槍ヶ岳(5)

2010年08月10日 | 登山

 当初の予定では1日目は槍沢ロッジ、2日目は双六小屋に泊まるつもりだった。だが昨夕の話では、殺生ヒュッテまで来たので明日は双六経由を通り越して鏡平に泊まろうということになった。それが今朝になって、槍ヶ岳から最短で下山できるコースに変更になった。昨日槍沢でイワナを見て禁断症状が出ているのがいるからだった。

 8時、西鎌尾根を下り始めた。左前方には飛騨沢をはさんで笠ヶ岳が存在感を示している。正面は尖っていないので判別しがたいが、双六岳や黒部五郎があるはずである。右には三俣蓮華に鷲羽岳、その奥に水晶岳が確認できた。西鎌尾根を下ってきた勢いで、そのまま双六方向へ転がりたい気分ではあったが、8時30分、千丈沢乗越から左の飛騨沢に折れた。草原の中の道を20分ほど下ると奥丸山へ向かう分岐があった。奥丸山は、滝谷を眺めるには最高の場所だそうである。1時間余分にかかるので左へ進んだ。そして9時ちょうどに、木製の救急箱が設置されている飛騨乗越から合流点には到着した。

 ここまで地図に載っているコースタイムより随分と速いスピードで来ている。前を行く二人はコンパクトカメラを持っているが滅多なことでは使わない。こちらは首にかけた1.5kgのカメラを象さんの鼻のように揺らせながら歩いている。ただせさえ遅れがちなのに、ファインダーを覗いたりするとたちまち20m、30mと離されてしまう。小走りで追いかけなければついていけなかった。先頭を歩いているのがイワナの呪縛にかかっているから仕方なかった。

 救急箱の場所から灌木帯となり幾分涼しくなった。槍平小屋は見えないが、奥丸山の真東に位置するはずで、残り距離を測りながら下った。急坂ではないものの、延々と続く道をを忍耐強く下った。10時20分に、標高2000mの槍平小屋にやっと着いた。槍の天辺からだと標高差で1200m下ったことになる。

 小屋の入口には冷やしうどんの張り紙があった。オススメ、と書かれている。3人揃って冷やしうどんを頼んだが20分かかるとのこと。冷水にビールが浸けてあった。いろんな種類がある中から沖縄のオリオンビールを選んだ。うどんを食べていると友人が、後ろの人たち、○○さん(私)と同じ方言だよ、と言う。振り返ると5、6人ご年配の人たちがいた。顔立ちから日本人であることはわかるが、どちらの出身かまでわからない。うどんを食べ続けていると、お年寄りの一人から話しかけられた。

  『どこから来たんな』 
  「四国です」
  『四国はわかっとるわい、香川じゃろ、香川のどこな』
  「高松です」
  『高松のどこな』 ・・・

 車で10分ほどの所に住む人だった。
マルナカの袋でわかったとのこと。うどんが出来るまで時間があったのでザックからサンダルを出して履き替えていた。サンダルを入れていたのがマルナカの袋だった。

 まだ11時であるが今日は此処に泊まるとのこと。明日槍ヶ岳に登り、裏銀ルートで高瀬ダムへ下り、タクシー代3万円をはたいて新穂高に戻るらしい。5日間の長旅である。先の予定が無いならば、友人たちと別れて同の先輩たちについて行きたいところである。毎日が日曜日の御老人たちがうらやましいと思った。玄関前で一緒に写真を撮らせてもらってから別れた。

  笠ヶ岳


  同郷の先輩 (掲載許可あり)




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