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神戸RANDOM句会

シニアの俳句仲間の吟行・句会、俳句紀行、句集などを記録する。

2013=相生・牡蠣食えば句会

2013-02-11 | 吟行句会



相生RANDOM句会  
牡蠣といふ
文字書けずとも
牡蠣旨し    


新幹線に乗ってちょっと旅気分で、相生へ牡蠣を食べに、というプラン。
平日なので、勤め人の仲間には声をかけずに、と少人数。
そこへ「牡蠣焼いて涙一滴加えけり」の一句を添えて、
播町さんから急遽欠席という連絡。
というわけで7人の小さな吟行となりました。



2013.02.01 10:00 西明石駅新幹線改札口に集合した7人のメンバーはひろひろさんから乗車券など受け取りこだま737号車の指定席へ。あっと言う間に相生駅着。駅前にホテルの送迎車が来ており乗り込む。
  
  くねる坂牡蠣食いにけりランダム衆 (1) ひろひろ
  岬まで続く冬木の桜かな (4) だっくす

ホテル万葉岬まで送迎車で20分、らせん状に曲がりながら登って行きます。穏やかな内海の養殖筏や造船所のクレーンなどが遠くに見え、今はすっかり葉を落とした桜並木がホテルまで続きます。だっくすさんこの句で4点獲得。4点は今日の句会の最高点でした。(○の数字は句会での得点数。選句は特選1句2点、並選3句各1点、一人持点5点としました)

 ホテル万葉岬は国民宿舎を今風に改装した眺望と旬の食べ物が売りのホテルです。この辺りを歌った万葉歌人の山部赤人等の歌3首があり、それに因んで万葉岬という優雅な名前が付けられたようです。
部屋に入る前に、ホテル周辺に広がる「つばき園」を散策し、各自、句作。今日は気温も高く風もなく春が近づいている感じでした。

  薄日射す侘助の白つつましく (1) さくら
  海蒼し開き初めたる侘助に (2) つきひ
  梅日和一輪づつの香をこぼし (2) さくら
  一病を秘め瀬戸内の寒椿 (3) りっこ

一病と寒椿がよくマッチしているとりっこさんの句、好評。
つばき園では侘助が咲き始めていました。さくらさん、つきひさんの句はその情景を詠んだもの。



犬養孝さんが書いた万葉歌碑が建っていました。字が難しくサンズイに占と書いてなんと読むの?などと皆で首をひねりました。

  歌碑ありて万葉仮名や牡蠣煮ゆる 0 りっこ
  枯木島相生湾に鎮座せり 0 ひろひろ

360度見渡せる海に島影が見えます。それぞれの島の名前がわかる展望台もあるようです。俳句に固有名詞を入れるのは難しいものです。

  冬凪や万葉歌碑は海を背に (4) だっくす

冬凪という適切な季題。歌碑の建つ位置関係もよく分かります。省略がよく効いています。だっくすさん2句目の4点句。
(12:00からの食事の時間が近づいて来たのでホテルの中へ。出句3句の締め切りは12:30です)



 貸切の部屋に牡蠣料理がずらりと並んでいます。昼間から贅沢やなあ!という声。だっくすさんはそのままを詠みました。

  牡蠣の膳囲む句会のぜいたくさ (3) だっくす
  
 相生牡蠣三昧の牡蠣料理は前菜に始まりデザートまで実に13品の豪華さ、牡蠣の南禅寺焼き、牡蠣と蛸の素麺など珍しい料理もありました。食べ慣れた牡蠣フライ、牡蠣飯が特に美味しかったです。ノロによる食中毒予防のため生のものはなくすべて火が通してありました。
ホテル自慢の展望風呂を満喫した人は、ひろひろさんただ一人。句も早く出来て悠々と湯上りのビールにご満悦です。

  露天風呂相生湾の頭上より (1) ひろひろ

相生湾の天辺にある展望風呂の様子が頭上よりという言葉で上手く表現されています。
  
  相老の佳き地良き友初句会 (3) さくら

相生を相老に、佳と良を使い分ける工夫などが光っているさくらさんの句。『今日の句会はこの句に尽きるなあ、このとおりや』とひろひろさん、一風さん大感動。大共感。

  あくせくと生きてほんわか冬日和 (1) ろまん亭

何もかもほんわかとして癒された会、この句に全員同感。この後、ろまん亭さんは一人でB案の室津へ撮影に行かれます。写真には影が必要だと強調されるろまん亭さん、今日は曇っていましたが傑作は撮れたのでしょうか
 
   今日よりはステレオ友に春を待つ 0 一風

宴会で2度目の乾杯は一風さんにしました。一風さん、昨日で2度目の仕事を無事卒業されたとのことお疲れ様でした。
『ステレオって言い方、古いですねえ』とだっくすさん。一風さん、ステレオで聴く曲はお気に入りのクラシックだそうです。
 少しアルコールが入った一風さんのトークは、般若心経、座禅、大阪万博、片岡鶴太郎、自身の結婚秘話にまで及びました。

  牡蠣鍋や欠席の人案じつつ (3) つきひ

欠席の播町さんのことを心配した句。ひろひろさんからご自身はいたってお元気だとお聞きして全員安堵。季題が動くかな・・と作者のつきひさんは反省しているようです。この句の場合、牡蠣鍋でなければならないかどうかだそうです。

  牡蠣談義エンディング談義時緩るる (3) りっこ

何かの拍子に(人生の)エンディングの話が出ました。エンディングノートつけてる?いいやまだつけてないなどと・・・エンディング談義をさらりと句に読み込むとはりっこさんさすがです。時は揺れるのか、緩むのか、緩るるでなければならないりっこ流のこだわり!?

  牡蠣といふ文字書けずとも牡蠣旨し (1) つきひ

牡蠣という字を度忘れして出来た句です。とつきひさん。牡蠣食えば句会では、牡蠣の句が6句ありましたが、かき、カキなどと書いた人は一人もありませんでした。

 

 
  アルジェより戻る遺体に猛吹雪 (3) 一風

おそらく、事前投句用として作られた句と思います。アルジェリアの人質のニュースは記憶に新しくまた雪の飛行場の光景も目に焼きついています。あの飛行機の操縦は抜群に上手かったと一風さんらしい観察も披露。共感を呼び3点獲得。『昔、カスバの女という歌が流行りましたね。ここは地の果てアルジェリア・・意味も分からず歌っていましたが、カスバは辞書を引くと城砦のことらしいです』とつきひさん。

  先輩を訪ねて正月区切りとす 0 一風
  冷え冷えの初詣あと炎はぜ 0 ろまん亭
  雪降りにたいまつ踊る鬼やらい 0 ろまん亭

以上3句も事前に作られた句のようです。じつは当初、前日までに投句、当日吟行なし、という予定だったので。今回は時間の都合で宴会しながらの句会になりましたが、少人数だったこともあり皆さんの協力で大変スムーズに進行できました。

 選句の結果
  だっくす11点 さくら6点 りっこ6点 つきひ6点
  一風3点 ひろひろ2点 ろまん亭1点

 今日は賞品なしということでしたが、11点ぶっちぎり優勝のだっくすさんには急遽、一風さんが売店に走り求めた片岡鶴太郎のカタツムリの絵「のんびりと」が贈られました。
今回も女性軍4人で29点、男性軍3人で6点と圧倒的に女性軍の勝でした。
しかし、男性軍も全員得点し、特選句の講評もなかなか面白かったと思います。

 A案組の2:15発の送迎バスの時間を1時間遅らせてラウンジに移動して、飲み物券でオレンジジュースなど注文しトークの続きや買い物。
 



15:15の送迎バスで相生駅へ。
16:13のこだまを待つ間、駅待合室でも話が弾み、最近、天声人語を書き写しているひろひろさん。『最近の若い人は急須を知らんらしいなあ』と。『かたえくぼに万事キュウスと出てました』とつきひさん。今の若い人はお茶とはペットボトルに入っているものと思い込んでいるようです。

『死語ばかりを集めた本が出ています』とりっこさん。
『料理教室でも櫛形や拍子木という切り方の説明が出来ないそうです』とつきひさん。
エコの話から肥溜めの話になり、一風さん、ひろひろさん共に少年時代、肥溜めに落ちたことがあるとか。
ひろひろさんは臭いを消すために体中に消し炭を塗ったとか。
急須さえ知らない若者が消し炭など知るはずがない・・ひろひろさんの話も私たちの年代にしか通じなくなって行く。

日常生活から消えていくこれらの言葉は歳時記にのみ残るのでしょうか
A案1時間遅れの16:36西明石駅到着。室津へ行ったろまん亭さんも一緒の列車になり、スタートの西明石改札口で解散。
移動時間も短く楽しい小さな旅でした。



(文:A・S,写真:M・O)





 

 

 
 

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2012=しあわせの村句会

2012-11-25 | 吟行句会

 

のあなたの空遠「幸」住むとのいふ

 カール・ブッセの『山のあなた』の詩は、1905年(明治38年)に出版された上田敏の『海潮音』に収められています。ヨーロッパの新しい詩を紹介したこの訳詩集は、北原白秋や三木露風らに影響を与え、世に広まりました。やがて『山のあなた』は国語の教科書に載り、三遊亭歌奴(圓歌)の落語「授業中」にも登場。本国ドイツで忘れられても、日本では今も親しまれています。

  さいわいの住むてふ村や小六月  りっこ

 平成24年11月25日(日)、第15回RANDOM句会は、西六甲の山々に囲まれた“山のあなた”のしあわせの村での開催です。

  凩や句会しあわせ不しあわせ  ひろひろ①(数字は句会での得点)

 ひろひろさんの心配(?)をよそに、空はまっ青に晴れて風もなく、待望の小春日和です。

  秋風よ走者のエール被災地へ  さくら

 この日は第2回神戸マラソンの開催日。東日本大震災の被災者に、阪神・淡路大震災から復旧・復興した兵庫・神戸の街並みを肌で感じてもらい、同じ被災地としての絆と友情を深めることを目的に掲げ、全国から集まった2万人の走者と50万人の沿道での応援者が、三宮の市役所前から明石海峡大橋までのマラソンコースとなった市街地を埋め尽くします。

  マラソンかしあわせの村か冬の汗   ひろひろ①

  マラソン日ハイテンションの冬句会  見水②

 わが句会の集合は、しあわせの村本館・宿泊館ロビーに午前11時。

  ひさしぶり紅葉もとめて句会かな  稲村   

  かさこそとしあわせの村秋深し   稲村①

 稲村さん、今日は満々の意気込みです。

  朝早く喫茶店(みせ)の賑わう冬日和  一風

 一風さんは、早々と到着して、コーヒーで一服。一句できました。

  身にしむやしあわせの村句会なり   英

  おみなえししあわせの村姿見ぬ    英

 英さんは、冬晴れの神戸電鉄西鈴蘭台駅のバス停で見水さんといっしょになり、同乗。バスが村に入ったとたん車窓にひろがる別世界に感動。

  乗り継いで裏六甲の冬日向      播町①

  鵯日和金川先生好々爺        播町①

  暖房のバスから降りてラドンの湯   弥太郎

 播町さんは、「今日は雪かと思って来たのに予想がはずれた」を連発。バスの車窓から老教授風の人影が見え、よく見ると弥太郎さんだったとのこと。

 弥太郎先生到着。「もう句はできたから、時間まで温泉に入るわ」。

  冬晴れの村から望む淡路島      弥太郎 

  枯芝のカレッジの彼方播磨灘     弥太郎①

  冬ぬくしジャジャ馬娘弾む声     弥太郎①

 弥太郎さんは、三宮で神戸マラソンのスタートを見届けてから、バスで村に向い、南の端のシルバーカレッジから北の端の馬事公苑まで、村内を踏破して、ほぼ句作を終えたとのこと。とくに馬事公苑でサラブレットの体験試乗をしていた若いギャルたちの姿にご満悦。

