未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第20章 運命は変えられる! ⑦

2021-03-03 16:29:10 | 未来記

2013-12-21

7.ヒロとの交信

 

両手を縛られていたタケルは、飛んできた装置をあごで受け取った。

 

その瞬間、着信音が鳴って、ヒロの顔が空中に浮かびあがり、大きな声が辺りに響いた。

 

「タケル! 待ってたぞ!!

 

何やってンだ! 待ちくたびれたじゃないか~

 

 

オレは待ってたンだ。

 

早くしないと、キラシャも危ないぞ!

 

 

ユウキ先生は、大丈夫だから心配するなって、言ってたけど

 

キラシャは、今、アフカにいるンだ!

 

 

あそこは戦争が終わったばかりなンだが、またいつ本格的な争いが始まるかわからない。

 

防衛軍が守ってはいるけど、いつどこで狙われてもおかしくない状態なンだ。

 

 

パールって名の女の子が同じクラスに入って、すごい美人だって言っただろ?

 

その子が、戦争で大やけどしたってこと話したっけ。

 

それで、せっかくうちのエリアで助かって元気になったのに、またアフカに戻ったンだ。

 

 

キラシャが、その子と仲良くなって、付いて行ったンだけど、車に乗ってて攻撃された。

 

他にもいろいろあったらしいよ。

 

きっと、その子がアフカに帰っても、対抗している民族が、容赦はしないってことだろうな。

 

ケンとマイクも、心配で付いて行ってるンだ。

 

オマエに連絡がつくまで、ケンにオマエのことはキラシャにだまっておくように言っといたンだが、ケンカになりそうになって、つい言っちゃったらしい。

 

キラシャ、オマエのこと心配してるンだ。そりゃ、わかってるだろ?

 

でも、今の状況からすると、オマエより、キラシャの方がかなり危険だ。

 

知り合いの防衛軍の人から情報を聞いて、今のオマエの位置は確認してる。

 

オレの作ったMフォンは、宇宙にいてもつながるように設計しているから、

 

オマエに声が届いてると思って、しゃべってるンだけど…

 

おい! 聞いてるのか?

 

オレばっかりしゃべらせないで、オマエも何とか言えよ…」

 

 

ひとりでずっと研究室にこもっていたヒロは、やっと話相手を見つけたように、弾丸のようにタケルに話しかけた。

 

タケルは、あごで装置を押さえるのに精一杯で、それにヒロのあの大声でも、かすかにしか聞こえないこともあって、すぐには返事ができなかった。

 

キララは、タケルの様子を見かねて、その装置に届くような大声で言った。

 

「アンタ、ヒロって言うんだっけ。

 

タケルは今縛られてンだ。暴れるといけないらしくてね。

 

アンタのMフォンをあごでつかんでるし、どうもアンタと話す余裕っての?

 

ないみたいだよ。

 

って言うか、タケルはアンタの声が、よく聞こえてないみたいだけど…」

 

ヒロは、キララの存在に気がついた。

 

「おうっ! アンタが例の魔女…おっと、すごい魔法を使う女の子か。

 

タケルも、かなりビビってたぞ。Mフォンなくても、簡単に移動できるらしいな。

 

だったら、今いる場所から地球まで、オレの装置がなくてもタケルを転送できるのか…?」

 

 

「いや、アタシの転送は、そんなに遠くまで行けないンだ。

 

アンタのMフォンを使って、みんなで宇宙船から宇宙船に転送できたンだ。

 

ちょうど、良かった。

 

どうやったら、地球まで転送できるか知りたかったンだ。

 

アンタ、教えてくれるのか?」

 

 

ヒロは、自信ありげに答えた。

 

「こっちは、いつでも大丈夫だ。

 

サポートできるように、全力をつくすよ!」

 

 

「ちょっと、待てよ!

 

オレは、地球に行くなんて言ってないぞ!

 

キラシャのことだって、あいつは何があっても死なない!

 

オレは、キラシャを信じてるンだ! また会えるって!!

 

何も、今、あいつを助けに行かなくても、大丈夫だって…」

 

タケルは、これから何か途轍もないことが起ころうとしているのを不安に感じて、

 

必死で自分の思いを訴えた。

 

 

「さっきから、ずっとこうなンだ。

 

タケルは、自分のことしか考えらンない。

 

ってか、状況が見えてないンだ。

 

 

アタシはね、自分以外はみな敵だった。

 

次に何が起こるかとか、いつも考えて動かないと生きてこれなかったンだ。

 

タケルは甘いよ!

 

 

戦争とか、人間同士が戦うって、そンな甘いモンじゃないよ!

 

命がかかってるンだ。

 

また、アノ子が殺されるホログラム見たいのかい…? 」

 

キララは、意地悪そうな目をして、タケルをにらんだ。

 

タケルは、つらそうな顔をしてうつむいた。

 

 

「ヒロ、オレ悪いけど、キラシャを助けられない。

 

どんどん耳が聞こえなくなってるンだ…。

 

ヒロがせっかく作ってくれた装置だけど、オレ地球に帰っても、何の役にも立てない…」

 

 

「だから言ってるだろ?

 

アタシが、アンタの耳になってやるって!

 

あのゲームみたいに、アンタはアタシの言ったことをやればいいンだ!

 

耳が聞こえなくったって、アンタのジャンプはすごかったじゃないか!!

 

地球だったら、もっとすごいことができるよ!」

 

キララは、たまりかねたように叫んだ。

 

 

「ほ~、すごいね。タケル、オマエ、ホントにモテるな。

 

何やって、そんなに惚れられたのか? タケル…」

 

ヒロはうらやましそうに言った。

 

 

「惚れたって言い方は、良くないね。

 

アタシは、ただタケルを気に入っただけなンだ。

 

コイツは、使えるってね…。

 

だから、アタシとしちゃ、早く地球に行ってみたいンだ。

 

 

もうじき、コズミック軍の宇宙船がやってくる。

 

あいつらは、アタシを宇宙ステーションに引き戻すつもりらしい。

 

急がないと、アタシもやばいンだ。

 

タケル、地球に行くンだろ? 

 

早く決めなよ! 」

 


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