未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第16章 運命の分岐点 ③

2021-05-03 13:20:34 | 未来記

2009-12-26

3.悲しい現実

 

アフカのドームへの道のりは、延々と続いた。

 

車の中で、デビッドおじさんは、話を始めた。

 

「これは、おじさんが個人的に思うことだけど・・・

 

世界大戦の終わったあとの平和な時代に、地球環境を良くするためにはどうしたらよいかと、世界中でエネルギーやゴミの問題について話し合った。

 

目標となる内容と、それを達成する年を決めて、いろんな企業や個人が日々、環境に良いエネルギーへの転換やゴミを減らす努力を始めた。

 

でも、空気を汚さないエネルギーに変えようとしても、そのエネルギーを使うための争いは絶えないし、どんなにゴミを減らそうとしても、人が生活しているとゴミは出てしまう。

 

どの民族も、どのエリアも、自分達の都合を主張して、肝心の解決方法が見つからない。

 

表向きには、協調路線を打ち出してはいたんだけどね…。

 

主導権を握るために、価値観の違いを埋めるより、それをはねのけるための抗争が、あちこちで繰り返された。

 

ついには、激しい抗争を繰り返すエリアで、最新兵器を使った戦争が始まった…。

 

兵器が使われた地域は、きれいな空気が汚され、いまだに生き物も、植物も育たない。

 

ここ、アフカでも、それは使われてしまった…。

 

どんなエネルギーでも、使い方を工夫して、破壊されなければ、

 

世界中の平和に役立つ、大事な資源なんだ。

 

地球環境を良くしようと、一生懸命努力をしている人達もいるのに…

 

それを踏みにじるような戦争を起こして、エネルギーを悪用して環境破壊をするなんて、

 

同じ地球で暮らす、未来の人達のことをちっとも考えていないと思うよ!…」

 

 

おじさんの話に、キラシャも周りのみんなも、頷いて聞いた

 

「そう言えば、ニールが戦争にならないエネルギー開発を目指してるって、言ってたな。

 

ヒロも、そうなれば、オレももっといろんなMフォンの開発ができるって…」

 

と、ケンがつぶやいた。

 

「ヒロ ナンカ ハリキッテタ。

 

タケルニ フィラデ ツカウ マシン オクル イッテタ」

 

とマイク。

 

「エッ? タケルに・・・?」

 

キラシャは、キョトンとした。

 

「マイク、よけいなこと言うな!」

 

マイクの横にいたケンが、あわててマイクの口を押さえた。

 

そう言えば、キラシャもヒロからアフカでも連絡が取れるように、メールを送るよう言われていたことを思い出した。

 

『あたしは、ヒロに用事はないンだけどね。ヒロ、何やってンだろ?』

 

ヒロはタケルとメールしてたから、あれからタケルがどうしているのか、気になる。

 

タケルがこっちに帰るかどうか、迷ってるらしいよと、ヒロは言ってたけど、キラシャがメールしても、やっぱり返事がない。

 

メールが届いた時には、タケルがまたキララという魔少女に拉致されていたことを、キラシャは知らないのだ。

 

 

キラシャは、しかたないなぁと思いながら、ヒロへ簡単なメールを送った。

 

<そっちは、元気? 

 

まだ、ドームに着いてないけど、

 

パールは元気だし、ケンとマイクもいるよ。

 

あんた、休暇中にいったい何やってンの? >

 

 

しばらく、車に揺れていると、おじさんは用意していた防弾スーツと防毒マスクをみんなに渡した。

 

「これから、これが必要だ。さっきの話の意味をわかってもらえると思う」

 

前方で、危険を意味するサインが見え、コズミック防衛軍が、検問を行っていた。

 

 

エア・ポートから、道の何KMかごとに、コズミック防衛軍が常駐していて、通行者の検問と見守りを続けていたが、

 

ここは、今までの倍以上の兵士がいた。

 

デビッドおじさんが、検問の兵士と共通語でやりとりをして、それぞれMフォンの所持を確認された。

 

それからエア・カーを降りて、兵士と相談していたおじさんは、キラシャ達にもわかるように、説明してくれた。

 

この先は、エア・カーの移動は許されているが、護衛のために、戦闘能力のあるエア・カーが付くことになったようだ。

 

「戦争が終わったと言っても、戦争の指導者が退いただけで、

 

民族同士の戦いはまだ終わっていないんだ。

 

過去に危険な化学物質が武器として使われた区域に入るから、

 

防毒マスクが外れないように、しっかりつけるんだよ…」

 

みんな、黙って防弾スーツと防毒マスクを身につけ、動かないことを確認した。

 

 

エア・カーは、前後でコズミック防衛軍の護衛車に守られ、赤茶けた土の道を走った。

 

周りの景色も殺風景だったが、時々歴史の映像に出てくるような、戦闘機の残骸が見えると、ケンとマイクの目の色が変わった。

 

「ヤッバ~ィ!」

 

「アメ~ジング!」

 

 

しかし、その道の先に、数え切れないほど多くの棒が立ち並んでいた。

 

「これって、お墓?」

 

キラシャの問いに、デビッドおじさんは黙って頷いた。

 

キラシャとパールは、不安になってお互いを見つめた。

 

「パールは知っていると思うけど、みんなにも、ここで行われた現実を知ってもらってから、家族に会ってもらいたかったんだ。

 

パールの民族の先祖も、たくさんの人が眠っている。

 

安心して、お墓参りできるようになるといいけどね…」

 

土に突き刺さった棒も、延々と続いた。

 

オパールおばさんは、お墓を見つめるパールの肩をしっかりと抱きしめた。

 

 

『パールの家族は…

 

パールの未来は、大丈夫なの…? 』

 

キラシャも、パールの震える手を両手で握り、いつまでも続く棒のお墓を、驚きの気持ちで見つめた。

 

ケンとマイクは、前の座席のパールとキラシャを心配しながら、憎らしい棒が、早く途切れてくれるのをひたすら願った。

 

 

平和な時に…

 

 

君といる この平和な時が

 

いつまでも 続くといいのに

 

見えない明日は 嵐のように

 

いつも急に 戦いを求めてくる

 

 

悲しみに 君の笑顔が消え

 

おびえる毎日が 待っていても

 

こんなボクに できることって

 

君の笑顔を 取り戻すことだけ

 

 

君を守るよ ナンて言う勇気もない

 

でも君の悲しみが いつも心にあって

 

こんなボクでも 平和を祈って

 

君といっしょに 生きてみたいンだ

 

 

戦争をしない 平和な世界には

 

平和を求めてる ボク達が必要なンだ

 

いつかきっと 君と微笑み合える

 

そんな時を信じて 君と一歩でも進もう!


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