2014/02/11日経マネー
住宅ローン審査 銀行はあなたの
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住宅ローンアドバイザー・淡河範明
買いたい物件が決まり、売買契約を結ぶと、次に待っているのが住宅ローンの申し込み、そして審査です。住宅ローンを借りて家を買う以上、審査に通らなければ売買契約は白紙に戻さざるを得ません。今回はローン審査を取り上げます。
■金融機関が重視する審査項目は…
よく利用される住宅金融支援機構の「2013年度 民間住宅ローンの貸出動向調査」を見てみましょう。「重要度が増していると考えられる審査項目」という質問に対する回答として、グラフのような項目が並びました。
この項目だけを見ても、これから審査を申し込もうとする人は何に気をつければよいのかわからないと思います。そこで、上位5項目について、住宅ローンの審査に臨む際にやってはいけないことの詳細を、筆者なりに解説していこうと思います。
第1位 返済負担率(毎月返済額/月収)
返済負担率は収入に占めるローン返済額の割合です。金融機関はこの水準が一定の範囲内に収まっていることで、安定性の高い返済計画であると判断します。特に、このローン返済額には、審査を申し込んだ住宅ローンだけでなく、現在借りているローンのすべてがカウントされるので、注意が必要です。
審査申込時にやってはいけないことは、ずばり、次の2つです。
×その他の借入金の存在に気づかないまま申し込む
×目的のないローンの総借入残高が年収の1/3を超えている
その他の借入金に気づかずに申し込みをするのは、絶対に避けましょう。金融機関は、個人信用情報を照会して、申込者がいくら借りているか、ほぼ確実に把握します。
申込書に記載のない借り入れがあると、審査担当者の心証はとても悪くなります。そして「何か問題を抱えているに違いない」と、粗探しが始まるのは確実でしょう。例えば、携帯電話、家電などをローンを組んで分割払いで購入したことに気づいていないという人は多いので、注意してください。
2010年の改正貸金業法の完全施行を契機に、カードローンやキャッシングなどの目的のないローンの総借入残高が年収の1/3を超えてはいけないことになりました。それを受け、住宅ローンを取り扱う金融機関も、上記のようなローンが年収の1/3を超える案件は即、不承認にします(ただし、銀行ローンは例外のようです)。よって、確実に、残高を1/3未満に減らし、かつ減らした後、一定の期間がたってから申し込みをしましょう。
第2位 職種、勤務先、雇用形態
職種、勤務先、雇用形態が審査の障害になるのは、収入が安定していないと判断されるケースが多いからだと考えられます。よくいわれることですが、芸能人などは収入が安定していないとみなされやすいですし、サラリーマンであっても給与体系が成果主義や業績連動型などの場合、金融機関によっては厳しく審査される可能性があります。
審査申込時にやってはいけないことは、「審査的に難しい可能性がある金融機関には申し込みをしない」ことです。金融機関によっては、派遣社員、契約社員、アルバイトなどを融資の対象外としているところがあります。また、対象としていても、勤続3年以上が最低条件になっているなど、条件がある場合もあります。申し込み前に、事前に自分が対象になるかどうかを確認してから申し込みましょう。
事前確認が大事な最大の理由は、1カ所であっても金融機関から不承認が出ると、別の金融機関の審査のハードルが上がるからです。ある金融機関に審査を申し込んで不承認が出るとします。別の金融機関に持ち込んだとしても、その金融機関は以前の融資申し込みの経歴が見えてしまいます。そうなると、審査に落ちた人だと簡単に推測できるため、審査担当者は粗探しを始めるに違いないからです。
第3位 借入比率(借入額/担保価値)
筆者が銀行員だった時は、不動産担保評価額の8割以下しか融資できなかったものですが、最近では新築購入であれば、不動産価格の10割、場合によってはそれ以上借りることが可能となっています。
これは、審査の基準が「担保」から「ヒト」に移ったということだと推測していますが、そうはいっても、10割を借りることは、家計にとっては大問題となる可能性があります。
審査申込時にやってはいけないことは、「物件価格10割の融資申し込み」です。現金が十分に準備できないので10割融資をしてもらわないと家を購入できない、というケースは最悪です。これまでにも本コラムでたびたび述べてきましたが、手元現金も十分にないのに家を購入しようとするのは無計画すぎます(「家を買うなら 意思決定の正しいプロセスを伝授」「『家賃並みの負担で買えます』にだまされるな」参照)。
もし、借入金額が家計に比して少ない、もしくは、手元資金もあるけどあえて使いたくないなど、家計に問題がない状態であれば、10割融資の申し込みありだと思います。
第4位 借入者の社会属性
ここでいう社会属性とはわかりにくいのですが、確認をしたところ、正規雇用か非正規雇用の違いなどを指すようです。金融機関は、正規雇用であれば収入が安定していると想像しやすいのですが、非正規雇用だと収入が安定的であるかどうかを具体的に確認することになります。
審査申込時、というか住宅購入の直前にやってはいけないことは転職・独立です。もちろん、個別事情によっては問題ないこともありますが、仕事を変えた直後の住宅購入は、収入だけでなく雇用すら安定的とは言い難いため、リスクが大きいからです。仕事に慣れて、収入が安定するまでは、いくら安定的に返済するといっても金融機関にはなかなか信じてもらえないので、住宅購入を検討すべきではないでしょう。
第5位 返済途上での返済能力の変化
返済している途中に、借入申込者の返済能力が大きく変化する可能性があるというケースで多いのは、申込者が高齢者であったり、妊娠する可能性がある女性であったりする場合です。収入の変化によって、返済が不安定になる可能性があれば、当然、審査は厳しくなります。
審査申込時にやってはいけないことは、「返済計画のない申し込み」です。収入の変化が明らかに予想されるなら、収入が減っても返済が継続できるかどうか、確認をしておくべきです。例えば、「退職金や遺産などまとまったお金で返済負担を減らすことができる」とか、「すでに十分な貯蓄がある」など、具体的なプランを立て、金融機関が納得できるよう説明することが求められます。
審査の申込書は、お見合いの釣書のようなものです。従って、金融機関の審査担当者にとって気にかかるような内容はできる限り記載しない方がよいのです。しかし、金融機関は個人信用情報を照会するなど、様々な方法で申込みをしている人の実態を確認するため、虚偽の申告は絶対してはいけません。もし問題があると感じている人は、問題の内容によって対処方法が異なりますので、専門家に相談しましょう。