子どもたちの夢を実現するために キッズコンパス

子どもたちが持っている夢を叶えるため、小学校から実社会へ巣立つまでの学生生活を保護者とともに応援します。

(経営学はいま)起業家精神を育む(6

2014-02-12 13:54:29 | 高等教育

 顧客の「時間価値」を最大化 早稲田大学教授 東出浩教

 起業家やその精神を持つビジネスパーソンは購買プロセスを敏感にイメージする能力を持つ。これを生かし、満足度の高い購買経験を顧客に与えるべきだ。図では、米国での業績が知られるイアン・マクミランらの「消費チェーン」をもとに、顧客の購買プロセスを「決めてみる」「買ってみる」「使ってみる」という3段階に大別した。

画像の拡大

 

 新事業は各段階で(1)顧客は時間をどれだけ短縮できるか(2)時間に従来と異なる価値を与えられるか(3)顧客が時間を使うことで社会貢献を実感する仕組みはあるか――という3点が重要になる。

 顧客にとって限られた「時間価値」の最大化は重要なテーマなのだ。

 例えば、米インターネット通販大手のアマゾンで書籍を購入する際、顧客は先行して買った人のコメントを読んで注文するかどうかを決め、購入はワンクリックで終える。購入した書籍はすぐに配送され、顧客にはその後、それまでの購入履歴をもとにおすすめの本が提示される。実際の書店での購入に比べ、時間の価値が大きく高められていることがわかる。

 マンネリを避けるためにも、企業固有の思考方法(行動規範)である「ドミナントロジック」は常に見直されるべきだ。その場合は、変えるべきものと変えないものを仕分けしないといけない。

 これからはステークホルダー(利害関係者)の購入経験をイメージしてビジネスを組み立てる必要がある。従業員、投資家、ビジネスパートナー、顧客にはそれぞれどのような価値を届けるべきなのかを常に考えながら事業を展開するのだ。


住宅ローン審査 銀行はあなたの ここを見る

2014-02-11 18:17:01 | 世の中

2014/02/11日経マネー

 

住宅ローン審査 銀行はあなたの

ここを見る

住宅ローンアドバイザー・淡河範明

 買いたい物件が決まり、売買契約を結ぶと、次に待っているのが住宅ローンの申し込み、そして審査です。住宅ローンを借りて家を買う以上、審査に通らなければ売買契約は白紙に戻さざるを得ません。今回はローン審査を取り上げます。

 

■金融機関が重視する審査項目は…

 

 

 よく利用される住宅金融支援機構の「2013年度 民間住宅ローンの貸出動向調査」を見てみましょう。「重要度が増していると考えられる審査項目」という質問に対する回答として、グラフのような項目が並びました。

 この項目だけを見ても、これから審査を申し込もうとする人は何に気をつければよいのかわからないと思います。そこで、上位5項目について、住宅ローンの審査に臨む際にやってはいけないことの詳細を、筆者なりに解説していこうと思います。

 

第1位 返済負担率(毎月返済額/月収)

 

 返済負担率は収入に占めるローン返済額の割合です。金融機関はこの水準が一定の範囲内に収まっていることで、安定性の高い返済計画であると判断します。特に、このローン返済額には、審査を申し込んだ住宅ローンだけでなく、現在借りているローンのすべてがカウントされるので、注意が必要です。

 

 審査申込時にやってはいけないことは、ずばり、次の2つです。

 

×その他の借入金の存在に気づかないまま申し込む

×目的のないローンの総借入残高が年収の1/3を超えている

 

 その他の借入金に気づかずに申し込みをするのは、絶対に避けましょう。金融機関は、個人信用情報を照会して、申込者がいくら借りているか、ほぼ確実に把握します。

 

 申込書に記載のない借り入れがあると、審査担当者の心証はとても悪くなります。そして「何か問題を抱えているに違いない」と、粗探しが始まるのは確実でしょう。例えば、携帯電話、家電などをローンを組んで分割払いで購入したことに気づいていないという人は多いので、注意してください。

 

