵さんは2年ぶり。以前と同じ立派な体格に、今日は見事な白いあごひげ。「柔道家か」と冷やかされて、「毎日1時間半、昆陽池も回って散歩」。ほぼ全員、悠々自適の年金暮らしのお年になりました。

  

「来週空いているのは1日だけよ」とつきひさん。相変わらずご多忙です。

11名が作った55句は、いずれも夏の花や果物が季題ですが、バラが8句、さくらんぼどくだみが各6句、あじさいが5句、いちごが4句、枇杷が3句、西瓜が2句で、あとは、枝豆・若楓・青りんご・茄子の花・木苺・じゃがいもの花・かたばみ・蓮の花・空豆・ぼたん・南天の花・アカシヤの花・百合・夏大根・花みかん・皐月・ゼラニウム・小梅・かきつばた・胡瓜の花・柿の花が各1句ずつと28種類が登場。

各自、他のメンバーの句を6句選び、特選句1句に2点、その他に1点と各人の持ち点は計7点。参加者11名の総点数77点の争奪戦です。 

バラ 花いばら故郷の路に似たるかな 蕪村

午後2時、つきひさんの進行で句会が始まりました。「特選句を順に発表して、選んだ理由も言ってください」

ただし、作者はまだ明かされません。

一番バッターは蛸地蔵さん。

バラ咲くや老いて手入れのできぬ庭(だっくす③)

「しみじみと共感しました」

リタイアして平日の住宅街を散歩するとそんなお家も目にするようです。

 

バラの句は一番多く、他には、

庭の薔薇互いの容姿競いたる    一風①

薔薇愛でて撫でて感じて今朝の風  一風

この薔薇がいいね私の女性観    さくら②

教へてよ野バラ母のこと里のこと  さくら

一輪で様になりたりバラの花    蛸地蔵

バラ写す比べてみても美しき    ろまん亭

語らひしピカソ派マチス派薔薇の雨 りっこ 

夕づつ きよく/かがやかに/たかく/ただひとりに/なんぢ星のごとく 佐藤春夫

次、見水さん選、

夕星にどくだみの白深めけり(りっこ⑤)

「ゆうぼしの出る夕暮れどき白く目立つ花が印象的」

ろまん亭さんも同意見で選。

「ゆうぼしでなく、ゆうづづよね」 さすが、つきひさん。夕づづは宵の明星の金星でした。 

どくだみ(十薬)の句も多く、他には、

どくだみの白き十字に手を触れず 蛸地蔵

十薬刈る臭いもやがて気にならず 見水

十薬の花に重たき夜風かな    つきひ

十薬の生まれたてなる白十字   つきひ

どくだみの角を曲がれば近道と  だっくす② 

枇杷 磯の香に峙(そばだ)つ山も枇杷のころ 秋桜子

次、一風さん選、

散歩道枇杷の実なりし屋敷跡(蛸地蔵②)

「枇杷の実とお屋敷がよくマッチしている」 

次、播町さん選、

枇杷青し実家(さと)の八百屋の店じまい(りっこ⑤)

「なつかしいふるさとの感じがよく出ている」

枇杷の句は、あと1句

母ありき枇杷の初物神棚に(一風③)

昔、一風さんの家には10数か所神棚があり、お母さんか必ず初物を供えていたのを思い出してつくった句でした。

静けさに南天の花行儀よく 一風① 

いちご 青春の過ぎにしこころ苺食ふ 秋桜子

次、英さん選、

どの童(わらべ)弾ける笑顔イチゴ食い(ろまん亭②)

 

「いちご畑で子どもが笑っている句を選びたかった」

英さんもいちごの句を作っています。

はしやぐ子いちご畑に満ちあふれ 英

幼な日に祖父と泊りしスイカ小屋 英②

物好きにゼラニウムの葉とまる虫 英

梅雨空に小梅がポトリ落ちにけり 英

かきつばたもしやあやめ咲いており 英①

 

だっくすさん選、

二タ三こと交はして朝の苺買ふ(つきひ④)

「ふたみこと、生産者と会話を交わして朝取り苺を買うのがよかった」

  

今日の句会もメンバーの前に国産のさくらんぼと須磨「多井畑」の朝取り苺が少しずつ配られています。

つきひさんにはこんな句も。

じゃがいもの花に薄紫の雨 つきひ②

「大地の林檎」じゃがいもの薄紫に黄色の花はほんとに綺麗です。いちご・じゃがいも・さくらんぼ・十薬、つきひさんの句は健康に良さそうな食べ物・薬草です。

梅雨はじめ地味に咲たる茄子の花 蛸地蔵

茄子の花は蛸地蔵さんが詠みました。

句をつくり絵をかき苺めしあがれ 播町②

苺を食べるのは「いま」でなく、絵を描いてからでしょ。 

さくらんぼ 来て見れば夕の桜実となりぬ 蕪村

りっこさん選、

青春も昭和も遠し桜桃忌(つきひ④

「太宰治に親しんだ若い頃ともう遠くなった昭和が懐かしくて」

桜桃忌は6月19日とのこと。さくらんぼの句も多く、他には、

  

きらいすきうそほんとすきさくらんぼ(播町③)

孫の遊びをヒントにできた句だそうです。

キッチンの真昼の闇のさくらんぼ 播町②

青空に吸込まれいくさくらんぼ  ろまん亭①

宝石のやうな箱入りさくらんぼ  だっくす①

わが孫と生れし少年さくらんぼ  りっこ

   

枝豆 枝豆や三寸飛んで口に入る 子規

ひろひろさん選、

乾杯は何はなくとも枝豆よ(ろまん亭③)

 

「いまの時期にふさわしい句なので選んだ。明るい」

 ひろひろさんの心の琴線にふれたようです。

豆の句には、

空豆を雨蛙と孫は云い 蛸地蔵④ 

が、ありました。4名が思わず○を付け高得点句に。なるほど、よく似てる。蛸地蔵さんが美味そうに食べている空豆をお孫さんは雨蛙と見ていたんでしょうか。「そらまめ」でこんな楽しい句(川柳?)ができるとは。

 

〇に×今年の模様若楓 ひろひろ

選句で皆を悩ませたこの句、ご本人から解説。家の外にはみ出ている楓を無理やり剪定したら、○と×の形になったとのことでした。

夏大根ピリリと舌に胃の薬    ひろひろ①

ぼたん寺年寄りばかり座椅子あり ひろひろ①

蓮の花先祖を乗せて天国へ    ひろひろ

西瓜割る今年は何個食べる    ひろひろ 

次、さくらさん選、

かたばみの種はじけ飛ぶ小宇宙(見水③)

「さわやかな句。かたばみの小さな種が飛ぶ瞬間を撮る写真家もいます」

 

雨吸って蕾ふくらみ皐月咲く  見水①

しあわせな気分胡瓜の花黄色  見水①

柿若葉かくれて小さき花が住み 見水 

木苺 ほろほろと谷にこぼるゝいちご哉 子規

最後は、つきひさん選。

木苺の色づき初むる国境(くにざかい)(りっこ④)

「国境というのは外国かも知れないけれど郷愁を感じさせるいい句」

苺でなく木苺。アルプスの国境のラズベリーと思いきや、家の近くの摂津と播磨の国境の里山に生える野いちごでした。 

以上、各メンバーの特選句を披露しましたが、作者はまだ明かされていません。蛸地蔵さんからもう一巡、後の選句5句を発表し、選句表に書き入れ、各句の得点がでました。 

あじさい 紫陽花やきのふの誠けふの嘘 子規

七色の嘘の終りの紅あじさい 播町③

句集「水の家」で「あぢさゐの藍にじみけり水の家」の句を詠んだ播町さんはあじさいの句を2句持参。あじさいは神戸市の花。森林植物園や六甲ドライブウェイはこれからあじさいのシーズンです。

 

あじさいの剪られて藍のさらに濃く 播町①

紫陽花や神戸の海より深き青    さくら①

紫陽花の咲くを待ちかね車椅子   だっくす

紫陽花のひっそりとたつ庭の隅   一風 

初夏らしい爽やかな以下の句にも点数が入りました。

山荘の朝の目覚めの青りんご  さくら①

アカシヤの花降りしきる帰り道 だっくす①

楚々として絵筆走らす百合の花 ろまん亭① 

全句の作者が明かされ、全員の獲得点数が決まりました。総点数77点の行方は、女性軍4名で38点、男性軍7名で39点。りっこさんが高得点句を独占して優勝。播町さんは出句した5句すべてが得点したパーフェクトで準優勝。午後3時に句会終了。

  

今回の各賞と賞品は以下のとおり。

賞品は、さくらさんが夏に向けての暑さ対策としてクールグッズを選びました。 

1位 優 勝   りっこ    (14点)クールバンダナマイマフラー

2位 準優勝   播町   (11点)首ひんやりペンギン

3位 楠公賞   つきひ (10点)アロマアイスピロー

4位 殊勲賞   さくら    ( 7点)コンパクトクールファン

4位 技能賞   だっくす ( 7点)コンパクトクールファン

4位 敢闘賞   ろまん亭( 7点)クールバンダナ

7位 銅賞    蛸地蔵  ( 6点)ネックマッキー

8位 銅賞    一風   ( 5点)ネックマッキー

8位 逆引敢闘賞 見水   ( 5点)マジッククールとペットボトルケース

10位 逆引技能賞 英     ( 3点)マジッククールとペットボトルケース

11位 逆引殊勲賞 ひろひろ( 2点)マジッククールとペットボトルケース 

-第2部 絵手紙を描く-

いよいよ「絵手紙」の時間。午後4時30分までに3枚の絵手紙を描きます。

皆の前のテーブルに用意されたあじさいとどくだみを置き、各自のテーブルに新聞紙を広げ、黒いフェルトの下敷き・練習用の半紙・筆2本(線引き用・色付け用)・顔彩(絵の具)・墨汁・パレット・筆洗・画仙紙はがき10枚・「絵手紙の描き方パンフ」・筆の水分を吸い取るポケットティッシュを並べました。そして、各メンバーに落款用の「印」をプレゼント。消しゴム製です。

「わー、筆で絵を描くのは中学校以来じゃないかしら…」。緊張が走ります。

 

「ヘタがいいのよ。画仙紙はにじみやすいから、こんな風にね」 つきひさんから、実技を入れながらていねいに説明していただきました。 

 

「武者小路実篤やなあ」とか、ぼやきながら、画仙紙はがきと筆で格闘すること1時間。へたがいい、にじみがいい、かすれがいい、といっても思い通りに描けず、あっという間に終了時刻。なんとか全員描きあげて、作品を並べ、つきひさんが優秀作を選びました。 

「金賞」は、句会で優勝したりっこさんの巻頭の「どくだみ」で、W受賞。賞品はマイファンモバイル。続く、銀賞・銅賞・佳作として、ろまん亭・ひろひろ・蛸地蔵・播町・見水各氏の下記の作品が選ばれました。賞品は全員には当たりませんが、マイファンモバイルとアイスバンドひんやりジエル。  

    

牡丹散りて打ちかさなりぬ二三片  蕪村

-第3部 懇親会- 

句会の後は反省会兼懇親会。ろまん亭さんが予約をしておいたJR神戸駅北西の「和彩キッチン直(NAO)」。今日の絵手紙句会を和食とお酒でいやす「直らい」に、名前もぴったり。

さみだれや大河を前に家二軒  蕪村

市総合福祉センターを出るとやはり梅雨の季節、小雨が降っているので地下街を神戸駅へ。4月にオープンしたショッピングモール[神戸ハーバーランドumie]や「アンパンマンこどもミュージアム」で人の流れは多くなっています。

 

午後5時30分、和彩キッチン直(NAO)に到着。小さいが落ち着いたいい感じの店。若いスタッフがきびきびと愛想よく応対してくれます。「三宮とは雰囲気が違う」 「古き良き神戸がどこか残っているのかな」 3つのテーブルに分かれて着席しましたが、本日、句会・絵手紙とも優勝したりっこさんの発声でビールで乾杯。

採蓴(さいじゅん)を諷ふ彦根の傖夫(そうふ)かな 蕪村

先付の皿には、新鮮なジュンサイと空豆の素揚げ。蛸地蔵さんの「空豆」の句でまず爆笑。出てくる料理はどれも料理長の工夫があふれ盛付も見事。会話がはずみます。

「芭蕉の『岩にしみいる蝉の声』のどこがええのかわからん」 「俳句も『詩』だけど、芭蕉以前にそんな表現をする人はいなかったのよ」

ビールのグラスが空くと、スタッフが灘の酒「福寿」純米吟醸を勧めにきました。昨年12月にiPS細胞の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥京大教授の授賞式後の晩餐会でふるまわれたお酒です。「山中教授は自分一人でノーベル賞を取ったという顔をしていないし、これでゴールでなく、これから先にやることを考えているのがいい」

…話はあちこち展開し、料理もお酒も進んで、シメの新ごぼうと鯛の御飯。おかわりもし、最後はいちごのシャーベットにほうじ茶。堪能しました。

 

夏河を越すうれしさよ手に草履 蕪村

お世話いただいた、つきひさん、さくらさん、ろまん亭さんに心から感謝。これからの梅雨そして夏の猛暑を、賞品でいただいたクールグッズで乗り切って、次回、秋の句会にまたお会いしましょう。仲よきことは美しき哉。

 

2013.6 写真/romantei,文/mimizu

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2008 美作ほたる句会

2013-05-04 | 吟行句会
美作ほたる句会 2008




美作蛍狩


「私の岡山の家に蛍見物に来られませんか」とつきひさんからお誘いいただいて、虫籠に入った蛍しか見たことのなかった私は、6月下旬の蛍のシーズンを心待ちにしていました。 ところが、今年は5月下旬から飛び始めたということで、6月7日(土)~8日(日)にかけてつきひさんの岡山のお家(岡山県美作市中山)に行ってきました。

メンバーはつきひさん、どんぐりさん、ひかりさんと私の4人で、どんぐりさんの車に乗せてもらい午後1時に明石を出発。

1時間半ほどでつきひ邸に到着。つきひさんは定年後、神戸で女子大の教授をしておられますが、10年前に実家の近くに家を新築、現在はセカンドハウスとなっています。

山間に造成された宅地に少し空き地を残して15軒ほどの家が建っている一角の平屋建てのお家です。
門から玄関まで、所狭しと草花が咲き乱れていて、つきひさんらしいなと思いました。

お茶を飲んで休憩したあと庭の植物を見せてもらいましたが、次々説明されても私には何が何だかさっぱり分かリません。でもどんぐりさんや特にひかりさんはよく知っておられるのでびっくり。

ご近所の方とも親しくされていて、ご近所のお庭も案内してもらいました。
みんなどうしてこんなに花の名前や生態に詳しいのでしょう。


早めの夕食を済ませて、車で30分ほどの川原で開かれている河合の蛍祭りへ出かけました。途中、福本、長福寺の重文、三重の塔を見物。

たくさんの人が集まっています。あちらこちらの山裾から出かけて来たのでしょう。

暗くなるのが遅いのでなかなか光らず、待ち遠しくてたまらなかったのですが、やがてぼんやりとついたり消えたりするのが見え、暗くなるに従い光が強くなって、あちらこちらで点滅しているのが見えました。

