眠れる小鳥

本とゲームの感想を書いたりします
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好きを語れるようになりたい…

『リセット彼女がラブコメを思い出すまで』 感想

2023年10月16日 19時06分24秒 | ライトノベル

斎藤ニコ『リセット彼女がラブコメを思い出すまで』 感想です!


「人を好きになるってどういうことなんだろう…」をテーマにした恋愛ストーリーでした。
タイトルにもある、リセットがとても切なく心を揺さぶりました。

高校生の海斗は読書が好きな男の子。ある日、図書室で本を読んでいると、パソコンスペースで困り果てている女の子を見つけます。ついつい声をかけてしまう海斗、その子はなんと天使のように可愛い女の子、名前を詩乃といいました。
パソコン操作を通じて知り合った2人。別の日に教師に呼び出された海斗は、なんと指示を受けて詩乃の生徒会長選挙に向けた手助けをすることになったのでした。


海斗との詩乃の急接近する関係がニヤニヤできて楽しい前半。ラブコメというよりも真っ直ぐなラブストーリー感がすごくいいです。純粋できらきら輝いていて…。2人を結ぶ仲睦まじい空気、好き合っているその繋がりを裂く悲劇がリセット、詩乃の記憶喪失でした。
失われた恋心に戸惑う海斗、詩乃の友人の天川さんも交じり、ラブは複雑に入り乱れていきます。想いのすれ違い、二転三転する記憶の行方、この2つが胸を締めつける切なさなんです。ともすれば憎しみを生みそうでもある渦巻く恋愛模様を、真っ直ぐでピュアに描き切った恋の物語でした。


たどり着いたトゥルーエンドの愛しさと美しさ、すごくよかったです。
読み終えてから表紙の女の子・詩乃の目元に気づき…

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『平面いぬ。』 感想

2023年10月13日 19時48分29秒 | 小説

乙一『平面いぬ。』 感想です!

ホラー×切なさが心を打つ短編集。
初期の乙一作品の良さがぎゅっと詰まった4編です。


「石ノ目」

地方に古くから伝わる昔話・石ノ目は、暗い夜道で背後に感じる気配に対し、つい振り向いて目にするとその途端に石と化してしまう…という怖い話。和風メデューサのような怪奇が、山間で迷った男性教師2人に降りかかります。彼らは無事に帰還できるのか…
年老いた女性が暮らす、古民家に滞在する教師2人。生物を石に変える力を目の当たりにして女性の怪奇性が増す、背筋のぞぞぞっとなる嫌な感じがあります。ここでホラーの枠にとどまらず、心痛ましいある事情を融合させてくる技巧がさすがです…。恐怖心が哀切さへと変わる、その不思議な感覚がすごくよいです。
思い返せば人の思いが年月を交差する、悲しい物語でした。


「はじめ」

小学生の耕平と淳男が不都合を理由に生み出した、はじめという名の女の子。彼女は擦り切れた格好をしていて抱える環境も良くなくて、という設定をつけ人身御供にしていたら、なんと2人の前にはじめが現れて…どうやら幻覚のよう。耕平と淳男とはじめ、行動を共にするうちに3人は徐々に友情で結ばれていくのでした。
私の一押し短編です。はじめの存在が、2人にとって幻覚でありながら心の底から大切なものになる、絆の繋がりがとにかく愛おしいんです。
関係は悪友に近い3人。年を重ね中学生になり、高校生になり…変わると変わらないの間でたゆたう友情が、たどり着く場所。一介の幻であることを承知の上で2人の男子に寄り添うはじめ、明かされるその理由に思いが込み上げてきます。


「BLUE」

ぬいぐるみが5体、それぞれ王子と王女と騎士と白馬、そしてブルーという端切れでできた女の子。買われてやってきた家で愛を向けられますが、ただ1体ブルーだけが皆からはぶられてしまい。彼女は同じく嫌われる男の子の遊び道具になり散々な目に陥りますが、少しずつお互いに思いを向け合い始めて…
ぬいぐるみが動く恐怖、ファンタジックにはなれないのがリアルです。ブルーの視点が多い物語。家に住む面々の疑念が、いつ膨らんではじけるかとヒヤヒヤします。
底意地悪い登場人物の多さに目が行き、それに対応してブルーの純粋性が眩しいです。でも彼女は心がきれいすぎるんです…結末にはあまりの悲しみでした。


「平面いぬ。」

クラスメイトの縁で、腕に刺青の犬を彫ってもらった女の子・鈴木。可愛らしい犬は、なぜか動き出し、気ままに体中を転々とし始めます。うなったり吠えたり、言うことを聞かなくて、すっかり飼い犬を世話する気分で愛着に心躍ったり。そんな彼女は家族との不和が著しく、反抗的振る舞いをする日々に、衝撃の事実である両親と弟の余命僅かの宣告を知ってしまうのでした。
家族との深いすれ違いが、犬の刺青のユーモラスに程よいバランスで微笑ましく読み進められます。
刻々と迫る命の終わりに悔いを捨てていく家族と、一人残されるのが確定している鈴木。このままそのときを迎えることを考え始める、彼女の不器用な心の揺れ動きが真っ直ぐに伝わります。迷える彼女の決心とその終着に、心からの優しさが溢れました。


