2012-05-11
1.止められない戦い
ルビーおばさんが、自分の息子、つまりパールの兄達が行方不明であることを口にした、その直後のことだった。
ホスピタルの外で、耳をつんざくような爆発音が起こった。
それを待っていたかのように、近くの部屋から何人かの人が、入り口へと走って出て行く音が聞こえた。
ホスピタルの内側からも、外へ向けて発砲を始めた。
アッという間に、ホスピタルを取り囲むような形で、激しい銃撃戦が始まってしまったようだ。
デビッドおじさんは、キラシャ達に向かって言った。
「この部屋から、地下を通って、別の建物につながる通路がある。
この場所が狙われるのも、時間の問題と思っていたが…。
ここにいたら、みな命はない。急がないと…」
パールは心配そうに「パパは…? 」と尋ねた。
「パールには、つらい思いをさせるけど、味方の兵士に任せるんだ。
君の民族の兵士達を信じて、我々は足でまといにならないように、場所を移動しよう。
とにかく、急いで!」
カールがベッドのそばの床を棒でテコのようにして開けると、階段が見えた。
デビッドおじさんは、オパールおばさんを青年にかかえさせて、下に降りるように言った。
パールの家族も、このままこの部屋を離れることに戸惑いを隠せなかったが、デビッドおじさんは叱るように言った。
「早くしないと、味方を困らせることになりますよ!
我々を守るために、彼らはずっと待機していたのです。今も必死で戦っているんです。
自分の家族を守るより、彼らは我々を守ることを優先してくれたんです。
我々は、生きて次の戦いに備えなくてはいけないのです!」
ルビーおばさんは、その言葉を聞いて、気持ちを切り替えたようだ。
「あなた、ごめんなさい。私も戦います。また会いましょうね…」
パールと兄弟達も、パパの顔を名残惜しそうに見つめながら、階段を降りる母親の後に続いた。
キラシャ達も急いで階段を降りた。
真っ暗なので、Mフォンのライトを頼りに、何度も転び落ちそうになりながら、必死の思いで後について行った。
『パールのパパが、無事でありますように。
戦っている兵士の人達も、無事でいてくれますように!』
と願いながら…
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