 この馬事公苑は、かつて灘区の青谷にあった乗馬クラブが移転したものです。まだ舗装が進んでいなかった昭和30年代には、灘区内を馬がかっ歩する姿が見られました。

 午前11時、参加者全員に村のマップと5句の出句票を配付。本館前で通りすがりの元気なママさんにお願いして全員集合写真のシャッターを押してもらい、吟行スタート。

 まずは全員で、熊本の水前寺公園をモデルに作られたという、池を巡る日本庭園を歩きます。

 今回の参加者は、女性はさくらさん、つきひさん、りっこさんの3名。男性は、播町さん、稲村さん、弥太郎さん、ろまん亭さん、一風さん、英さん、見水さんの7名。総勢10名です。どんぐりさん、ひろひろさん、菊太郎さん、だっくすさん、かをるさん、蛸地蔵さんは、所用等で欠席。ひろひろさんからは5句が届き出句で参加。女性陣が少なく、またまた男性軍勝利のチャンスなのですが…。

 ここで、今回の吟行の地、しあわせの村をご紹介。

◆しあわせの村 ヒストリー◆

 しあわせの村は、神戸市北区の山あい(地元ではマムシ谷と呼ばれていた)を、神戸市が1981年(昭和56年)から造成して丘をつくり、福祉のまちの拠点として、神戸市政100周年の1989年(平成元年)に開村しました。

 村内には、温泉や保養・宿泊施設、日本庭園、各種スポーツ・野外活動施設、馬事公苑、シルバーカレッジ、リハビリテーション病院、授産施設などが点在します。バリアフリーに配慮され、開村時、フェスピック神戸大会(極東・南太平洋身体障害者スポーツ大会)の会場となりました。

 1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災の時には、救援物資の集積所や温泉の無料開放、仮設住宅の設置などで市民の避難生活を支えました。震災復旧・復興が進む中、大勢の市民がここでリフレッシュのひとときを過ごし、修学旅行生や高齢者・障がい者グループなどが全国から訪れています。

 今年は開村23年。開村の頃は12%だったわが国の高齢化率(65歳以上の人口割合)は、いまや23%を超え、50年後には40%になる見込みです。

 建物はすべてスペイン風の赤屋根に統一され、緑地は手入れが行き届いて美しく、広さは甲子園球場50個分の205ha。

 神戸市は戦前、東洋一の貿易港を持つ街として繁栄しました。

 戦後も、戦災復興、高度成長、福祉と環境の時代を、「山、海へ行く」の斬新な都市経営で乗り切ってきました。震災で大きなダメージを受けましたが、着実に震災復興が進み、神戸沖に空港も開港し、街は新しくよみがえりました。

 昭和24~44年に市長を務めた原口忠次郎氏の銅像は、ポートアイランド中公園で海のかなたを眺め、昭和44~平成元年に市長を務めた宮崎辰雄氏の銅像は、ここ、しあわせの村で来村者を出迎えています。

 

  庭園の池水映す冬紅葉        弥太郎

  丸い背が来し方語る菊舞台      ろまん亭②

 弥太郎さん、冬紅葉を詠んで5句完成。ろまん亭さんは水舞台で錦鯉に見入っている稲村さんを句にしたそうです。

  カップルで亀も小春の甲羅干し    さくら②

  紅葉が甲羅の上にも降りかかり    見水

 池の中に突き出た石の上に、2匹の亀が仲よく並んでいます。一匹が首を伸ばせば、もう一匹も一緒に首を伸ばす姿に、思わず笑ってしまいます。

  小春日の四阿(あずまや)の先落葉舞う  一風

  小春日に「昼のいこい」か縁側で       ろまん亭

 素朴な四阿(あずまや)が気に入った一風さん、山里の秋の風情を満喫。ろまん亭さんの心は、のどかな縁側で過ごした子供時代にもどっています。

  友つどうしあわせの村天高し     稲村①

  天高く一条の雲流れ行く       一風

  逆光のまぶしさ小春日和かな     見水

 日本庭園を一歩抜け出ると、そこはスペイン・アンダルシア。紺碧の空いっぱいに孤を描く飛行機雲。村の中心の「ふれあいの門」は、白い石畳が「幸」の字に配置されています。 

  枯木立風が押してる車椅子      播町② 

  深々と空の青さや冬木の芽      りっこ①

 「ふれあいの門」から南へ、せせらぎに沿って歩きます。左手にリハビリテーション病院、右手にたんぽぽの家。どちらもスペイン風の美しい建物です。緑地が広がっていて夏には樹々が木陰をつくり、近所の親子連れがピクニックに来て、せせらぎで子どもを遊ばせるのを見かけます。

  赤い屋根幸せさうに山眠る       つきひ②

  朱の屋根の連なりシェスタ似合う村  播町

 このあたり、西宮の関学(関西学院大学)キャンパスのよう、と言う人もいます。いかにも学生が気持ちよさそうに居眠りしていそうな雰囲気。

  ママチャリがすり抜けてゆく冬の道   見水

  自転車をこぐセーターや飛行雲     つきひ

  自転車にマフラー結ぶ児(こ)の笑顔  一風②

 貸し自転車の句が3つ。トレーニングジム(有料)と体育館(卓球・バドミントン各有料)の建物の間に貸自転車の受付があって、来村者に90分200円(中学生以下100円)でレンタサイクルをしています。広い村内を見て回るのに便利です。ちょっと場所が離れている子どもに人気の「トリム園地」(無料)への移動もらくらくです。

 自転車を一生懸命こいでいるうちに暑くなって、子どもがマフラーを自転車にくくりつけた、微笑ましい一風さんの句に2点入りました。

  犬連れてしあわせの村落葉踏む    一風

  かろやかに犬の足音枯葉散る     ひろひろ①

  ふさふさの犬追いかける落葉かな   りっこ①

 犬と散歩の句3つ。これだけ広いと、犬も駆けまわりがいがあってうれしいことでしょう。そんな犬が、舞い落ちる落葉には追いかけられています。

  枯れきってしあわせの村蓮の実や   英

 南へ進み、鎮守の森を過ぎると、ぱっと開けて小さな蓮池がありました。見事な枯蓮で、「枯蓮の句があったなあ」「実が食べられるんやけど。あ、ないわ」「下に蓮根が埋まってんねん」と、一行、足を止め急に賑やかに。

 蓮枯れて夕栄えうつる湖水かな  正岡子規

 枯蓮のうごく時きてみなうごく  西東三鬼

 枯蓮を見ていると空腹を感じてきました。もう、午前11時半。近くの「保養センターひよどり」内のレストラン「花梨(かりん)」で昼食。団体予約が入っていて店内は忙しそうでしたが、各自注文して、句を練っていると、思ったより早く食事が運ばれてきました。

 昼食後は、独自の句材を求めて何人か抜け、主力の吟行グループは、さらに南へ歩き、ローンボウルス場を横目に果樹園・薬草園へ。薬草園には、香りがあって、まっ白で可愛いお茶の花が咲いていました。 

  そぞろ歩く茶の花日和村広し     さくら②

  摘み取ってにがみ味あう茶の花を   英

  茶の花や毬とたはぶれ児らふたり   りっこ②

 茶は中国で紀元前10世紀から薬用にされ、日本では12世紀に宇治で栽培されて広まり、茶の湯が生まれました。一方、ヨーロッパへも帆船で運ばれて紅茶になりました。茶は人間と関わりの深い不思議な木です。 

  大芝生伸びのびのびと日向(ひなた)ぼこ  ろまん亭

  コマになる孫が拾いしどんぐりが      英①

 芝生広場では、シートを広げてピクニックをしている若者グループやボールを蹴って遊ぶ親子連れ、ゴム・カタパルトで自慢の紙飛行機を飛ばして滞空時間を競っているシニアのグループ、木立ちの中でどんぐり拾いをする親子、ひとり画帳を手にスケッチをしている紳士、おだやかな小春日和の休日を、思い思いに楽しんでいます。 

噫,われひとゝめゆきて,涙さしぐみかへりきぬ 

 出句のしめきり時刻は午後1時30分。研修館の会議室に全員集まって、句会のはじまりです。

 提出された各自5句の短冊をバラし、手分けして清書し、選句表を完成させ、全員分のコピーをします。

 コピーと飲み物の買い出しの時間を使って、播町さんが、今回の“特別企画”の「神戸RANDOM句会 十句集-2012-」を全員に配付。句会メンバー15人の10年間の成果を、各10句ずつ選んだミニ句集です。「神戸RANDOM句会」のブログでも見ることができます。

 コーヒー・紅茶と、つきひさんが教え子の学生さんからいただいたシュトーレン(クリスマス菓子)とお饅頭をいただきながら、午後1時50分、全員にコピーを配付し、つきひさんと一風さんの進行で句会が始まりました。

 

 25分間かけて、各自、他のメンバーの気に入った句を選びます。6句選んで、一番気に入った特選句(◎)1句は2点、その他5句(○)は各1点、と各人の持ち点は計7点。参加者10名の総点数70点の争奪戦です。

 10名がそれぞれ特選句(◎)に選んだ句には、豪華百均賞品をプレゼント。その句を2人が特選句に選べば賞品は2つ。今回は9句が特選句に選ばれました。

 特選句と点数の高かった句は次のとおりです。

  身の丈のしあわせのあり村小春     さくら⑧◎◎

  燃へ尽きてでんぐり返りつ紅葉散る   さくら③◎

 今回はさくらさんの「身の丈のしあわせ」の句がみなの共感を呼び最高得点。ふらっとやってきて、思い思いに一日を楽しんで過ごすのが、しあわせの村の流儀です。「でんぐり返り」で燃え尽きたのは、11月10日、93歳で亡くなった『放浪記』の女優・森光子さん。「あ、そうか、それやったら」―、もっと点が入っていたでしょう。しかし、さくらさん、堂々のトップ。

  石蕗の花素(す)にして粗(そ)なる貴人門  つきひ③◎

  笹鳴を共にとらへし車椅子         つきひ③

  ひもすがら紅葉且散る水舞台       つきひ③

 つきひさんの3点句が3句。いずれも日本庭園の情景を、選りすぐりの季語と題材で詠んだ佳句。ピントがぴったり合ってほれぼれします。「笹鳴き」はえさを求めて人里近くに下りてきた親子のウグイスの「チチチ」という鳴き声だそうで冬の季語。厳しい冬を越え、「ホー、ホケキョ」と鳴く春先までの季節の移り変わりが目に浮かびます。 

  しあわせをかなえる村の秋をゆく   稲村③◎

  小春日や落葉の下を鯉がゆく     稲村③◎

 稲村さんが感じとったしみじみとした幸せに共感。「小春日」「落葉」は季重なりですが、浮かび上がる立体的でカラフルな光景に思わず◎。 

  鵯(ひよ)鳴いて山のあなたは空ばかり  播町③

 ヒヨドリは秋の季語。またこの辺の鵯越やひよどり台の地名になっています。「山のあなた」にあったのは「空」でしたか。

  落葉踏みつつ空へ吸はれゆく     りっこ③◎

 今日のような抜けるような碧空の下にいると「自分が空へ吸われてゆく」感覚に。字足らずがおしゃれです。

  錦秋の上にぽっかり淡路島      見水③◎

 しあわせの村は海のある南西が開け、北から眺めると、北須磨、垂水、淡路島の大パノラマが広がります。

  枯蓮や古希の身にしむしあわせか  ろまん亭③

 もうすぐ70歳に手が届くわが人生。美しい一生を終えて立ち尽くす枯蓮の姿に、しあわせを見つけました。それにつけても懐かしいのは、人生が無限に長かった少年の日のこと。

