blog日和。

小さい頃に言った「将来」はもうすぐそこにある。
僕はその将来のためにもう少しがんばれるのかなぁ・・・。

半パン・デイズ

2007年03月04日 16時44分56秒 | レビュー
内容(「BOOK」データベースより)
東京から、父のふるさと、瀬戸内の小さな町に引越してきたヒロシ。アポロと万博に沸く時代、ヒロシは少しずつ成長していく。慣れない方言、小学校のヤな奴、気になる女の子、たいせつな人との別れ、そして世の中…。「青春」の扉を開ける前の「みどりの日々」をいきいきと描く、ぼくたちみんなの自叙伝。

素敵な話だ。そしてフツーな話だ。
いきなり申し訳ない感じだが、本当にそんな感じ。(感じ感じってうるせぇって感じ)そんなフツーの話が、素敵な話。
この本を読んで、ぼくは「重松清」ますます解らなくなった。なんなんだ、こいつ。(失礼)疾走みたいな小説も書いて、とっても素敵な小説も書けて、日曜日の夕刊みたいな小説も書ける。すげぇ窓口の広い人なんだなあって思う。
大人の人で、ここまで子供がわかってる人っているんだな、ってぐらい子供目線の描写が上手い。そりゃそうだ。大人は昔、子供だったんだもんな。ただ忘れてるだけなんだよな。当たり前のことに、気付いた。

エイジ

2007年03月04日 16時44分01秒 | レビュー
ぼくの名前はエイジ。東京郊外・桜ヶ丘ニュータウンにある中学の二年生。その夏、町には連続通り魔事件が発生して、犯行は次第にエスカレートし、ついに捕まった犯人は、同級生だった――。その日から、何かがわからなくなった。ぼくもいつか「キレて」しまうんだろうか?……家族や友だち、好きになった女子への思いに揺れながら成長する少年のリアルな日常。山本周五郎賞受賞作。


ぼくは、エイジをぼくに重ね合わせながらこの本を読み終えた。こんなことがあったら自分ではどんなことが出来るのだろうか。こんなことがあれば俺はどう思うのであろうか・・・・。なんて。
(少しだけネタバレになるが)俺も、エイジと同じように体中のチューブを切ろうとした時があった。その時俺は、「東京の人間」というチューブさえ切った。だけど、結局はそのチューブを結び直して、普段の生活へ戻った。(その戻るきっかけになったのが日曜日の夕刊なのである)そのことを思い出して、少し嬉しく思えた。何故だかはわからない。なんとなくだ。本当になんとなく、今では曖昧なほどに、嬉しく思ったのだ。そんな時、ぼくは呟く。「エイジ、こんなトコじゃまだ終われないぞ」と。

かっぽん屋

2007年03月04日 16時42分42秒 | レビュー
内容(「BOOK」データベースより)
15歳。頭のなかにあることといったらただ一つ、かっぽん―。憧れと妄想に身を持て余す思春期の少年たちの、ひたすらな性への関心をユーモラスに描いて、もどかしい青春の痛みを鮮やかに蘇らせた表題作のほか、デビュー間もない時期に書き下ろされた奇想天外な物語など、全8編を収録。これ1冊で作家・重松清のバラエティと軌跡が存分に味わえる著者初、待望の文庫オリジナル短編集。巻末には貴重なロングインタビュー2本も併録。


ん~微妙。SIDEAは申し分ない程の重松ってるけど、何だ?SIDEBすげぇ星新一チックに書かれてる。「へぇー、こんなのも重松さんって書けるんだ」と感心したと同時に、少し悲しかった。それは俺の求めてるもとは違うわけで、ちょっと物足りなさが残った。
ユーモラスに描いているかはよくわからない。

ビフォア・ラン

2007年03月04日 16時41分52秒 | レビュー
内容(「BOOK」データベースより)
授業で知った「トラウマ」という言葉に心を奪われ、「今の自分に足りないものはこれだ」と思い込んだ平凡な高校生・優は、「トラウマづくり」のために、まだ死んでもいない同級生の墓をつくった。ある日、その同級生まゆみは彼の前に現れ、あらぬ記憶を口走ったばかりか恋人宣言してしまう―。「かっこ悪い青春」を描ききった筆者のデビュー長編小説。


