久々の更新。
生きていました。
僕のSNSを見てくれている人は知っていると思うが、
二ヶ月ほど前までしばらく海外に居ました。
トルコとジョージアですな。
色々な事があったが、
インスタグラムにも何処にもアップしていないです。
いずれ書くかもしれないし書かないかもしれない。
気が向いたので、
ジョージアのキリムや絨毯について書こうかな。
そのジョージア、
日本ではあまり知られておりませんね。
以前の国名のグルジアの方が伝わりやすいかな。
ジョージアと言うと、アメリカのジョージア州が知られてるかもしれんけど、
旧ソビエト圏コーカサス地方のジョージアです。
物価が安いとか長期滞在が可能だとか料理が美味しいとかで
数年前から若い日本人を含め各国のリモートワーカー達に注目されているが、
実は、織物文化、キリムや絨毯が非常に魅力的です。
以前、ある美術館の学芸員の知人に聞いたが、
ジョージアの織物文化は日本では全く認知度がないらしい。
織物を求めてジョージアに行く日本人は僕以外に居るのかしら。
ジョージアでの織物の歴史的背景とか色々な事を話しても仕方がない(そもそも知識がない)ので、
まずは写真を。
ジョージアの鹿柄の絨毯。
フカフカとした厚みがあります。
鹿の顔の表現が具象と抽象の中間でなんとも絶妙。
カヘティ地方の村人から譲ってもらった。
昨今、日本で売られている安い絨毯の類いの製造は中国製等の工場での商業用の大量生産が殆どだろうが、
古いジョージアの絨毯やキリムは自国内での各家庭内手作業での制作。
羊毛もジョージアで放牧されている羊達から刈り取られた毛を使っている。
同じ絨毯であっても、個人的には全くの別物として考えている。
薔薇でしょうかね。
絵画的要素が表現されている様に感じる。
ジョージアン・カーペットを代表するような作風の絨毯。
独特で個性的。
他の国では目にしないジョージアならではの、これぞコーカサス地方の絨毯という雰囲気だろう。
縁を鮮やかな配色のダイナミックな花柄で囲み、鹿がドーン。
動物柄の絨毯はトルコ等にも存在するが雰囲気が異なる。
トルコは技術的に高度で緻密に表現するのが美しいという価値観故なのか、
良いとされる物は細密に織り込むんですよねー
ジョージアは適度なバランスで大胆に表現する事に長けている気がする。
ライオンの絨毯。
旧ソビエトだった影響と思うが、共産圏の織物の雰囲気が色濃く出ている。
この雰囲気は好き嫌いが分かれると思う。
一見、ロシア物かと思えるがジョージアの絨毯である。
荘厳な強さを表現している様に感じるが、
個人的には画風にイマイチぐっと来ない。
細かくワガママ言うと、
ライオンの身体の筋肉やタテガミの陰影をリアルに再現しているのはあまり好みではない。
しかし、絨毯としての完成度は高い。
ロシア系を好きな人向きかしら。
まぁ、これはこれでマニアックでレアであるとは思う。
この手の絨毯を含めジョージアのキリムや絨毯は、
イスタンブールなどでは全く目にしないし流通もしていないので、
ご当地アイテムではあるだろう。
ライオンのキリム。
すごく好みの雰囲気。
こういうユルイの、個人的に好き。
目やタテガミの表現とかタマラナイ魅力がある。
こういった表現は、文化的・民族的な背景からのクリエイティビティがないと創れないだろう。
現代の大人は、子供の頃に持ち合わせた想像力ではなく大人になってから得た既存情報に沿った表現をしがち。
自由に表現する事に個人的には魅力を感じるのです。
自由な想像力や表現力や遊びは人間を含めた生物の特権で、
僕はそこに「物を通しての人間」を感じるからさ。
カヘティ地方のワイナリーに行った時に醸造所にあった物で、
アンティーク好きのワイナリーのオーナーがコレクションしていた一枚。
これ、欲しくてオーナーに交渉してみたが、やんわり断られた。
僕がワインよりアンティークに興味を持っていたので、
オーナーの従兄弟に「なんで貴方は古い物に興味があるの?」と聞かれたので、
「僕の仕事なんだ」と答えると、二階や別館にあるオーナーのアンティーク・コレクションも見せてもらった。
ロシアやドイツ、イタリア、日本や中国に至るまで数多い骨董品がかなり広い部屋に大量あった。
約100年前のジョージアン・キリム。
左上に、1923年かな?の年代が織り込まれている。
年号右端の6に似た文字は「年」を表すらしい。
図柄はピクトグラムの独特な特徴がある。
カヘティ地方で他に一枚ピクトグラム図柄の古い物を見たので、
伝統的であった図柄だと思われる。
「伝統的であった」と過去形なのは、今は目にしなくなったから。
参考品として仕入れても良いかなーと思ったが意外に高く、
日本人に評価されずらい図柄だったので見送る。
縁があれば次回は仕入れようかしら。
