
僕は怖い
何も感じなくなってしまう事が怖い。
怖くて仕方がない。
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日曜の街
これでもかと言うほどに
混み合う駅周辺
僕は、綺麗な駅ビルの横を通り過ぎる。
店内にはバレンシアガなどの高級店が並ぶ。
高そうな服を着た女性が買い物をしている。
少し前に
そのビルの屋上庭園から
若い子が飛び降りた。
あの日、
僕がその場を通り過ぎた、
ほんの1時間後の事だった。
亡くなったらしい。
僕は、同じ道で足を止め、
その高い建物を見上げる。
彼女はどんな気持ちで
このビルから飛び降りたのだろう。
視界を地上に戻すと、
目に映るのは
同じ道、
同じ場所を、
笑いながら歩く人々。
何事も無かったかの様に。
全く無関係である様に。
誰か知らない人の命なんて
通り過ぎ、
過ぎ去り、
忘れ去られる小さなコト
空から見れば、
僕もその一部に過ぎないだろう。
何年も前に僕は知人を失った。
彼が旅立つ1週間前に会っていた僕は
何も言えなかった。
何も感じ取る事が出来なかった。
その後、
僕は遠い場所を彷徨い、
だいぶ長い年月も経った。
僕は少しは変われただろうか。
現実は何も変わらない世界に見える。
むしろ実態は悪くなっているのかもしれない。
得体の知れない恐怖を感じ、
何かから逃げる様に
僕は足早に立ち去った。
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何処かで会った、
香港に住むイギリス人は
「何も見ず、何も言わない。
耳を塞ぎ、
そして
何も思わない。
そうすれば、快適だよ」
と言っていたっけな。
妙な納得感があった。
でも、
俺には無理だよ。
そんな事は。
例え快適でなくとも、
心を感じて生きていたいというのは、
ワガママなのだろうか。
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駅に着くと、
電車は今日も人身事故で遅れていた。
イヤフォンを耳につけ、
サングラスをかけ直す。
Youtubeで、
未草 haruka nakamuraの曲をかける。
空からは
雨がパラリと降ってきた。
今晩は冷えそうだ。
遠くを想う。