 2010年の改正貸金業法の完全施行を契機に、カードローンやキャッシングなどの目的のないローンの総借入残高が年収の1/3を超えてはいけないことになりました。それを受け、住宅ローンを取り扱う金融機関も、上記のようなローンが年収の1/3を超える案件は即、不承認にします(ただし、銀行ローンは例外のようです)。よって、確実に、残高を1/3未満に減らし、かつ減らした後、一定の期間がたってから申し込みをしましょう。

 

第2位 職種、勤務先、雇用形態

 

 職種、勤務先、雇用形態が審査の障害になるのは、収入が安定していないと判断されるケースが多いからだと考えられます。よくいわれることですが、芸能人などは収入が安定していないとみなされやすいですし、サラリーマンであっても給与体系が成果主義や業績連動型などの場合、金融機関によっては厳しく審査される可能性があります。

 

 審査申込時にやってはいけないことは、「審査的に難しい可能性がある金融機関には申し込みをしない」ことです。金融機関によっては、派遣社員、契約社員、アルバイトなどを融資の対象外としているところがあります。また、対象としていても、勤続3年以上が最低条件になっているなど、条件がある場合もあります。申し込み前に、事前に自分が対象になるかどうかを確認してから申し込みましょう。

 

 事前確認が大事な最大の理由は、1カ所であっても金融機関から不承認が出ると、別の金融機関の審査のハードルが上がるからです。ある金融機関に審査を申し込んで不承認が出るとします。別の金融機関に持ち込んだとしても、その金融機関は以前の融資申し込みの経歴が見えてしまいます。そうなると、審査に落ちた人だと簡単に推測できるため、審査担当者は粗探しを始めるに違いないからです。

 

第3位 借入比率(借入額/担保価値)

 

 筆者が銀行員だった時は、不動産担保評価額の8割以下しか融資できなかったものですが、最近では新築購入であれば、不動産価格の10割、場合によってはそれ以上借りることが可能となっています。

 

 これは、審査の基準が「担保」から「ヒト」に移ったということだと推測していますが、そうはいっても、10割を借りることは、家計にとっては大問題となる可能性があります。

 

審査申込時にやってはいけないことは、「物件価格10割の融資申し込み」です。現金が十分に準備できないので10割融資をしてもらわないと家を購入できない、というケースは最悪です。これまでにも本コラムでたびたび述べてきましたが、手元現金も十分にないのに家を購入しようとするのは無計画すぎます(「家を買うなら 意思決定の正しいプロセスを伝授」「『家賃並みの負担で買えます』にだまされるな」参照)。

 

 もし、借入金額が家計に比して少ない、もしくは、手元資金もあるけどあえて使いたくないなど、家計に問題がない状態であれば、10割融資の申し込みありだと思います。

 

第4位 借入者の社会属性

 

 ここでいう社会属性とはわかりにくいのですが、確認をしたところ、正規雇用か非正規雇用の違いなどを指すようです。金融機関は、正規雇用であれば収入が安定していると想像しやすいのですが、非正規雇用だと収入が安定的であるかどうかを具体的に確認することになります。

 

 審査申込時、というか住宅購入の直前にやってはいけないことは転職・独立です。もちろん、個別事情によっては問題ないこともありますが、仕事を変えた直後の住宅購入は、収入だけでなく雇用すら安定的とは言い難いため、リスクが大きいからです。仕事に慣れて、収入が安定するまでは、いくら安定的に返済するといっても金融機関にはなかなか信じてもらえないので、住宅購入を検討すべきではないでしょう。

 

第5位 返済途上での返済能力の変化

 

 返済している途中に、借入申込者の返済能力が大きく変化する可能性があるというケースで多いのは、申込者が高齢者であったり、妊娠する可能性がある女性であったりする場合です。収入の変化によって、返済が不安定になる可能性があれば、当然、審査は厳しくなります。

 

 審査申込時にやってはいけないことは、「返済計画のない申し込み」です。収入の変化が明らかに予想されるなら、収入が減っても返済が継続できるかどうか、確認をしておくべきです。例えば、「退職金や遺産などまとまったお金で返済負担を減らすことができる」とか、「すでに十分な貯蓄がある」など、具体的なプランを立て、金融機関が納得できるよう説明することが求められます。

