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冬のソナタに恋をして

思い出

 

ミニョンが目覚めると、そこにはユジンがいた。いや、目覚めたのはミニョンであり、チュンサンでもあった。チュンサンはまじまじとユジンを見つめた。チュンサンの上に顔を乗せて眠るユジンは、髪が短くなっていて、大人の女性だったが、記憶の中のユジンは、髪の長い、ハツラツとした少女で、いつも笑っていた。チュンサンは少し不思議そうな顔でユジンを見つめたが、自分はチュンサンとして、10年ぶりに目覚めたのだと気がついた。チュンサンは目覚めると、ぽつりぽつりとユジンとの思い出を語り始めた。

「君と出会ったとき、僕たちはバスに乗っていて、君は僕の肩に頭をの乗せて眠っていたよね。」

「そう、私たちはバスの中で会ったのよ。覚えていてくれたのね。」

「その時の君は髪が長くて、僕のことをじっと見てた。」

「他には?もっと思い出せることはある?」

「、、、サンヒョクのことは少し覚えてるんだけど、あとのみんなは思い出せないんだよ。わからない。」

「大丈夫よ。自分のことが思い出せたんだもの。それだけで十分だから心配しないで。」

ユジンは涙ぐみながらチュンサンを見つめた。ミニョンはいつからこんなに憂いを帯びた表情をするようになったのだろう、と切ない気持ちでユジンを見ていた。



「僕は本当にチュンサンなんだよね?君との思い出は本物なんだよね?」

ユジンが力強くうなずくと、ミニョンは不安そうなまなざしで彼女を抱きしめた。

「ユジナ、君を覚えていてよかった。本当に良かった。」

「チュンサン、ありがとう」


二人はしっかりと抱きしめあってしばらく離れなかった。二人の目からはとめどなく涙が流れ落ちた。

ユジンはしばらくぶりにチンスクと暮らすアパートに帰って着替えなどの準備をしていた。ユジンは胸がいっぱいになっていたので、全く気が付かなかったが、チンスクが一生懸命話しかけていた。ユジンは戸惑うチンスクに、チュンサンの意識が戻ったことを伝えた。チンスクは自分のことのようにユジンを抱きしめて喜んだ。そして、チンスクによって、ヨングク・サンヒョク・チェリンにも吉報は伝えられた。チェリンはショックで呆然として、サンヒョクはすぐに病院に駆け付けた。


サンヒョクが病室に駆け付けると、病室は空っぽだった。サンヒョクは受付でミニョンの記憶が戻ったことを確認して、改めて呆然とした。

そのころ、チュンサンは待合室でぼんやりと外を眺めていた。記憶が戻ったといっても、まだまだ断片的で、浮かぶ映像は何が何だかよくわからないままだった。どこかの教室で、誰かが教えている授業をのぞき見している自分や、どこかに向かって懸命に走っている映像もぼんやりと浮かんでくる。ユジンと雪の中で戯れる景色や、学生服のサンヒョクの顔、若い時のミヒの写真。その時ユジンが後ろから声をかけた。


「チュンサン」

ユジンはチュンサンと呼び掛けたものの、ミニョンが振り向かなかったらどうしようと心配して、振り向いたミニョンを見て胸をなでおろした。チュンサンはにっこりとほほえんだ。

「鮮明な記憶もあるのに、ぼんやりとかすみがかったような記憶もあって、夢なのか現実なのか区別がつかないんだよ。」

「でも自分がチュンサンだと思いだしたじゃない」


そういうとユジンは安心させるように微笑んで、チュンサンの首に腕を回した。チュンサンも、そんなユジンの温かさがうれしくて、ユジンの背中に手を回して優しく抱きしめた。ちょうどその時、その様子を物陰から見守る男性がいた。サンヒョクだった。サンヒョクはユジンがチュンサンから身体を離すとのパジャマを整えてあげて、二人が寄り添いながら歩いていくのをじっと見つめていた。来るべき時が来たと思った。二人の様子から、もう誰も間に入れないほど強いきずながあるのは明白だった。別れの時だ、サンヒョクは静かに立ち去るのだった。


コメント一覧

kirakira0611
@81sasayuri1018 さま、ふたたびありがとうございます😊
hananoanaさま、ゆりさまの交流が素敵です。うるっときました。
お嫁さんだったときのことなんでしょうか。今は心穏やかと聞いてほっとしました。
今日久しぶりに
世界でもっとも美しい別れ
という韓国ドラマを観ました。認知症の姑はじめ、ぐうたら医師の夫、不倫してる娘、遊んでばかりの大学生息子と身勝手な家族の中で頑張っている妻であり、母であるインヒが末期の卵巣がんに侵されてることが発覚して、亡くなるまでの本人と家族の葛藤と受容の地味ーなドラマです。綺麗事ではなく、泣いて怒って諦めて受け入れる過程を4話で描いてます。淡々としていて、俳優の演技力だけで観る、考えさせられるドラマでした。家族って、人生っていろいろありますね。
おやすみなさい⭐😴
美しい満月を見ることが出来ました。
81sasayuri1018
ふたたび(#^.^#)

