目の中のリンゴ

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「つばさものがたり」 雫井脩介

2010年09月27日 | 読書
雫井さんも初めて読む作家さん。
新聞の広告で見て面白そうだったので読んでみました。

「つばさものがたり」(雫井脩介 小学館)

26歳のパティシエール(女性菓子職人)小麦。
東京の有名店で修行中。
将来の夢は父の遺志を継いで、母と小さな洋菓子店を開くこと。
並行して描かれる、小麦の兄、代二郎の家庭。
生まれた息子・叶夢は、ちょっと変わった子供で
アスペルガー症候群やADHDを疑われている。
その叶夢は、天使の姿が見えるというのだが・・・。

以下の感想にはネタバレありです。

主人公の小麦が、ガンに侵されていることが
冒頭で描かれている。
ゆえに、先の展開はなんとなく予測がつく。
あざといお涙頂戴の話じゃないのか??
もしくは、超ファンタジーの甘甘小説??

小麦が、家族に支えられ病と闘いながら
パティシエールとして夢を叶えていく姿と
ちょっと変わった子供・叶夢に不安を感じていた
父親の代二郎が、”ごっこ遊び”につきあううち、
息子と心を通わせていく様子。
・・・ベタです。あざといです。
でも、泣けて泣けてしかたなかった。

先日読んだ「ストーリー・セラー」
あざとくて、好きじゃなかったのに、
同じように生と死を描いたこの小説に
どうしてこうも感動してしまったのだろう?

それはたぶん、「ストーリー・セラー」は
肉親すらも寄せ付けないほどの、
夫婦2人の間の濃密な想いだったのに対して、
「つばさものがたり」は、家族や友達や
周りの人に対する愛情や思いやりが
あたたかく描かれていたからだと思います。
不思議な甥っ子はもちろん、
兄や母や義姉、師匠、淡い恋心も
しっかりと丁寧に描かれていて
登場人物に共感できました。

実際に若くしてガンで亡くなるような人に
これだけのことができるものなのか、
現実を知っている人が読んだら
ありえない、と思うのかもしれないけど、
最後まで自分らしくあろうとする主人公の姿には
胸が熱くなって、後半涙が止まらない。

そして、天使と友達の少年、という
ファンタジックな要素が加わって、
この物語がキラキラと輝いています。
ありえない、と思えるファンタジーだから
感動できたのかもしれません。

結局は叶夢くんの不思議な妄想なのかもしれない。
天使が奇跡を起こした、という描かれ方ではないのだから。
でも、”天使のレイ”が小麦に生きる力を与え
叶夢の家族を結びつけたのは確か。

ページをめくる手がとまらなくて、
夜更かしをして泣きながら読了。
今朝は目が腫れてました・・・。

パティシエの仕事の様子も興味深くて
読んでいるとケーキが食べたくなるわ(笑)

映画の「ベルリン・天使の詩」
(あるいは「シティ・オブ・エンジェル」)のように
目には見えない天使たちが、人間の心の声を聞き、
屋根にとまって羽を休めているのかもしれない、
と信じたくなってしまう小説です。
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