 

 審査の申込書は、お見合いの釣書のようなものです。従って、金融機関の審査担当者にとって気にかかるような内容はできる限り記載しない方がよいのです。しかし、金融機関は個人信用情報を照会するなど、様々な方法で申込みをしている人の実態を確認するため、虚偽の申告は絶対してはいけません。もし問題があると感じている人は、問題の内容によって対処方法が異なりますので、専門家に相談しましょう。


医師会に衝撃のイソジン事件

2014-02-11 18:06:28 | 世の中

2014/02/11日経ビジネスリーダー

 

医師会に衝撃のイソジン事件 

財務官僚が反転攻勢

編集委員 大林尚

 

 日本に暮らす私たちにとって健康保険は水のような存在だ。病気やけがをして病院・診療所にかかったときに払う窓口負担は、原則としてかかった医療費総額の30%。子供や高齢者の窓口負担はもっと低い。さらに入院したり高額医療を受けたりしたときの負担は、所得水準に応じて月々の上限額が決まっている。

 

 健康保険のもうひとつの利点は病院・診療所へのかかりやすさにある。フリーアクセスといって原則どの病院でも診療所でも、患者の側に選ぶ権利がある。あたりまえじゃないか、と思うかもしれない。

 

■40兆円を超えた国民医療費

 

 昨年秋まで3年間スウェーデン大使をつとめた渡辺芳樹・元社会保険庁長官は、彼(か)の地でこんな体験をした。テニスのプレー中に転んであごの骨を折ったとき。国内有数のカロリンスカ医大病院(ストックホルム)に担ぎ込まれたまではよかったが、どうみても重傷なのに医師は出てこない。まず手に負った傷は看護師に縫ってもらった。それから検査。救急担当の外科医に診てもらったときには病院に着いてから7時間がたっていた。そしてあごの手術を受けた翌日には退院させられてしまう。

 

 スウェーデンでは地域地域に配置された一般医にかかるのに1週間待ち、専門医の診察を受けるには3カ月待ち、そして専門医の手術を受けるまでにさらに3カ月待つのが標準だという。医療の技術水準や医師・看護師の技量が高いからこその「アクセス制限」といえるかもしれない。

 

岸信介首相は国民皆保険制の土台を整えた

 今の日本の健康保険の原点は1961年に確立した国民皆保険制だ。その土台を整えたのは安倍晋三首相の祖父、岸信介首相だった。それから半世紀あまり。長寿化と少子化によって人口ピラミッドが頭でっかちになり、経済成長のスピードが鈍り、グローバル化やIT(情報技術)化もあって長期デフレに悩まされてきた日本経済があえいでいるなかで、国民医療費はすでに40兆円を突破した。介護保険のサービス費用と合わせると、すでに国内総生産(GDP)の10%を超える水準だ。

 

 半世紀前といえば、日本経済は高度成長への入り口に立っていた。そのころの設計思想を温存していていいのだろうか。健康保険を運営する厚生官僚や国の財政をあずかる財務官僚は、もうかなり前からそうした疑問を抱いている。しかし皆保険制の「改造」を試みるのは高齢者や患者を敵にまわすという点で、政治のハードルが高い。これまでなかなか前に踏み出せなかった両省の官僚が、そろりと、だが、したたかに動き出した。それを象徴するのが2014年度の政府予算案である。

 

 

昨年12月20日。クリスマスイブに予定されていた臨時閣議での閣議決定をにらみ、財務省2階の財務大臣室で麻生太郎副総理・財務相と田村憲久厚労相との閣僚折衝が行われていた。テーマは予算編成のなかで保険医療費の基礎単価ともいえる診療報酬の改定率をどうするか。国会は久々に衆参両院で与党が多数を占めている。そのなかで、なんとしても増額改定を勝ち取りたい医療界が押し出した自民党議員の圧力を背に、厚労相は懸命に増額を主張した。一方の財務相は4月からの消費税増税を理由に「増税に加えて患者負担を増やすのは納得を得にくい」と、増額に難色を示していた。

 