hananoanaさま

>自然の防御が働く

私も後で!きっとそうだったんだろうと思いましたよ。
詳しくは書けませんけれど、当時20代の若嫁(笑)
自分を守ったんだと思います。

脳は騙せると言ってる科学者がいましたが、
脳って本当に不思議ですね。

キラキラさん、ありがとうございます。
一時期そのことで自分を責めていたことがあります。
でも、今はね、以前お話したように自分の因果だと捉えました。

ただ、因果応報などを私は他人様に全く使うことはありません。
そんな単純なものではないのですから(たぶん)
ですので、こうして口走ったことも恥じてます(;^_^A

良いお休みを(^^♪
kirakira0611
@hananoana1005 さま、ふたたびのコメントをありがとうございます😊
いつも優しくて心温まるコメントに癒されてます。
今日も良い一日になりますように。
kirakira0611
@81sasayuri1018 さま、そうなんですか?
どんなことか分かりませんが、あまりにショックなことがあると、キャパシティオーバーになってしまって、一時的に記憶を閉じ込めたり、忘れたり、閉め出したりするものなんですね。breezemasterさんのことといい、脳って不思議なんですね。
ゆりさんの場合は、その出来事を現在は受け入れるか乗り越えるかして、心穏やかにに過ごしていることを願ってやみません。
kirakira0611
@breezemaster さま、以前大病されたとお伺いしましたね。大変でした。1週間もICUだったんですね、、、。そして記憶があいまいということで、びっくりしております。その後大丈夫でしょうか?仕事柄、構音障害、失語症、高次脳機能障害の方などいらっしゃるので、頭って未知の領域であり、繊細かつ中枢なので怖いな、と思います。どうぞお大事にしてくださいね。
この辺はおっしゃるとおり、穏やかな場面が続きますね。サンヒョクにとっては気の毒な場面ですが。わざとじゃなくても他人をものすごく傷つけてしまう場面ですね。そういう意味ではミニョンとユジンてあまりに周りを傷つけていて、業を背負ってるとは思ってしまいます。
男性目線の冬のソナタってどんな感じか分からないんですけども、わたしにとってはミニョン⇄チュンサンは好きなキャラクターですが、それを演じてるヨン様の演技が納得いかないです。高校生は良いのですが、後半にいくにつれて表情が平坦というんでしょうか。何をやってもヨン様に見えてしまうんです。キムタクが何を演じてもキムタクなように、ヨン様もしかりです。ドラマを観てたときには感じなかったし、ヨン様カッコいい、と思ってましたが、動画チェックしながら観ると、わざとらしい、、、と感じでしまって。冬ソナ好きな皆さまに申し訳ないです。そんなわけで、今書けなくなってしまってます。
いつも駄文に付き合っていただいてありがとうございます😊
hananoana1005
冬ソナに集合の皆さま、おはようございます☺️

ゆりさまへ
人は余りに悲しいことや辛いことが身に起こった時、自然の防御が働く、という事を聴いたことがあります。
脳が自身を守るのですね。
凄い力を人は備え持っているのですね❗️

皆さん、今日も良い日をお過ごしください🤗
kirakira0611
@hananoana1005 さま、おはようございます😃
コメントありがとうございます😊
ゆりさんやbreezemasterさんの経験からしても脳って忘れたりぼんやりしたり、その時々によっていろんなことがあるんですね。知らなかったのでびっくりしました。
ミニョンさんはこれからチュンサンの記憶も背負ってどう生きていくのかしら?ドラマで観ていたときはあんまり意識してなかったので、今後を書くのが楽しみです。俳優さんの演技次第で、書きやすいんですけども、ヨン様のファンだったらすみません。このドラマはこの辺で主人公がユジンからチュンサンに変わる気がするんですが、ヨン様の演技がわたし的にイマイチで、表情が読み取り難いです。韓国語が分からないので、表情のみで読み取って書いてるんですが、見れば見るほどナルシストっぽい感じが気になってます。高校生のときの冷たくてひとを寄せつけない感じはぴったりハマってるので、こっちがヨン様の素顔に近いんではないか、と思います(笑)ミニョンさんはもう優しくて、これが日本人女性の心を鷲掴みにしたわけですけれど、一人二役って難しいですよね。ミニョン⇄チュンサンに入れ替わる心の表現がイマイチ分かりかねます。これからはヨン様のカッコいいルックスとセリフと雰囲気で書いていかなくてはならないので、筆が進まないです。
あはは。すみません。このドラマはヨン様だからこそのヒットなんですが、本当にミニョンさんの気持ちを演技出来るのはトップクラスの演技力、多分大賞とるくらいの、、、が必要なのかな。ドラマを観るのと、文章で書くのと、全然違って難しいです、、、。ドラマというより心理学の勉強をしてる感じです。
いつも駄文に付き合っていただいて、ありがとうございます😊
81sasayuri1018
おはようございます。

>「僕は本当にチュンサンなんだよね?君との思い出は本物なんだよね?」

新しい記憶を植え付けられてしまったチュンサン。
混乱するでしょうね。

脳って不思議ですね。
あまりにもってことがあった時の記憶・・・私その部分飛んでたことがあるんです。
数週間で現実に起こったことを想いだしましたが、あの出来事は忘れられません。

ここでのサンヒョク・・・かわいそうすぎます。
breezemaster
おはようございます^^

チンスク、チェリン、サンヒョク、
立場もありますが、それぞれの思いが、分かりやすく分かれましたね。
そして、ユジンは、
チュンサンと呼び掛けたものの、振り向かなかったらどうしようと心配して
振り返ってくれて、首に手を回し抱きつく姿に、嬉しさの大きいことが、伝わってきます。
冬ソナって、喜怒哀楽が激しいドラマですが、この時期は、喜の時期ですよね

余談
私、3年前に、頭の手術をしたんです。
一週間、ICUにいて、その時って薄っすらとしか記憶が無いんです。
チュンサンの薄っすらとで、ふとその時のことを思い出しました。
hananoana1005
こんばんは
更新有り難うございます。

何度も読ませて頂きました。
チュンサンの心の動きを見事に表現されていてスゴイです❗️
チュンサンの記憶の中のユジンは明るく無邪気な少女しかいないですものね。
こんなに憂いを帯びた表情はチュンサンにとって切なく哀しくなるのでしょう❗️

取り急ぎ感想を書かせて頂きました!
おやすみなさい
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