  逢いたいなあ冬の来る前わらべ歌   ろまん亭②◎

  枯葉散るランダム句会はみな笑顔   ひろひろ②◎

 ひろひろさん、欠席なのに今日のみんなの笑顔が見えていたようです。

 以上で本日の句のすべての獲得点数が決まりました。総点数70点の行方は、女性軍3名で33点、男性軍は稲村さんらが健闘したのですが、欠席のひろひろさんが5点獲得し、出席者の7名の合計では32点。やはり女性軍の勝利でした。

 表彰式です。各賞と受賞者は、次のとおりです。(敬称略)

1位 優 勝  さくら (15点)フランス産ボジョレーヌーボー

2位 準優勝  つきひ (11点)フランス産ボジョレーヌーボー

3位 殊勲賞  稲村  ( 8点)フランス産ボジョレーヌーボー

4位 敢闘賞  りっこ ( 7点)クリスマスリース

4位 技能賞  播町  ( 7点) &サンタさん靴下

4位 しあわせの村賞 ろまん亭( 7点) 同上

7位 山のあなた賞  見水    ( 5点) 同上

7位[欠席、投句のみ]ひろひろ( 5点) 

9位 逆引技能賞  弥太郎( 2点) クリスマス用置物

9位 逆引敢闘賞   一風  ( 2点) &サンタさん靴下

11位 逆引殊勲賞   英 ( 1点) クリスマス用飾り

                    &クリスマスカード

特選句(◎)は2013年版ダイアリー

 今回の1~3位の賞品のボジョレーヌーボーは11月15日に解禁されたばかり。他の賞品もいまの季節にぴったりのプレゼントです。

 ――句会の翌日、いつも幹事を務め今回は欠席のだっくすさんに、つきひさんが白紙の選句表を送って「だっくす選」をいただきました。○は「枯木立…」「さいわいの…」「石蕗の花…」「落葉踏み…」「錦秋の…」の5句、◎は「ひもすがら…」でした。

 午後5時前に句会終了。夕食会場の本館・宿泊館2階のグリーンビレッジに移動します。 

のあなたになほ「幸」住むとのいふ 

 グリーンビレッジの和室に勢ぞろいし、優勝したさくらさんの乾杯で懇親会スタート。

 さくらさんは、「本当に楽しい小春の良い一日でした。優勝できて正に“身の丈のしあわせ”に浸りました」と感想。

 籠に盛り付けされた和食の膳を前に、今日の句会の反省と、次回の吟行の候補地探しと新企画への挑戦。今日は酒豪連がご欠席なので、ビール・お酒はぼちぼちです。

 次の吟行、無理して遠出せず、気軽に行けていい句ができる場所はないだろうか。ハーバーランドでは、という案も出ました。新企画は、なかなか実現しませんが、絵手紙か俳画か、絵を描くことかな。

  やれすんだランダム句会は冬に入る  ひろひろ

 晩秋で日が落ちるのは早く、今日は三連休最終日とあって、午後7時なのに懇親会場を出ると、村はもう真っ暗で、人っけも少なくなっていました。三々五々、各方面行きのバスに乗り、家路に着きました

 お世話いただいた、つきひさん、さくらさんに心から感謝。そして、次回の春の句会に期待。もうすぐ新年です。皆さんご健康でよいお年を。

2012.12 写真/romantei,文/mimizu 

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2010=神戸駅前フォト句会

2010-10-24 | 吟行句会

 

倒れたる案山子の顔の上に天 三鬼

 句会当日は、猛暑続きの後のいきなりの寒波。(後日続いて台風が来ました)天候もランダムで、暑いのか寒いのか服装が決まりません。夕方には雨が降るらしい。宿題の秋の句にも、異常気象を詠んだ句が…

  彼岸花酷暑に耐えて燃え盛る     稲村

  どんぐりや熊に出会つてさあたいへん 播町

  里山消え高齢者消え熊が出て     つきひ

 

楠公さん 枯蓮のうごく時きてみなうごく 三鬼

 平成22年10月24日(日)午後2時集合。句会場は神戸市中央区橘通の市総合福祉センター。楠公さん西側の建物の1室です。今日は吟行はなく、この部屋で初のフォト俳句(写俳)に挑戦します。

 句会場の東向かいの湊川神社は楠木正成をまつり、市民から「楠公さん」と親しまれてきました。正成は1336年に九州から攻め上る足利尊氏を迎え撃ってここで敗死。1692年に徳川光圀が小さな塚に「嗚呼忠臣楠子之墓」の墓碑を建て、尊王の聖地に。幕末には勤皇の志士たちが訪れ、明治の初め、政府が神社を創建しました。

  早や黄葉(もみじ)している欅(けやき)並木かな  だっくす

 この地には東海道本線の起点として神戸駅が置かれ、今ある裁判所だけでなく市庁舎もありました。現在、北側に中央体育館、文化ホール、中央図書館、神戸大学医学部、大倉山公園があり、南側は今はハーバーランドですが、江戸時代は北風家や高田屋嘉兵衛が活躍した兵庫津の町でした。

  棗(なつめ)の実馴染みある味また口へ どんぐり

 今回の句会の参加者は15名と大勢。雨女(雨男)の方もご参加のようです。

 出句は事前に作った当季雑詠句(秋の句)2句と今から作るフォト俳句3句の計5句。

 本日の新趣向は「俳句という非日常、別人格をたのしむために俳号をつけましょう」。本名や愛犬の名、趣味、ゆかりの地名などから即興で俳号を付けました。

  今日もまだ凛と煌く秋桜 一風

 今回、専業農家の稲村(とうそん)さんの誘いで、菊作りと俳句がご趣味の菊太郎さんが初参加。負け続きの男性軍にとって強力な助っ人です。

 今日の男性軍は、最近上達著しい一風(いっぷう、一風変わった性格と爽やかな風のイメージを重ね合わせて)さん、俳句に目覚め日々句作りに励むひろひろ(本名の博から)さん、初幹事を引き受けた英(はなぶさ、本名の英から)さん、この日のためにこれまで撮り貯めた傑作写真を思い切りよく提供されたろまん亭(ロマンチックにあこがれて)さんら、気合十分です。 

 

かけ算 算術の少年しのび泣けり夏 三鬼

 時間厳守の貸会議室なので、早々に句会が始まりました。

 最初にろまん亭さんが、フォト俳句(写俳)の作りかたを説明。写真と俳句はたし算でなくかけ算で、と強調。うーん、はたしてできるのかな。

 次に、全員で写真を選び、ABCの3グループに分類。ホワイトボードに貼り替えます。ABCの写真をじっくり鑑賞して各自1句ずつ3句作って、午後2時45分までに出句です。

 ハイ、時間です。提出された短冊をバラし、手分けして清書。選句表を完成させ、全員にコピーを配付。

 午後3時、つきひさんとだっくすさんの進行で句会が始まりました。

 10分間で各自、他のメンバーの句を選びます。フォト俳句・ABCの各句から1句ずつ3句選んで各1点、ABC全体から特選句1句選んで2点、宿題の当季雑詠句(秋の句)から3句選んで各1点、と各人の持ち点は計8点。参加者15名の総点数120点の争奪戦です。 

 

七五三 子午線と橋と淡路に七五三 一風(明石句会)

 各人選句を終え、順に選句を発表。15人全員の選句を集計し、獲得点数の多い句について、順に、選句者が選句した理由や感想を述べます。(○数字は句会獲得点数)

 まず、Aの写真から―

  新酒酌みハーフの孫を祝いけり  播町(ばんちょう)④

 奉納されている酒樽からの着想のようです。国際結婚が珍しくなくなった時代、新酒はきっとワインのヌーボー。俳号は居住地から。

  大あくび写真は笑顔七五三    さくら④

 慣れない着物を着せられてくたびれちゃったけど、いい笑顔。お祭りの笑顔ですね。俳号は寅さんの妹からでなく愛犬の名前。

  七五三ポーズをとれと云はれても つきひ③

 慣れない着物を着たとまどいを表現したいい句。傘を差してなかなかチャーミングなポーズです。俳号は本名の「明」を月と日に分けて。

生田神社の「国際七五三」で撮影された写真です。

  今日の日の主役はワタシ七五三      かをる② 

  住む国の風習に慣れ七五三        だっくす②

  シチゴサンアイアムサムライジャパニーズ 見水②

  国際化山車のかつぎて色添えて      ろまん亭①

  異国にもあるのかどうか七五三       英①

  七五三世界共通波低し           一風

  晴著きて日本人よりらしくなり        どんぐり

  悪ガキも衣装一つでそれなりに      蛸地蔵

  此の度も姉弟主役の七五三        菊太郎

  秋の日の青い眼をした女の子       りっこ

  笑ってる子供の笑顔秋まつり       ひろひろ

  もくせいの香するなか七五三       稲村 

 

秋祭 漁夫の手に綿菓子の棒秋祭 三鬼

 次に、Bの写真―

  だんじりの果てて今宵はぬくめ酒  りっこ⑦

 祭りの後の酒は、冷だ、燗だと議論が沸騰。いずれにしても美酒に惹かれて本日の最高点の7点を獲得。俳号は幼いころからの呼び名。

  男子(おのこ)等のここが見せばぞ秋祭り 一風⑤

 祭りは男たちがええカッコできる晴れ舞台。一風さん、いきいきした表情をうまく詠みました。

  神の前相撲取る子の男振り     さくら④

 緊張の一瞬を的確に表現。ちょっと写真の説明だが「男振り」の言葉良し。

  秋しぐれ御輿にカバーかけ練りぬ  だっくす③

 立派なおみこしを雨に濡らさぬようにとの心くばりが憎い。俳号のだっくすは、孫んちの愛犬ダックスフントのラナちゃんから。

  秋祭いまごろなんで雨降んねん   見水(みみず)③

 異常気象に苦労したあげく収穫の祭に雨。なんでや、と神戸弁。俳号は初回のランダム句会に出句したミミズの句から。

 淡路の秋祭を撮影された写真です。

  やみやぶる太鼓の音で祭知る   稲村②

  泥酔に終る再会秋祭        播町②

  忘られぬ太鼓の音と秋祭り     英②

  秋祭り相撲の後は直らいや     蛸地蔵(たこじぞう)①

 「直らい」は祭りの後の食事のこと。蛸地蔵(たこじぞう)さんの俳号は、南海電車のおもしろい駅名から。由来は別にしてタコのように自在柔軟に句を作りたいとのことです。

  秋の日の終い御輿のかけ声に    かをる

  おみこしの列乱したるにわか雨   つきひ

  いややった赤いべべ着た村祭り   ろまん亭

  ねばり腰男の勝負相撲取る     ひろひろ

  秋祭専用道路我のもの       どんぐり

  笑顔よし大逆転の泣き相撲     菊太郎 

 