100年前の年代入りキリムなんて、
イスタンブールで買ったら数千ドルは当たり前の世界だからね。
余談だが、ジョージアのキリムや絨毯に置ける織り込まれた年代の信憑性だが、
時代背景・文化的からも各家庭でつくられ、
商業生産ではないので、まず間違いなく正直正確であろうと思う。
偽物の年代表記が氾濫する昨今の中国物とは全くの別次元。
ドラクエを思い出した一枚。
ぱっと見て、「欲しい」と思い、仕入れるかどうかかなり悩んだ。
ジョージア語で複数の名前(女性らしい)と、
良く見ると年号、50(1950)年3月2日かな?が織り込まれている。
キリスト教圏の十字を用いたデザイン構成など完成度も高く、厚みがある絨毯。
コンディションも完璧。
疑う事がない完全無欠の各家庭でのオリジナル品。
非常に惹かれたが、重量的に見送った。
当時、コロナの影響でジョージアから日本への国際発送が止まっていたので、
日本への発送が可能だったイスタンブールに飛行機で持ち込まなければならない事情があり、
この時点で既に、僕の荷物は60kgに達していた。
後日になるが、ジョージアからイスタンブールに飛ぶ時、
チェックインカウンターで超過荷物、35kgオーバーだった。
諸事情で事前に超過分を購入してなかったので、
カウンターの航空会社女性職員に
「あんた、マジ?」と言われてしまった。
超過料金も大変な事になった。
僕はいつも荷物が多い。
やれやれ。
懇意にしているキリム業者に写真送ってもらった一枚。
一瞬ウサギと思ったが、ヤギとの事。
たしかに珍しいと思うが、完成度とコンディションが微妙。
僕がコレクターなら持っておいても良いかもしれないが、
バイヤーであるので売る事を想定しなくてはならない。
「これ、珍しいですよん」と言ったところで、
そもそも日本(もしくは世界的にも)ではジョージアのキリム自体が珍しいので、
それ以上マニアックに突っ込むと理解されずらいのは知っている。
見た目を重視する面でも見送る。
珍しさと見た目、クオリティやコンディションが揃った一枚。
古さもある。
その上、年代と名前(たぶん)入りである。
孔雀柄のジョージアン・キリム(上の写真は撮り間違えて裏面)
何枚も何枚も見たなかでも秀逸だった。
なんと言っても個人的にも好きな孔雀である。
動物柄狙いで山の様に積まれた中から探してもらった。
鹿やライオンなどジョージアで代表的な図柄を含め、
物自体の善し悪しを前提とした上で、
失われつつある今のうちに手に入れる事は間違いではないのは共通した事だと思うが、
古い孔雀とか変わり図柄は特に、出逢った物が旅立てば、それでフィニッシュな可能性がある。
チベット物で痛い程味わっているが、
古い物に関しては、「あの時買えば良かった」と思う物はその後、本当に出会わなくなる時がある。
もちろん、再び出会える場合もあるが、同じ物、同じ状況、同じ値段とは限らない。
経験として言うと、再度出会えた時でも、ほとんどの場合が最初の時の方が良い。
これは脳内で、思い出や後悔が以前の物を美化するのではなく、現実的に以前の方が良い物の場合が多い。
それは、その時点での物の流通量や時代等が関係する確率的な事象なのかもしれない。
羽の表現が素晴らしい。
一見、なんでもなさそうだが、
十字で羽根模様を表現するというのは文化的価値観がなければ出来ないと思うがどうなのかしら。
写真では伝わらないが、色味も良い。
ジョージアの古い絨毯やキリム、民族衣装に用いられている染料に関しては、
天然染料のインディゴやコチニールなどの原料の多くは、
古くからインドなどからの輸入品を用いてるらしい。
因に、インディゴは1867年以降からインドからジョージアに入って来たとの事。
しかし、「今、ジョージアで天然染料を使って絨毯やキリムを作る人は皆無に近いわよ」と、
この道50年の絨毯屋は言う。
2面(2羽)の中央にハートがある構図にも惹かれたのです。
愛がある。
年代も織り込まれてる。
1955年製。
もちろん、
これも間違いない各家庭でのオリジナル。
商業向け生産品では決して、ない。
物の善し悪し、珍しさ、物の背景、現実的な値段、
全部揃った一枚の、これを逃す手はない。
迷わず仕入れる。
---
今回は動物柄を多く紹介したが、
それは僕が動物柄が好き、という理由だからだったのだが、
動物柄だけがジョージアン・キリムやカーペットという事ではない。
むしろ、僕が見た印象では相対的な数は多くはない。
また、ジョージアン・キリムやカーペットは、
動物以外にも植物、芥子柄とかも存在する。
それらも非常に魅力的ではある。
いずれにせよ、深堀りしたくなる分野なのでした。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます