名無しの教師の日誌

ある公立中学校教師の教育私論と日記です。

高校入試と校外模試

2018-12-02 00:15:47 | 教育に関する私論
みなさん、中学生のとき、校外模試ってありました?

あ、塾等で行なう模試では無く、中学校で行なう模試の話ですよ。

今日はこの模試と、評定のお話。



まずはこれをご覧下さい。

文部科学省の学校における業者テストの取扱い等について

文初職第三九六号

昭和五一年九月七日
各都道府県教育委員会あて
文部省初等中等教育局長通達
学校における業者テストの取扱い等について

いわゆる業者テストの実情については、さきに貴委員会の協力を得て調査したところでありますが、それによると、その実施状況や指摘されている問題点は地域によつて様々であるとみられます。貴委員会におかれては、今後更に管下の中学校における詳細な実態の把握に努めるとともに、左記の事項に留意の上、学校関係者の意見を十分聴取して、地域の実情に応じて適切な措置が講じられるよう御配慮願います。
なお、先般実施した業者テストに関する調査の結果を添付しましたので参考に供してください。
おつて、学校における補助教材の取扱い等についても、昭和三九年三月七日付け文初初第一二七号初等中等教育局長通達の趣旨の徹底方併せて御配慮願います。



一 学習の評価は、学校の指導計画に基づき教師自らが適切に行うべきものであり、また、進路の選択に関する指導は、この評価とともに教師が行う観察、調査、相談等を通じて的確に把握した個々の生徒の能力・適性、進路希望等を基にして行うべきものであるので、安易に業者テストに依存することがあつてはならないこと。
二 業者テストを授業時間中に行うことは、学校があらかじめ作成する指導計画に基づく教育活動に支障を来す等のおそれもあり、望ましくないものであること。
三 教師が金品等の報酬を得て業者テストの費用の徴収に携わる等の行為は、社会の疑惑を招くおそれがあるので自粛すること。

(後略)



長い。

簡単に言うと

・中学校は授業時間内に業者テスト(要するに校外模試)を実施するべきではないからやめろ
・業者テストの結果を評価評定の参考とすることや、高校入試の進路指導の資料とするのは不適切だからやめろ


という文科省発、各都道府県教育委員会宛の通達です。

ですから、建前上は、中学校で校外模試を行なうことはありませんし、その結果が評定や進路指導に関係することはありません

「建前上は」

実際は影響してます。

以下、筆者の勤務する地域の話。もしかしたら地域差あるかも。他所の県のことは詳しくは知りません。



本県の中学校では、「実力テスト」というものが行なわれています。

これは建前上は

「先生が作成したテストばかりでは偏りが出るから、業者が作成した問題集をテスト形式で実施し、先生が採点した校内テストである」

「偶然にも、ほぼ同じ時期に、県下すべての中学校が、同じ業者の同じ問題集を実施している」


ということになっています。

実際は、これは大嘘

そもそも、偶然にこんなことが起こるわけ無い。

すべて事前に申し合わせた結果です。

また、問題は業者作成、業者採点で、県の平均点や標準偏差等もばっちり出て、先生達には共有されます。

しかし、生徒・保護者に対しては「校内テストなのでそんなものは存在しない」と説明されます



何でこんなことになったのかというと

「現場レベルでは必要性を感じるからやるけど、文科省がやるなって言ってるから堂々とやれないから、密約交わして建前も作って実施する」

という判断が、この通知が出た数十年前、当時の校長先生方のなかで出されたらしいです。



なぜ校外模試が必要なのでしょうか。

これは単純な話で、高校入試とは、他校の生徒との争いだからです。

その生徒が、校内でどのくらいの順位にあるのかだけで進路指導をすることはできません。

県内でどのくらいの順位にあるのかが分かって初めて、「〇〇高校に合格する可能性が高い・低い」という判断がつくのです。

文科省の通知を真に受けて、そのような判断を中学校で行なわなくなったら、塾に行けない子は

「合格するかどうかはよく分からんが、とりあえず頑張ってこい!」

としか言ってもらえなくなるわけです。



ところが、これには大きなデメリットがあります。

先ほど述べた建前があるせいで、生徒・保護者に対して「〇〇高校に合格する可能性が高い・低い」と伝える際

教師がそう判断した根拠となる数字を伝えることができないのです。

「今までの卒業生の前例と比較して……」というような、曖昧な言い方しかできません。

そして、保護者が

「塾で行なった模試では合格可能性80%と出ているのに、学校の先生は厳しいと言うし、しかもその具体的根拠を示してくれない」

と言い出したら、現場の担任教師達はとても困るわけです。

実際、私も何度もそれで困りましたし、今もそれで困っている先生は多いはず。



次に、校外模試と評定の相関性について。

これも建前と実際が違います。

というか、建前上は校外模試は実施していないので、評定との相関があるわけ無いのですが……。

例えば、このような場合を想像して下さい。

A中学校3年生の校外模試の数学の平均点が70点

B中学校の平均点が60点だった。

ところが、A中学校の数学の評定平均が2.8、B中学校の評定平均が3.4であった……

こんなことが起こったら、おかしいじゃないですか。

もしもこんなことがあったら、それはA中学校の成績の付け方が厳しすぎるか、B中学校の付け方が甘すぎる、という話になります。

特に、高校入試に評定が大きく影響するシステムの県の場合、このようなことが起こってはいけませんので、校長同士で校外模試の点数や評定平均を共有し、調整します

または、教育委員会が補正をかける地域もあるそうです。

このように、校外模試と評定には関係があります。

以前書いたように、私はそもそも高校入試に評定を大きく影響させることに反対の立場ですが)



ごちゃごちゃと書きましたが

私の意見はこの一言

「文科省はこの実態にそぐわない通知を撤回せよ」



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