紅葉 夕紅葉谷残虹の消えかかる 一茶

 そして、Cの写真―

  冷やかな闇も友なりひとり旅    りっこ⑥

 写真とピッタリあった句。写真を見て「この人どこへ行くんやろ」という思いを句で表現。りっこさんBに続いてCも最高点獲得。

  あやとりの遠い思い出紅葉渓    菊太郎⑤

 赤い鉄橋からあやとりを思い浮かべたメンバーたちに驚嘆。本日の秀逸句の一つ。さすが菊太郎さん。

  鉄橋の奈落最も濃き紅葉      どんぐり④

 鉄橋の高さとすばらしい濃い紅葉、情景が浮かぶ。俳号は今の時節柄から。

  誰が待つぞ行きて戻れぬ紅葉橋   かをる④

 大げさでドラマチックなところが面白い。西村京太郎のトラベルミステリーを連想させます。

 紅葉の橋の写真が皆さんお気に入り。この写真は広島県の帝釈峡で撮影された写真です。

 下の燃えるような夕焼けの写真の白い丸は月ではなくマグネット。

  鉄橋が二等分して秋の山      つきひ②

  紅葉も黄落もなく朽ちにけり    播町②

  紅葉狩り孤独を愛す男かな     だっくす②

  男一人秋思滲みし赤き橋      さくら②

  国境分け入る先に待ち人が     蛸地蔵

  もみじ葉の音サラサラと秋の朝   一風

  よい写真観てびっくりの秋楠公   ひろひろ

  夕やけやとんぼとともに稲を刈る  稲村

  この橋を渡れば明日秋思かな    見水

  鉄橋をわたる風受け秋ふかし    英

  振り向けばいつか来た道秋の道   ろまん亭 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秋の句 秋浜に描きし大魚へ潮さし来 三鬼

 次は、事前に作った宿題、当季雑詠句(秋の句)の合戦です。

  布団乾すとんとんとんと秋の詩    ひろひろ⑤

 リズムの良さに5人が選びました。師匠のもとに日々作った句を送った成果がありました。 

 秋高しためらい一つ吸い込んで    ろまん亭⑤

 何もないすがすがしい青空の下、心が洗われる句。ろまん亭さん、いいシャッターをきりました。

  豊の秋丹波に黒豆係長        さくら④

 黒豆の枝豆・紫頭巾が年を追って人気上昇。県下で生産を競うようになり、発祥の篠山市には係ができたとサ。

  歳重ね鉢減らしつつ菊作り      菊太郎④

 おだやかな老いの暮らしぶりが素晴らしい。「理想ですね」と共感。

  コスモスや空には雲の天使達     見水③

 メルヘンのような雰囲気のいい句。

  スピードを落として見れば案山子かな 見水③

 田舎道をドライブしている情景がよくわかる。

  僻地にて暮す決意の冬支度       だっくす③

 北国の山中に引っ越した知人から薪ストーブの用意をしたという便り。

  お決まりの席は窓際蔦紅葉         かをる②

  草刈りに残してうれし秋桜花(コスモスカ) 稲村②

  玄米茶熱きをすする夜長かな        りっこ②

  百舌鳥鳴いて心ざわめく昼下り       蛸地蔵②

  はてしなく北の大地に稲の秋        英②

  大弓を射る一呼吸秋日濃し         かをる②

  銀山の間歩の奥にも秋の風         菊太郎②

  間引き菜を汁の実にして母思う       英①

  その節はどうもと遺影露けしや       さくら①

  秋風に葉づれの音や今年竹         蛸地蔵①

  水引の花の間隔いいかげん         つきひ①

  わらべ歌母は達者か秋日和         ろまん亭

  そこここに紫苑咲きたり母の墓       りっこ

  誰が持つ掘り出せし藷帰り道        どんぐり

  こんにちはどこでもドアで天高し      ひろひろ

  黍(きび)吊す軒先見れば懐しく      一風

  旧職場見過しており秋日和         播町

 以上でフォト句と宿題句のすべての獲得点数が決まりました。

 総点数120点の行方は、女性軍6名で56点、男性軍9名で64点。いつものごとく女性軍が健闘しましたが、期待通り菊太郎さんの男性軍への貢献大。出句した5句すべてが得点したパーフェクトは、さくらさんお一人でした。

 予定どおり午後5時に句会終了。 

 

直らい 秋の暮大魚の骨を海が引く 三鬼

 句会の後はお待ちかねの表彰式兼反省会の懇親会。会場は本日の主役・ろまん亭さんがJR神戸駅前「日本海庄や 神戸店」を予約。今日の渾身の句会を海の幸のごちそうと「ぬくめ酒」でいやす「直らい」です。

 市総合福祉センターを出て、小雨の中を楠公さんの塀に沿ってJR神戸駅へ。楠公さんの正門前には七五三のノボリがはためいています。

 店に到着して着席。午後5時半、表彰式です。

 受賞をして、各自、俳号を紹介。「そんなのだめよ」の一言で再考も…。

 今日のはじめてのフォト句会の各賞と受賞者は、次のとおりです。

   1位 優 勝           りっこさん 15点

  2位 準優勝           さくらさん 15点

  3位 殊勲賞           菊太郎さん 11点

  4位 敢闘賞           見水さん  11点

  5位 技能賞           かをるさん 10点

  6位 フォトS賞(ほっとした)  だっくすさん10点

  7位 フォトS賞(ほっとした)  播町さん   8点

  8位 フォトS賞(ほっとした)  ろまん亭さん 6点

  9位 フォトS賞(ほっとした)  英さん    6点

  10位 フォトS賞(ほっとした)  つきひさん  6点

  11位 逆引技能賞         一風さん   5点

  12位 逆引敢闘賞         ひろひろさん 5点

  13位 逆引殊勲賞         どんぐりさん 4点

  14位 フォトM賞(ほとほとまいった)稲村さん  4点

  15位 フォトK賞(ほっといてくれ) 蛸地蔵さん 4点

  特別賞-フォトI賞(ほんとにいい写真)ろまん亭さん

  (同点の場合、高得点句のある者が上位に)

 表彰式の後は、句会の反省や近況報告など、ざっくばらんに懇親会。

 「初めてのフォト句会だったけど、よく短い時間でいい句ができたと思います」と、つきひさんの感想。

 今春から動物園勤務の蛸地蔵さん、一番のお気に入りの動物はカピバラ。ぬーぼーとしているのがいいそうです。女性軍は集まって「あやとり」に夢中…。あっという間に終了の時刻。

 惜しみつつ「直らい」はお開き。賞品を手にぞろぞろと神戸駅へ。

 この神戸駅で、西東三鬼が戦後の買い出し風景句を詠みました。

 みな大き袋を負へり雁渡る 三鬼

 優勝したりっこさんから、その後に2句。

  句会佳し宴なほ好し秋深む

  桐一葉待ちにし集い終っちゃった

 お世話いただいた、だっくすさん、英さん、ろまん亭さんに心から感謝。

 そして、次回、来春の句会「王子Zoo観桜句会」で“動物俳句”に挑戦、また「絵手紙句会」などの案があります。少々早いですが、皆さんよいお年を。

2010.11 写真/romantei,文/mimizu

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2009=明石taco句会

2009-11-15 | 吟行句会

 

蛸壺やはかなき夢を夏の月

 芭蕉は、句のあとに「この浦のまことは秋をむねとするなるべし」と続けています。貞享5年(1688年)4月、芭蕉45歳、弟子の杜国と訪れて詠んだこの句を、没後出版された「笈の小文」に残しました。

 須磨寺やふかぬ笛きく木下やみ

 かたつぶり角ふりわけよ須磨明石

も、この旅の句です。

 春の龍野句会のあと、次の句会は近場でと、つきひさんとだっくすさんが準備し、第9回RANDOM句会の地はつきひさんの地元の明石。季節はまだ芭蕉が「まこと」とした秋。はたして、旅人の目で明石の良さを再発見できるでしょうか。

明石へ 旅人と我名よばれん初しぐれ(笈の小文)

 11月15日(日)午前11時に明石駅改札前集合。海岸沿いを走る電車から海と明石海峡大橋と淡路島が眺められ、須磨・塩屋では波打ち際も見えます。小春日和ですが、ときどき雲が広がり寒空に。

  明石まで逸る車窓の冬の潮    どんぐり

  冬日和明石へとちと旅気分    どんぐり③ (数字は句会獲得点数)

  海峡の流れの上に冬の雲     見水②

 JR明石駅の改札を出ると、晴れやかなメンバーの顔。本日の参加者(敬称略)は、男性がろまん亭・弥太郎・英(途中から)・見水・播町・ひろひろ・一風・蛸地蔵の8名、女性がどんぐり・りっこ・かをる・さくら・つきひ・だっくすの6名の14名。過去最多の参加者数。 

 世話人のつきひさんを囲み、配られた伊藤太一画伯のイラストマップや参考資料を見ながら吟行のポイントを聞いていると、

 「店が込まないうちに明石焼きを食べに行こう」と、男性陣から声。本日お奨めの店「ウタ」で、全員まず腹ごしらえすることに。

蛸踊る 冬の日や馬上に凍る影法師(笈の小文)

 「ウタ」は魚の棚商店街の真ん中を南に抜けた先。明石の住人のひろひろさん、さっさと先導。

  銀杏散る子午線の町蛸踊る  ひろひろ

 20人で満員くらいの小じんまりした店。焼きあがるまで時間がかかるので、奥の座敷に陣取った男性軍はビールを注文。蛸の切り身をおつまみに、たこ焼きやB級グルメ、干し蛸のうまい食い方、子供時代のおやつの話に花を咲かせ、すっかりほろ酔い。すでに男性軍完敗の予感。

 

 「ウタ」の明石焼きは形が良くアッツ熱で、蛸も熱いダシも美味しい。

  はふはふの明石焼てか着ぶくれる  播町①

  熱燗を思い浮かべて玉子焼     一風①

 句会の場で「てか」が論議に。播州弁と思った人多数。作者は「と言うのか」の若者言葉と主張。明石にやってきたカップルが初めて明石焼をパクリと口に入れ、熱さにびっくりしている句です。

 女性陣は、戦いの準備に余念がありません。

  冬来る明石焼食べ決戦に     どんぐり

 全員大満足で「ウタ」を出発。焼き鯛の名店「魚秀」を横目に魚の棚商店街に戻ると、人通りが多く歳末の街のよう。

 

  かけ声も年の瀬近く魚の棚  ろまん亭②

  魚棚押しくら饅頭年の暮   ひろひろ

  年の暮手足八本明石蛸    ひろひろ④

 ピチピチした昼網の雑魚や蛸を冷やかして歩いて行くと、乾物店で明石焼きの材料、「じん粉」(でんぷん)も見つけました。

  昼網のガシラは美味し燗熱う  播町②

  魚棚の店の氷も冬めける    一風①

 魚の棚商店街を西に抜け、北へ進んで高架をくぐると明石城です。

時の道 鷹一つ見付けてうれしいらご崎(笈の小文)

 本日の吟行は、明石城から東へ明石天文科学館まで歩くコース。東西約2キロの歴史プロムナードで、「時の道」の愛称が付けられています。城内の明石公園では菊花展を開催中。人でいっぱいです。

 

  城門を入るや菊の香のどっと   つきひ②

  菊花展気ままに咲くを許されず  だっくす③

 集合写真を撮ろうと、ろまん亭さんが高級カメラを構える。ろまん亭さんは今秋の神戸ビエンナーレのアーティスティックフォト展で優秀賞を獲得しごきげん。通りがかりの若いお母さんにシャッターをお願いし、パチリ。別行動の3名は囲み写真に。

