☆椅子☆椅子☆椅子☆

家具のことやらデザインのことやらイロイロと。思いつくまま。

キッチン考

2007年02月27日 08時23分52秒 | Weblog
 先日LA周辺の住宅内の写真を大量に見る機会に恵まれました。現在まさに住んでいる言わば生々しい現場写真ともいうべき臨場感・生活感あふれる写真でとても興味深かったです。
 生活感とはいっても、リッチな方々やデザイナーの方々のお宅でしたので、いわゆる私のような庶民のそれとは違ってデコラディブなそして見事なコーディネーション(ミニマルも含め)です。私は職業柄やはり家具などに目を奪われたのですが、その一方美しいキッチンも印象的でした。まぁキッチンが美しいということはあまり使い込まれていないことを意味するのですが。実際、美しいキッチンは不動産価値を高める為には不可欠のようです。

 さて「システムキッチン」というのは、考え方としてはUSAが発祥ではありますね。マテリアル・フェミニズムが理想としたキッチンの共有化と協同家事という考え方が終焉していく中、ビーチャー姉妹の「アメリカン・ウーマンズ・ホーム」(1869)による家事労働の合理化の考え方からシステムキッチンが生まれたとのことになっています。ちなみに妹のハリエット・ビーチャー・ストウは「アンクル・トムの小屋」の作者です。ここから家事労働作業過程に科学的管理法を持ち込み発展させたフレデリックの「新しい家事管理」(1912)へ、そして具体的実践としてドイツ・フランクフルトのエルンスト・マイとマルガレーテ・シュッテ=リホツキーの[フランクフルト・キッチン]につながっていきます。

 このようにキッチンと言う場所は個人の考え方や社会の要請や時代の流れの中で振れるところのように思います。奴隷制のような社会システムを基に設計することも可能ですし、社会主義的な考え方基に設計することも可能ですし、マテリアル・フェミニズムが理想とするような協同キッチンや国家的合理化運動から[フランクフルト・キッチン]が生まれたりします。そうして現在のシステムキッチンに収束してきたように考えられるのですが、その一方でキッチンを共有する近頃東京で隆盛のコーポラティブハウスなんかを見ると、単純に一世帯に一キッチンというのがそれほど当たり前の物語じゃないんだなぁと、ふと思ったりします。

 キッチンだけに限らず、室内のあり方とかあるいはデザインとかっていうのはいろんな方向や考え方を見なアカンとつくづく感じる今日この頃です。

 さて、奴隷解放や家事労働軽減化などの見地からキッチンを一生懸命考えたり研究したり実験したりした先人たちはそのキッチンを不動産の価値向上の道具とみなされる風潮は堪えられない話でしょうなぁ。

 ところでこのあたりの家事の歴史に詳しいこの「家事大革命」(D.ハイデン)という本はネット上でいい値段がついているようです。手元のこの本ももっと値上がりするかしらん。


ハゲタカ

2007年02月18日 20時55分06秒 | Weblog
 建築の保存って難しいですよね。欧州などではあれほど建築の保存がキチンと出来ているのに(住んでいる人の快適度は抜きにして)、日本ではなかなかの難問のようです。
 保存だけでなく、共同所有物件いわゆる分譲マンションでは解体も同様に難問となりますが、このあたりのことってもう少し上手くいかんもんかなぁと思うのですが。陳情とか要望書とか署名運動とか合意形成とかではなく。
 例えば歴史的建造物専門の投資ファンドとか、分譲マンション解体専門の投資ファンドとかはどうかなぁ。誰も投資しないか。

メタボ建築連敗

2007年02月14日 23時36分08秒 | Weblog
知りませんでした。
ソフィテル東京が昨年で営業終了していたんですね。そしてあの菊竹建築が解体とは。知らなんだ。


私は2005年6月に宿泊しました(もちろん自費でなく招待で)。とても暑い日だった。
その時に撮った写真が数枚ありますので追悼の意をこめて。






おまけに都城市民会館もダメのようですね。市民アンケートの結果が解体が83%とは。

詮索か表現か

2007年02月05日 04時54分15秒 | Weblog
 2月3日の朝刊で「受験生としての進学したい学部・学科は」という記事がありました。一位はダントツで「心理学」でした(得票28.8%。二位は歴史・考古学の18.2%。)。ちなみに「芸術・デザイン」は10位(得票11.2%)。
 心理学って「心理」という単語が災いして、世間一般で物凄く誤解されています。大学での心理学の内容は「認知科学」です。工学的・医学的な実験と統計数学処理の毎日です。スピリチュアルなことはなにもありません。フロイトにも会いません。夢占いもありません。あるのは反応速度だとか脳波だとか、神経伝達物質だとか、海馬だとか、そんなもんです。世間のイメージとはまったく違います。
 世間のイメージの「心理学」に近いのは「経済学」のほうです。経済学は人の幸せ度(効用)を計算式に入れちゃうというスゴ技を使いますし、実際のところ、田中耕一さんがノーベル賞をとった2002年、その年のノーベル経済学賞は「非合理な経済行動についての心理学的分析」など心理学研究の洞察を経済学に導入した功績でカーネマン氏が受賞していたりしています。経済学の方がずっと「心理」学っぽいです。心理学専攻だった当時の私は、たまたま聴講した経済学のヒトの心理に基づいた方程式に本当に感動した記憶があります。

 さて、心理学に興味がある人というのは他人の性格を決めたがる傾向があります。全く科学的根拠の無い血液型占いに拘泥したり、誕生日に興味を持ったり。他人に性格や心理を決め付けられることぐらい不愉快なことは無いので、自分の血液型と誕生日はなるべく知られないように気をつけています。

 ところで授業で使ったホルマリン漬けのノウミソの感触はまだ手に残っています。ぷるるん。