『BJ』 3 直家エル
夜、いきなり事務所のドアを開けて男が入ってきた。
腰が曲がった、年老いたホームレスのようだ。が、動作はすばやく、後ろ手にドアを閉めると、人差し指を口元に立て、部屋の中を舐めるように見渡した。
ぼろぼろの薄汚れたジャケットに擦り切れたジーンズ。何故かよれよれの中折れソフト帽を被っている。腰を伸ばすと、黙ったまま窓に近づき、閉じているブラインドに人差し指を挟んで外の様子を見る。185センチ90キロはあろうかという図体が部屋を狭くする。
私は引出しからスケッチブックを取り出すと、4Bの鉛筆で走り書きをして、男に見せた。
『盗聴器はない。毎朝事務所を開けたときにチェックしている』
男はうなずくと、初めて口を開いた。
「ひさしぶりだな」まだ警戒しているのか、小さな声だ。
「どうしたんですか、Aジェントさん、直接会うのは拙いでしょう」
「わかってる、急を要するんだ」
「それに何ですか、その格好は。ルパン四世じゃあるまいし、それにその革靴、ぴかぴかじゃないですか、それじゃ変装になっていませんよ。それ、フェラガモですか」
「わかってる、急を要したんだ。それからルパンは三世まで、靴はバリー」
「よくここがわかりましたね」
「わかってる、急を要したんだ。いや、台詞が同じになっちまった。以前から副業をやっているのは知っていた。それに“BJ探偵社”じゃ、『ここにいます』とスピーカーで怒鳴っているようなものだ」
「違うますよ。偶然の一致。BJは、Bジェントのことじゃないですよ、国分寺、地名です」
「そういう場合は、偶然の立地というんだ」
「駄洒落を言っている場合ですか、誰かに追われているんですか」
客に対しては、ぞんざいな口をきく私も、Aジェントには、いつも丁寧な言葉遣いになってしまう。
Aジェントは、汚いジャケットの袖口をずらすと、腕時計を見た。これもぴかぴかに光っている。
「それもそぐわないですよぉ、ローレックスですか」
Aジェントはポケットから小さな箱を取り出すと、デスクの上に置いて言った。
「時間がない、これを預かってくれ。それから、時計はオメガ。『おめえが!』なんて言うなよ。こんな有名な靴と時計のブランドもわからないようじゃ探偵は務まらないぜ」
「『おめえが』なんて言いませんよ、俺だったら、『さすが、お目が高い』と言います。それに俺はブランドに興味はありませんから」
「『おめえが』と『さすが、お目が高い』の差が、『どんだけぇ~』ってなもんだい。それから、興味がなくても覚えるのが仕事というもんだ。じゃあな」
Aジェントは、片手を上げると、ドアを壊さんばかりに大きく開けて出て行った。
「ちょっと、ちょっとぉ、これどうすればいいんですかぁ」
小さな箱を掴んで、後を追いかけようと腰を浮かしたが、すぐに諦めた。
しばらくすると、あたりは元の静寂を取り戻していた。
しかし、この小さな箱は、これからの喧騒を保証しているようだった。
<寒>
いつものパターンになってしまった。
最初の「BJ」と探偵のキャラが全くちがうじゃねぇか!!!
