旅する骨董屋 喜八

チベット圏を中心にアンティークや古民芸・装飾品を旅をしながら売買する喜八の、世界の様々な物や人その文化を巡る旅のブログ。

チベットのお守りトクチャの不思議

2018年06月29日 | チベットもの




チベットのラサで、ある中国人バイヤーと友達になった。

ラサには30回以上来ていると言う。
彼は、あか抜けていて欧米的な雰囲気をもっていた。
多くの中国人バイヤーと違い、英語が堪能で、
チベット圏各地、ラダックの奥地やネパールはもちろん何度も、
そして、
驚く事に、秘境ミゾラムまで買付けに行った事があるらしい。
そこまでする中国人バイヤーは少ないだろう。
そもそも、チベットに来ている中国人バイヤーで、
白いデニムを着こなしている人は居ない。

若く見えたが、芸歴24年との事だったので、
40歳以上であろう。

面白そうだったので、彼と少し仕入れを同行し、お茶もした。

仕入れている物を見せてもらったが、
眼が良い、というのは一目で感じた。

トクチャも何個か仕入れていて、
そこで、トクチャの話になった。

トクチャが何なのかは、詳しく説明しないが、
簡単に言うと、数々の伝説を持つ、チベットの伝統的なお守りである。

彼は、ネパールやラダックに何回も行っているので、
もちろん、各地の物の数や種類、金額を把握していて、
それらと比較して話した。
自分の経験と比較しても
納得する部分があり、説得力があった。
彼の説明とコレクションを話でのみ聞いた限りだが、
これほどの数を見ているバイヤーは、まず日本には居ないだろう。

たぶん、いや、間違いなく、
ネパールのチベット人業者より、はるかに、
トクチャの数自体は見ているだろう。

ラサは、他のチベット圏とは比べ物にならない数のトクチャがあるので、
他の地域、特にネパールだけに、どれほど行ったとしても、
トクチャに関して言えば、
その経験値は比べる迄もない、というのが僕の感想だ。


さて、
ラサも含め、
古く見せた贋物や新しい物が多いトクチャだが、
彼いわく、トクチャは、
一見、新しそうに見える物でも、
実は、古いトクチャもあるらしいのだ。

試しに、ラサの業者が持つトクチャを一緒に見に行った。

ぱっと見、新しそうなトクチャだったが、
彼は、100〜150年前のトクチャだと話した。

よくよく見てみた。

確かに、何か違うのである。
素材が特別とか、造りが良い、という訳ではない。
何処かが自然なのだ。

ふーむ
トクチャは、奥が深い。


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翌日、ラサ郊外にある知人業者の店に行った。
トクチャの凄いコレクションがあるというのだ。

まとめ売りとの事なので、とてもじゃないと買えないが、
ラサの某美術館と交渉中だというので、
そんなに凄いのか、と思い、
勉強に見に行った。

確かに凄かった。

明らかに、古いトクチャがズラッとあり、
中には、今まで見た事がない、というより、他ではまず見れない、
千手観音型の特大トクチャがあった。

もう、ここまでいくと、トクチャなんだか、どうなんだか分からんが、
トクチャという事だ。

そんなに古くないような感じだったが、
古い、と言う。
ようは、特殊なので、実用として使われていないのだ。
普段使わないと、使用痕も出ない。
極端に古い物は置いておいて、
保存状態が良いと、新品同様の見た目になるのだ。

まだまだ、謎が多いトクチャだ。



チベットのお守りトクチャ→




写真のトクチャは文章内に登場するトクチャではないです。
ラサにて譲り受けたトクチャで古い時代はありません。

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