重松さんは、最初から重松さんだったんだなあ。と思った。ぼくがこの作品を読んだのは、10作品目(重松作品のなかで)くらいで、その後で重松さんのデビュー作を読んだ。読んでる途中、呟いてしまった。「ああ、重松さんだ」って。ここに重松の原点があるなんて無責任なこと言えないし、ぼくはそんな立場じゃない。けど、だからこそ言える言葉がある。
これが重松清だ。

きよしこ

2007年03月04日 16時40分26秒 | レビュー
内容(「BOOK」データベースより)
少年は、ひとりぼっちだった。名前はきよし。どこにでもいる少年。転校生。言いたいことがいつも言えずに、悔しかった。思ったことを何でも話せる友だちが欲しかった。そんな友だちは夢の中の世界にしかいないことを知っていたけど。ある年の聖夜に出会ったふしぎな「きよしこ」は少年に言った。伝わるよ、きっと―。大切なことを言えなかったすべての人に捧げたい珠玉の少年小説。


吃音――。それが辛いのかはどうかは俺にはわからない。ただ、その苦しみを解ってあげようとするのが、それに対する報いなのではないだろうか。俺にも一人、吃音の友人がいる。今は大分軽くなったけど、昔はちょっとからかわれたりもしていた。それを先生に怒られれば、それ以上詮索する者はいなかったし、どもることに対して軽蔑する者もいなかった。本当にそれで良かったと思う。
きよしの物語。これは殺人があるわけでもないし壮絶な大恋愛があるわけもない(あ、解説の人とかぶってる)。それが何故ここまで魅力的なのであろうか。それは重松さんの文章力の恩恵なのだろうか。もともとこのきよしの物語が魅力的なのか。それとも違うものがあるのだろうか。
違うな。どんな人の物語でもそれはその人の物語で、それは魅力的なのだ。ぼくはきよしの物語がこの身に欲しい。けど他の人にとってはぼくの物語が欲しいのかもしれない。要するに、無いものねだりだ。(なんか書いてるうちに趣旨から外れてる気がする)

きよしこ。重松さんの作品を幾つか読んでから読むといいと思う。

日曜日の夕刊

2007年03月04日 16時39分08秒 | レビュー
内容(「BOOK」データベースより)
日曜日、お父さんがいてお母さんがいて「僕」がいて、お兄ちゃんとお姉ちゃんは恋人がいて―。ある町の春夏秋冬、日常の些細な出来事を12の短編小説でラッピング。忘れかけていた感情が鮮やかに蘇る。夜空のもとで父と息子は顔を見合わせて微笑み、桜の花の下、若い男女はそっと腕を組み…。昨日と同じ今日なのに、何故だか少し違って見える。そんな気になる、小さな小さなおとぎ話。


この作品は、本当に素晴らしい。疾走、ナイフには無い、ビタミンFの様な、重松の一つの顔、優しい面をみさせてくれる。なんの賞も受賞しなかったのが不思議だ。温かくて優しい言葉を紡いだ文章。それを如何なく表現する文章力。
俺を引き止めてくれたのは、この本でした。

舞姫通信

2007年03月04日 16時38分12秒 | レビュー
内容(「BOOK」データベースより)
ラストシーンは、もう始まっているのかもしれない。人は、誰でも、気づかないうちに人生のラストシーンを始めている。17歳で死んだ「自殺志願」のタレント城真吾にとっては、16歳は晩年だった。城真吾は教えてくれた。人は死ねる。いつ。いつか。いつでも―。でも、僕は思う。僕の教え子の君たちの「いつか」が、ずっとずっと、遠い日でありますように。教師と、生徒と、生と死の物語。