 明石城は、徳川幕府が西国からの敵を防ぐために1617年、小笠原忠真に築かせた城。町割(都市計画)をしたのが客分の宮本武蔵。武蔵は城内の庭や、近くの本松寺の庭も作っています。天守閣は築かれずじまいで、いまは巽櫓(たつみやぐら)と坤櫓(ひつじさるやぐら)が残るだけ。

   

 メンバーは、城の北側の散策路を歩く健脚コースと、城の南側を歩く近道コースに分かれます。どちらが吉と出るでしょうか。

  さあ来いと冬迎えるぞ石積は   蛸地蔵

  閉じられし門のうちなる石蕗二本 かをる①

  石垣や小春日和をいただいて   りっこ③

 6代目城主・松平信之の時代、明石城は「喜春城(きしゅんじょう)」の別称を持つほどの仁政が行われました。が、続く7代目城主・本多政利は圧政を強い、3年たらずで減封のうえ国替えになります。

  樹々渡る風に冬聞く明石城    さくら③

  一言が思い浮ばず風冴ゆる   ろまん亭③

  いにしへの時の濃縮城紅葉    つきひ②

  圧政の古城の庭に枯葉舞う    弥太郎

 城の北側の散策路は大木が茂り、樹には、エノキ・アベマキ・アキニレ・モチノキ…の名札。坂の上に県立・市立の図書館があります。

  冬日受け楡の大木城の坂        りっこ

  落ち葉踏み角をまがれば冬が来る   ろまん亭①

  ひしゃがれしドングリの実を重ねみる  ろまん亭①

  落ち葉踏み子午線の坂ふらふらと   一風③

  城掘りの落葉眺めて君を待つ      一風 

 ろまん亭カメラマンが遅れがち。芸術的な被写体に遭遇しそちらに夢中。一風さんが待っていた「君」はろまん亭さんでした。ろまん亭さんを残して、「時の道」を先に進みます。

   時の道上り下りて小六月      どんぐり④

  整ひし武蔵の園の冬桜       さくら②

  小春日のいらかの上に鳶一羽   見水①

 宮本武蔵作庭の本松寺はよく手入れされ、桜が帰り花を咲かせています。

 月照寺に向かう途中で、英さん登場。明石川流域で育った英さんには、明石は思い出の詰まった懐かしいまち。

  晩秋の明石のまちに母しのぶ  英

  冬空に昔の明石今はなし    英

 人丸山の高台に月照寺と柿本神社が並んでいます。明石城築城のとき本丸の場所から移されました。歴史は古く、月照寺は811年に空海が真言宗の楊柳寺として建立。887年にこの寺の僧、覚証が柿本人麻呂の夢を見て祠を建て、寺の名を月照寺に改め、祠が柿本神社に。人麻呂は万葉集巻第三の羈旅の歌八首などに明石の歌を残しています。

 天離(あまざか)る鄙(ひな)の長道(ながぢ)恋ひ来れば

 明石の門(と)より大和島(やまとじま)見ゆ

 「大和島」は海に浮かぶ島ではなく、都(飛鳥)のある大和の山々のこと。西国から都へ帰る船旅でようやく明石までたどりついた喜びを歌い上げ、こちらまで興奮が伝わってきます。

 梅原猛氏は、人麻呂が晩年、讃岐に流され一時許されて都に帰るときの歌と想像し、その後再び筑紫・石見に流されて刑死する説をとっています。覚証も人麻呂の魅力に強く惹かれた僧だったのでしょう。月照寺は1575年に曹洞宗の寺に変わります。

  木枯しが通り抜けるや寺町を 蛸地蔵①

 月照寺の山門は、ほれぼれする重厚さ。徳川幕府が伏見城を廃城にした際、その薬医門を初代城主が拝領し御殿の正門に。明治15年(1882年)にこの寺に移されました。山門の脇に水琴窟があり、地中に太い竹筒をさしています。竹筒に耳を当てると妙なる調べ。石庭も美しく、眺望も抜群です。

  水琴窟にかそけき秋の声を聞く つきひ①

  秋深し水琴の音秘めやかに   かをる②

  澄む秋の水琴窟や月照寺    だっくす⑥ 

七五三 さまざまのこと思い出す桜かな(笈の小文)

 隣の柿本神社の境内は七五三で大賑わい。「ヒトマル=火止まる=火除け」、「ヒトウマル=人生まれる=安産」の神様の柿本神社は、七五三のお参りにも人気があり、警備員が車の誘導に走り回っています。

  七五三親も子も皆晴れやかに   かをる

  おすましがきれいなべべを七五三 ろまん亭②

  人丸はおおにぎわいの七五三   英①

  小春日の風に吹かれて七五三   見水①

 七五三の句は難しいのか点が入りません。

  筆柿の真青の空にたわわなる   さくら①

  陽だまりに赤き実探す老い雀   蛸地蔵③

 

 境内には、指先ほどの小さな柿・筆柿のなる御神木や八房の梅、盲杖桜など伝説の木々や古い由緒ある石碑などが所狭しと並んでいます。この日は熟した筆柿が落ちていました。

 

  階(きざはし)を一二一二の七五三 播町①

 東側の石段は長くて急です。5歳、7歳の子供なら登れるけど、3歳児なら無理かも。昔は山陽電車人丸前駅で降りてみんなこの石段を上り降りしてお参りしたのでしょうね。

子午線 ほととぎす消え行く方や嶋一つ(笈の小文)

 月照寺と柿本神社の間に、赤トンボの標柱があります。80年前の昭和5年(1930年)に子午線を示すために立てられたもの。昭和35年(1960年)に明石市立天文科学館が建つと、この塔が日本の子午線のシンボルに。昭和40~43年に松本清張が書いた推理小説「Dの複合」は、東経135度と北緯35度、浦島・羽衣伝説を絡ませ、柿本(人丸)神社や天文科学館が登場します。

  子午線を探して歩く冬日和    蛸地蔵③

  子午線の古びし標柱冬隣     だっくす⑤

  子午線を跨いで立てり冬ぬくし  りっこ③

 上五に子午線を詠んだ句は、どの句もかなりの得点。子午線は目に見えないが、その上を毎日決まって太陽が横切っていくという宇宙の壮大なロマンを感じさせるからでしょうか。

  子午線をtacoがよこぎる秋日和  播町③

  子午線をまたいで天空秋日射す  かをる⑥

  子午線と橋と淡路に七五三    一風⑤

 一風さんの句に、「言葉を並べただけのようだけど」との酷評もありましたが、堂々5点を獲得しています。

 赤トンボ標柱に並んで、芭蕉75回忌に建てられた蛸壺の句碑があります。歌聖・人麻呂のそばに俳聖・芭蕉も置いたら、子午線まで来てしまいました。この位置から見る明石海峡大橋は、ほぼ真横からの姿。素晴らしい眺望に刺激されて、いい句ができています。

 

  こがらしに海はれわたり淡路島   英①

  神無月夢の架橋神走る       ひろひろ①

  秋惜しむ遠き目をせし同僚と    つきひ③

 明石天文科学館の展望台からの眺望でしょうか。

  天文台秋の海峡広がりぬ      だっくす①

  峡を行き交ふ船や秋日和      だっくす③

  春日のくにうみの島浮きあがる   播町④

 熱烈な古代史ファンの弥太郎さん、今日はしみじみ明石の人麻呂を偲びます。

  秋涼の明石海峡波白し        弥太郎②

  万葉の水夫(かこ)たち偲ぶ秋の海  弥太郎

  返り花人麻呂の弧悲(こひ)偲びけり 弥太郎③

 九句選 日は花に暮れてさびしやあすなろう(笈の小文)

 アスピア明石北館7階「あかし男女共同参画センター」の会議室が本日の句会場。14:00、投句締切時刻。句会の始まりです。

 

 14名5句ずつの全70句を、順不同・作者不明で清書し、コピーを配付。各人15分間で他のメンバーの句を、今回はいつもの5句ずつでなく9句選び、うち1句を特選句2点に換算のルール。総点数140点という過去最大の点の争奪戦です。各人が5句なら秀句に得点が集中するが、9句ならちょっと気に入った句も選び、得点がみんなにバラけて面白くなるのでは、との読み。

 各人選句を終え、つきひさん進行で選句の発表が始まりました。

 獲得点数の結果は次のとおり。

  優勝=だっくすさん・18点

  2位=つきひさん ・17点

  3位=りっこさん ・15点

 上位組はいつもの面々。総点数140点の行方も、女性軍6名で80点、男性軍8名で60点、で女性軍圧勝もいつも通り。ただし、出句した5句すべてが得点するパーフェクトが、だっくすさん・つきひさん・播町さん・ろまん亭さんと4人も。2桁を獲得した一風さんとパーフェクトのろまん亭さんご満悦。

 本日の高得点句です。

  はふはふと蛸ほうばりて冬楽し   見水⑧

 蛸は季語ではないので「冬」を入れてます。播町さんの句と似たのは偶然。

  母に歩を合はせし日あり菊花展  つきひ⑨

 菊花展を見て母との楽しい思い出を句にした感覚、誰もが共感します。

  この感じ今も好きよと枯葉踏む   りっこ⑨

 「この感じ」で始まる斬新さに惹かれます。踏むのは落葉、舞うのが枯葉。

  大橋を置きて小春の時の道    さくら⑧

 高台から見える大橋を「置きて」と表現し、大・小の対比が素敵です。

 句会のあと、書家・りっこさんの指導で、今日は自作のお気に入り句を色紙・短冊に書いて記念に。前回の龍野句会では初めての試みにとまどいましたが、今回はみなさんさっさと書き始めます。

 りっこさんが「漢字は大きく、かなは小さく」、「色紙の三行書きは中の句を上に」などアドバイス。色紙・短冊・道具一式は、今回もりっこさんが全員分ご用意。

 17:00、秋が深まり日の傾く時刻が早い。部屋の窓から見える天文科学館が夕映えに輝いています。 

月の庵 扇にて酒くむ影や散る桜(笈の小文)

 17:20、明石駅ステーションプラザ明石東館2階の和食「月の庵」に移動して表彰式と懇親会。司会は本日ごきげんのろまん亭さんです。

 まず表彰式。今回の賞品は、老舗「分大」の最中・丁稚羊羹、干し蛸、明石のり、たこせんべいなど、明石の特産品。18点を獲得して優勝しただっくすさんから、勝因と感想。

 「たまたま総合点で」と遠慮がちですが、月照寺の水琴窟や赤トンボの標柱、天文台など見所ポイント選びもパーフェクトでした。 

 乾杯のあと、つぎつぎ運ばれる料理を、みなさん年を感じさせない食欲で平らげ、ビールやお酒(冷やの地酒)が進む中、司会が全員を順に指名し、句会の反省や近況を報告。

 

 つきひさんは大学は退いたがNPOに取り組まれる。弥太郎さんは奈良で次々と進む発掘に目を離せないが、足を骨折してさんざんだった。蛸地蔵さんからは「蕪村はわかりやすいが芭蕉は意味不明。自分は俳句より短歌が向いているのかも」の発言。播町さんからは「俳句の選考は、最初の上五でどれだけ興味をひくかどうかが勝負」など。話題は、政権交代や新型インフルエンザにも。

 「次回の春の句会はRANDOM句会も第10回目。第1回の有馬句会に戻って、また有馬温泉でやりませんか」と播町さんが提案。①有馬、②篠山、③伊賀上野、④須磨、⑤伊丹、⑥石山寺、⑦飛鳥、⑧龍野、⑨明石、と続いたRANDOM句会を、ふりだしの有馬で?