次に、賑やかな蛍祭りの会場を後に蛍見物の穴場の海田へ。何人か蛍狩りの先客がありました。

ここは静かな場所で、お天気が良ければ星がとてもきれいな場所だそうですが、曇り空なので見えず。祭り会場のような明かりや騒音に邪魔されず、橋の上から蛍を堪能しました。

続いて湯郷温泉に行ったのですが、温泉のお客さんが多く、警備の人がいてその辺に駐車できなかったので断念し、つきひ邸へ。

昼間ご近所の方が「ここの裏でも蛍が20匹ほど飛んでいますよ。」「何処ですか?」とつきひさん。「つきひさんのお家の裏ですよ。」「ええっ!」という会話があったので、ここが最後の会場。

ひかりさんが「蛍は8時ごろまでしか飛ばない」と言うので、大急ぎで部屋の明かりを消して裏の道へ行くと、ほんとうに20匹ほど飛んでいました。

蛍は相手を見つけると、つがいになって木陰に 消えていくように見えました。
8時を回っていたけれど間に合って良かった。
ここで、ずっと案内してくださった姪御さんにお礼を言ってお別れしました。

家に入って奥の部屋から目の前を飛んでいる蛍を眺めてみんなで大喜び。
つきひさんの感激は一入でした。

喜びもつかの間。それからが大変で、順次お風呂に入り、ワインを飲みながら夕方採った蕨などおつまみを食べながら句作り。10時半に出句締め切りという恐ろしい句会が始まりました。
                                (だっくす)
                       


illustration=mimizu

第1回 パジャマ句会


6月7日(土)午後10時ごろから
 各自、5句ずつ出句。7句選。( )の中の数字は獲得点数。
 20句中次の16句に点数が入りました。

水音にはやる心や蛍狩り ひかり (3)

 蛍祭り会場近くには川が流れ、川の瀬音がしていました。蛍には清流が必要です。蛍狩りへの期待感がよく出ています。

裏窓を開ければ蛍見ゆ暮らし だっくす(3)

 つきひさんの「勝手口出れば花野といふ暮らし」をもじりましたと作者。
 ここに家を建てて10年余りになるが蛍を見たのは今年が初めてと家主。下水道も次第に完備し農薬も減ってきた影響でしょうか。塀の外を農業用の溝が流れておりカワニナがいます。

前に行く車もやはり蛍狩 どんぐり(2)

蛍祭りの会場近くには、車が溢れて警察や消防団が交通整理をしていました。
「前に」ではなく「前を」の方がよいのでは。
   
我が狭庭奇跡起りて蛍来る つきひ(2)

 奇跡としか言い様がありません。感動です。

蛍見て帰りし庭に飛ぶ蛍 ひかり(2)
蛍の火闇となりたる一呼吸 どんぐり(2)
田の水に蛍の火の映りけり どんぐり(2)


 植田に蛍の火が映ってきれいでした。

二人ずつベンチを占めて蛍待つ ひかり(2)

 川辺のベンチはカップルが占領していました。熟女は遠慮なくベンチの端に陣取りました。

湯の郷のほたるほうたるこんばんは だっくす(2)

 「ゆのさと」というほうがいいですね。
 童謡のようで面白いです。

夜更けて蛍の宿に酌むワイン ひかり(2)

 パジャマ句会は順番にお風呂に入りながらワインなど飲みながら、全員パジャマという風変わりな句会でした。

 ちなみに締め切りは午後10時半。終了は11時半ころでした。
 蛍の宿という季題が素敵です。

明滅に一喜一憂蛍狩 つきひ(1)
蛍狩車溢れて峡の村 つきひ(1)
蛍火のふたつ並んで飛びゆけり だっくす(1)
捕まえはせぬよ蛍ここへ来い だっくす(1)
蛍待つ人とは別のイベントも つきひ(1)


 すぐ近くの会場で灯を赤々と点し賑やかなイベントが行われていました。山あいの蛍祭りの周辺は、明るく賑やかで、車も行き交うので蛍も戸惑っているようでした。

客人にゆったりと飛ぶ蛍かな つきひ(1)




illustration=mimizu

第2回 目覚まし句会


2日目 6月8日(日)晴れ 遅い朝食。
 ひかりさんは早起きして朝食前の大散歩。

6月8日(日)午前9時半ころから
 各自出句5句、選句7句、特選には1点追加。◎特選
 ひーひかり どーどんぐり だーだっくす つーつきひ
 夕べの第1回句会に比べて全員、落ち着いた佳句が増えています。

  ひかり作品

山荘の遅き朝餉や時鳥  つ◎(2)
老鶯や引き返すほかなき山路  (2)
庭案内するかに蜥蜴また現れぬ  (1)
はらはらと更紗うつぎのこぼれけり (2)


山深き蛍まつりの会場へ

  どんぐり作品

壷に挿して時にさゆれし青芒  (1)
十年を住み家裏の初蛍  (2)
別荘の夏うぐいすに目覚めけり  (2)
難病を打ち勝ち友と蛍狩  (1)

「難病に」としては。

朝食はビュッフエスタイル時鳥  (3)

  だっくす作品

今摘みし夏の蕨をお浸しに  ひ◎(4)
明易や朝食前の大散歩  ど◎(3)


「大」がちょっと気になります

朝陽まぶし夕べ蛍の舞ひし庭

「まぶし」は、「さす」位にしては。 

目覚ましは老鴬の声里の家
採り活けし更紗うつぎの可憐さよ


  つきひ作品

点滅は蛍のことば闇深し  (3)
老鴬や苦吟半分楽しみて
匂ひ淡き八重の十薬賜りし  (1)
わが敷地蛍飛ぶとは群れるとは  だ◎(3)
ほうたるや番となりて森に入る  (2)




illustration=mimizu


第3回 午後のお茶句会



6月8日(日)目覚まし句会後、車で湯郷の町へ、まず、菖蒲入りの足湯に浸る。町を歩いて温泉神社へ。町が俯瞰出来る大山(おおやま)へ車で登る。展望台付近に夏蕨が沢山あり蕨狩りを楽しむ。下山後、Ksガーデンでパスタの昼食。中山で午後のお茶。その後、第3回句会。第2回より更に充実した作品が出句されました。

6月8日(日)午後2時ごろから
( )内は作者名、ひ=ひかり ど=どんぐり だ=だっくす つ=つきひ
特選句は◎

  ひかり選


◎昨日今日夏うぐいすの音に浸る(だ)
足跡の大きく残る植田かな(ど)
目の前の植田にカーブ切りにけり(つ)
梅雨曇足湯にしばし心おき(ど)
鬼灯の花葉隠れに白々と(つ)
蕨狩そこここあそこ指図され(ど)
梅雨の旅熟女四人は晴れ女(だ)


 《おしゃべり》
・足湯のこと、句にするのすっかり忘れてたわ
・蕨採りは楽しかった
・自分で採らずにひかりさんやどんぐりさんに指図してた
・「四人は」はを取って「よったり」と詠む方がよいのでは
・その方が説明的でなくなるしね
・夏うぐいすの句はこのとおりの情景だった。(満点句)
・昨日今日と言う言い方が上手い
・音はなくてもよいのでは


  どんぐり選

パスタ食ぶ花ぎぼしあるレストラン(つ)
隣り合ふ植田代田に風通ふ(ひ)
夏わらびありて山荘賑やかに(つ)
鬼灯の花葉隠れに白々と(つ)
昨日今日夏うぐいすの音に浸る(だ)
◎俯瞰する足もとにあり夏わらび(つ)
菖蒲湯の旅の足湯に寛ぎぬ(ひ)


  《おしゃべり》
・俯瞰の句、遠近が出ている。山上で遠くばかり見ていて足元の蕨に気が付かなかった 
・植田代田と重ねたところがよい。(満点句)
・気持ちよく風が渡っている様子が出ている


  だっくす選

蕨狩そこここあそこ指図され(ど)
登り行く九十九折の七変化(ど)
◎隣り合ふ植田代田に風通ふ(ひ)
足跡の大きく残る植田かな(ど)
梅雨曇足湯にしばし心おき(ど)
目の前の植田にカーブ切りにけり(つ)
夏蕨採りもし展望台下る(ひ)


  《おしゃべり》
・九十九折はくじゅうくせつと読むと作者。
・紫陽花といわず七変化と数字を使っている工夫がすばらしい。

  つきひ選

夏蕨採りもし展望台下る(ひ)
麓から紫陽花の道途切れなく(だ)
薔薇アーチ潜り遅めのランチとる(ひ)
昨日今日夏うぐいすの音に浸る(だ)
◎菖蒲湯の旅の足湯に寛ぎぬ(ひ)
藤の実や閉ざされしまま資料館(ど)
隣り合ふ植田代田に風通ふ(ひ)


  《おしゃべり》
・パンストのまま、足湯しました(失礼)。気持ちよかったです。菖蒲が入れてあり、季節感があった。
・雨を心配したが、岡山は未だ梅雨に入ってなく2日間、晴天でした。まさに熟女晴れでした。

最終成績  
氏名 第1回  第2回  第3回  合計点

ひかり  9……  7…… 10…… 26
どんぐり  6……  9……  8…… 23
だっくす  7……  7……  6…… 20
つきひ  6……  9……  8…… 23

ひかりさん優勝!おめでとうございました。皆様お疲れ様でした。どんぐりさん運転有難うございました。
24時間に3回も句会を強行し罰せられそうですが、私はとても楽しかったです。何よりも主役の蛍が飛んでくれてよかったです。3回の句会をまとめてみました。点数計算などは東京出張のとき、新幹線の中でしました。一句一句の風景が鮮やかに甦ってきました。
                         (つきひ)

参加者からのコメント

・子供の頃笹の葉を振り回し、蛍を採った思い出が甦りました。
蚊帳の中に放し、暗闇の中に光る蛍を不思議に思いながら、眠ったものです。

・念願の蛍を堪能させていただきました。蛍祭り、蛍の穴場、亜紀邸での蛍見物。蛍三昧の夢のような夜でした。

・鶯やホトトギスの声に包まれたお家で、少し歩くと蕨が採れたりして、大自然の中で贅沢な時間を過ごせました。

・つきひさんが採りたての蕨を、さっと料理して下さったのがとても美味しかったです。

・句会3回には驚きましたが、曲りなりにも俳句といえそうなものが何句かできた喜びも味わえ、本当に楽しい2日間でした。

・どんぐりさんが車を出してくださったので、短時間で盛りだくさんなことができました。










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2012=夙川句会

2013-04-25 | 吟行句会

  ちょっセレブ夙川句会



「夙川沿いのお花見
+色の魔術師―トラモンティ展鑑賞つきミュージアム茶室句会
+エクセレント・ダイニングカフェでの夕食―
と、ちょっぴりセレブな気分を…」
桜の季節、心ときめく第14回RANDOM句会の案内状が、だっくすさん、りっこさんから届きました。

夙 川 
旅人の鼻まだ寒し初ざくら 蕪村

くもり一時雨。気温は2月下旬並み、冬の服装でおでかけを。阪神間の桜は五分咲き…と、浮かれ気分が半減する天気予報です。

阪急三宮駅の東口改札前。集合は2012年4月7日(土)午前10時30分。少し前に着くと、イカリスーパーから出てきた播町さん、大きなレジ袋を抱えて「豪華花見弁当や」。“セレブ句会”はすでに始まっていました。
手頃なお花見弁当と缶ビールを買って出てくると、もう全員おそろいです。

花冷も心あったか句会かな   稲村(1)(数字は句会での得点)

だっくすさん、つきひさん、りっこさんと女性は3名。男性はひろひろさん、播町さん、稲村さん、弥太郎さん、一風さん、見水さんの6名。本日の参加者は9名。女性陣が少なく、男性軍勝利のチャンスです。カメラマンのろまん亭さんが欠席なので今日は播町さん、見水さんが写真撮影。
10時32分発の梅田行き普通に乗り、車窓に流れる六甲・住吉・岡本・芦屋の春景色を楽しみながら10時49分夙川に到着。ここで先着の弥太郎さんが出迎えてくれました。




一刷毛に夙川を染む桜かな   播町(2)
寒冬に耐えし桜の花の色   弥太郎


澄んだ水の流れと桜が目に飛び込んできます。ホームも駅前広場も花見客でいっぱい。

夙川のちょっとセレブな花の風       つきひ(3)
青い眼の女(ひと)の和服や花の宴  りっこ(1)
諸々のことはさておき花人に       だっくす(4)


大混雑の駅前広場を抜け、川沿いに阪神香櫨園駅へむけ南へ下ります。だっくすさん、りっこさんは駅前の和菓子店で句会のおやつの鶯餅を人数分購入。




お花見 
山又山山桜又山桜 青畝

五分桜人の心は満開に      見水(1)
花を見て老いた人々若返り    一風
花に人行き交う顔は美男美女   ひろひろ(1)


夙川の花見は阪急から上流がメインですが、下流側もあちこちブルーシートで場所取りしています。

あこがれの夙川の地で花をよむ    稲村
夙川は今たけなわの花の宴        稲村(1)
その中にひっそりとした花ござも   だっくす(2)
地は羽衣川は夙川花さくら        稲村
桜の名所・夙川に羽衣の地名。美しすぎますね。
老桜の水吸うてなお華やげり    播町(1)
入学の子と母と父花堤       播町(1)


「水吸うて」の水は夙川の水。今日は近くの中学校の入学式があったようで、親子が花の下を歩んでいます。最近は父親も付いていくようなので、と作者の弁。

咲きました若木と並び老い桜   弥太郎(2)
黒い幹ねじれ桜も咲き始め    弥太郎
大地から穀霊醒ます花の精    弥太郎


「穀霊」は桜のこと。桜は稲作の精霊。と説明をうかがって納得。

咲き初めし桜ひとひら味わへり  りっこ

五感で確かめるアーチスト・りっこさん、さくらの花びらを口に入れてみましたが…。
お腹が空きましたね。まだ正午には時間がありますが阪神香櫨園駅は目の前。手頃なベンチがあり、あちこちで花見の宴も始まっています。RANDOM句会もここらで昼食タイムにしますか。



花の道そぞろ歩いて缶ビール    見水
せせらぎに電車の音も混じる春   見水(1)
花の下ままごとの子ら睦まじく   見水


青空の下、桜を見ながら食べるのは、なんと気持ちのよいことでしょうか。つきひさんのお花見弁当は、淡路屋の「平清盛たこしゃぶちらし」。

青空に花鈍色に透けてをり           つきひ(1)
曇天に桜の静けさまた楽し           一風
桜見て互い見つめて添うふたり   一風
花のとき人それぞれの愁いかな     弥太郎(1)


ひろひろさんは、缶ビール2本を空け、演歌の世界が顔を出しています。

春昼や猫も杓子も赤ら顔  ひろひろ
夙川に夜桜お七男坂    ひろひろ




「そろそろ、出発しよか」。句会場の西宮市大谷記念美術館へ。

花冷えの川跨ぐ駅へ橋三つ     播町(1)
語りつつ句会場まで花の道     つきひ(4)
庭の隅静かにゆれる沈丁花     一風


阪神香櫨園駅から43号線・阪神高速をくぐり、閑静な石畳の住宅街を西へ。満開のミモザに息をのみ、道の両側に咲く菜の花や水仙、雪柳、沈丁花などの花々に春を感じながら歩きます。
ただし「花の道は桜の咲いている道ですからね」とつきひさん念押し。





