マルゴ・ル・モアル&ジャン・ル・モアル『ブルターニュ料理は死への誘い』 感想です。
フランスのミステリ小説です。ル・モアル夫婦が作品を書かれています。古典ではなく現代小説というところに興味をもち読みました。
現代のフランスを垣間見ることができたのかはフィクションなので定かではないのですが、馴染み無い人間関係の構築や織り成す文化に触れることができました。ははあ……とか、えっ、とかいろいろありました!
フランスの北西の端にあるブルターニュ地方、その中の一つの村であるロクマリアが舞台。村に建つ立派なお屋敷は、住む人不在……そこに遠方から引っ越してきた五十代の女性カトリーヌが主人公です。
彼女はとても社交的。人々との交流に赴き熱い歓迎を受けるのですが、よそ者をよく思わない方々も当然いて。彼女が開いたレストラン、嬉しいことに大きな賑わいを見せるのですが、そんなある日の夜、なんと死者が出てしまうのでした。
ミステリ的な謎解きは薄いですが、地方の暮らしを味わえたり人々の込み入った面倒な関係性を楽しめたりと深く楽しめました。結末は苦くもあり温かくもあり……でした。
カトリーヌがわりとぐいぐいいくタイプなので次々に波乱を呼び、見ているだけでも楽しいです。彼女は一見して積極的、でも心の奥には過去の男女関係の傷を持っていて、ふとしたときに彼女を不安に落としたりもして。カトリーヌの成長譚というと少しずれてしまいますが、心の揺れ動きと歩み出しをじっと見守ることができました。
人間というものの一筋縄ではいかない厄介さ。年を重ねいくつになっても女は女で、男は男なんですね……。彼女がいつか、澄んだ笑顔を浮かべられる日が来ることを祈って。
私的には、もう一人の主人公というべき男性エルワンが大好きでした。彼は素行不良で態度もよくないです。でも、それには確固とした理由があり、同情を禁じ得ないんです。そんな彼が、カトリーヌのレストランでシェフをすることに。
彼の表面のひねくれと心のうちの真っ直ぐな芯が、場を荒らしもし、熱い勇気をくれたりもします。村人から問題児扱いで馬鹿にされて、それでも折れずに立つエルワン、かっこいいです。彼の未来、ずっと応援してます!
悲しい出来事も、負った傷も、手にすることができた宝物も。最後にはしんみりしつつも笑顔になれる物語でした。純粋に頑張っている、カトリーヌとエルワンのこれからにいっぱいの幸せを願っています。
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