 つきひさんは「最初から比べると少しは俳句らしくなったけど、小さく器用にまとめた句にならないように。RANDOM句会は、先生が一方的に厳しく指導する句会ではなく、遊び心を大事にして、みんなでお互いに選句する自由な句会なので」と念押し。初心に帰るのも、いいかも知れません。

  金泉に春愁の身を沈めをり  だっくす

 7年半前、第1回の春らんまん有馬句会で断トツの最高得点をとった、本日の優勝者・だっくすさんの句です。

 「蛸焼き」で始まり「月の庵」で締め。芭蕉の句の「はかなき夢」のような明石句会は、無事終了。句会や懇親会の余韻に浸り、心地よく疲れて、それぞれ家路に着きます。お世話されたつきひさんとだっくすさん、りっこさんに心から感謝。そして、次回の句会に期待。 

2009.11 写真/Romantei+Mimizu 文/Mimizu

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2009=龍野句会

2009-04-04 | 吟行句会

 

赤とんぼとまっているよ竿の先

 三木操(露風)少年の詠んだ俳句は、のちに童謡の一節になり、やがて、この町は「童謡の里」を誇るようになりました。

 昨秋の明日香村句会の帰途、有志で立ち寄った居酒屋で、「春の句会は、龍野の花見でどう」、から第8回RANDOM句会の準備が始まりました。

 幹事は、一風さんとだっくすさん。

 桜の見ごろは1週間ほど。3月は彼岸を過ぎても寒さが続き、4月4日(土)の句会当日、どんな桜が見られるのか予測ができません。

 

龍野へ 春が来ました,春が来た(三木露風童謡詩「春」より)

 その日がやってきました。朝から雨です。

  四月四日龍野の里で雨句会  ひろひろ

  まさかこの花見句会に雨女   播町

 お二人はひろひろさんの都合で車にて先着し本龍野駅で出迎え役に。あとの11人は、案内状に指定されたJR新快速に各自乗り込んで合流の予定です。

  「本竜野まで1,280円か。高いなあ」

 JR三ノ宮駅の券売機の前で、ぼやいている幹事の一風さん。ホームに上がると、ハンチング帽の波平さんがニコニコ。

  日月や又桜観つ徒然に  波平

  年々の想ひ怪しや桜花  波平

 波平さんは7年前に発刊の“高齢予備軍の「遊び探し」マガジン「RANDOM」”の編集発行人の一人ですが、RANDOM句会は8回目にしてご本人は初登場。小型プレジャーボートでの日本一周の記録はブログで刻々と拝見させていただきました。車ならご自宅から龍野へはわずか40分ほど。バスと電車で神戸三宮経由ならたいへんな大回りになります。

 「皆さんと楽しく飲むのが目的。知的なことは…」とご謙遜。

 高級カメラをかかえたろまん亭さんら三宮組がそろい、8:39 JR三ノ宮発新快速に乗り込むと、幹事のだっくすさん、停車するごとに乗り込むメンバーを確認。どんぐりさんは、春雨の須磨寺句会以来2年ぶりの登場です。もしかして雨女?

 西明石でつきひさんの姿無し。今日は美作のお家からかしらと携帯連絡すると、乗り遅れてあとの電車で来られるとのこと。つきひさん、今年で大学を退官。学生の論文の整理などでお疲れのご様子らしい。

 だっくすさんから朗読ボランティアのお話など伺っていると、姫路着。姫新線ホームには二両連結の電車が待っていましたが、ハイキング姿の(われらと似た)元気な高齢者・後期高齢者で超満員です。

 英さんは明日香句会に続き2度目の参加。はたして「いと楽し」という得点がえられるでしょうか。

  いと楽し春の龍野で句づくりを 英

  花曇り今日は賑はふ姫新線   だっくす②(数字は句会獲得点数)

  山桜単線電車通過待ち     どんぐり④

 9:51本竜野到着。ひろひろさん・播町さんと合流し、つきひさんを除く参加者12名が集合。幹事の一風さん・だっくすさんから案内パンフ(イラストマップ)と投句用紙(各自5句分ずつ)が配られて本日のスケジュールの説明。ここ本竜野駅から吟行スタート。

 案内状にあった「特に今回は、句会のあとに新しい企画「○○」を用意」の中身はまだ明かされません。

  俳句より演歌みたいな桜雨  ろまん亭

 今回はお花見、桜の下で酒飲んで、カラオケでも歌おうか、ではなさそう。ただりっこさん持参のスーツケースが、ひろひろさんのBMWに積み込まれました。

  こだわりの龍野の街は春寒や 蛸地蔵①

 本竜野駅から龍野の街に向かって歩き出します。昭和レトロの街並みを眺めながら歩いていると、兵庫県手延素麺協同組合の建物。そばには流れの速い美しい疎水もあります。

  揖保川の疎水の柳若葉かな   りっこ③

  用水路みな美しき花の町    見水③

 「龍野はいつ来てもきれい。もてなしの心に感心します」

 つきひさん、用水路の句に◎(◎は特選句=2点)。

 遅れて本竜野に到着したレンタサイクル大好きのつきひさん、この天気では、てくてく傘をさして歩くしかなく、なかなかメンバーと遭遇できません。

  花の雨レンタサイクルあきらめて つきひ

  会へさうで出会へぬ町や花曇  つきひ⑤

 蛸地蔵さん、この句に◎。秘められた深い想いを感じられたよう。

 揖保川にかかる龍野橋のたもとの和菓子屋が、「しょうゆもち」、「しょうゆまんじゅう」と書いた札を掲げています。

  しょうゆもちしょうゆまんじゅうさくらもち 見水④

 醤油饅頭は、あとで觜崎屋(写真)で買って家族への土産に。句会の席でも配られ、ほのかに香る醤油味を味わいました。播町さん、この句に◎。

 龍野橋を渡ります。右手に、龍野のシンボルの城山、鶏籠山(けいろうざん)が見えます。このシーンは昭和51年上映の「男はつらいよ 第17作・寅次郎夕焼け小焼け」にくり返し登場します。

 あれから時代背景も俳優たちもすっかり変わり果ててしまったのに、龍野のまちの風景だけは少しも変わっていません。

  赤味おぶ龍野の山に春の雨         波平

  蒲公英(たんぽぽ)の色鮮やかな黄色かな ひろひろ

  揖保川の瀬音切りさく群れつばめ      見水②

 川をのぞき込むとツバメが群れ飛んでいます。

 振り返ればのどかな春景色の中にヒガシマル醤油の工場。

  はりまののうすくちせうゆ春惜しむ      りっこ①

 

まち歩き 清い川瀬は,鮎,すむ処(三木露風童謡詩「揖保川」より)

  春雨の土蔵造りのB・K(バンク)かな りっこ

 龍野橋を渡りきって、城下町に入るといきなり道が狭くなり、さらに古い町並み。姫路信用金庫の支店も、明治か江戸時代の両替商の店構え。

 ろまん亭カメラマンも俄然忙しくなりました。

 

  花冷えへ向かう龍野の小径(こみち)かな 播町②

  格子戸を開ければ花散るせせらぎぞ   播町

 寅さん映画の元気あふれる梅玉旅館の芸者ぼたん(太地喜和子)が飛び出して来きそうな、そして日本画大家(宇野重吉)の元恋人のお花の師匠(岡田嘉子)が静かに手を振っていそうな小路。

 播町さんらは、まず桜、と龍野公園へ。その他大勢は古い土蔵の風情に惹かれて商家の通りを散策。和菓子の觜崎屋では、出来たての草餅をその場でいただくろまん亭さん。大きな袋入りの醤油せんべいを買って、「あなたも、どう」と分けてくれる波平さん。なぜか一挙に春がやって来た感じ。

  名産をひとつまみして花の路   波平①

  花曇り隠居うろつく龍野路     波平①

  春雨を片目で眺める鰆売り    蛸地蔵

  旧き街ひしをや味噌の香りして  蛸地蔵②

  

 香ばしい豆を蒸すにおいにつられて、次は井戸麹製造所へ。ご主人が作り方を懇切丁寧に説明してくれる。お味噌をつくるのは大変な手間と時間のかかる仕事なんですね。昔、家で味噌を作っていた英さん、「ひしを」の句に◎。

 では、ここらで一服。古い町家を改造した喫茶店「エデンの東」に到着。入口にもジェームス・ディーンの敷物。播町さんに居所を携帯連絡。まだ遭遇できないつきひさん以外全員集合。

  花冷やエデンの東てふカフェに  どんぐり

  春雨でエデンの東ひとやすみ   英

  菜種梅雨土蔵の茶屋の珈琲かな  りっこ②

 

 世の中は百年に一度の大不況とやらで、派遣切りや就職内定取消など、暗いニュースばかり。そして今日にも北朝鮮が人工衛星か弾道ミサイルを日本上空に飛ばすという日のお花見句会。弥太郎さんの「大不況……」の句は、播町さんが「本日のトップ賞間違いなしの名句、と思いあえて選ばなかった」との言あり。しかし連衆は社会面に目をそむけたようでした。

  大不況桜かってに咲いて散る    弥太郎

  デジカメに写る桜花の暗い翳(かげ) 弥太郎

  寒(かん)耐える命が染める桜色   弥太郎②

 出句締め切りは13:30「赤とんぼ荘」。うすくち醤油資料館や龍野城、霞城館、龍野公園、できれば聚遠亭など、龍野の桜の名所をめぐり、腹ごしらえ(昼食)もして、俳句を5句ものにしないと。「エデンの東」を出発。

  花冷の龍野の歌は赤トンボ     英

  春雨にねえやを探して露路濡らす 蛸地蔵①

 ここは童謡の里、龍野でした。夕焼け小焼けのあかとんぼでも口ずさみながら、童心に返って素直に俳句を作りましょう。

 

さくら お山のさくら何本あるか(三木露風童謡詩「山桜」より)

 商家群を後に、桜の見所、山手の方に向かいます。うすくち醤油資料館を見ておこう、と蛸地蔵さんらはちょっと立ち寄り。あとのメンバーはお寺や武家屋敷、龍野小学校を横目に、龍野城の坂を上ります。すがすがしいいい気分です。

  ホケキョ鳴く山すそ浅く聴きほれる  ひろひろ

  桜咲くどっしり座りて龍野城      ひろひろ

  曇天に溶けこんでいる桜かな     どんぐり

  播磨なる古城石垣春の雨       りっこ

  雨龍野城山おおう花かすみ      英②

 見水さん、この句に◎。

  花見るとさっと分れて真剣に      一風

  花の下(もと)ひっそり見つめる尊徳像 一風

 今回の幹事の一風さん、やっと句ができました。

  鳥が食い我もめでしか桜花      ろまん亭

  うすくちが花にも人も龍野にて    ろまん亭

  童謡(うた)の里バックは桜君モデル ろまん亭

 満開にならないのに、あちこち花が丸ごと落ちているのは、小鳥たちがつぼみを食べに来ているからだそうです。桜餅のような味なんでしょうか。

  桜花五分も七分も満開も       蛸地蔵③

 蛸地蔵さんも一行に追いついて、ゆっくりお城の桜を満喫。ひろひろさん、この句に◎

 この天気では桜の下で誰も宴会はしていない。地元ボランティアが城内の部屋やふすま絵をガイド。一巡して残っていたのは一風さんだけ。

  桜とは静かなる花龍野城       見水④

 弥太郎さん、この句に◎。句会の場では戦前の桜や本居宣長も登場して桜談義に花が咲きました。

 城を出ると、霞城館(かじょうかん)が出現。詩人の三木露風、哲学者の三木清、「嗚呼玉杯に」を作詞した矢野勘治らを記念する文学館です。

 今、書店の詩集コーナーに三木露風はなく、北原白秋と並び称された「白露時代」が実感できない。手がかりに、と一風さんを誘うとOK。一風さん、受付の人に「三木清も龍野の人?」と確認している。