色の魔術師 
見かぎりし古郷の桜咲きにけり 一茶

西宮市大谷記念美術館は、実業家の故大谷竹次郎氏(富山県出身で戦前「鉄鋼王」で名をなし後にホテルニューオータニを建設した実業家・大谷米太郎の実弟)が西宮市に寄贈した美術品と邸宅をもとに、昭和47年にオープンした宏壮な庭園のある美術館。




 ちょうど今日4月7日から「色の魔術師―グェッリーノ・トラモンティ展」が開催されています。

彫像の瞳のほの暗き花曇     つきひ(1)

美術館に置かれた岡本太郎の「午後の日」のイメージで詠んだ句だそうです。
全員で句会場の設営をした後、出句締切の午後1時30分まで、トラモンティ展会場を巡って、句づくりに挑戦です。

グェッリーノ・トラモンティ(1915~1992)は、人物や猫、野菜、魚などの身近なモチーフで色彩豊かに絵付けをした陶板、器、陶額を制作し、絵画も残したイタリアの陶芸家・画家です。

初期の素朴なテラコッタの彫刻に始まり、1階、2階の展示場を埋め尽くすカラフルでシンプルでおおらかでキラキラ輝く壺や大皿の陶器が目を楽しませてくれます。どれも古代ギリシャ・ローマからピカソ・マチスに至る南欧のアートの深さ、豊かさを感じさせる作品達でした。

イタリアンアートも輝く春来たり 見水(1)
花の色トラモンティの色に酔ふ  だっくす(2)


ミュージアム 
海手より日は照りつけて山ざくら 蕪村

長年近くに住みながら、大谷記念美術館に入館したのは今回初めて。こんなに素晴らしい美術館とは知りませんでした。とくに手入れの行き届いた庭園の美しさ。島根の足立美術館を思い出します。

花疲れ横座りして眺む庭     だっくす(2)

男には作れない句、と男性陣声をそろえましたが、さすが日野草城はこんな句を作っていました。

ぼうたん(牡丹)や眠たき妻の横坐り 草城




茶室句会 
顔に似ぬ発句も出でよ初桜 芭蕉

午後1時30分が5句出句のしめきり時刻。

美術館の庭園に面した広い和室「緑爽庵」での句会のはじまりです。

提出された短冊をバラし、手分けして清書。選句表を完成させ、全員にコピーを配付。コーヒーをいただきながら、午後1時55分、つきひさんとだっくすさんの進行で句会が始まりました。

まず、20分間かけて各自、他のメンバーの句を選びます。6句選んで、特選句1句は2点、その他5句は各1点、と各人の持ち点は計7点。参加者9名の総点数63点の争奪戦です。

今回も9名がそれぞれ特選句(◎)に選んだ句に、豪華百均賞品をプレゼント。その句を2人が特選句に選べば賞品は2つです。
見事特選句に選ばれたのは、次の6句でした。

五分咲きを待ちかね花の人となる    りっこ ⑨◎◎◎
ねじれたる老木すがしき花つけて   りっこ (5)◎◎
石畳ミモザの似合ふ香櫨園      りっこ (6)◎


今日のちょっとセレブなお花見句会はりっこさんがダントツ。◎も6個獲得。さすがアーチスト、的確な観察・表現・説得力に全員脱帽でした。

夙川や耳は瀬音に目は桜     稲村    (2)◎
飛び石の橋の向こうも花の道   だっくす(3)◎
川ヲ見テ空見テ春ノ愁ヒカナ   播町    (2)◎


以上で本日の句のすべての獲得点数が決まりました。
総点数63点の行方は、女性軍3名で44点、男性軍6名で19点。女性軍の圧勝でした。また、だっくすさん、つきひさん、播町さんは出句した5句すべて得点のパーフェクトでした。



表彰式です。各賞と受賞者は、次のとおりです。
1位 優勝    りっこ (21点) 
2位 準優勝   だっくす(13点) 
3位 殊勲賞   つきひ (10点) 
4位 敢闘賞   播町  ( 7点) 
5位 技能賞   稲村  ( 4点) 
6位 夙川賞   見水  ( 3点) 
6位 逆引技能賞 弥太郎 ( 3点) 
8位 逆引敢闘賞 一風  ( 1点) 
8位 逆引殊勲賞 ひろひろ( 1点) 

賞品はフーケの洋菓子。予定より早く午後4時すぎに句会終了。会場の後片付けをし、時間まで見残した「グェッリーノ・トラモンティ展」を鑑賞。

あとで届いた播町さんの感想。
「神戸RANDOM俳句会」、記念すべき10周年句会は、セレブ女性3人組の圧勝に終わり、男性軍は全員1ケタ得点。なかでも優勝のりっこさんは特選◎を6つもとる不滅の記録。

これに対しいつも優勝候補の見水さんの惨敗ぶりは目を覆うものがありました。この3月で登り坂を頂上まで登ったという満足感とこれからのゆるやかな下り坂へというストレスのせいでしょうね。そしてメンバー全員が60歳以上となりました。

毎回の新趣向、今回は「色の魔術師―トラモンティ展」を初日に鑑賞し、しかも展示室の隣りの茶室で句会という贅沢さでした。
 

エクセレント・カフェ 
さまざまの事思ひ出す桜かな 芭蕉

午後5時、阪神香櫨園駅東のイタリアンレストラン「Vege+Cafe」到着。新鮮な野菜を使ったおしゃれな料理店。花と緑に囲まれた明るいテラスの席で春の宵の晩餐会です。ビールで乾杯の後、白ワインで料理をいただきながら、句会の反省。



「今日は大和が沈んだ日やで」
一風さんとひろひろさんの1句は、今朝の朝日新聞の「天声人語」で紹介された67年前の4月7日の出陣前日に瀬戸内海の桜を目に灼きつけ「内地ノ桜ヨ、サヤウナラ」の言葉を残した乗員の記事に触発されて作った句でした。

今日の日に逝きたる大和桜咲く     一風(1)
花ひかるひとひらひとひら母心     ひろひろ


つきひさん、美味しい料理とお酒が入って、はっきり思い出したようです。
「川崎展宏さんの戦艦大和の沈没の句はね…」

「大和」よりヨモツヒラサカスミレサク 展宏 

「ヨモツヒラサカは古事記に出てくる黄泉の国との境にある坂道のこと」。古代史研究家・弥太郎さんのミニ解説。





そして話題は不評ながら神戸も舞台のNHK大河ドラマ「平清盛」。時代考証のことや、9年前に稲村さんのガイドで歩いた「兵庫津の道」のこと。稲村さんは今年も地元の人たちを清盛像などに案内したそうです。

尼崎で育った一風さんは、かつて海水浴場だった頃の香櫨園浜の思い出を話します。野坂昭如「火垂るの墓」や谷崎潤一郎「細雪」にも夙川は登場します。話は尽きません。

さくらよむ夙川王子句合戦  ひろひろ

桜の句はこのRANDOM句会でもあちこちで作りました。去年の東日本大震災直後の王子公園句会の桜吹雪は圧巻でしたが、石山寺、龍野、有馬でも。
「日本人にとって桜は戦争の記憶と切り離せない特別な花なんですね」
つきひさんの句も、お父さんが戦地から帰還した幼い日の記憶でした。

復員の父を囲みし日の桜  つきひ(1)




お世話いただいた、だっくすさん、りっこさんに心から感謝。
そして、次回の句会に期待。皆さんご健康で。


写真/bantyo,mimizu文/mimizu






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2011 桜乱舞 王子動物園句会

2013-04-08 | 吟行句会
桜乱舞 王子動物園句会







開園60周年の王子動物園 10時。つきひ、さくら、ひろひろ、播町、だっくす、どんぐり、英、ろまん亭、一風、蛸地蔵、りっこ、集合(順不同)。稲村さん、弥太郎さんは句会場で合流する。見水さんはご用があり句のみ参加。



うすぐもりなれど、花もあり、若葉もあり、良い日になりそうと期待が高まる。65歳以上は入場無料の園内へ。
まずは左手、フラミンゴ。オレンジ色のロマンチックな鳥たちが、にぎやかに鳴き交わす。「羽の裏と嘴の先は黒いんや」などとことらもにぎやかに観察。
「中の島でしゃがんでいる数羽は卵を抱いている」と王子動物園に勤務する蛸地蔵さんの説明。なるほど立ち上がったフラミンゴの足元に卵がある。「つがいで温めるんかナ」「これだけおったら父親がわからん」「乱婚やナ」「ハーレムや」と人間の感想を言い合う。数字は得点数。



雀までなんとにぎやか花見かな 0   稲村

全員ほぼ一緒だったのはここまで。自然に思い思いのところへ。と、突然、思いがけない息をのむ程の花吹雪。
名句がたくさん生まれました。

猛吹雪但し桜のと予報士が 0   播町



桜の猛吹雪はうれしい。
本日の最高点の1つ。桜情報を気にしながら準備してくれただっくすさんの思いがにじむ。
「前掲の句に多く点が入ってなんでこれに入らへんのやろ」とひろひろさん。百年に一度という表現には地震への思いもある。地震と花吹雪の関連が見えない。前掲句は豪華と言わずにすごさを思わせる。など意見が続出。そして、あとの懇親会でこの句を◎にすると、つきひさんの重大変更があるなど話題作となった。

踏みしめる桜の花びら香りたつ 4   一風
「桜の花びらって香りするんか?」「する、感じられた」

花吹雪阪急各停先頭車 0   播町
花吹雪遠き先よりひしひしと 0   蛸地蔵
花びらに交じって飛ぶはひらひらと 0   ひろひろ







散る花は動物たちを喜ばせ、園全体が飛花の渦にのまれました。


本当にでっかい舌がすっと伸びた。

パンダ舎へ花の風紋踏みながら 6   つきひ

「風紋というのは普通砂丘とかを言うんだけど…」とつきひさん。辞典では砂丘などとあるから花の風紋はいいヨ」たしかに花びらが風紋を描いていました。





動物園といえば百獣だよネ。



「土色」が話題に。象はだいたいそんな色だが…。イヤ象は鼻で自分の背中に土を吹きかける。王子動物園はそんな自然な姿を大切にしていると作者。



昼寝は夏の季語や。投票してしまったけどシマッタ。



桜満つ句会の季語に散りぬるを 0   ひろひろ





黙々と花の屑掃く仕事人 3   さくら




花びらも一緒に食べる。
「ひとつ聞き……」の句。
そのとおりや、身につまされると投票したのに、これは女性へのエールと作者に言われて「ナニソレ!」とブーイング。
「支柱受け……」
神戸の開花情報の基準。もうだいぶ樹齢を経てきた。いつまで標準でいられるかしら。



花の動物園は句材がいっぱい。
「神戸では……」
意味が深い。原発に汚染された海、被災から16年経った神戸、東北への思いが伝わる。





ロマンがある。



羽をひろげた孔雀の姿は見事。



拍手する子供の笑顔の先に象 0   一風
山孫と祖母手を振る写真の背に桜 1   一風
まや山もアシカの池も春眠る 0   ろまん亭






動物たちの表情にはヒトも思いを寄せてしまう。特に霊長類には…。



ジョニーへの伝言、60年待っても届かない。
ジョニーは日本一長寿のチンパンジー。風格あり。






ジャイアント・パンダは無心(?)に笹をたべる。

毎年の花の姿に違いなし 0   蛸地蔵
花冷えの路を昼餉へ急ぎけり 1   播町
老い桜小枝の先の淡い色 2   弥太郎






それにつけても心痛むのは3月11日の東日本大震災のこと。
「タイムリーな時事句」「現地との落差を感じる」

大地震の復旧遠し花は葉に 7   だっくす

時は移るのに壊れたものの復旧が見えないもどかしさ。

北上の岸辺の無残啄木忌 1   見水
望郷よ北国の春歌う友 0   ろまん亭



あまりの痛ましさにお見舞いの言葉を失います。



そして、句会場は素敵な建物、神戸登山研修所内へ。

摩耶の嶺色どり添える山桜 1   一風
葉桜や岩登り登山研修所 0   どんぐり
レンガ塔青いツル草春日差す 0   弥太郎
新人に昔を思いにが笑い 0   英




四月馬鹿つまらぬネタで皆しらけ 1   英
春の坂紺の制服弾む声 2   弥太郎


松陰か海星か、まぶしい乙女たち。
以上、70句ですべて。それぞれが9句選し、1句に◎(2点)、自選1句。つきひさんの当を得た進行。ダーウィンも笑っているかナ。表彰式も同会場。7点句が2つもあるだっくすさんが24点で堂々の1位(でも賞品は得点の少ない順にもれいました)



お楽しみ懇親会は三宮・ミント神戸「うおまん」。
あ~あ、終わっちゃった。幹事さん、皆さんありがとう。
ランダム句会にはやさしさがある。
次は海を越え阿波徳島か、紅葉の京都嵯峨野か、それとも……。


2011.4.16 
文:りっこ 写真:ろまん亭



コメント (1)
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2011=布引ハーブ園句会

2013-03-19 | 吟行句会

布引ハーブ園句会
天空の花園 in autumn





2011年10月30日、神戸港は雨である。

石川達三の「蒼氓」をまねて書きたくなるような雨模様でした。天気予報も「今日は降ったり止んだり」。折りたたみの傘をバッグに入れて家を出ました。

秋時雨やめども海のまだ暗し  だっくす(2)(数字は句会での得点)

お世話役のだっくすさんは、さくらさんと早々に布引ロープウェイ「夢風船」に乗り込み、句会場のハーブ園山頂へ。

遠き日の秋思こぼるる北野坂  さくら(3)

北野坂を上りながら、遠き日の淡い思い出に浸ったさくらさん、思わず出た「こぼるる」の言葉に、句会では「秋思ってこぼれるもの?」のツッコミ。
布引といえば中央市民病院でした。そして当時、さくらさんは看護学生。

わが青春布引にあり燗熱く  さくら(4)

その後、中央市民病院は1981年にポートアイランドに新築移転し、いままたポーアイⅡ期に移りました。
市電石屋川線の廃止は1971年。煉瓦造りの布引車庫の辺から病院の前を抜け加納町へ下る路面電車のやかましかったことを思い出します。

山麓 登山道一歩より急天まで急 誓子

布引ロープウェイ乗り場の集合時刻は午前10時30分。
20分早く着くと、誰もいません。表に回ると、ひろひろさんが一人デッキでおくつろぎ。北野異人館への散策路を歩くと、水道局北野会館の上にひろがる茶畑のような緑地の上でした。神戸の街の美しさに思わず見とれます。

誰を待つこともなく過ぐ秋の暮  一風(2)

ロープウェイ乗り場に戻ると皆さんおそろい。
女性は、先発隊のだっくすさん、さくらさんの他に、つきひさん、どんぐりさん、りっこさんの5名。男性は、ひろひろさん、播町さん、弥太郎さん、英さん、一風さん、見水さんの6名。本日の参加者は11名。

