木のぼり男爵の生涯と意見

いい加減な映画鑑賞術と行き当たりばったりな読書によって導かれる雑多な世界。

『曲芸師のハンドブック』

2013-04-01 00:18:52 | 日記


「曲芸師のハンドブック」クレイグ・クレヴェンジャー


他人になりすまし、生きる男。
人の名を騙り、筆跡を変え、ありとあらゆる証明書を偽造する。
運良く書類偽造の才に恵まれ、人格を創りあげる想像力と惜しみない努力によって、
生み出される人物たち。

で、なんでここまでするのか?
3日は続くという激しき偏頭痛のおかげで、錠剤がぶ飲み。
発見され次第の救急搬送→病院→カウンセリングという名の精神鑑定→施設行きor帰宅

この最後の施設行きを逃れる為に、毎回違う名前で担ぎ込まれる必要性が…
でもって、鑑定ではカウンセラーに、誤飲と納得してもらわねば!
という訳で、先生相手に涙ぐましい努力。
クリア過ぎる人生でもいかんし、鬱を怪しまれてもいかんし、他人と違い過ぎてもいかん。
落ち着き過ぎもダメなら感情を出し過ぎもいかんが、冷酷過ぎてもいかん。
が反省は見せねば。。。

現在形で進むカウンセリングで偽の人生と彼の過去が明らかに。
完全な嘘と、本当の人生、なりすましの生き様。
いつでも敵は、なにか大きな組織やらシステム。
チェックシートでしか人を判断しない、マニュアルでしか対応しない─
そういう世の中なら、それに合わせて生きてくしかないな。

悲惨なビンボー暮らしや、刑務所にて生き残る知恵?を学び。
薬や酒で現実逃避をしつつ、愛にさまよう。
しぶとく生きる男の、どこか哀しいさすらい人生。

作者の熱き反骨精神が貫かれた一冊。