やっぱり重松作品は凄い。それぞれの作品が一つのテーマに関して深く考えてある。これは、自殺、がテーマとして書かれている作品だ。やっぱり、考えさせられる。人は死ねる。いつ。いつか。いつでも―。
「あなた」に、死ぬ理由はありますか?ないでしょう。
では、「あなた」の生きる理由って何ですか?
これを皆さんに問いたい。生きている事を確認したくて、手首を切る。何かをするために、生きる。
生きている。死ぬ。
存在がある。存在がなくなる。
けど、生きているけど、存在がない人も居ると思う。そんな人はきっと、死ぬ理由もないし、生きている理由も無いからなんとなく生きる。
生きる理由があるって幸せなこと。
死ぬ理由があるって幸せなこと。
何かをするために、「理由」がある。幸せだよ。
 この本を読んだとき、俺今、死んでも良いって、思えた。死ぬ理由、俺には無いけど、生きる理由もないんだな。って肌で感じた。だから、生きてる理由があるって幸せなんだよ?これを、解って欲しい。そして、今、あなたが生きている事をかみしめて、人に優しくして欲しい。
自分を見つめ直してみて。生きてる理由みつかった?
自殺しようとしている人。死ぬ理由みつかった?
見つからないなら、もう少し、生きてみれば良い。生きて探してみれば良い。そして,それを、これからも「生きる理由」にして欲しい。
僕は、自殺を認めよう。けど、存在が無い人でも、きっと悲しむ人が居る。居るんだよ。命を粗末にしないで何て言わない。けど、もっと自分を大切にして。

自殺に対して、怒りはしない。
けど、僕は、悲しみます。悲しむ人が居るのを忘れないで。

トワイライト

2007年03月04日 16時37分27秒 | レビュー
内容(「BOOK」データベースより)
小学校の卒業記念に埋めたタイムカプセルを開封するために、26年ぶりに母校で再会した同級生たち。夢と希望に満ちていたあのころ、未来が未来として輝いていたあの時代―しかし、大人になった彼らにとって、夢はしょせん夢に終わり、厳しい現実が立ちはだかる。人生の黄昏に生きる彼らの幸せへの問いかけとは。


黄昏(トワイライト)。何だろう、この本。同時進行で短編が読めるみたいな感覚がある。ストーリーの先に、この文章のタッチにハンパなくセンスが感じられる。
ストーリー的には、何か重松っぽさが足りないと思った。ちゃんとした人が出てくるし。こんな重松も「あり」なのかなあ。

疾走onDVD

2007年03月04日 16時36分36秒 | レビュー
おいおい。

役者さんみんな原作読んだの?

ってかめちゃめちゃつまんねぇんだけど。

あの鬼ケンの「アホどもが」ってセリフも駄目だし、小さい頃のシュウジは、人見知りって言葉をしらねぇな。演技がへたくそ。

ってかなーんか監督がわかってないじゃないの?どのシーンが重要かとか考えたのかな。元々あの長編作品を2時間弱にまとめるのなんて無理かもだけど、もうちょっと考えなさいよ。題名が疾走ってんだからさぁ、シュウジが走ることに固執してるのとか全然伝わって来ないし。

テツは悪だったってとこが見事にぬけてるし、みゆきがシュウジとどうやって仲良くなったんだ?って話にもなるし、アカネと神父のつながりの所もスッポーンと抜けてるし。


演技のとことか言わないつもりだったけど、酷すぎるよね。
シュウジの演技、マジ何?へたっぴ。
シュウジもあんなもんじゃないし、エリもあんなもんじゃない。

これが世界にも通じる演技?世界に通じる演技の基準が俺にはわからないけど、これでは俺は見れねぇ。


孤独、ってのも届かないし、人の裏切りとかもあったろうよ。性はカットしたとしても、ないんじゃないかな。
浜と沖に関しての関係もほとんどカット。
確かにこれじゃ、ただの寂しい映画だわ。

しょうがないっちゃしょうがないけど、なら映画になんて元々するなって話。

いきなりこの映画を観たって何にもわかんねぇな。


本当に期待を裏切る監督だ。

あれだろ。手越祐也目的で観ただけだろ。


ホントに深く考えさせられる作品だってー。
それは原作の話でしょ。映画の話じゃないって。

これを観て原作が読みたくなるのはまずないだろう。つまらないから。


なーんか期待裏切られた。マジで。

疾走

2007年03月04日 16時35分39秒 | レビュー
内容(「BOOK」データベースより)
広大な干拓地と水平線が広がる町に暮す中学生のシュウジは、寡黙な父と気弱な母、地元有数の進学校に通う兄の四人家族だった。教会に顔を出しながら陸上に励むシュウジ。が、町に一大リゾートの開発計画が持ち上がり、優秀だったはずの兄が犯したある犯罪をきっかけに、シュウジ一家はたちまち苦難の道へと追い込まれる…。十五歳の少年が背負った苛烈な運命を描いて、各紙誌で絶賛された、奇跡の衝撃作、堂々の文庫化。 (上)
誰か一緒に生きてください―。犯罪者の弟としてクラスで孤立を深め、やがて一家離散の憂き目に遭ったシュウジは、故郷を出て、ひとり東京へ向かうことを決意。途中に立ち寄った大阪で地獄のようなときを過ごす。孤独、祈り、暴力、セックス、聖書、殺人―。人とつながりたい…。ただそれだけを胸に煉獄の道のりを懸命に走りつづけた少年の軌跡。比類なき感動のクライマックスが待ち受ける、現代の黙示録、ついに完結。(下)