 蛸地蔵さんは日曜出勤、稲村さんは温泉へ、かをるさんはアメリカのお姉さんのもとへ旅行中、菊太郎さんは菊花展で多忙、今年の神戸ビエンナーレで準優勝を獲得したカメラマンのろまん亭さんも京都撮影旅行で欠席なので、今日は播町さんが写真撮影。
「わたしはね、仕事をしていないとね」と、つきひさん、近況報告をしつつ、「きょうは、楽しくて」。

経を読み心静かに秋の声  一風(1)

秋の声に聴き入っていた一風さん、「さあ、出発」と、ぞろぞろロープウェイに乗り込んでから、「しまった」。大事な傘を置いてきぼり。駅に連絡し、帰りに受け取ることに。


展望 滝川の中行く登山道なれば 誓子

天気のせいか客は少なく、ロープウェイ「夢風船」にゆったり3人ずつ乗ります。はじめの上昇は急です。「45度ないか」「ないない」。

ゴンドラの赤色の先秋の空  一風(2)

山陽新幹線「新神戸駅」ができたのは1972年。布引の滝の登り口が、ある日都会になり、やがて地下鉄駅や巨大ホテルができて賑わいました。
布引ハーブ園のオープンは震災前の1991年。今年は開園20周年です。
「夢風船」からは東神戸の明るい街並が一望。高層マンションが増えました。

薄紅葉布引の滝よぢれつつ  つきひ(2)

真下を見れば、いくつかの滝は貯水池から続くよじれた白い布のようです。

さらしけむ甲斐もあるかな山姫のたつねて来つる布引の滝  藤原師実

布引の滝は、都に近かったので平安・鎌倉時代の歌人たちも訪れ、歌に詠みました。歌枕好きな芭蕉も「笈の小文」の旅のあと、滝に立ち寄っています。

秋あそぶ災害いずこ市が原  英

市が原も見えます。英さんは、1967年に水害のあった市が原を歩くハイキング客に目が行ったようです。

ゴンドラや秋登りつつハーブ園  ひろひろ(1)

空中散歩を楽しんでいると、ハーブ園が見えてきました。

秋天に夢風船の五分間  弥太郎(3)
コスモスの群落のうえロープウェイ  弥太郎(3)


秋のさわやかさいっぱいの佳句です。



風の丘 秋風や薄著の躰吹き通る 誓子

夢風船は、ハーブ園南端の風の丘駅で、一旦停止します。ドアが開き、気持ちいい秋風。

秋風とハーブの香も客ロープウェイ  さくら(1)

ひろひろさん、どんぐりさん、播町さんは、風の丘駅で降りて、ハーブ園を下から全部見よう、という計画です。

秋深むハーブの園へ迷ひ込み  どんぐり(3)
ハーブ園名前カタカナ秋時雨  ひろひろ(2)


ひろひろさん、ハーブの名前がカタカナばかりなので食傷気味。

山頂 つきぬけて天上の紺曼珠沙華 誓子

メンバーの大半は、終点の山頂駅で降りて、句会場の確認。展望レストハウスは、レストランとショップだけかと思っていましたが、じっくり見ると、2階に本日の句会場の会議室「ローズマリールーム」もあり、ヨーロッパの古城のような、なかなか凝った建物です。

ハーブ園桜紅葉の句会場  つきひ(1)
わが家にも這わせてみたし蔦紅葉  だっくす(1)


開園20年を経て、樹木も庭の草花も建物となじんで、風格も感じられます。
「ローズマリールーム」で句会準備に忙しいだっくすさんとさくらさんに挨拶し、各自思い思いに吟行へ。

ハーブ園抜けて爽やか摩耶の尾根  見水
尾根結ぶ高圧線や冬節電  ひろひろ(1)


展望レストハウスの奥の柵の外には、摩耶山の尾根に向かう登山道があります。昔は「天狗道」をよく歩きましたが、その道でしょうか。
ひろひろさんは尾根や高圧線を眺めて、電力需要の心配。

ハーブよく匂ふ湿度と秋冷と  つきひ(3)

「湿度」がいいですね、科学的で。雨模様だけど、今は止んで曇り空。つきひさんの好きな天気です。ちょっとひんやりして湿度があるから、今日はよく匂います。

行楽の秋に静かなハーブの香  一風

山歩きの好きな一風さん、花園に迷い込んだ今日の実感かな。
展望レストハウスの中庭には、ひっそりたたずむ落ち着いた英国風のハーブガーデンと、魚と遊ぶ子どもの石像の噴水を真ん中に配置した南欧風のバラ園があります。

秋薔薇雨粒ふふみ静かなり  どんぐり(1)

バラ園でできた、お得意の「ふふみ(含み)」の句。句会では、つきひさんが、どんぐりさんの代表作の一つ「中年の女三人秋薔薇」の句を紹介。

吸い込んでハーブの香りひとりじめ  見水(2)
バラの香や丘に遊びし幼き日  見水


バラそれぞれに香りの説明案内があり、香りの違いにびっくり。香りを吸い込みすぎて、季語も吸い込んで(?)しまいました。バラの香で思い出したのは、半世紀以上前の野バラが咲くジェームス山。
句帳を手に悩んでいると、女性二人連れにカメラのシャッターを頼まれました。お二人を中心にバラ園と古城を入れてパチリ。



ハーブガーデン 山窪は蜜柑の花の匂ひ壺 誓子

広くて見どころの多いハーブ園を吟行します。

夜ならば一千万弗花野ゆく  播町
登り吐息降り溜め息山粧ふ  播町(1)


 神戸港を望む雄大な山の自然に、心が開放されます。

野菊咲く港が見える丘下る  弥太郎(3)
秋冷や海光反射ハーブ園  弥太郎(1)
細い茎捩れ揺れてる秋桜  弥太郎


今を盛りにコスモスが咲き誇っています。

コスモスの濃淡互いを引き立てる  だっくす
秋風にチェリーセージのすぐ揺れて  だっくす(1)


サクランボに似た甘い香りのチェリーセージが気に入ったよう。

枯葉散るメタセコイアは知らんぷり  りっこ(2)
秋時雨とりどりの花ふるわせて  りっこ


観察眼と表現力、いつもながら的確です。

秋茄子の写真撮る娘(こ)に父母の微笑(えみ)  一風(3)

お得意の家族愛にあふれる句です。カップルや家族連れ、いろいろな人たちが、ハーブ園を思い思いに楽しんでいます。

トマトそばマリーゴールド虫さける  英
サフランのかれんな花や秋深し  英
ハーブ園いつも見ていた藍の花  英


英さんは、ハーブガイドツアーの説明もヒントに句づくり。カラフルな句ができました。





ガーデンテラス 巨き船出でゆき蜃気楼となる 誓子

ハーブ園の散策も1時間経過し、締切時刻まであと2時間。
風の丘駅と山頂駅の中間地点、ガーデンテラスになんとなく集まり、神戸港を見下ろします。
やや色づいた谷間に、第1突堤から第4突堤、ポーアイと空港島、メリケンパークやハーバーランドがよく見えます。作業船は日曜日で停泊したままです。

木製のデッキに並び秋惜む  つきひ(3)
空港も沖行く船も霧に消ゆ  りっこ(3)


「秋の霧は春の靄(もや)と同じ。海の霧は「じり」といいます」
 句会で、つきひさんの補足解説。

わが神戸港目交(まなかい)に小鳥鳴く  どんぐり(1)
ハーブ嗅ぎ港眼下に秋の汗  ひろひろ(1)


ガーデンテラスには、オープンカフェもあって、何組か食事をしています。売店もあまり混んでいないし、軽くすますならここで、と全員一致。
メニューは、薬膳カレーが人気ですが、ハーブバーガーもあります。

秋の日やハーブよしなおビーフよし  見水

バーガーにはポテトチップスも添えられ、ボリューム満点でした。
食べ終えた頃、上から播町さんの声。売店の2階はミントカフェで、播町さんらも薬膳カレーで昼食中。

秋思ありカフェテラスにハーブ茶を  播町(1)

ハーブ茶でなく、泡の飲み物でした。

グァバの実を味わい句会はじまりぬ  りっこ

その頃、南国のフルーツを味わった方もいました。
ガーデンテラスの一角に足湯があります。本日のハーブはローズマリー。

セーターの娘ら足湯せるハーブ園  つきひ
爽やかや足喜びしハーブの湯  さくら


さくらさん、足湯も満喫されたようです。ハーブを、目・鼻・舌・耳・足(?)の五感で味わい、癒しとパワーがぐんぐん上昇。

景色秋句友下向きはしるペン  ひろひろ

俳句5句提出は、5枚のスケッチを描いて提出するようなもの。締切時刻が迫ってくるとあせります。今日一日の感動の言葉を選びます。

秋草の名一つ覚え一つ買ふ  播町(4)

 句会場はショップの2階。播町さん、ここで最後の1句をキャッチ。



ローズマリー 懸崖菊両翼ありて飛ばんとす 誓子

午後1時30分が出句しめきり時刻。展望レストハウス2階のローズマリールームに全員集合。にぎやかに句会のはじまりです。
提出された短冊をバラし、手分けして清書。選句表を完成させ、全員にコピーを配付。ついでに飲み物の買い出しも。
「ハーブティーやな」とこだわりましたが、ペットボトルのハーブティーはなく、コーヒーもない。紅茶ならある、と紅茶で。

午後1時50分、つきひさんとだっくすさんの進行で句会が始まりました。
まず、今日はたっぷり20分間かけて各自、他のメンバーの句を選びます。8句選んで、特選句1句は2点、その他7句は各1点、と各人の持ち点は計9点。参加者11名の総点数99点の争奪戦です。
今回の新趣向は、11名がそれぞれ特選句()に選んだ句に、賞品をプレゼントをしようというもの(もっともすべて百均で調達したものですが)。もしその句を2人が特選句に選べば賞品は2つです。

見事特選句に選ばれたのは、次の8句でした。

おり立ちて木の実草の実風の丘     どんぐり(6)◎◎

素敵な景色が浮かびます。語呂がいい。高得点句です。

冬薔薇の誇り高さや散りてなほ      りっこ(2)◎

バラは散っても高貴であってほしい。同感。

ハーブの香満ちたる園に秋惜しむ     だっくす(5)◎

ハーブの癒しとパワーが「満ち」、秋惜しむ、がいい。

秋雨にローズマリーのさえる青      英(2)

シンプルに言い切ったのがいい。

ハーブ茶やシンプルライフインオータム  播町(5)◎◎

おしゃれな句。すべて英語でなくちょっと残したのがいい。

見はるかす神戸空港もみじ越し      さくら(3)◎

遠くのものと近くのもの、遠近感のある句。

秋の雨静かに海に浮かぶ街        見水(10)◎◎

本日ダントツの最高得点句。ハーブ園でから眺める海は雨のけぶり、かつての華やかな衣装をまとったポートアイランドは静かな街のたたずまいでした。

秋深むローズマリーの足湯かな      どんぐり(4)◎

素敵な癒しの句です。どんぐりさんは2句で◎3つを獲得。

以上で本日の句のすべての獲得点数が決まりました。
総点数99点の行方は、女性軍5名で51点、男性軍6名で48点。今回も女性軍勝利。どんぐりさんは出句した5句すべて得点のパーフェクトでした。



表彰式です。各賞と受賞者は、次のとおりです。
1位 優勝    どんぐり(15点) はちみつ+ハーブティー
2位 準優勝   見水  (12点) ハーブ枕
3位 殊勲賞   さくら (11点) ハーブの足枕
3位 敢闘賞   播町  (11点) ボトルスパイス+ハーブティー
5位 技能賞   弥太郎 (10点) はちみつ
6位 布引賞   つきひ ( 9点) ハーブ枕(小)
6位 布引賞   だっくす( 9点) ハーブ枕(小)
8位 布引賞   一風  ( 8点) ハーブ枕(小)
9位 逆引技能賞 りっこ ( 7点) ハーブクッキー
10位 逆引敢闘賞 ひろひろ( 5点) ハーブティー+ポーチ
11位 逆引殊勲賞 英   ( 2点) ハーブパイ
予定どおり午後4時30分に句会終了。


ザ・テラス 秋祭鬼面をかぶり心も鬼 誓子

句会を終え、お待ちかねの反省会兼懇親会。会場はさくらさんの「わが青春の布引」の跡地に建つANAクラウンプラザホテル4階「ザ・テラス」。食事はビュッフェスタイル(バイキング)。時間は午後5時30分~午後7時30分の2時間に限定されています。

10月31日のハロウィン前日なので、ウエイターやウエイトレスはカボチャ色の衣装でサービス。家族連れで満席です。
デザートもホテルらしく豪華に並べていますが、まずメインディッシュの肉料理や寿司やサラダを皿一杯に盛って席へ。グラスビール一杯1000円と聞いて、急遽、飲み放題に変更。平均年齢六十ン歳のシニアの集まりとは思えません。

「あ、忘れてた。優勝者どんぐりさん、一言!」
どんぐりさんの喜びの言葉、お聞きしました。どんぐりさんの優勝は須磨句会以来2度目です。
「カボチャがおいしい」「このカツはだめ」「チョコレートの噴水のデザート面白そうやなあ」…料理の情報交換をしながら懇親会は続き、午後7時30分でお開き。五感すべてが満たされた秋の休日でした。
雨も降りだし、季節は秋から冬へ向かっています。



海に出て木枯帰るところなし 誓子

お世話いただいた、だっくすさん、さくらさんに心から感謝。
そして、次回、来春の句会に期待。これから寒くなりますが、皆さんご健康で。少々早いですが、よいお年を。

2011.11 文/mimizu 写真/bantyo,

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2008=石山寺句会

2013-02-23 | 吟行句会

源氏千年紀・近江惜春紀行





春風やつきひさんの句の本届く    りっこ
春らんまん満を持したる初句集    だっくす


 つきひ先生が初句集「俳句の時間」を出版。RANDOM句会の各メンバーにも送っていただきました。
第6回RANDOM句会は、句集出版の祝賀会を兼ねた吟行です。

さくらさんとだっくすさんのお世話で、近江・石山寺が開催地に選ばれました。今年2008年は源氏物語が世に出て千年にあたる記念の年。各地でイベントが始まっています。紫式部が物語の想をねった石山寺なら、いい句ができるのでは、と期待がふくらみます。

薄雲の巻 

――― 近江からはじめましょう(司馬遼太郎「街道をゆく1)



4月19日(土)朝、「午前9時13分石山駅着新快速の前から3両目に乗ること」の案内どおり乗り込むと、いました、いました。神戸から1時間で着けるのは楽ちんです。この春に定年退職した某氏と定年談義に花を咲かせているとあっという間にJR石山駅に到着。

 雨の心配はないものの青空がほとんど見えない曇り空。駅前から石山寺まではバスです。
「こういう天気が一番好き」とつきひ先生。そうかなあ、もっとカラッと晴れてくれへんかな。今回の参加者は女性軍が4名、男性軍が7名の計11名。早やいつものごとく男性軍がコテンパンに負かされる予感。

春なのに裸になって百日紅    ひろひろ

源氏物語千年紀のノボリが並ぶ石山寺への道で、ひろひろ氏が早速、さるすべりを発見。季語が3つも重なっています。「季寄せを贈りましょうか」とつきひ先生。
仁王がにらみあう鎌倉初期建立の大門の前で全員集合写真。