乙一先生の小説、あれやこれやの過去作品も新装版で再集録されないかなと思いつつ、心ゆくまで楽しめました。

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『ファイアーエムブレム 烈火の剣』 クリア感想

2023年10月10日 19時00分49秒 | ゲーム

『ファイアーエムブレム 烈火の剣』 クリアしました!
2003年のゲームボーイアドバンス用ソフト。Nintendo Switch Onlineでプレイしました。ファイアーエムブレムシリーズの「封印の剣」の続編となる作品です。

人と竜の穏やかな共生を壊した、人が起こした戦い「人竜戦役」により世界から竜が去って幾年…
人々の栄えるエレブ大陸に不穏な動きが。ずっと暮らした草原の地を離れた少女リン、意を決して行動に出た彼女から始まる物語。

主人公はリンのほか、諸侯の嫡子エリウッドと彼の親友ヘクトルの3人。怪しい影と世界に起きている異変の真実を追う彼らの成長、そして離別に向き合うシーンの多さがとにかく印象的でした。
痛みを乗り越え、歯をかみしめて前を向くキャラクターたち。世界のため、仲間のため、そして大切な人のため、歩みを止めない心の強さにグッときました。物語の終わりも凄く良かったです。悪の主犯が起こした残酷な仕打ちにより、竜のたどった悲しい道のりをついに解放するような…


好みのキャラは魔道に優れる少女ニノです。かわいい!彼女の境遇は、噂が渦巻く集団「黒い牙」に深く関わるものであり、とても悲しい目にあっていて……笑顔であふれる日を願ってやまないです。
魔道の研究をしている男性カナスとの支援会話が大好きでした。お互いに尊重し合い、この先に希望を見ていく2人の仲にじーんとしました。


失われたもの、過ぎてしまった出来事を全て抱えての光さすエンディング。久しく暗かったからこそ明るい兆しが何とも愛おしいです……深く感じ入る物語でした。

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『田舎教師』 感想

2023年10月08日 14時49分02秒 | 小説
 

新潮文庫 田舎教師 (改版)

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田山花袋『田舎教師』 感想です。


若い野心の行く先に待つ、大人の纏う諦念との衝突がとても苦い作品でした。

田舎の学校の教師に就いた青年・清三の、貧乏を身に背負いつつも若き情熱を持った日々が、俗な世の中に堕ち、迷い立ち行かず、心に陰りが生まれていく物語。


先生になったばかりの清三は、住み家を探したり友人との交流に笑ったりと暮らしを固め、その志と思いはまだ上向きでした。しかし気づけば霧中におり、見えない前途が立ち塞がり、繰り返される女性との一夜と流れ出ていくお金……迫りくる行き場のない鬱屈が不安を誘います。挫折してわが身を省みて、一心になって生きる彼の、ある種の純粋性を感じさせる終盤、たどり着いた結末に胸を衝く悲しみがありました。


小説の前半、中盤、後半でそれぞれ雰囲気が異なる、おもしろい特徴のある物語でした。純文学でありながら、一人の青年の苦心の生を描いた青春小説とも読めます。
書かれたのは明治42年(1909年)、その当時の風俗も垣間見えて興味深かったです。

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『フレンズ×ナイフ』 感想

2023年10月04日 01時55分35秒 | ライトノベル
 

MF文庫J フレンズ×(ウィズ)ナイフ

他人に興味のない橘あかりは、探偵のような仕事を持ち、ワイヤーを使った戦闘術を使い、メガネをかけると残忍な性格に変わるという、普通とはいえない高校生。そんなあかり...

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星家なこ『フレンズ×ナイフ』 感想です!

嘘でお近づきになった友だち関係、一緒の時間を過ごして知る相手の秘めたる心のうち、想いはいつしか本物へと変わっていて――

荒っぽい探偵業という裏の仕事をこなす家系にいる、女子高生のあかり。良くない人を罰する彼女に任されたのはなんと同級生の亜子の護衛でした。
亜子は天真爛漫な可愛い女の子。守りやすいようにと嘘をついてお近づきになり、偽りで始めた友だちは、彼女の苦悩を知り、純粋さに触れ、あかりの心は惹かれていくのでした。


タイトルにもあるフレンズ、友だちという関係にとにかく焦点の当たった作品でした。嘘で友だちを強調するあかりの、心の揺れ動き。友だちができて心を許していく亜子の笑顔。女の子2人が、お互いの秘密を知りゆく中で生まれてしまったすれ違いがとても悲痛でした。
夜に現れる黒き獣を倒す日々の亜子。彼女が持つ魔法の如き異能力の由来が、彼女の事情を掘り下げていくきっかけになります。かりそめに深まる仲が暴かれてひび割れて……自分にとって相手はどんな存在なのか、一心に向き合い答えを出す2人のひたむきな姿が深く伝わってきます。偽りと本物の間をさまよう友情、その心理の描き方が真っ直ぐで、最後はジーンとする物語でした。


2人の女の子が距離を縮めていく「友だち」を主軸にした切な展開に、深く思いを馳せました。百合と一括りにできない味わい、すごくよかったです。

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