 結果は0.1%の増額。これは消費税増税によって病院・診療所の仕入れコストがかさむことへの手当てを含む改定率だ。厚労相や医療族議員は増額を勝ち取ったと釈明できるし、財務相にしてみれば増税手当て分を除けば実質は減額だと解釈できる。どちらにとっても都合の良い落としどころだった。

 

■一物二価のイソジンに的

 

 じつは、両相の合意にはこの診療報酬改定よりはるかにインパクトがある決定が含まれてた。A4判の合意文書の末尾には、次のように記されている。

 

 なお、別途、後発医薬品の価格設定の見直し、うがい薬のみの処方の保険適用除外などの措置を講ずる。

 

 そのとき医療族議員のほとんどは改定率に目を奪われ、この文言の意味を考える余裕が乏しかったのかもしれない。それは財務省の主計官僚が仕組んだ巧妙な皆保険改造の第一歩だった。

 

 うがい薬の定番は明治の「イソジンうがい薬」。風邪を引いて医者にかかると、抗生剤などともに、このうがい薬を処方されることが多い。知名度がとくに高い薬のひとつだ。

 

 イソジンは「一物二価」という特性をもつ。医師に処方してもらえば健康保険が利くので薬代の患者負担は原則30%で済む。薬局で市販品を買えば100%負担だ。ドラッグストアなどには値引き販売しているところもあるが、さすがに「70%引き」はあり得ない。成分の違いはほとんどないのに、どのルートで買うかによって価格にこれだけの差がつく商品はめずらしい。医療制度に詳しい国会議員のなかには、丹羽雄哉元厚相らのように古くからこの矛盾を訴える政策通もいたが、保険対象から外すとなるとその作業は困難をきわめていた。

 

 ところが今回はさしたる議論もないままに保険適用の除外がすんなりと決まった。背景になにがあったのか。

 

 厚労省のある官僚は財務省にしてやられたと悔しがる。「イソジンを保険適用から外した場合の財政効果を試算してほしいという依頼がわが省にあったようだが、ほんとうに決めてしまうとは」と、いまも信じられぬ様子だ。厚労相も財務相との折衝時にイソジンの話が出た覚えはないと説明しているという。

 

 だが別の同省幹部は周到に準備していたと証言する。だとすれば、皆保険の改造のために自らの大臣を出し抜くこともいとわなかったことになる。

 

■アリの一穴を恐れる医療関係者

 

 日本医師会をはじめとする医療団体の多くは「イソジン事件」に大きな衝撃を受けている。うがい薬を保険から外すだけでも年間60億円強、財政を改善させる効果があるというのが厚労省の見立てだ。ビタミン剤、湿布薬など処方ルートと市販ルートの違いによる一物二価の薬はほかにも少なくない。

 

 「ビタミン剤や湿布薬にすぐさま広がるとは考えにくい」と厚生官僚は語るが、医療関係者はイソジン事件がアリの一穴となって保険外しが加速する事態を恐れている。半面、市販している薬を保険対象から外すのは、制度としての健康保険の持続性を向上させるには、避けてとおることができない荒療治でもある。

 

 診療報酬の実質減額とイソジンの保険外し。厚労省の医療政策を舞台に、財務官僚の反転攻勢が始まった。


ライバルは外国人 大学、国際人材輩出競う

2014-02-10 10:34:00 | 高等教育

2014/02/10日経新聞より

 

ライバルは外国人 大学、国際人材輩出競う

 

 1月29日、東京・有明の「東京ビッグサイト」。イオングループの2015年の新卒者向け説明会には1000人以上の学生が集まった。

 

 新卒の3分の1

 グループ19社が出展する中、にぎわったのは中国本社(北京)とアセアン本社(クアラルンプール)のブース。学生は英語で現地社員の話を聞いていた。「日本で働きたいけど海外赴任になりそう」。国学院大3年の日本人の男子学生(23)はグローバル化の勢いを感じていた。

 

 同グループには今年、過去最高の3900人の新卒が入社する。3分の1は外国人。これまでは海外のグループ会社に入社していたが、今年は日本の本社にも中国人4人とベトナム人1人が入る。「アジアの人はひるまずに話すのですぐに日本語を身につける。日本で勤めるのに日本人であることはアドバンテージにはならない」。グループ人事最高責任者の石塚幸男氏はこう話す。