行く春の近江のみほとけ頬ゆるめ  播町(1)

(○印の数字は句会獲得点数)




花散る里の巻 ――― あけぼのはまだ紫にほととぎす(芭蕉)


山門をくぐれば若葉身もみどり りっこ
石山寺若葉満面山萌ゆる    ひろひろ


 石山寺散策は、午前11時までの1時間20分。入山料と豊浄殿(紫式部展)入場料、源氏物語千年紀「源氏夢回廊」入場料のセット券(大人1,000円)を買って、石段を登ります。



 まずは石山寺の由来となった天然記念物の奇岩「硅灰石」を拝観。

神鎮(しず)む石山の上散り桜  弥太郎(1)
石山寺落花の巻の花ごよみ つきひ(1)
落花しきり寂聴源氏巻の三 播町(1)
メモの上桜の萼(がく)が鎮座した ひろひろ



 わが阪神間の桜の名所、生田川、夙川、武庫川そして有馬などは、1週間前に桜は終わっていますが、ここはまだ落花の最中。石の上、苔の上など一面にハラハラと桜が散っています。

 奇岩を拝観した後は、左手本堂へ。滋賀県下最古の木造建築物。虫食いにも歴史を感じさせます。中は平安中期のもの、外は淀君の修復とか。本堂を参詣して山に向かおうとすると、「源氏の間」が現れます。





春風を背に源氏の間覗きみる 見水(2)

 1004年夏に1週間、この部屋にこもって本尊の観音菩薩に創作を祈願。瀬田川の対岸の山から月が昇り、その風情を眺めて、須磨、明石の巻の筆をとった、との説明。
 メンバーたちも大いに創作意欲が沸いたようでした。

新緑に紫式部(しきぶ)の思い今もなお     一風(4)
千年も語ることあり春の寺      蛸地蔵(1)
春惜しむ式部の夢を思いつつ     蛸地蔵(3)
式部の間憂ひの君は春の野へ     りっこ(1)


 山に登る道は手入れされ、お寺巡りというより、植物園で森林浴をしているような爽快さです。

石山寺の石に若草しっとりと    一風(1)
山(みつば)つつじ愛しき人にどこか似て  一風(2)
清らかにたたずみさくや山つつじ  蛸地蔵(1)
鳥語浴び石山寺の春深し    さくら(1) 


 青空がだんだん広がってきて、小鳥のさえずりがあちこちから聞こえます。

 

どこからか、ご詠歌も…

ご詠歌にうぐいす唱和石山寺  りっこ(3)
樹々を縫ひ洩れ来る読経春深し つきひ(4)
春風に御詠歌聞こゆ光堂    弥太郎(1)
見上げればしだれ桜にご詠歌が  ろまん亭
石山のしだれ桜に間に合ひし  だっくす


 しだれ桜満開の豊浄殿は源氏物語図屏風や蒔絵などの宝物を展示していました。



         (本堂手前の蓮如堂の源氏物語図屏風-模造-)

春闌けて屏風絵の金剥落す  つきひ(3)

 



月見亭まで下りてくると、眼下に瀬田川が望めます。川の“上流”に目を走らせると、はるか先に琵琶湖が見え、比叡、比良の山々が青くかすんでいます。

ゆく春や瀬田川眼下風温む   ひろひろ(1)
瀬田の橋重なる果ての春の湖 見水(4)


 集合時刻までの時間が少なくなってきました。源氏物語千年紀「源氏夢回廊」の会場にいそがなくては。




花舞ひし源氏夢回廊潜る  さくら
行く春の近江に源氏甦る  だっくす(1)
王朝の紅の色外は春    だっくす(1)
歴日の夢回廊の残花かな つきひ(4)

                     
 ベニバナで染め上げた真紅の布をはじめ、植物で染めたと思えない鮮やかな青・黄・紫などの布で源氏物語の世界を表現する「吉岡幸雄襲(かさ)ね衣展」では、女性たちが熱心に説明を聴いているのが印象的でした。

春惜しむ縁なき源氏に花咲かせ  播町(2)  
お聖さんの直筆原稿春のどか   見水(4)


「田辺聖子源氏物語文学館」は、お聖さんの講演のテープが流れ、鉛筆書きの直筆原稿なども展示。“昔の女学生”のような几帳面なきれいな字でした。
午前11時過ぎ、待機をしている「あみ定」のマイクロバスに全員乗り込み、なごりを惜しみつつ石山寺を離れました。

垂るるや桜の紅の瀬田川に  さくら




浮舟の巻ーーーまづ頼む椎の木もあり夏木立(芭蕉)


 送迎のマイクロバスは数分ほどで、料亭「あみ定」に到着。「あみ定」は瀬田の唐橋のたもと、琵琶湖から流れ出る瀬田川に浮く舟のような細長い島の上に位置しています。
 投句までの残り時間はあと30分。めいめい唐橋見物をしたり、水辺に腰かけてあたりを眺め、句材を探します。



唐橋と戦の歴史花曇      弥太郎(1)
唐橋のたもとに龍神馬酔木咲く  弥太郎
ボート部のオール煌めき夏近し  つきひ
瀬田川の水面が光る初夏の風   一風
オール光り空にはトンビ瀬田の川 ろまん亭(1)









 午前11時50分が一人5句の投句の締切時刻。眺望抜群の「あみ定」の座敷に一人また一人と戻ってきて歳時記を片手にメモ帳とにらめっこ。なかなか投句用の色短冊には手がのびません。

春憂や四苦八苦する五七五   りっこ

「漢字忘れた、辞書かして」
 締切時刻にせかされてやっと投句し、お茶とお菓子で一服。
 11名5句ずつ55句と、投句で参加の波平船長夫人・富子画伯の1句の合計56句を順不同・作者不明で清書し、コピーを配付。各人10分間で5句ずつ選び、うち1句を特選句として2点に換算のルール。総点数66点の争奪戦です。

千年をたずねる人や柿若葉   富子

 三木のお宅の柿若葉は美しいんでしょうね。
 あわただしく各人が選句を終え、つきひ先生進行で選句の発表が始まります。
「とてもいい句が出来ているように思います」と、つきひ先生。今日は進行を速めるため、各人が付けた点数だけを順に報告して獲得点数を集計し、受賞者を決めてから、食事の時間まで、高得点句や自信作の講評をすることに。


 まずは獲得点数の結果発表。
優勝=蛸地蔵氏・つきひ氏・ともに12点
 3位=見水氏・10点、4位=播町氏・8点、5位=一風氏・7点
 ブービー賞=ジャンケンによりひろひろ氏

 総点数66点のゆくえは、女性軍4名で24点、男性軍7名で42点。予想に反し、女性軍・男性軍は平均点で偶然にも同点、めでたく引き分けでした。今回の句会のとっておきの高得点句2句と選んだメンバーの講評は以下のとおり。


観音も少し艶めく春の寺  蛸地蔵 (7)

「春らしくて、観音、艶めく、春の寺、とホンマ色っぽい」(笑)
「石山寺の本尊の観音さんは秘仏で見れない。想像で詠んだ句やね」
「近江は昔から観音信仰が盛んで、人がやさしいんやな」
         
「石山寺はご詠歌も流れてるけど、抹香くさくなく明るいイメージの寺。そやから観光地にもなって若い人もやってくる」




若葉風艇の掛け声唐橋に  さくら (5)

「さわやかな風に吹かれてボートを漕ぐ若者の景色が見える」
「若々しくてええな」
「ボート、しか言葉が出てこんかった。艇、が素晴らしい」 
「瀬田の唐橋に大学のボート部員の元気な声が響いている感じがする。われーは、うーみのーこー…、琵琶湖就航の歌やったかな」
 句会が終わり、昼食の用意ができるまで、しばし休憩。さわやかな陽射しと心地よい風の中、ボートや新緑に見とれてしまいます。


窓はなち新幹線に山みどり ろまん亭

 りっこさんは、座敷の前の水辺の小さな広場で四つ葉のクローバーを見つけました。



花の宴の巻 
――― 木のもとに汁も鱠(なます)も桜かな(芭蕉)







 昼食の膳が並び、ビールで乾杯のあと、句会の表彰式。優勝者2名、3位、ブービー賞者に、特産品などの賞品を贈呈。

柳風唐橋たもと祝い膳  ろまん亭

 いよいよ、本日のメインイベントです。「俳句の時間」出版祝賀会。さくらさん・だっくすさんがつきひ先生へのお祝いに選んだのは、句集の装丁に合わせた藤色の日傘。句集には日傘の句もありました。

                    

寄り合うて草の名を聞く日傘かな つきひ
浜風に日傘何度もとられさう   つきひ
日傘たたむ桂信子のポスターに  つきひ


 つきひ先生から、出版のいきさつや作品の選び方、出版社の行き届いた配慮、本のタイトルは当初「姫新線有情」を考えたが迷ったすえ「俳句の時間」としたこと、など句集づくりの楽しかった苦労話をお聞きしました。




 つぎに、各メンバーからお祝いの句の披露。
 お祝い句は色紙に寄せ書きしました。

咲き初めし藤の気品や初句集   さくら
刻々と古希の上梓や桜鯛     どんぐり
瀬戸は凪里は新芽と雉の声     波平
ガーチャンの出した句集が春めくる 一風
ときかさねおもひでのうたきみが春 節雄
満開の桜に映る初句集       ろまん亭
虫の声聞こえる旅路姫新線     弥太郎
春先に四季折々の俳句便      ひろひろ
春風に思い吹き寄せ初句集     蛸地蔵
大毛虫「俳句の時間」に赤面す   見水
夏立つや風の色濃き近江瀬田    播町(4)



 播町氏は、本日できたてほやほやのつきひ先生お気に入り特選句を、お祝い句として捧げました。りっこさん・だっくすさんのお祝い句は冒頭に紹介しています。

 各自一番気に入った一句の披露、は最初から脱線。
「いちひんもく…がいい」、「それそれ!」と句への賛辞をはじめるや、
つきひ先生、「いっぴんめ、ですけど」。

一品目全員一致冷奴       つきひ

「どこそこにあるあの安い居酒屋。いつ、なんのときで、いっしょに行ったのはだれそれで…」とつきひ先生の元気のいい解説が続く。全員一致でふんふん。
 ついでに人物を彷彿とさせるあの句この句のモデル明かし。「あの句はだれそれで、この句はだれそれよ」。「やっぱり」もあり「へー、そう」もあり。

句に詠まれゐること知らぬ大毛虫 つきひ

 句集巻頭句の絶賛が続くと「最初のページしか読んでくれなかったのかしら」。



トロ箱のべらに氷の容赦なく   つきひ   
自づから起承転結蝉しぐれ    つきひ
有馬まで各駅停車春惜しむ    つきひ
菜の花を洗ふ浮力を押さへつつ  つきひ
打ち水といふもてなしも加はりて つきひ
デジカメも不慣れサングラスも不慣れ   つきひ
ねぢ花の幼きはまだねぢれずに  つきひ
  
                
 各自一番気に入った句は、選んだ人の人柄が出るのかしらん。

滲む墨かすれる墨や梅雨館    つきひ

 りっこ(書家・風子)さんは、この句を色紙にしたため、つきひ先生にプレゼント。
 つきひ先生大感激。
 少しビールがまわってきました。

花宴今も昔も踊る阿呆   ひろひろ

 しばらくぶりの出会いに、積もる話がとびかいます。
 弥太郎氏は「私の百人一句」のコピーを用意して紹介。いにしえの俳人から現代の有名人、友人、ご親戚…自分の好みでアトランダムに句を選び、A4紙2枚に。「短歌」や「詩」でも試みているとか。歴史研究の余技なんでしょう。われらド素人の駄句も入っているので、ほろ酔い気分で盛り上がることしきり。

句座果てて瀬田あみ定のしじみ汁   播町



 瀬田の唐橋は近江八景の「瀬田夕照」で有名。まだ午後4時前ですが、メンバーの顔は夕照(?)に染まってまっ赤。後ろの船着場では、夕方に出航するのでしょうか、屋形船の宴席準備に大忙し。食材を積み込み中の「あみ定」のお兄さんにお願いしてシャッターを押してもらいました。
 今回の吟行のしめくくりはこの句しかありません。

行く春を近江の人と惜しみける(芭蕉)

 お世話いただいたさくらさんとだっくすさんに心から感謝。

2008.GW 文:mimizu/芸術的写真:romantei/☆説明的写真:mimizu


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2007=伊丹探鳥忘年句会

2013-02-20 | 吟行句会


伊丹きぶくれ俳諧記




次回は、おにつらの伊丹、かきもり文庫―――
女性軍圧倒で終わった春の須磨寺雨中吟句会後の宴会がお開きになるころ、誰からともなく声があがり、案内役は伊丹の里人・蛸地蔵氏、幹事はだっくすさんで、伊丹句会の準備がはじまりました。
RANDOM発刊記念有馬句会から5年半。5回目にして初の冬の句会です。

昆陽池へ ――おもしろさ急には見えぬすすきかな 鬼貫

12月9日(日)12時過ぎの阪急伊丹駅。女性軍が昼食もそこそこに参加者配付用の案内パンフと短冊を用意して臨戦態勢の中、案内役の伊丹の里人・蛸地蔵氏がいつもの自然体で到着。

年の暮今年もものを思わざり    蛸地蔵

ぱらぱらとあとの男性軍が集まり、最後に播町氏が改札から登場。今回集まったのは7名。つきひ先生は本日学会出席のあと伊丹に来られ、句会からご一緒と、まさに師走のあわただしいスケジュール。

学会に身を委ねるも漱石忌    つきひ
短日や句座と学会振り分けて   つきひ


蛸地蔵氏の引率で、吟行スタート。
阪急伊丹駅はショッピングゾーン一体型の都心ビル。エスカレーターで1階に下り、外に出るとバスターミナルになっています。

本日は、バスで昆陽池に向かい、渡り鳥を観察した後、再び市街地に戻り、日本最古の酒蔵と日本3大俳諧コレクションの1つ「柿衛(かきもり)文庫」を訪ね、江戸時代の商家の座敷で句会、その後地ビールと伊丹の酒・白雪を味わう忘年会。かつての文人墨客さながら伊丹の文化にどっぷり浸る贅沢な日程です。

切れ目なく雲急ぎ行く冬近し   かをる

この日は晴れたり曇ったりの変わりやすい天気。今年は10月も真夏並みに暑く、12月になっても紅葉が残りまだ晩秋の気配。お互いの近況報告をし、車窓に映る整然とした住宅街に「住みやすそうなええ街やな」などと感心しているうちに、昆陽池公園西の松ヶ丘バス停に到着。

冬日中(ひなか)秋残してや樹々の枝  蛸地蔵
昆陽池をぐるりと囲み冬紅葉      だっくす
風に舞う色とりどりの落ち葉かな    だっくす
うっとしくてやがていとしき落葉かな  さくら


昆陽池をかこむ緑地は見事な散策路。紅葉した木々と地面をおおう落ち葉。まるでコローか浅井忠の絵の中にいる気分です。



水鳥たち ――水鳥の重たく見えて浮きにけり 鬼貫

さざ波の立つ昆陽の池冬隣     さくら
渡り鳥眼下に昆陽のやまと島    見水


上から見れば日本列島の形をしている島を中心に、寒々とした池の周囲を、時計と逆まわりに、たくさんの鳥が群がっている「野鳥観察橋」までぞろぞろ歩いていくと、いるわいるわ、そこは想像を絶する水鳥の楽園でした。