夜、いきなり事務所のドアを開けて男が入ってきた。
腰が曲がった、年老いたホームレスのようだ。が、動作はすばやく、後ろ手にドアを閉めると、人差し指を口元に立て、部屋の中を舐めるように見渡した。
ぼろぼろの薄汚れたジャケットに擦り切れたジーンズ。何故かよれよれの中折れソフト帽を被っている。腰を伸ばすと、黙ったまま窓に近づき、閉じているブラインドに人差し指を挟んで外の様子を見る。185センチ90キロはあろうかという図体が部屋を狭くする。
私は引出しからスケッチブックを取り出すと、4Bの鉛筆で走り書きをして、男に見せた。
『盗聴器はない。毎朝事務所を開けたときにチェックしている』
男はうなずくと、初めて口を開いた。
「ひさしぶりだな」まだ警戒しているのか、小さな声だ。
「どうしたんですか、Aジェントさん、直接会うのは拙いでしょう」
「わかってる、急を要するんだ」
「それに何ですか、その格好は。ルパン四世じゃあるまいし、それにその革靴、ぴかぴかじゃないですか、それじゃ変装になっていませんよ。それ、フェラガモですか」
「わかってる、急を要したんだ。それからルパンは三世まで、靴はバリー」
「よくここがわかりましたね」
「わかってる、急を要したんだ。いや、台詞が同じになっちまった。以前から副業をやっているのは知っていた。それに“BJ探偵社”じゃ、『ここにいます』とスピーカーで怒鳴っているようなものだ」
「違うますよ。偶然の一致。BJは、Bジェントのことじゃないですよ、国分寺、地名です」
「そういう場合は、偶然の立地というんだ」
「駄洒落を言っている場合ですか、誰かに追われているんですか」
客に対しては、ぞんざいな口をきく私も、Aジェントには、いつも丁寧な言葉遣いになってしまう。
Aジェントは、汚いジャケットの袖口をずらすと、腕時計を見た。これもぴかぴかに光っている。
「それもそぐわないですよぉ、ローレックスですか」
Aジェントはポケットから小さな箱を取り出すと、デスクの上に置いて言った。
「時間がない、これを預かってくれ。それから、時計はオメガ。『おめえが!』なんて言うなよ。こんな有名な靴と時計のブランドもわからないようじゃ探偵は務まらないぜ」
「『おめえが』なんて言いませんよ、俺だったら、『さすが、お目が高い』と言います。それに俺はブランドに興味はありませんから」
「『おめえが』と『さすが、お目が高い』の差が、『どんだけぇ~』ってなもんだい。それから、興味がなくても覚えるのが仕事というもんだ。じゃあな」
Aジェントは、片手を上げると、ドアを壊さんばかりに大きく開けて出て行った。
「ちょっと、ちょっとぉ、これどうすればいいんですかぁ」
小さな箱を掴んで、後を追いかけようと腰を浮かしたが、すぐに諦めた。
しばらくすると、あたりは元の静寂を取り戻していた。
しかし、この小さな箱は、これからの喧騒を保証しているようだった。
<寒>
いつものパターンになってしまった。
最初の「BJ」と探偵のキャラが全くちがうじゃねぇか!!!
しかし、腰が曲がった、185センチ90キロはあろうかという図体って、想像が付かないな・・・
バリー
ローレックス
オメガ
バリー以外は知ってた。私もたいしたもんだ。
靴は、木型から作る誂えだったり・・・
ねむさん、
駄洒落のレベルの差が、どんだけぇ~
ということだったのですが、
何れにしろ知らないのに無理矢理入れて、
やっぱり間違っていましたか。
はなこさん、
私もブランドはよく知りません。
ですから。ここに出たのは超有名なものだと思います。
よく知らないので、どんだけぇ~か分かりませんが・・・
「偶然の立地」はポイント高いです。よい感じ。
「どんだけぇ~」なかなかよい感じ(ホントに知らないんですか?)。
>「ちょっと、ちょっとぉ、
は、あと1回足りないような(ご存知ない?)。
キャラが確立されていないのは全然気になりません。すこしずつ固めていっていただければ。
「どんだけぇ~」は知らないし、
「ちょっと、ちょっと」も
もう1回言うと、誰かお笑い芸人さんが言っているのでしょうか?
ホントに知らない
キャラを確立するほどの話でもありません
ザタッチ という双子お笑い芸人のギャグです
(すこし古くなってしまいましたが)。しかし、驚き
ですね。知らないギャグを使いこなすとは。
次はない、といわずぜひ続編を。気長にまってます。
重なって、ひとりだけ起き上がるヤツを
見た事ある。しょうもない芸だと思ったが、
彼らが、ザタッチなんだな。
名前と、ちょっと・・・は知らなかった。
だから、あそこはギャグではないのでした。ははは。
また何か思いついたら書きます