 

 海外のインフラ事業を伸ばす日立製作所。日本の本社は主に日本の学生を採用してきたが、12年度から1割を外国人枠にした。インドネシアやシンガポール、韓国などでも本社の人材を募る。

 

 成長を海外市場に求める日本企業。海外法人を持つ日本企業を対象にした経済産業省の海外事業活動基本調査では、海外の従業員数は11年度までに520万人を超え、10年で6割以上増えた。

 

 各国・地域に広がった従業員を管理するには外国人と対等に渡り合える経営幹部が必要。企業はグローバルに通用する学生を採用して幹部候補を確保しようとしている。大学ではふさわしい人材を輩出することをうたった新勢力が台頭している。

 

留学実績に期待

 「G(グローバル)5」と名乗る5つの大学がある。外国人留学生と英語で授業を進め、海外への留学制度が充実している点で共通。グローバル人材を求める企業の期待も高まる。

 

 立命館アジア太平洋大学(大分県別府市)はその一つ。卒業生の就職率は9割を超える。5月までの半年間に受け入れる就職説明会は約450社と、昨シーズンを1割以上上回る。例年12月に説明会を受け入れている早稲田大学の国際教養学部(東京・新宿)も「昨年は約20社の枠を3割ほど上回る申し込みがあった」(就職支援担当)。

 

 G5には以前から留学制度が充実していた上智大学(東京・千代田)と国際基督教大学(東京都三鷹市)も名を連ねる。G5を名乗ろうと音頭を取ったのは、04年に開学した秋田市の国際教養大学だ。

 

 国際教養大の授業は15人前後の少人数制。28カ国からの留学生と日本人の学生が英語で議論する。海外の157の大学と提携し、1年間の海外留学を義務づけている。

 

 年170人程度の卒業生に対し、今年は1月中旬から3月までに175社が秋田のキャンパスで就職説明会を開く。「ここの卒業生は入社後すぐに英語で仕事ができる。応募者は即採用したい」。2月に説明会を開く大手電機メーカーの人事担当者はこう話す。

 

 就職に有利に働くことが支持され、国際教養大の13年の一般入試の倍率は18.8倍と全国の大学の中で突出する。学歴を重視してきた日本の企業の新卒採用。企業のグローバル化は、日本の大学の競争にも変化をもたらそうとしている。

 

 杉本晶子、相模真記、後藤宏光が担当しました。


記国際教養大学の就職率に見る、偏差値にとらわれない大学選び

2014-02-09 19:39:10 | 高等教育

 

国際教養大学の就職率に見る、偏差値にとらわれない大学選び

熊谷 修平 | 塾講師

 

就職率は、ほぼ100%。名だたる一流企業に就職する、秋田の「国際教養大学」

 

近年、大学全入時代と言われている中、「国際教養大学」という秋田市の郊外にある一大学が脚光を浴びています。学部は国際教養学部のみ。1学年175人で、150人以上の留学生を含めても学生数が1000人にも満たない小さな単科公立大学です。この大学が注目を集めている理由。それは、毎年の就職率がほぼ100%なのです。しかも、就職先には、丸紅や電通、三菱商事、東北電力や任天堂など、人気企業ランキングで常に上位の一流企業がずらっと並びます。今や、東大・早慶を上回る「就職に強い大学」として有名。受験の合格倍率は、8倍~10倍が当たり前となっています。「さぞかし、偏差値も高いのだろう」と思われますが、実はそこまで高くありません。大手予備校の最新の偏差値で見ると、平均63。東大や早慶などの超難関大学が平均68~70であることを考えても、同じランクとは言いえません。では、国際教養大学は、どういった大学でしょうか。

 

「国際社会で通用する教養人を育成する」国際教養大学の特色

 