広げたる羽の白さや大白鳥      だっくす
白鳥のたわむれ遊ぶ美わしき     一風
鴨の群れより添い水面すいすいと   一風
池三つ静かに浮かぶ夫婦ガモ     一風
冬空に孫抱いて見るカワウ       一風


一風氏は冬の岸辺で家族のしあわせに思いをはせています。

鴨の子の羽搏(はう)ちて前へ進まざる  播町
逆上りせよと囃されかいつぶり      播町
冬鳥に交じりて集う野バトかな      蛸地蔵
よたよたと水鳥歩く重そうに       見水


よほど人間慣れしているのか近づいても逃げようとしません。鳥たちのかわいいしぐさに時を忘れて見入ってしまいます。
近所に住む子供たちでしょうか。エサをやりすぎないよう注意看板もあるのですが、ちぎったパンのようなものを上に投げ上げている。と、それを見つけて真っ白なゆりかもめたちがやってきて上手にエサをついばんでいきます。 

子等の声おこる羽音にかき消され   かをる
鳥どりが群れて騒がし冬の池     蛸地蔵
児に従いて水鳥の群騒がしい     蛸地蔵
冬空をなほ低くするゆりかもめ    播町
ゆりかもめ舞い空中都市出現す   見水


各人思い思いに浮かんだ言葉をメモ。そろそろ移動です。

寒禽の翔び立ち影を残しけり     播町

公園の出口近くに、市民会館のスワンホールがあります。暖をとろうとレストランでコーヒータイム。テーブルを囲むと、蛸地蔵氏が思いつくままに伊丹の歴史を語り始めます。古墳(塚)が多いこと。行基のこと。稲野(猪名野)のこと。昆陽池のこと。鴻池善右衛門のこと。京都や大阪との文化交流のこと。清酒の誕生秘話(小僧が灰を投げ入れた?)のこと。話は尽きません。長く暮らしている土地への愛着のこもったお話でした。

昆陽の里歴史ひもとき冬ぬくし    かをる
郷の人歴史を語る冬の句座      かをる
落葉踏み歴史の郷を案内さる     さくら

 
私たち一行は、このあと再びバスで市街地に戻ります。
この頃、入れ違いにつきひ先生が伊丹に到着しタクシーで昆陽池へ。ところが降ろされたのは私たちが楽しんだ野鳥観察橋とは対岸の昆虫館の場所でした。

逆光の昆陽池黒く鴨浮寝        つきひ
二羽の鴨二羽の引きゆく水尾明かり  つきひ
波自在更に自在に鴨の首        つきひ


「水尾(みお)明かり」とは、水鳥が水面を進むときにできる航跡が陽に反射して明るくなることをいうのだそうです。俳句独特の言葉なんでしょうね。「自在」も最近特にこだわって使っている言葉だとか。「二羽、二羽」、「自在、自在」と言葉を重ねられたのも、熟慮の末の高度なテクニックなのだそうですが、句会の場では心無い悪童たちに「ニワ、ニワ、ニワ!」、「テクニシャン!」と、けちょんけちょんにされてしまいました。



鬼貫句碑 ――にょつぽりと秋の空なる富士の山 鬼貫

メインストリートの伊丹シティホテル前バス停で下車すると、三井住友銀行前の鬼貫句碑に出会います。ここが上島鬼貫の出生の地、酒造家油屋の場所。

「これ何て書いとんや」石碑の裏を見ても説明書きはなさそうです。
最初に「ふ」に似た文字があり、読めない。
中の句に「秋」があり、下の句に「富士の山」があるので、「にょつぽりと…の句でしょうね」と言ったものの、「ふ」がなぜ「に」なのか、「二」が「ふ」のように見えるだけなのか、わからずじまい。

鬼貫は富裕な酒造家の三男坊でしたが、俳諧に親しむ一方、医学や経済を学んで、筑後三池、大和郡山、越前大野の各藩に数年間ずつ武士として出仕もし、後年は、俳諧に専念して、「ひとりごと」などの本を書いて名を馳せましたが、弟子をとらず、77歳で亡くなると忘れられてゆきました。

今から300年前の芭蕉とほぼ同時代の人で、貞門、談林そして蕉風へと俳諧が発展していく華やかな元禄の時代を生き、「東の芭蕉・西の鬼貫」と並び称された俳人です。珠玉のように言葉を磨き上げたのが芭蕉なら、技巧を嫌ってありのままの言葉をよしとしたのが鬼貫でした。のちに、蕪村や炭太祇が鬼貫を高く評価しました。

よく知られた句に行水の捨てどころなし虫の声」、「秋風の吹きわたりけり人の顔」、「冬枯れや平等院の庭の面」などがあります。



酒蔵の郷 ――ひうひうと風は空ゆく冬ぼたん 鬼貫

銀行の通りを一歩中に入ると、「山ハ富士、酒ハ白雪」(頼山陽)の小西酒造本社や、本日の忘年会の会場となる古い酒蔵を改造したレストラン、法専寺などがあり、町並み保存の石畳の道が広がります。伊丹も阪神・淡路大震災の被害は大きかったのですが、いまはきれいに整備されています。

冬空のビルの谷間に古き寺      一風
熱燗があとに控えし伊丹句座     だっくす
飲み干してみたし伊丹の秋の酒    さくら
澄みわたる清酒こんこん冬の空    見水
着ぶくれて酒蔵の郷(さと)徘徊す   見水


本日の吟行の最終目的地、柿衛文庫・伊丹市立美術館、江戸時代の町屋である旧岡田家住宅(酒蔵)・旧石橋家住宅などの一画は「みやのまえ文化の郷」という魅力的な愛称がつけられています。
最初に、1674年に建てられた現存する日本最古の酒蔵、旧岡田家の酒蔵を見学。ボランティアらしき方が案内をされていて、伊丹の文化財マップなどいただきました。

「柿衛文庫」は、頼山陽も飲酒の後、酔い覚ましに好んで食べた岡田家自慢の柿にちなんでつけられました。「奥の細道」の草稿や蕪村の書画など10000点に及ぶ貴重な俳諧の資料が所蔵され、一部が展示されています。
この日は美術館を中心に一画全部を使った子供たちに人気の特別展示のため若いお母さんと子供連れでにぎわっていましたが、私たちの目当ての柿衛文庫はひっそりと静かでした。

柿衛に冬鵙(もず)をきく昼下がり   播町
文庫守る柿二世なり実のたわわ   さくら
歴史継ぐ柿衛文庫残り柿       かをる


柿衛文庫の展示室では館内放送でモズの鳴き声を流していたそうです。



冬の座敷 ――ものすごやあらおもしろや帰り花 鬼貫

午後3時30分が一人5句の投句の締切時刻。蛸地蔵氏が予約していた旧石橋家住宅の奥座敷に一人また一人と集まってきます。
「あ、つきひ先生こんにちは。よろしく」
つきひ先生は、みんなのおやつに手作りのクリスマス菓子シュトーレンを用意してお待ちでした。

酒蔵のまちの旧家の冬座敷      だっくす

8名5句ずつ40句と、今回は投句のみで参加のひろひろ氏の4句の合計44句を順不同・作者不明で清書し、それから各人が5句ずつ選び、うち1句を特選句として2点に換算するのが本日のルール。総点数48点の争奪戦となります。

冬来たり蝋梅の葉が散り急ぐ     ひろひろ
木漏れ日にうとうと昼寝風邪まねく  ひろひろ
行きたしや酒くらのまち伊丹句座   ひろひろ
白雪の酒飲み干して友集う      ひろひろ


各人選句が終わり、つきひ先生の進行で選句の発表が始まります。
「きょうはいい句がたくさん出来ています」と、つきひ先生が前置き。
その言葉に励まされ、みな点者気取りで、にぎやかに句会は進みました。

 結果発表。
  優勝=見水氏・10点
  二位=だっくす氏・かをる氏・ともに9点
  四位=つきひ氏・8点
総点数48点のゆくえでいえば、女性軍4名で30点、男性軍5名で18点で、
今回も女性軍が圧倒しました。高得点句は再掲となりますが次のとおり(○印の数字は獲得点数)。

着ぶくれて酒蔵の郷(さと)徘徊す  見水  (6)
波自在更に自在に鴨の首       つきひ (4)
昆陽の里歴史ひもとき冬ぬくし    かをる (4)
ゆりかもめ舞い空中都市出現す   見水  (4)


句会を終え、場所を替えて忘年会。少し歩き、ブルワリービレッジ長寿蔵へ。小西酒造の古い酒蔵をリニューアルした建物で、黒くどっしりして天井が高く、ドイツレストランのような風格があります。
隅の予約席を陣取り、パーティーが始まりました。

「白雪は結婚式には出したらあかんねん。とけて流れるゆうて」
「ひろひろさん来たかったやろな」
気の利いた小鉢や料理が運ばれてきます。ビールや清酒もいろんな種類を少しずつ組み合わせて出してくれるので、女性軍も満足そうです。

酔わないうちに表彰式を、と、見水氏に賞品の白雪のボトルが手渡されます。「一言」と言われて、「鬼貫の水鳥の句に挑戦した『よたよたと…』の句に一番苦労したんですけど0点でした」。
つきひ先生、「本歌取りも句会ではやることがあるけど、きょうは伊丹での句会なので鬼貫さん風の奇抜で大げさな句に点が入ったようね」。

12月9日は俳句の世界では漱石忌ですが、見水氏56歳の誕生日でもありました。優勝は、鬼貫さんからの誕生祝いだったのでしょう。

最後に、鬼貫の「歳暮」の一句。
 

惜しめども寝たら起きたら春であろ 鬼貫 

お世話いただいた蛸地蔵氏とだっくすさんに心から感謝。

                               (2007歳末 mimizu記)

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2007=須磨寺かいわい雨中吟

2013-02-15 | 吟行句会
 
須磨寺かいわい雨中吟     
          




須磨は雨でした。春雨は「かそけくあえか」と歳時記にあります。まことに見えないほどの雨が降る4月22日(日)。若葉雨なら夏の季語だし、今日は春なのか夏なのか悩みます。というのもひさびさの吟行だからです。

 12時30分。山陽電車須磨寺駅。上りホーム、下りホーム、そしてJR須磨駅からの徒歩組と集まってきたのは、句会から参加予定の1名を除いた13名。「俳句を詠まなければ楽しい集まりなのに」という初参加者も、「ただいま句集作成中」というベテランもいます。まあほとんどは宴会つき句会ということで参加した人たちですが……。

 駅前の商店街を北へ抜け、須磨寺、離宮公園、神戸女子大、また南へ綱敷天満宮、海岸あたりをそれぞれ勝手に吟行し、3時過ぎに料理屋豊の荘に集合、一人5句投句、そして句会というだんどりです。

重衡の碑に迎えられ花の句座    かをる 

須磨寺駅改札口北側に、「平重衡とらわれの遺跡」の碑が建っています。かをるさん、たちまちの挨拶句。毎日が日曜日組と違ってさすがに現役組は動きが早いです。

 須磨寺前商店街は、かつては明月そば、寿し竹、太子餅本舗、しらはま寿司といった店以外はこの地域の生活圏の商店だったものが、参詣客、観光客向けの店がずいぶん増えています。そのうえ天神さんからお大師さんまでの通りに「智慧の道」という愛称がつけられています。なんとなく昭和レトロという趣きです。

 昼食がまだという人はしらはま寿司に立ち寄り、手押しあなご、太巻きずしを買っています。いやこのために昼食を抜いてきたのでしょう。

参道のあなご香ばし雨の午後     見水 
若葉雨句座に買ひたる大師餅     つきひ
 

 じっさいに句会の場で大師餅をふるまわれご馳走になった手前、この句に1票を入れざるをえません。つきひさんの句は5点獲得しました。作者の作戦勝ちでしょうか。

 タクシーを拾い、いきなり神戸女子大へ行った連衆もいました。そこから南へ坂道を下るコース。今日のメンバーに女子大に勤めている人がいて、高倉台地域の一人暮らしの高齢者のための給食サービスを学生たちといっしょにやっているとのこと。

女子大の葉桜の庭空襲碑       弥太郎  
山と海左右に配し遅桜       だっくす
 

 弥太郎さんは「句を作ったのは初めて」とのこと。けれど昨秋「万葉集から俵万智まで秀歌百選」という冊子をまとめたりという多趣味の人です。葉桜の句で5点獲得。だっくすさんは本日の幹事。あとの句会準備に気がせくのか、このキャンパスでノルマの5句を作ってしまったそうです。




Photo: yataro

離宮公園の西隣りに西尾家住宅があります。神戸市指定有形文化財としては初めての洋館です。つい先日テレビで知ったのですが、建物が修復されレストラン・結婚式場「神戸迎賓館須磨離宮」としてオープンしました。大正8年に建てられたもの。煉瓦造りの2階建、寄棟造りで塔屋がついている。背の高い貴公子のよう姿が雨に映えています。1階と地下の部屋とを見せてもらいました。

夏は来ぬ西尾屋敷に祝婚歌      播町 
須磨離宮華麗の館芝に映ゆ      弥太郎 


 離宮公園へ。歩道橋の上から雨に煙る離宮道、そして須磨浦を展望する。英国風の国登録有形文化財の室谷邸がそこにあるはずでした。西尾邸とは逆に、つい先日取り壊しとなって、赤茶けた更地が虚ろです。

 花によい風にあそばれ離宮坂     楽水 
 離宮道松の緑に添ふうねり      つきひ 
 行平が悲恋の径に春惜しむ     さくら 


 さくらさんはひさびさの句作だそうです。元須磨区民であり、このあたりに詳しく題材が豊富、いかにでも料理しそうです。平安時代の歌人在原行平の名が出てくれば、多井畑から潮汲みにきた姉妹もしお、こふじの松風村雨堂のあたりの句ですね。たしか行平は寂しさを紛らわすために浜辺に流れ着いた木片から一弦琴、須磨琴をつくったとも伝えられている。青葉の笛より一弦琴のほうが今や有名かも知れません。

 
遅桜一弦琴の聞ゆ寺        だっくす 
海長閑小雨の中に船二雙       一風 
雨けむる春のさざ波須磨の海     ひろひろ 


ひろひろさんは体育会系。還暦を過ぎた今もサッカー、水泳、ゴルフが日課だそうで、スポーツでは雨に降られたことはないのに、句会ではいつも「雨男」です。

行平が月や海を眺めていた高台にある離宮公園は、西域探検で著名な西本願寺の大谷光瑞が明治中期に別荘を建てた所。大正3年に宮内省が買い取り武庫離宮としたもの。昭和42年に神戸市立の公園となり、ちょうど今年が開園40周年となる。レストハウスでコーヒーを飲みながら余裕の面々もいます。

 
移ろひの時を訪ねて花の径     かをる 
噴水と若葉競演須磨離宮       稲村
山つつじ離宮の庭も甘くなる     見水


 「子どものころ、つつじの甘い蜜を吸っていませんでしたか?」と見水さん。いつも斬新な句をつくるのに、今回はどういうわけか「甘く」て点が入りません。



Photo: roman

さて、須磨寺の名で知られる真言宗の福祥寺。ちょっとおさらいをしておきましょう。平安時代初期に開山し、千百年以上の歴史がある源平ゆかりの寺で「須磨のお大師さん」として毎月20日21日は参詣客でにぎわいます。一の谷の合戦で源氏方の熊谷次郎直実に討たれた平敦盛の首塚や義経腰掛松があることでも知られています。また、境内にはやたらに文学碑があり、そのうえ震災以降ごちゃごちゃしたハードや骨董市などソフトも多発しなりふり構わないイメージもあり「何だかなあ」という声もある寺でもあります。

青葉ぬれ戦の後か須磨寺は      ろまん亭

この「戦の後」は「お大師さんの翌日」という意味でしょうか。しかも雨で人はほとんど見かけません。いい句が続々と生れました。

須磨寺を包む一山若葉雨      どんぐり 
葉桜も木々に埋もれし寺苑かな    つきひ
木の上に木のあり塔も青葉して    播町
大屋根の雨のむこうは山みどり    ろまん亭


どんぐりさんの句は7点獲得。職場句会での研鑽効果か絶好調です。ろまん亭さんは写真家らしく構図や色彩にこだわった句づくりです。

境内の25もある碑のうち注目は本坊庫裏の庭にある「須磨寺や吹かぬ笛きく木下闇」という芭蕉の句碑でしょうね。

「笈の小文」にはこの句や「月はあれど留守のやうなり須磨の夏」など須磨の句6句が収められている。須磨寺を訪れたのですが、青葉の笛は見なかったという。平敦盛が一の谷の戦いで熊谷直実に討たれたとき鳥羽院より賜った笛を持っていたという平家物語でおなじみの青葉の笛です。句会のメンバーは恐れ多くも芭蕉に挑戦しました。

芭蕉句碑しだれ桜のあいだから    ろまん亭 
須磨寺の青葉の中の武者絵かな    楽水
句碑を守る桜一ト本咲きみちて   どんぐり
須磨寺や若葉の中で笛をきく     稲村
直実を偲ぶ若葉か琵琶の音      一風 


稲村さんも多趣味は有名ですが、その一つが歴史好き。右脳を働かす句よりも宝物館の展示に夢中です。一風さんも苦戦中。敦盛ではなく直実のサイドからの句というのが一風さんらしいスタンスです。
 須磨にまつわる人物といえば、こんな句もありました。正岡子規は明治28年に須磨保養院での療養生活で、尾崎放哉は大正13年に須磨寺大師堂の堂守として、多くの句を残しています。

春雨や子規闘病の須磨の浦      ひろひろ 
春の暮放哉がいる独り言       楽水

 

須磨寺横の堂谷池にあるはずの老舗旅館延命軒は跡形もありません。池のほとりの案内板に源氏物語須磨の巻の一節があります。昔も今も池の畔の桜は若木です。

「須磨には、年返りて、日長くつれづれなるに、植ゑし若木の桜ほのかに咲き初めて、空のけしきうららかなるに、よろづのこと思し出でられて、うち泣きたまふ折多かり」

ぽったりと雨を含んだ八重桜     蛸地蔵  
うす紅の妖しき姿八重桜       蛸地蔵
 
 

3月に定年退職し、さてこれからは何でも挑戦という蛸地蔵さん。ことのほか八重桜がお気に入りのようです。

木の芽風須磨には須磨の香りあり  さくら


それぞれが嘱目句をみやげに午後3時過ぎ、句会場の豊の荘に集まり始めました。楽水さんも登場。昼過ぎまで抜け出せない会合があり、そのため一昨日一人吟行をしたそうです。
一人5句投句。各人が計70句の中から6句を選びます。うち1句を特選句として2点に換算します。そして選句のための沈黙の数十分が過ぎていきます。

にぎやかな句会やその後のさらに喧騒をきわめた宴会の模様は省略して、本日の入賞者を記録しておきます。優勝、どんぐりさん。二位、かをるさん。三位、さくらさんとつきひさん。女性軍が圧倒しました。高得点句は次の通り(○印の数字は獲得点数)。どれもいい句ですねえ。

降っているいないとも見ゆ春の雨  かをる (11)
花のくずつきし雨傘たたみけり   どんぐり (7)
若葉雨百花の彩を際立たす     さくら(6)



男性軍は完敗でした。単なる消費でなくモノをつくりだす遊びの一つとして俳句をやってみたいと、季語なし、季重なり、三段切れなどなんでもありでひるまず挑戦しましたが……。

須磨寺に集まる我ら林住期      弥太郎

いまはやりの林住期という言葉は、もともと古代インドで人生を4つに分けて、うち仕事と家庭を捨て森に住む時期のことらしいのですが、一時的に家を出てやりたいことをやるライフステージとか、定年後の自由で輝かしい時期といった意味で使われているようです。

本日の参加者は、50代4人、60代9人、70代1人。ともかくも「臨終期」にならぬように頭と身体を使いましょうと、本日のプロデューサーだっくすさん、ディレクターつきひさんに感謝しつつ、雨上がりの須磨を後にしました。近くへの旅もなかなかいいものでした。 (2007)




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2003=篠山<陶・俳>紀行 その5・楽水

2013-02-14 | 吟行句会
陶芸に挑戦して=楽水  



                     


 ペンションで実においしいランチをご馳走になって気分爽快になってしまいました。
 そのペンションから暫く気持ちよく田畑の一本道を後にして、篠山からいわゆるデカンショ街道(国道372号線)を通り、今では町村合併で篠山市となっている古市を経由して以前の今田町へと向かうため県道292号線を南下し、途中で陶の里を経て少しながら不安感を持ちながらもいよいよ道路沿いに「夢工房」らしき建物が前方に現れたときにはほっとしました。


 こんにちはと声をかけてもなかなか主らしき人が出て来ず、暫くしてもそもそと小柄な男性が無愛想にやってきてそれが先生だと分かりました。
 中を案内されて玄関から左手の部屋にはテーブルの上に既に素焼きの皿が人数分用意してありましたが、皆の気持ちはそれに文字や絵を書くことではなく、元の土をこねるところからやってみたいと思っていたので、そこで先生はあらためて、土のパックを一人に一つずつ配ってくれて黒っぽい土と赤い土との2種類からそれぞれ選ぶように言って、まずはしっかりとこねることだとこね方について簡単に説明した後、すぐに通路を通って隣りの部屋へと行ってしまうので、皆とりあえず土をこね始めました。


 個人個人で思うままに土をこねてから早速造形に取り掛かるのですが、なかなか思うようにはいかないので、そのつど先生を大声で呼ぶのだが、隣の部屋からの足取りが重い、それもその筈であちらは常設の陶芸教室の真っ最中で若い女性ばかりのグループがおり、要するに先生は掛け持ちで教えているので全く大忙しといったところであった訳で…。


 自分の分が少しばかり形になり始めたので他の人の分も途中で見ておかないといけないと思い、ぐるっと見て回ったところ、それこそ正に各人が個性的に取り組んでおり、一旦は完成に近づいていると思えるのに思い切って元からのやり直しを決心し再度取り掛かっている人や、俳句の文字を掘り込んだのに気に入らないといって表面をまっさらにして書き直しを試みる人など、さまざまでした。


 自らの分もなかなか思い通りに土が形になっていかないもどかしさを大いに感じながら、時間を忘れて懸命に取り組んでいるうちに、どこかしら楽しさも芽生えてきましたが、今度は俳句の文字を書き入れてはみたものの、もっと深く掘り込まなければ焼いたら何が書いてあるのか読めないようになるのではないかとの心配に見舞われて、先生を大声で呼び見てもらい、何とかいけるのではと言われてほっとした次第です。
 しかしながら、これからがまた嫌が上にも緊張するところで、要するにロクロの台から作った物をうまく剥がさないと、つまり底の土が薄いと水の漏れる花瓶や皿ができてしまうことになるので、底をきれいに切り離す糸が在ってその両端を両手でロクロの面にしっかりと沿わせて引っ張っていけばできるのだが、初心者には最も緊張を伴う瞬間なので、またまた先生を呼び出して横で見て貰いながらの作業となりました。


 一応、無事に一発で底切れが出来て、やっと作品らしくなったと思えたその喜びは大きく、物づくりの緊張と楽しさを味わうことが出来ました。
 自分のことに夢中になっている内に、グループ内の面々からも作品がひとまずできたとの安堵の雰囲気が漂い始めていましたが、それなりに満足顔の人もおれば、器用にも同じ土の量で2つ造っている人もおり、そんな中でもまだまだがんばって作業に向かっている人もおりました。小生の記憶では花瓶のような立体的な作品を制作した人が2人、飾り皿のような平面的な作品を制作した人が7人だったと思います。 
 

 一応できたことを先生に知らせると、今度はいよいよ色付けのための釉薬選びです。
 隣りの部屋に色見本のパネルが壁に掲示してあり、その中から先生の説明を聞きながら選ぶのですが、還元と酸化の2種類あり、今回は全員が酸化の中から選ぶように指示され、しかも、その中のこの範囲の中から選びなさいということなので、小生も少しは迷ったものの、結局は先生が勧める色が一番無難だろうとの判断から黄茶色のまだら模様にしました。
 それでも、なかなか迷う人もいて、通路を行き来して一旦決めたもののやっぱり別の色にしますと先生に訴える人もおりました。


 通路を往来している内に、ふと床を見ると何と様々な形状の色合いも素晴らしいどうやら陶芸を趣味としてしょっちゅう来ているメンバーさんの作品らしいという事が判り、一同に感心してああこんなに優れた作品を造っている人もいるのかと、暫時うっとりとしてしまいました。


 さて、夢工房の看板を背景に入れて記念撮影をし、工房を後にしました。近くで憩いと反省とを込めて喫茶店でひと休み。
 それぞれ陶芸についての感想を述べることになりましたが、それにしても無知の強みというか、怖いもの知らずでよくも取り組んだものだ、最初にメンバーさんの作品を目にしていたら、なかなか造り難かっただろう、との笑い話で大いに盛り上がりました。

 
 帰りの交通事情にも恵まれて陶芸で1時間30分ほど過ごしたにもかかわらず、予定よりも30分以上前に三宮に到着することができました。
 長梅雨の上での急な梅雨明け宣言による好天のせいで若干日焼けもしながらの大満足の篠山紀行でした。



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2003=篠山<陶・俳>紀行 その6・りっこ

2013-02-14 | 吟行句会
陶芸さろんで =りっこ


 




 丹波・立杭焼といえば、あの、濃い、深い、黒か褐色の、焼のしっかりした焼物をおもう。私たちが訪れたのは「夢工房」という陶芸さろん。

 「まるい出来上がったお皿に絵付けするのでは面白くない」という事で、用意されていたお皿を片付けてもらって、土(1㎏位)をもらった。
 白い土か赤い土か、希望のをもらって、みんな早速、おもちゃを与えられえた子どもよろしく、いじりだした。

 土守の方(後でパンフレットを見て知ったのだが、講師とかいうのではなく、土守というようだ。これはいい。)があわてて、「うどん粉をこねるように」と手本をみせて下さる。

 それも横目で見ながら、もうみんな自分のイメージに向かってとりかかった。

 何のイメージも持ってなく、オットリ参加した私は大あわて。それに、午前中に作った自分の句を刻むか書くかすることになっていたが、これも私は、「句」らしいものが出来てなかったので、書き残すのは、はずかしい。

 でも、土をこねるのは楽しい。焼物を作るためにこねるのは多分始めてだと思うけど、幼い頃、田ん圃で遊びほうけたどろんこ遊びに似て、なつかしい。

 私がもらった白い土は、肌理のこまかい、しっとりとした土で、どんな形にでもなじむ、優しい土。(土守さんが、ちょうどそこまでにして下さっていたのでしょう。心が伝わる)何か自由な形の、不定形の物体を創りたい気持ちにちょっとなったが、そんな事して居られない。みんな、おしゃべりしながらも、造形が整いだした。

 えい、仕方がない。何か見慣れた物を作ろうと、小皿をつくったが土が余る。自分の部屋の表札にと板をつくった。まだ土が余ったのでもう一枚小皿。これにはお刺身を盛ろうと醤油を入れる窪みをつけた。
 黒豆の句を刻もうと思ったけれど、もう午前中の事は、昼食のワインで忘れてしまっていたし、単なるひとりよがりの五・七・五で、ナンノコッチャわからないので止して、書きなれた「風」を書いた。

 こんな風に私が苦闘しながら楽しんでいる間に、他の人はなかなかのものが出来上ってきた。

 全員の作品を並べる。壮観(?)である。
 荒削りのドッシリしたのや、ユニークで面白いのや、ていねいで優しいのや、ザッとキップのいいのや、苦心と迷いが出ているのや…。
 個性的である。みんな一直線につくりだしたので、土守さんに教えてもらったり、隣の人のを学んだり盗んだり、歩き回って他の人の様子を見たりする余裕がなかったおかげで、こんなにバラエティに富んだものが出来た…。
 自分の平凡さが悲しい。やっぱり記念に、変な、自分らしいのを創ればよかったか。

 最後に、希望の釉薬を土守さんにお願いして工房を後にした。あと、焼き上げて送って下さる。サァ、どんなになっているか楽しみです。

 また、機会があればやってみたい。それとやっぱり焼くところを体験したい気がしています。

 この小旅行で、久し振りの人や、はじめての人、いつか会っていたはずの人と出会え、お話出来たこと、句も陶も、とてもとてもだったけれど、テーマを持ってちょっと真剣にとりくんで、よい一日でした。

  句と土とこねて梅雨あけデッカンショ
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2003=篠山<陶・俳>紀行 その4・だっくす

2013-02-14 | 吟行句会
ペンション花の木にて=だっくす



 昼食と句会の会場は、篠山でただ一軒のペンション「花の木」。
「特産館ささやま」までオーナーシェフの小畠さんに迎えにきてもらって、田園風景を見下ろす小高い所にある小さなペンションに到着。篠山の特産品を活かしたフランス風オリジナル料理が評判という。

 
立杭焼の「夢工房」での作陶の予約をしてくれたり、夜は近くの「みたけ観測所」での星空観測や、初夏には蛍見物にも案内してくれるといううれしいペンションだ。今回は、篠山~今田町~三ノ宮のジャンボタクシーの手配も快く引き受けてくださった。

 1時間半の間に食事をして句会をしてというスケジュールなので、席につくとすぐに俳句を仕上げて提出。さっそくワインで乾杯。時間がないので句会はペーパーレスで、ひととおり全句を披講したあと、その句を覚えておいてもう一度披講したときに挙手で選句するという斬新(?)なスタイルで、食事と同時進行でスタートした。

 楽しみにしていた昼食は、「丹波地鶏と有機野菜の山椒ソース」「岩魚と豆腐、山の芋とろろのミルフィーユ仕立て」「赤ワインゼリーと丹波風クレープ巻き」など地元産の食材と有機野菜にこだわったメニューで、どれもおいしく、また珍しい味もあった。

  花の木のランチ岩魚もフレンチに だっくす

 ペーパーレス句会は、耳で聞いただけでは分かりにくい句があったり、どんな句があったか、何句選んだか忘れてしまったりで、思ったより難しかった。

 さて、食事と句会を終えて気づいたら1時間しか経っていない。これならペーパーありでもできたのにと思ったが、後の祭り。最終的には陶芸の作品に作りたての俳句を書くことなのだから、ということで、予定を繰り上げ今田町の夢工房へ出発することにした。

 小畠さん、せっかくの料理をゆっくり味わわず、またジャンボタクシーを約束の時間より速く呼んでもらったりと、ごめんなさい。今度は蛍の季節に泊まりに行きますので、よろしく。
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2003=篠山<陶・俳>紀行 その3・つきひ

2013-02-14 | 吟行句会
「花の木」フレンチ句会=つきひ





                  つきひ
丹波路のバス停ごとの青田風  
館涼し廊曲るたび桧の香
道尽きて白きペンション合歓の花 

                
                 かをる
城下町思ひ出誘う初夏の風  
合歓の花妻入り商家の片隅に   
梅雨明けに飛行機雲の限りなく   

                  播町
廃家消へ堀の蓮は溢れをり    
篠山の夏オルガンの音やまず   
源氏の間の奥は闇の間蝉しぐれ  

                  楽水
城址の少年野球風青し
梅雨晴れの風に押されてロマン館
黒石の篠山城址や夏木立                

                  稲村
夏草や下宿時代の人思う
城跡は昔かわらぬ夏木立
学舎は主は変れど蝉しぐれ

                   りっこ
低き軒妻入の商家白ふよう
石垣は黒豆並ぶ姿かな
なまこ壁赤いポルシェと黒い日傘 
                
                 さくら
句もあそび陶もあそびよ夏丹波
黒豆パンうふふ!小さき夏の旅
城跡を駆け巡る子や夏の雲

                   ろまん亭
蝉ムクゲ日傘並んで梅雨明ける
石垣を見上げたそこに飛行機雲
城壁に童のごとく蝶が舞い

                 だっくす
閉ぢられし能楽殿や蝉しぐれ 
篠山の妻入商家麻のれん
鬼百合や丹波の里は単線で   





 この句会、句を文字で見ずに耳で聞くということ、しかも食事しながら、ワインを飲みながら。というわけで、この方式をフレンチ句会と勝手に名づけてスタート。

「丹波路の…。各駅停車のバスののどかな感じ」
「今日の青田風に私も染まりそうでした」

「館凉し…。この館は大書院ですね」
「木の香りがしてましたね」
「合歓の花…。妻入りとは?」

「間口が狭く奥へ長い建物。京都にも多い」
「パリやローマにも同じスタイルのものがありさくら」

「源氏の間の…。これも大書院の句ですね。蝉時雨がぴったり」
「歴史が感じられる」

「城址の…。少年たちは元気がよかった」
「大きな声の挨拶も気持ちよかった」

「梅雨晴れの…。大正ロマン館は旧役場」
「ピアノの演奏もしてました」

「夏草や…。稲村さんの下宿跡を皆でみましたが、ただ夏草が茂るのみでした」
「少年老いやすく・・・・・・」
「篠山で学生時代を過ごした稲村さんは今日の主役ですね」

「低き軒…。夢のような大きな芙蓉が咲いていましたね」
「妻入り商家の街道は歩くだけでほっとしました」
「癒し街道とも書いてありました」
「篠山の夏空が瞼に焼き付いています」

「句もあそび…。これは決意表明ですかな」
「丹波の冬の厳しさを思うと、思い切り夏は楽しみたいな、と」

「黒豆パン…。うふふはなんともチャーミング」
「!はペーパーレスでは判りませんでした」「坪内捻典の甘納豆のうふふふふがあまりに有名なので本家取りかと」

「蝉ムクゲ…。季語を仰山入れましたね」
「確信犯でしょうね」
「梅雨明けの喜びが出ています」

「篠山の…。これもゆっくりした時の流れがよい」

 耳で聞いた句の感じと文字で見た句の感じは随分違うということが体験できました。普通、句会では選句で文字に目を通し、披講の声で句のリズムや調子を楽しむという仕組みになっています。同じ篠山でもかなで書くとやわらかさが出さくらね。

 句会はどんなところでも手軽に出来るという実験にもなりました。
 陶・俳の次は写・俳などいかがですか、写真の大家がいらっしゃるし。紙漉きをしてそれに書くというのも楽しそうです。個性派ぞろいだから連歌というのもいいかも。

 今回の私の句のテーマは道になりました。
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2003=篠山<陶・俳>紀行 その2・かをる

2013-02-14 | 吟行句会
好き勝手探訪2時間半=かをる





 夏の風が心地よい土曜日、私達一行9人は三宮から篠山行き特急バスに乗り込みました。
 ほとんど貸し切り状態のバスに揺られながら、漫然と窓の外の青田を眺めていると、もう手帳になにやら書きとめている人を発見、この期に及んで今回の旅の目的を思い出し、心の中では慌てふためいておりました。

  丹波路のバス停ごとの青田風  つきひ

 出発から2時間、神姫バス「本篠山」終点に着き、まず、訪ねたところは篠山の文化を色濃く残している「河原町妻入商家群」。
 篠山城築城の際に造られた古い町並みで家の間口より奥行きがずっと深い"うなぎの寝床"のような商家が軒を連ねている通りです。
 この通りには、暖簾のかかった江戸時代の商家をはじめ、丹波焼きの歴史を語る丹波古陶館、能楽資料館など興味深い文化財も多く、ぜひゆっくりと散策したい場所です。
 通りの中ほどにはしっかりあがっている「ウダツ」(ウダツの上がらない人などという「ウダツ」です。)もつくられていて見逃しそうな文化財もたくさんあります。
 私達一行はというと、さっそく土産物屋をひやかして冷たいお茶をご馳走になったり、試食をつまんだり最初からのんびりムードで、タイムキーパーの播町さんをヤキモキさせていました。
 この辺り休憩所や公園などきれいに掃き清められて、町を守り大切している地元の皆さん気持ちが伝わってくるような気がしました。

  ここでまず全員の集合写真。梅雨明けの青空の下、白の漆喰で塗られた格子壁を背景に真っ赤なフォルクスワーゲン車そして古丹波焼の大壺、「ウーン、一句できそうで出来ない!」心を後に残して次に篠山城に向かって動き出しました。

  篠山の妻入商家麻のれん   だっくす

 道路を横切ってすぐ、「ここ、ここだよ」という稲村さんの声。なんと稲村さんは大学時代の4年間、篠山町で下宿しておられたことがあり、39年前のことだそうです。
 目の前のその場所は、今はまったく屋敷跡もなく草が生い茂り、木が1本目印のように残っているだけでありました。 

 その木の前に佇んでいる稲村さんを見て、すかさず、ろまん亭さんが"夏草や 若者どもが 夢の跡"と。あまりにも絶妙の盗作に思わずみんなで苦笑い、みんな同じ思いだったのでしょう。私はというとタイミングがずれて、また句は作れずじまいでした。
 その後も稲村さんの回想は続きます。「ここは、魚屋だったなア」「この角を曲がったら・・・・」「あそこのおばあちゃんも、もうおられんわな」(それはそうでしょう。今のあなたがその時のおばあちゃんの年ですもの。)
 レトロな城下町の小道には初夏の涼やかな風が吹いていました。

  夏草や下宿時代の人思う  稲村

 思い出に浸りながら篠山城址のお濠を曲がると突然、聞こえて来たのはクラリネットの音。夏休みに入ったばかりのブラスバンド部の練習のようです。
 城壁に点在する朱色の鬼百合、篠山中学校の少し古びた校舎を背景にセミしぐれと風に揺れる柳。むか~しの白黒フィルムの青春映画の風景です。
 そして往年の若き男女の一群が通り過ぎて行きました。(誰かの声がしました。「"青い山脈"だ…。」)

  城跡の古木鬼百合空の青  りっこ

 三々五々に新装なった篠山城の大書院を見学しました。

 1944年に焼失、市民の熱意で2000年3月に復元されたばかりです。入母屋造りのこけら葺きの書院で、格式のあるものだそうです。

 私達が大書院の玄関に立ったとき、梅雨明けの日を宣言するように飛行機雲がずんずんと白い線を伸ばしていくのが見えました。

  石垣を見上げたそこに飛行機雲  ろまん亭

 大書院の中は出来たばかりの装いで「虎の間」「手鞠の間」「源氏の間」「葡萄の間」「上段の間」「孔雀の間」が再現されています。
 セミ時雨を聞きながらくるっと一周りする間に、丹念に説明書を読み、しっかり句をモノにしておられる姿もありました。

(この大書院を見たいなと思われる方にオススメ。篠山市のホームページで見ることが出来ます。『ぐるーと一周風景パノラマ』で大書院をはじめ篠山の見所を詳しくバーチャル見学ができます。ホームページアドレスhttp//www.city.sasayama.hyogo.jp/)

 大書院の玄関をバックに2回目の集合写真をパチリ。これからは45分ほどの自由行動です。

  源氏の間の奥は闇の間蝉しぐれ  播町

 私たち女性群は、またお土産を買いに。お目当ての黒豆パン、アツアツの焼き餅、焼き栗の試食、黒豆の試食、そしてお喋りととても忙しいあっという間の45分でした。

 そうそう、篠山の味には『鯖寿司』というものもあります。篠山地方では秋の祭りになくてはならないものです。丹波の祭りでは『鯖街道』が再現されたりしています。
 今では一年中商店街の数軒の店で売られており、私は篠山に来るたびに1本買って帰ることにしています。

  黒豆パンうふふ!小さき夏の旅  さくら

 最後に明治・大正時代の代表的な洋風建築の観光案内所・大正ロマン館で一休み。ピアノの生演奏を聴きながら、レースのカーテンを揺らしてくる風に吹かれているとノスタルジックになってきます。
 一曲終わったところでちょうど時間となり、そくさくと集合場所の「特産館ささやま」に向かいました。

 この間、思い出を掘り当てた稲村さんは、自転車を借りて母校や、昔の懐かしい場所をずっと一回りしてこられたそうです。さすがですね。その行動力はまだまだ健在です。

 懐かしさとロマンと郷愁と句の出来なかった不安をごちゃ混ぜに乗せて昼食の「花の木」に向かいました。

  梅雨晴れの風に押されてロマン館  楽水

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2003=篠山<陶・俳>紀行 その1・さくら

2013-02-14 | 吟行句会
篠山<陶・俳>紀行 




初めての遊びにグループでトライする。
要は仲間を募って遊ぼうという企画の第6弾。
このたびは丹波立杭焼の里を訪ねての陶芸入門。
とはいってもまずは篠山吟行からスタート。
この日つくった俳句を絵皿にしようという遊びです。






篠山城址にて=さくら
静でいて動のある風景  



 何年ぶりかで訪れた篠山の町は"市"に昇格したからだろうか、時代の要求であろうか。お城を中心にきれいに整備されていた。

 懐かしい城下町の面影をより強調しながらも、明るさと人なつっこさをよりアピールしているようにも思えた。

 古い妻入商家が並ぶ道は、レンガが敷き詰められ、"癒しの道"となっていたり、モダンで明るい"大正ロマン館"が観光案内の中核となっていたりした。

 それらはやわらかい篠山言葉と共に、私達を惹きつけるに充分な雰囲気であった。
 以前はじゃり道だった城址の道もきれいな石畳と変わり、そこに佇む"大書院"の建物とよくマッチしている。

 大書院は、その風格の中に往時の雰囲気を漂わせる落ち着いた外観である。
 重厚な歴史物を守り、語り伝えながら私達を歴史の中へと導いてくれた。

 そんな城址の石段でトレーニングをしている中学生達に出会った。
 会う人すべての人々に"こんにちわ" "こんにちわ"と声をかけながらランニングしている。

 少年の声の何とみずみずしいこと!
 頭上で鳴く蝉の声よりも澄んでいて、大空高く響き、湧き上がる夏の雲に吸い込まれて行く。

 ちょうど真っ白な飛行機雲が一直線に走っていて、彼らと共に未来の宇宙へ向かって突っ走っているようであった。

 古い古い石垣と若々しい躍動!
 多くの歴史を見続けてきた石垣は、今、何を感じているのだろうか。

 黙して語らない石垣に、少年の汗はキラキラと清々しく新鮮な息吹となって反射している。
"こんにちわ" "こんにちわ" 
 真夏の静寂の中に中学生の声がまた響く。 

 石段を駆け巡る声は、さわやかな生命力を、私にも充分吹き込んでくれた。

  城跡を駆け巡る子や夏の雲





篠山〈陶俳〉紀行MEMO


2003年7月26日(土)
8:30神姫バス三ノ宮バスターミナル集合。
8:45三ノ宮発→10:45篠山@1380。
着後市内散策・吟行。河原町妻入商家群→篠山城址・大書院@400
→大正ろまん館→春日神社→12:45特産館ささやま集合
→13:15ペンション花の木(フレンチ+ワイン@5198・TEL0795-37-1080)
14:30→15:00今田町・夢工房(陶芸入門)@1611
→喫茶峠@400→16:30帰路ジャンボタクシー@3556
→三ノ宮17:30解散。
(@は一人当たり経費)
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2004=伊賀上野BANANA句会

2013-02-13 | 吟行句会









つきひ

蕉翁を偲ぶ時雨と思ひけり
冬近き芭蕉生家の通り庭
時雨るるや上野寺町虫籠窓



一風

秋雨を受けてしなやか俳聖殿   
毬栗をかけて風情と和菓子うる
菊の香と小砂音合わし天守閣



かをる

蔦紅葉のびる土塀や寺町に   
生誕を祝う美酒あり伊賀街道
秋時雨祭りの後のしとど降る




播町

ここかしこ芭蕉さんいる伊賀の秋   
二之町の辻にひと待つ秋驟雨
秋霖の寺町寺の六つ七つ




蛸地蔵

秋しぐれ車で集う回向忌や   
芭蕉忌や上野の里に熟柿かな
寺町にしぐれ降るかな端然と




見水

旅人に角ふりわけよ秋蝸牛   
行く秋を莫山の字と惜しみける
秋時雨バナナ一盛二百円



タミ

秋深しこの葉もいそぎ冬支度    
枯葉道秋の長雨染み入る香

ひろひろ

秋雨や煙たなびく奈良盆地   
初参加冷汗かきかき秋の伊賀
秋の伊賀バナナ句会で妻横に




だっくす

軒ごとに句のある街に秋惜しむ   
秋雨や笠袈裟ぬれし俳聖殿
上野城どんぐり混じるじゃりの道






MEMO=芭蕉生誕360年伊賀上野BANANA句会。
2004年10月30日(土)8:00JR三ノ宮駅集合→近鉄鶴橋→上野市★町並み散策・吟行=茅町駅→寺町→上野天神宮→愛染院故郷塚→芭蕉翁生家→上野公園・俳聖殿→上野城天守閣→本町通り→中之立町通り→→上野市駅・芭蕉翁銅像前→ミュニティバスしらさぎ→★ウェルサンピア伊賀(昼食・芭蕉の湯・句会)→バス→近鉄上野市→伊賀神戸→名張→鶴橋。会費=10,000円。

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