人のダークな部分、人の闇を見たい。そう思って本を探していた。そしたらこいつ出会った。そしてすぐに本屋で買った。
衝撃、ただ衝撃が走った。世の中にこんな読んでるだけで辛く、苦しく、そして胸が苦しくなる本なんてあったんだ。そう思った。これを読んでいる途中、何度目をそらしたかわからない程強烈だ、この本は。どれだけ感受性が低い(?)人でも、この本を読んだら、絶対にどこかに影響をうけるはずだ。そしてまた作者の文章が上手い。だからそれがまたリアルに描写が頭に浮かんで、辛くなる。この本を読むには精神力が要る。エグイ、グロイ表現がダメな人にはこれは読めない。
正直、この本はあんまりお薦め出来ない。ただ、少しでもこの本に興味を持ったなら、読んでみるといい。この本は、グロさ、エグさ、だけじゃないんだ。心に残してくれるもの、それがある。読んでみれば良い。本当に良い本だから。

流星ワゴン

2007年03月04日 16時34分22秒 | レビュー
内容(「BOOK」データベースより)
死んじゃってもいいかなあ、もう…。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして―自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか―?「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。


厳しい現実。それでもやっていこうと思う気力。希望。流星ワゴンにはこんなものが詰まっている。そこには厳しい現実がある。けれども、ここから始めなきゃいけないのだと。前向きに考えるとか、そういうレベルじゃないものがそこにある。
流石年間ベスト1なのか。確かにこれは読み易いし、本当に良い本だ。
感想になる言葉が見つからない。ぼくには多すぎる程のものを貰った。どんな人に読んで欲しい、とかじゃなくって、皆に読んで欲しい。本を読まない人にも読んで欲しい。一気に流星ワゴンの世界に引き込まれて、いつの間にかラストを向かえ、涙or感動の渦を迎えるでしょう。

重松さんの著書のなかで、じゃなくて俺が今まで読んだ中で一番「良い」本だと思う。是非読んで欲しい。

そら模様

2007年03月04日 16時33分15秒 | レビュー
内容(「BOOK」データベースより)
本音爆発!書き下ろしエッセイ25タイトル+蒼井そらが自ら選んだ「今日のSOLA模様 蒼井そらのBLOG」名言集。


この本、いつの間にか読み終わってた。
やっぱり惹かれるものがあるね。蒼井そらさんには。
AV女優だって人だし、それぞれ考えがあるんだ。そんな事を教えてくれる。
って言うかね。もう大っ好き、ベイビィ斉藤。ファンが多いらしいけど、本当に面白い。
何かレビューっつっても正直書く事ないなぁ。
でも、ホント読み始めたら止まんないから。いつの間にか読み終わってますから。うん。それだけ。
あと、蒼井そらさんを知らない人が読んでも楽しくないかもしれんなあ。単行本だから1000円近くするしね。良い本だけどね、あまり皆にはお勧め出来ないです。

ナイフ

2007年03月04日 16時32分14秒 | レビュー
内容(「BOOK」データベースより)
「悪いんだけど、死んでくれない?」ある日突然、クラスメイト全員が敵になる。僕たちの世界は、かくも脆いものなのか!ミキはワニがいるはずの池を、ぼんやりと眺めた。ダイスケは辛さのあまり、教室で吐いた。子供を守れない不甲斐なさに、父はナイフをぎゅっと握りしめた。失われた小さな幸福はきっと取り戻せる。その闘いは、決して甘くはないけれど。坪田譲治文学賞受賞作。