その特色は、2004年の設立当初から従来の大学の方向性とは違っていました。国際教養大学の目的は、「国際社会で通用する教養人を育成する」。これが、この大学の理念であり、それにそって独創的なカリキュラムやサポート体制が組まれています。少し紹介すると、「入学後、授業は、数学や科学、自然科学など教養科目を含め、すべて英語で行われ、卒業までに1年間の海外留学が必須。学内には、学舎とともに学生寮が併設され、24時間365日開放された図書館がある。1年生は全員が寮に入居し、勉強三昧の毎日を送ることになる。部屋は外国人留学生との2人部屋。異なる文化を持つ者同士で、寝食をともにすることで国際感覚が身についてくる」と、徹底して「学ぶための充実した環境」がそこにはあります。当然、その厳しさのために4年間で卒業できる学生は50%程度と言われていますが、そこを卒業した生徒の「英語力」をはじめとして、「考える力」や「論理力」の高さなど、有名一流企業がほしがるのもうなづけます。

 

大学の入試試験は大学・学部ごとに、傾向も内容も違う

 

従来、大学受験というと、自分の偏差値と大学の偏差値を見比べ、それに見合った大学を選ぶ傾向にあります。そのため、模試などでも、どうしても偏差値は気にせざるを得ないものとしてしまうことは否めません。しかし、「偏差値とは何か?」と考えた場合、実はそれに惑わされてはいけない点に気づきます。1つは、「大学の入試試験は大学・学部ごとに、その傾向も、内容も違っている」という事実があり、そのため単に偏差値で輪切りに考えても、まったく意味はありません。逆に言えば、自分で目指す大学の出題傾向を調べ、それに合わせて勉強しなければ、いくら偏差値が高くても合格は遠のきます。目の前の勉強をしていれば、合格できるわけではないのが大学受験なのです。実際、国際教養大学の入試も、英語についてだけ見ても、他の大学とは傾向がまったく違います。たとえば、「英語の資料文(数ページ)を読み、その内容に関する自分の考えや具体例を交え、エッセイを書け」といった問題が出題されます。大学受験では、高校受験までとは違い、それぞれの大学が欲する生徒を選抜するための試験のため、大学・学部ごとの入試傾向はバラバラで、しっかりとそれに合わせて勉強していくこと必須です。

 

大学の選択は、大学卒業後の人生に大きく影響を与える

 

そして、もう1つは、当然ながら、大学の選択は「自分の大学卒業後の人生に大きく関わってくる」という点です。案外、この点に関しては「有名な大学に行けば、なんとかなる」と思っている人も多いですが、ここに大きな落とし穴があります。今回の国際教養大学の例のように、偏差値だけでは決してわからない大学のシステムがあるだけでなく、大学は、ある意味で、自分の卒業後の進路まで決めてしまう可能性があります。今回、例に挙げた国際教養大学は、あくまで「国際社会で通用する教養人を育成すること」が目的とされ、それに沿った内容になっています。同時に、今の時代、企業側もそういう人材を求めているからこそ、一流企業への就職率が高いという結果が出ています。つまり、当然ながら、就職後は海外とのやりとり、もしくは海外勤務が多いであろうし、それが活躍の場として与えられるといいうことになるでしょう。しかし、これは、そういった方向へ進むことを望まない人にとっては、最悪の選択になってしまいます。大切なのは、まずしっかりと「大学卒業後に自分がどの方向に行きたいのか?」というしっかりとした将来像を持つことなのではないでしょうか。

 

偏差値にとらわれず、将来を見据えた大学選びを

 

各大学が特色を打ち出すようになった時代では、「自分がその大学に行き、どういうことを学びたいのか?」「卒業後は、どういった方向に進みたいのか?」という点をしっかりと決め、単に偏差値だけではない大学・学部の選択が必要となってきています。もちろん、自分がやりたいことを決めたら、大学の理念や大学のカリキュラム・就職後の方向性など、しっかりと調べることも大切になるでしょう。そして、その上で、その大学・学部の傾向に合わせて、勉強をスタートしていく。それが求められています。「大学は、最終学歴の専門課程として、人生の方向性を決定づけるもの」という意識がますます重要になってきていると言えます。多くの経験をし、自分が目指す方向性を見つけ、大いに可能性を広げてもらいたいものです。