 中に入ると、彼らの直筆原稿や手紙、書籍、師弟・交友関係など丁寧に展示。三木露風は、石川啄木と同時代にもてはやされた天才詩人なんですね。15~20分で素通りはもったいないが、販売されている冊子をそれぞれ選んで出ました。

 他のメンバーを追いかけて龍野公園へ向かう途中、松平定信や井原西鶴ゆかりの茶室・聚遠亭の案内看板。一風さん行きたそうだがもう昼なので今回は断念。

  春雨が波紋を描く池静か       弥太郎①

 「俳句はハイク」を実践される弥太郎さん、聚遠亭まで行かれたようです。

 

 龍野公園では、「龍野さくら祭り」開催中(4/1~4/12)。観光売店「さくら路」の隣にはテントが張られ、地場特産品の販売や屋台も出ています。

 メンバーのほとんどはここで缶ビール片手に昼食のまっ最中。

  句会よりすき腹満たす花見時(どき)    ろまん亭

  花の雨テントで食べし紫黒米(しこくまい) だっくす①

  桜ふぶくわがロスタイム酔の中       播町②

  桜咲くあんたもわしも恵比須顔       ひろひろ

 遅れて到着した、一風・見水組、蛸地蔵さんの待つ「すくね茶屋」で、にゅうめんを注文。そして、ビールを一杯。

  花見酒飲んで焦って今日のうた      一風

  賑やかな年寄り見守る山桜        一風

  昼酒や春はわが身にとどまらず      見水④

 「春はわが身にとどまらず」は、霞城館でいま見てきたばかりの三木露風の詩「現身(うつせみ)」の一節を拝借しました。

 空腹も満たされ、一杯のビールでほろ酔いになったら、後は「赤とんぼ荘」で締切時刻までに、俳句を5句仕上げるだけ。山道を急ぎます。見れば、ピンク色あざやかなミツバツツジの群生。

  桜(はな)だけが花ではないと山つつじ  一風④

 本日の一風さんの最高傑作です。ビールが効いたかな。波平さん、この句に◎。

  道曲がる度につつじの蘇芳(すおう)色  つきひ①

  山つつじ三百六十度展望す       どんぐり①

  つつじ咲き童謡の径愈(いや)し径    弥太郎

  童謡の小径つつじの続く径        だっくす

 山つつじ、モテモテです。「赤とんぼ荘」に登っていく歩道には、「童謡の小径」と「哲学の小径」とがあります。「哲学の小径」を選んだ蛸地蔵・一風・見水組、一風さんの独り言にギョ。

 「高校生のとき、三木清の哲学書をよう読んだなあ」

 へえ、そうでしたか。団塊の世代の青春を垣間見ました。

 

赤とんぼ荘 夕焼け小焼けのあかとんぼ(童謡詩「赤とんぼ」より)

 「赤とんぼ荘」に到着。句会の会議室はもう開いています。思い思いの席に着いて、歳時記や辞書を見ながら最後の仕上げ。早く出来た人は、投句締切時刻まで播磨平野を一望できる展望大浴場で入浴可。今回はゆっくりできました。

  山荘の出窓まで来し桜かな     つきひ①

  雨けむる龍野のまちで花づかれ  英①

  花疲れ五句作ること難しく      だっくす

  花を賞で街並を賞で龍野かな   だっくす①

 13:30、投句締切時刻。さあ句会の始まりです。

 

 13名5句ずつ65句を、いつものように順不同・作者不明で清書し、コピーを配付。各人15分間で他のメンバーの作ったお気に入り句を5句ずつ選び、うち1句を特選句2点に換算のルール。総点数78点の争奪戦。各人選句を終え、蛸地蔵さん進行で選句の発表が始まりました。

 獲得点数の結果は次のとおり。

 優勝=見水さん・17点、2位=つきひさん・16点、3位=どんぐりさん・12点、ブービー賞=ジャンケンによりひろひろさん

 総点数78点の行方は、女性軍4名で38点、男性軍9名で40点。またもや女性軍には及びませんでした。リハビリ中で体力がまだ本調子でないろまん亭さん、宴会不参加で句作にも力は入らないひろひろさんの不振がひびきました。

 優勝した見水さんは、出句した5句が④④④③②点とすべて選ばれるという当句会始まって以来、初のパーフェクト達成でした。

 今回の句会の高得点句2句と、選んだメンバーは以下のとおり。

  人生の節目節目の桜かな     つきひ⑨

 さすが断トツの本日最高得点句。◎はろまん亭さん、一風さん、どんぐりさん。○はひろひろさん、波平さん、蛸地蔵さん。日本人なら誰もが感じる桜の季節の思いに共感しました。今春大学を退官されたつきひさんの思いも込められているのでしょう。

  傘さすもささぬも花の雨なれば  どんぐり⑦

 どんぐりさんらしい美しい秀句。◎はだっくすさん、りっこさん。○播町さん、波平さん、蛸地蔵さん。今日の雨のお花見句会にぴったりの句です。

 ここで、句会のあとの新しい企画「○○」の内容が明かされます。

 毎日書道展毎日賞受賞の書家でもあるりっこさんの指導で、特選句(◎)を筆で短冊や色紙に書いて作者にプレゼントし、自作お気に入り句も書いて記念に持って帰ろういうのです。

 りっこさん、全員の筆や下敷き、短冊・色紙、お手本のコピー、本日の賞品の額選びまで何から何までのご準備、ほんとにお疲れ様でした。

 「習字なんか中学校以来やで」とか言いながら、楽しく練習し、1時間ほどで完成。いい経験でした。そして記念になる宝物もいただきました。

 

 

 

 17:00、和室に移動して懇親会。

 「赤とんぼ荘」は国民宿舎なので、寅さんが葛飾柴又でおばちゃんの煮っ転がしを見て懐かしんだ「播州龍野・梅玉の洗練された会席料理」とまではいかないにしても、料理はなかなか豪華。飲むほどに、このままここに泊まって、明日こそ青空の下で龍野の桜を味わい尽くし、桜吹雪に吹かれたい気分。

 波平さんは、かつて同じ職場だったどんぐりさんと20年ぶりに、りっこさんとは10年ぶりに再会。旨いお酒となりました。

  揖保川や花も料理もうすくちで  播町

 予定時刻より遅れハラハラした送りのバスが赤とんぼ荘を出発。19:15本竜野発の姫新線にも間に合い、名残を惜しみつつ全員無事帰路に着きました。

 お世話された一風さんとだっくすさん、そしてりっこさんに心から感謝。

2009.4 写真/Romantei・文/Mimizu

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2008=明日香村句会

2008-11-23 | 吟行句会

 

RANDOM句会は、毎回、企画・準備・ガイド役の幹事が交代します。第7回RANDOM句会は、古代史“熱中人”の弥太郎さんに白羽の矢。

古代史の宝庫なら奈良。晩秋の奈良の俳句といえば、

  柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺(子規)

が浮かびますが、今回は、弥太郎さんとだっくすさんのお世話で飛鳥が開催地に。1450~1300年昔の150年間、豪族・蘇我一族が盛衰し、聖徳太子が国づくりを行い、天智・天武や万葉の歌人らが活躍した日本のふるさとでの吟行です。

句会の翌日、弥太郎さんからA4サイズ3枚の「RANDOM 飛鳥句会 実施記録」のメールが送られてきました。日程と句会の結果、そして〈つれづれなるままに〉と題されたあとがき。「…あくまでタタキ台で…書き直し…結構」との弥太郎教授のコメントに甘え、いただけるものはいただきながら吟行記をまとめました。

RANDOM 飛鳥句会 実施記録

◆実施日  平成20年11月23日(日)

◆参加者  つきひ・一風・弥太郎・かをる・蛸地蔵・播町・見水・

        英(初参加)・さくら・だっくす・りっこ   計11名

◆会 場   明日香村健康福祉センター「たちばな」2階 会議室3

◆日 程

 ☆JR西明石8:00→(新快速)→明石→三宮→大阪→(環状線)→天王寺

  近鉄大阪阿部野橋→(吉野行き急行)→橿原神宮前駅東口

  から送迎バスで句会場へ

 ☆10:15頃 句会場着(日程説明,投句(5句)用紙配布,会費徴収)  

明日香村へ 村一つ渋柿勝に見ゆるかな(子規)

新快速に乗り込むと、三連休の中日なので、混み合っています。

弥太郎さんは最近、北アフリカ・チュニジアの遺跡ツアーに参加されたとのこと。旅の話に花咲かせていると大阪駅着。大阪駅から環状線で天王寺駅下車。近鉄急行に乗り替え着席するや、弥太郎さんから各メンバーに飛鳥路の各種案内パンフ一式が配付されます。

 暖房車句会資料の配らるる  つきひ

午前9時59分に橿原神宮前到着。送迎バス15分で「たちばな」に到着。

傘の心配がうそのような好天に。のどかな里山に囲まれ、刈り入れを終えた田んぼやキャベツや白菜畑が広がる、落ち着いたいい感じの保養施設です。 

☆今回の句会のため、3回、下見に行った。

 初めて知ったのは、明日香法による規制のためか、村内にコンビニがない(選句表をコピーできる会場が限られた)ことだった。

 また、同時に、多くのユニークな飲食店(農家を改造した地元産食材の店など)を発見した。

 馬酔木(ペンション飛鳥内)、さらら(奥明日香)、い助鮨(甘樫丘北)、椎の葉(祝戸荘内)、萩王(飛鳥寺北)、ひょうひょう(飛鳥寺北)、カフェことだま(西明日香)、夢市茶屋(石舞台北)―飛鳥巡りのご参考に―

 

記念写真のあと、ロビーの一角に全員そろうと、ガイド役・弥太郎教授の開会挨拶と、本日のスケジュールの確認。

「飛鳥の雰囲気は韓国に似て、石の彫刻も韓国とそっくり」とのこと。 

☆10:30頃~村内吟行 (橘寺、川原寺、伝飛鳥板蓋宮跡、飛鳥寺、甘樫丘、酒船石、石舞台古墳等)

☆12:45    投句締め切り 

播町さんが「今日は飛鳥寺と橘寺を見ようと思う。時間があれば石舞台も」と提案すると、蛸地蔵さんは「ぜひ甘樫の丘から全体を眺めたい」の希望。2時間歩いてすべてを訪ねるのはきついが、とにかく出発。

 天高し慶州の風古都に吹く  弥太郎①(○数字は句会での獲得点数) 

 小春日の飛鳥散策せわしなく  だっくす

 

 畦を行く あぜ許り見えて重なる冬田哉(子規)