辛い。この本を読みきるにはそれ相応の覚悟が要る。ビタミンFでは、親の視点から見たいじめだけど、この作品はどれもが子供の視点から見たいじめなのだ。それも受けている側、遠くから見ている側からだ。(いや、ま、短編集だから作品によるけど)
この本は全体的に「いじめ」をテーマにし、正面からいじめを捉えていて、作品によっては、本当に目を背けたくなる程だ。
その中で、一番ぼくが好きな作品が、「キャッチボール日和」である。好美(主人公かな?)が様々な出来事によって感じ、どう考えるか。それが実に興味深く、面白い。人生とは何か、それを考えたくなった。人によっては最後のシーンは本当に涙がちょちょぎれるだろう。
そんなに感受性が強い方にこれが読みきれるかどうか微妙だけど、それはまた別の話。

現在(いま)、いじめ問題が世間で騒がれているが、いじめをしている学生に是非読んで欲しいと思う作品だ。

ビタミンF

2007年03月04日 16時31分11秒 | レビュー
出版社/著者からの内容紹介
このビタミンは心に効きます。疲れた時にどうぞ。「家族小説」の最高峰。直木賞受賞作!
38歳、いつの間にか「昔」や「若い頃」といった言葉に抵抗感がなくなった。40歳、中学一年生の息子としっくりいかない。妻の入院中、どう過ごせばいいのやら。36歳、「離婚してもいいけど」、妻が最近そう呟いた……。一時の輝きを失い、人生の“中途半端”な時期に差し掛かった人たちに贈るエール。「また、がんばってみるか」、心の内で、こっそり呟きたくなる短編七編。直木賞受賞作。


まさにビタミン。読んでいる時は、あまりそう感じなかった。むしろいたたまれない気持ちでいっぱいだった。読み終わった後、その思いは消えて、青空のようなすっきりとした気分だけが残った。
生きる希望と生きることへのやる気が漲ってくるビタミン。
それがビタミンFなのです。
体の調子を整えるのがビタミンCとかDならば、心の調子を整えるのがビタミンFなのでしょう。

四十回のまばたき

2007年03月04日 16時29分44秒 | レビュー
婚七年目の売れない翻訳家圭司は、事故で妻を亡くし、寒くなると「冬眠」する奇病を持つ義妹耀子と冬を越すことになる。多数の男と関係してきた彼女は妊娠していて、圭司を父親に指名する。妻の不貞も知り彼は混乱するが粗野なアメリカ人作家と出会い、その乱暴だが温かい言動に解き放たれてゆく。欠落感を抱えて生きる全ての人へ贈る感動長編。


読んでいる途中に思った。重松清らしいと言ったららしいけど、何か違う。
面白いんだよ。
主人公だとか、登場人物が悲しみ、苦しみ、そして、変わる。本の中に吸い込まれて、それが嬉しい。主人公が嬉しくなると、嬉しくなるし、考え込んだら、ぼくも考える。
気付くと、主人公と自分を重ねているのに気付く。主人公に語りかけている自分に気付く。
物語に引き込まれるのは、重松作品のひとつの特徴だと僕は思うのだが、重ねるのは、初めてかもしれない。今まで読んだ作品で一番主人公と年齢が近かったのは、やっぱ「疾走」だけど、これはそれどころじゃなかったし、重ねるなんてとてもとても。
その点この作品は、まるでぼくが普段感じている事を表現されたかのような錯覚に陥った。
"セイウチ"が言う、誰の心にもある「穴ぼこ」。
[女房の穴ぼこは深かったよ。幅が狭いくせに、どうしようもないくらいに深かった。(中略)深かったよ、ほんとうに。]
[どのくらい深かったんですか?]
[睡眠薬六十錠ぶんだ]
それに対して、俺の穴ぼこはあまりにも広く、浅い。表と裏何て言ったって、ぼくなんて結局表しかない自分が裏を気取っているだけ何だなって思い知らされた気がした。
重松作品は、恐い。何か今迄わざと見てみぬふりをしてきたものを目の前で突き付けられている様な不安感に襲われる。ぼくはそれを見たい。今迄自分が見てみぬふりをしてきたものを見てみたい。興味なのかもしれない、ぼくが重松作品を読むのは。そうだとしても違うとしても、ぼくはこれからも重松作品を読み続けるだろう。そしてその後、空虚感に包まれながら生きることに必要な行動をして、朝になったらまた意思を持って動き出して、普通に笑うのだろう。