旅する骨董屋 喜八

チベット圏を中心にアンティークや古民芸・装飾品を旅をしながら売買する喜八の、世界の様々な物や人その文化を巡る旅のブログ。

チベットの護符トクチャの不思議

2023年06月15日 | チベットもの



トクチャの事です。

先日、台湾人の友人が日本に来た時に、
トクチャの専門書をプレゼントしてくれた。

台湾出版の古い本でした。

僕がチベットの古い物の売買をしていると知っている彼の好意である。
どうやら、なかなか手に入らない貴重な本だと言う。
感謝である。
その気持ちが、うれちぃ。

ーーーー

ご存じの通り、トクチャには様々な伝説がある。

「天から降ってきた物」と云う伝説が一番有名だろう。

その他、販売業者や民間伝承によって、
色々な言葉で伝えられている。

では、
チベット人にとって身近な物か、
または、
業者間やコレクターの間だけで注目されている物かと言えば、
前者である。

僕が知る限り、
一般のチベット人(またはチベット圏の人々)にとっても
身近な物なのです。

「チベットの護符」という仰々しいタイトルを付けたが、
まぁ、お守りですよね。

そのデザインや古さ、大きさなどの種類は凄い数があり、
もう数え切れない。

そもそも、
トクチャとする定義自体も曖昧な気がする。

チベット仏教的な紋様はもちろん、
矢尻やボタン、
具象的な動物、
神獣、
意味不明な謎の形など様々である。

印鑑もトクチャとして捉えている場合もあるし、
装飾品の一部や、
仏教儀式用の型取り金属までトクチャと呼ばれる。

ありとあらゆる金属片がトクチャとして捉えられ、
古の鎧の一部も、
トクチャなのである。

トクチャには様々な見解があり、
「これはトクチャだ、あれは正確にはトクチャではない」とか
チベット本土の業者でも人によって色々な意見がございまする。

鎧の一部のトクチャは、
僕のチベット人の友人も数珠にお守りとして付けているので、
少なくとも彼にとってはトクチャなのであろう。

正確には色々な意見があるだろうが、
個人的には、
チベット人(またはチベット仏教圏の人々)が、
「自分がお守りとしている金属類」が、
全てトクチャと言えるとは思っている。

今や、
デザインが珍しいとか、
古い年代である等、
値段はとんでもない事になっている物もある。

以前、ラサの某店で超極大サイズの曼荼羅型トクチャを見たことがあるが、
真偽は不明だが、中国の美術館と交渉中だとの事だった。

トクチャは今やマニアックな域を抜け、
美術館が求める物であるらしい。

しかし、
70年代だっけな?にチベットに訪れていた
あるイギリス人チベット愛好家に出会った事があるが、
「当時は、大きな袋いっぱいにトクチャを買っても100ドル(値段忘れた)もしなかったよ」と
言っていた事がある。

しかも、
その頃は偽物も無かったであろう。

時を経て、トクチャは注目を浴びる存在となった。
注目と共に市場価格も上がった。

上がりすぎた気がするのである。

仏塔デザインの人気が出れば、
その価格は上がり、
マントラ・デザインに注目が集まれば、
またその価格は上がる。

トクチャは僕は今は積極的に扱っていない。

ジービーズ同様、
本来のチベット仏教における存在意義とは別に、
中国人が先導する蒐集趣向に伴ったゲーム的な金額と存在になった気がして、
ある時から、ちょっと気が向かなかったからでもある。

しかし、
トクチャは、
色々なデザインがあり、
コレクター心をくすぐる。

それが「祈りの対象となっている護符」、
という意味を持った存在であれば僕にとって尚更だ。

そして、いまだに謎が多い。

マントラ(真言)型や仏塔型とかなら、
仏教的意味合いがあるのは分かるが、
デザインが不可思議な形も多く、
どうしてこういう形になったのかとかの物も在る。

それ故かどうかは分からないが、
不思議と心を惹きつける物ではあるだろう。

今や、贋物(偽物の定義は置いておく)が多くあるのも事実であるが、
商業量産的な物でも現地の一般人であるチベット人達は
愛用してるのを多く見かける事ができる。
むしろ、僕の経験上、それが一般的である様に思える。

もちろん、
親などから伝世した物を身につけている場合もあるが。

例えは的確か分からないが、
日本で云う所の、
何処かのお寺で個人的に買った御守り的な事かもしれない。

それを贋物だとか新しいお土産品とかと
安易に判別して良いかは僕は分からぬ。

少なくとも僕は、
日本のお寺で手に入れて愛用してる御守りを、
見ず知らずの外国人業者に「それは新しい量産品だ」と言われたら、
ムカつくだろう。

大切なのは、
物語や想いだと思うのだが、
それは僕の間違いだろうか。


•••ともあれ、
友人に貰った本の内容(写真)が充実していて、
久しぶりにトクチャを欲しくなった。

著作権の都合があると思うので、
本の内容の掲載写真は載せられないが、
かわゆいトクチャがいっぱい載っているやんけ。

意味不明デザインの形の意味も記載してある。
(正しい情報かはわからないが)

何より、掲載されているトクチャの数が多い。
色々な見解を抜きにして、見応えがある。


思えば、僕はお守りが好きである。

人々の想い、祈り、がこもった物質に興味を持っている。

久々にトクチャを探してみようかしら、と思ったりして。



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