明日香村健康福祉センター「たちばな」は、聖徳太子ゆかりの橘寺に近い。天気が良く暖かいので狭い道をレンタサイクルで移動する観光客が多い。歩いていると発見が。

「これ彼岸花の葉やで」

つやつやした細い葉。

「この葉は花が散ったあとで出てくるんや」

 曼珠沙華葉の濃く茂り花を恋ふ  りっこ

歩く脇を、「ごめんなさーい」と自転車がすり抜けていく。

つきひさん、レンタサイクル店にたどりつくや、さっそうと自転車に飛び乗ります。広い車道では、巡回バスが行きかっています。

 冬ぬくし巡回バスの日章旗   つきひ①

 祝日や旗立て走る冬のバス   蛸地蔵

橘寺の北向いの川原寺跡では、この日、参加者にCG映像の映るメガネをかけてもらい飛鳥の都を再現する「バーチャル飛鳥京」のイベントをやっています。どこにでもあるような田畑や里山ですが、ここにはかつて日本最古の都・飛鳥京があり、山々は祖先の宿る神聖な神奈備(かんなび)山でした。

 無言なる礎石に冬日集まれる  かをる③

 乙女背に渡りし秋の飛鳥川   弥太郎

飛鳥川を越え、明日香村役場の前を北に下ると、大化の改新で蘇我入鹿が討たれた伝飛鳥板蓋宮跡。ここでも「バーチャル飛鳥京」開催中。飛鳥寺に向かって歩いているのですが、道は曲がりくねって遠い。

 満天星(どうだん)の紅葉包囲す村役場  つきひ③

 すすき枯れ板蓋の宮夢はるか      弥太郎①

自転車のつきひさんについていけないので、畦道をまっすぐ進むことに。

 飛鳥路の小春の畦は賑はいて      一風②

 ひつじ田をのんびり眺め明日香村    だっくす

 二上を遠くに籾焼く煙這ひ       りっこ③

 泥に足とられて小春日和かな      見水②

先回りしていたつきひさん、何やら見つけました。

「スミレが咲いているわよ。ほら」

 寒すみれかぐわしき香に驚きぬ  だっくす①

 冬待ちの畦に咲きにし寒菫    蛸地蔵①

 宮跡とアスカの恋人寒すみれ   弥太郎

 

日韓合作、チェ・ジウ主演、明日香村舞台の” アスカの恋人”は韓流トップスターが出演するテレビドラマ。明日香村(伝飛鳥板蓋宮跡付近)でロケが行われ、大勢の人々が見物。過去の同種のドラマは、韓国では30%を超える視聴率。

飛鳥と朝鮮半島の古代国家との結びつきが強いこともあって、奈良県を訪れる韓国からの観光客は、平成18年の推計で約13万人、2位の米国(約5万人)の2倍以上とのこと。

 

行く手右側に飛鳥寺、左側に甘樫丘が見えます。

「結構高いなあ。登るのしんどいで」

「やめとくわ。行きたい人は行ったらええけど」 

  行く我にとどまる汝に秋二つ(子規)

一行は、蘇我入鹿の首塚で2つのグループに分かれます。一風・蛸地蔵・見水・さくら・りっこの5氏は甘樫丘へ。つきひ・弥太郎・かをる・播町・英・だっくすの6氏は飛鳥寺へ。

「ゴーン」、飛鳥寺で鐘が鳴りました。午前11時です。

飛鳥寺のそばの柿の木にはまだたくさんの柿がついています。

 実もたわわさみしさしみるくれの秋  英

 柿の木の下の庚申さんの石      りっこ①

柿の実を見上げる猿石―猿蟹合戦ですね。

 柿たわわ百年のちも鐘鳴りて     見水③

子規の句の本歌取り。「柿食えば」とすれば、◎がとれたのにね。惜しい。

 甘樫の丘 うれしくば開け小春の桜花(子規)

「甘樫丘組」の5氏は、飛鳥川を渡り、古い家並みを抜け、紅葉ふみわけ細い山道を登ります。

 モズ一声(いっせい)響きわたるや明日香村   蛸地蔵②

 甘樫に登れば落葉はらはらと               一風①

 

汗をかきかき山頂にたどりつくと、大勢の観光客。絵を描く人もいます。

 小春日や大王の意気旧き丘   蛸地蔵

 冬日さし大和三山すがすがし  見水①

 秋嶺や悲劇の皇子を遠拝む   さくら①

晴れわたる青空の下、甘樫の丘は風も無く暖か。大和三山、二上山、飛鳥京跡、藤原京跡を一望。

とはいえ、のんびりもできず、丘を下りかけると、桜の花がちらほら。

「いま咲くと春に咲く花が少なくなるよ」

また少し下ると、一面に大粒のどんぐり。

「甘樫のどんぐりや。記念に拾って庭に植えたら」

のんきな会話を続けていると、茶店の店先に「やまと芋1個500円」。

りっこさん、グローブぐらいのやまと芋を1つ選んで店内へ。店内で見つけた指先ほどの埴輪のミニチュアも気に入ったよう。

 明日香路の残菊なほも艶やかに  さくら②

古い家並み、町並みを大切に残しているので、旅の気分満喫。

「こんな民宿にいっぺん泊まってみたいなあ」

元伊勢神社の看板にも後ろ髪引かれつつ、飛鳥寺に到着したとたん「ゴーン」と12時の鐘。甘樫丘で1時間使い、あと30分しかありません。

単独行の英さんは「甘樫丘組」が去ったあとの甘樫丘で、2句作りました。

 甘樫に蘇我の夢散り暮れる秋   英②

 甘樫に寒ざくら咲く好天気    英

 飛鳥寺 行く秋や奈良の小寺の鐘を撞く(子規)

 

時計の針を午前11時にもどします。

「飛鳥寺組」の6氏が飛鳥寺の西門をくぐります。午前11時なので鐘を撞かせてくれました。

 冬暖か老々男女飛鳥寺へ       播町

 飛鳥路の仏の微笑(えみ)は謎めける  かをる①

飛鳥寺は蘇我馬子が596年に建立。完成当時は広大な伽藍を誇っていました。本尊の大仏は606年に完成した日本最古の仏像。渡来人・鞍作止利の作で高さ2.7m。

「飛鳥寺組」は、飛鳥寺参拝の後、東の門から出て、酒船石に行くことにしました。

12時の鐘で飛鳥寺東門から境内に入った「甘樫丘組」は、しばし句作に専念。

 大和路の古寺の礎石の冷たさよ   りっこ

 飛鳥寺太子も見たか堂の菊     一風

 酒船石~石舞台 行く秋の涙もなしにあわれなり(子規)

「飛鳥寺組」は、飛鳥寺を出て酒船石へ。酒船石はうっそうとした木々に囲まれた遺跡です。

 柿落葉酒船石はひっそりと   かをる②

石舞台近くのあすか夢舞台では明日香村農林商工祭が開催中で大勢の人が集っていました。

 即売の大根(だいこ)の泥も明日香かな  播町①

だっくすさん・かをるさんは、地元の人に道を尋ね、「すぐそこですよ」の返事で石舞台へ急ぎます。

 石舞台室に入れば冬陽さす   だっくす②

 石舞台日矢射し込みて暖かし  かをる②

つきひさんは、「バーチャル飛鳥京」に惹かれ、CGのメガネで“飛鳥美人”のいる飛鳥京を体験。

  CGの飛鳥美人と会ふ冬野   つきひ③

石舞台行き断念のさくらさんは、「たちばな」へ急ぐ野道で蝶々を見つけ、ひらめきました。

 石舞台静かに舞いし秋の蝶   さくら③

 橘寺 道の辺や荊(いばら)がくれに野菊咲く(子規)

弥太郎さんは、最終目的地の橘寺へ。橘寺は聖徳太子生誕の地と伝えられ、本尊は太子35歳の摂政像。

 芙蓉枯れ太子ゆかりの寺静か   弥太郎①

 小春日の御簾の奥なる太子像   播町①

「甘樫丘組」は、飛鳥寺を出て酒船石や石舞台の看板を横目にようやく橘寺。遠拝みして細い野道。この季節なのにつゆ草や野菊、たんぽぽが咲いています。

 冬日和橘寺に後光さし      一風

 あたたかし万葉の里感謝の日   見水②

 飛鳥道なづな矢車かへり花    りっこ②

英さんは、巨石の一つ亀石をみて、奈良県立万葉文化館で「 田中一村展」も鑑賞し、句会会場へ。

  亀形に斉明の宴しのぶ秋   英②

たちばな 十一人一人になりて秋の暮(子規)

集合に遅れたメンバーが多く、12時45分の投句締切を15分延長。早く投句した面々は缶ビール片手に、「ええ句できたか」とプレッシャーをかける。午後1時に全員投句を完了し、昼食タイム。ここで弥太郎教授のミニ「飛鳥学」講義。

 

☆飛鳥に関する参考書

 和田萃著「飛鳥-歴史と風土を歩く-」(岩波新書)

 同著p238より 著者作

 「大和恋ひ国内(くぬち)ことごと歩めども夢(いぬ)に浮かぶは二上の山」

☆大和を讃えた折口信夫(釈迢空)の言葉

 「一くれの土も、歴史の香を含まぬはなく、ひと本の草も、古歌の匂ひをのせぬもののない大和」

 堀内民一著「大和万葉旅行」(講談社学術文庫)P8より

            

昼食は、豪華会席膳風の弁当。だっくすさんが地元即売所で10個入りを11人だからと1個まけてもらった明日香特産の蜜柑のデザートも頂戴し、句会の始まり始まり。

11名5句ずつ55句を順不同・作者不明で清書しコピーを配付。各人10分間で5句選び、うち1句を特選句2点に換算のルール。総点数66点の争奪戦。各人選句を終え、さくらさん進行で選句を発表。

獲得点数の結果は次のとおり。

優勝=さくらさん・11点、2位=播町さん・10点、3位=かおるさん・見水さん・8点、ブービー賞=ジャンケンにより一風さん

総点数66点の行方は、女性軍5名で35点、男性軍6名で31点で、女性軍優勢。高得点句2句と選評は以下のとおり。

  秋天にたじろがざるもの石舞台   播町 ⑧

      

   「天と地をとり入れて、スケールがでかい」

   「秋天がいい。堂々とした、飛鳥へのご挨拶句」

   「悠久の歴史を感じさせる」

   「動と静の組み合わせがうまい」

   「デンとした感じがいい」

   …メンバー中、7名が選びました。

  返り花飛鳥美人の紅ほのか   さくら ⑤

  

   「ほんわかとしたいい感じ」

   「返り花、がよく効いている」

   「優しさがあふれる句」

   「美しい桜のイメージが浮かぶ」 

☆今回の利用施設の「太子の湯」の入浴を予定していたが、句会が盛り上がり、入浴出来なかった。 

午後1時半にスタートした句会は、「たちばな」からの差し入れのおでんや昨冬の伊丹句会で好評を博し今回もご持参のつきひさんお手製クリスマス菓子・シュトーレンとホットコーヒーをいただき、心もお腹も満たされ、あっという間に午後3時を回ってしまいました。あわただしく、帰り支度をします。

  柿一つ空に残して明日香村   播町

 

15:20発 送迎バスで橿原神宮前駅東口へ

☆夕刻 大阪阿部野橋駅着後、有志で駅近くの居酒屋

 ”にじゅうまる阿倍野筋店”へ(俳句特選も◎)

☆次回幹事は、一風さん。来春開催の予定。

☆俳句はハイク。 次回の句会に備えて、日頃から歩くことを心がけ、

 元気で再会しましょう (~o~)

お世話された弥太郎さんとだっくすさん、ご協力いただいた明日香村健康福祉センター「たちばな」の職員のみなさんに心から感謝。 

実施記録:Yataro/写真・イラスト・文:Mimizu

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